大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

文字の大きさ
199 / 474
バーでカクテルを

第392話、エルミナとバーで

しおりを挟む
 今日は、エルミナとバーで飲んでいる。
 意外にも静かで驚いた。こいつのことだし、エールをがぶ飲みしながらデカい声で歌いだし、ドワーフたちと肩を組んで踊りだすのかと思ったけど。

「なーんて考えてんでしょ? 失礼ね。私だって厳かに飲むことくらいあるわよ」
「……そ、そんなことないぞ?」

 俺の思考を読まれてしまった。
 今日は二人きりで飲んでいる。いくら酒癖が悪くても、エルミナだけバーに招待しないってのは悪いもんな。それに、たまには二人きりで飲みたいときもある。
 エルミナも察してくれたのか、エールをがぶ飲みするようなことはしなかった。
 
「ちょっとキツめのブドウ種ちょうだい」
「かしこまりました。では、この『ニャンコニャック』など如何でしょう? ブドウを原料に、ワイン製法ではなくブランデー製法で仕込んだお酒になります」
「お、いいわね。アシュトもどう?」
「じゃあもらうよ。というか名前がいいな……にゃんことか」
「発案者が銀猫族でしたので、その名前を」

 ニャンコニャック。色は深い琥珀色でブドウから作られたとは思えない。どちらかと言えばウィスキーやブランデーに近いものがあった。
 丸めのグラスに注がれたニャンコニャックで乾杯。軽く飲んでみると……うん、キツイ。
 エルミナも一口飲み、口の中でしっかり味わって飲み干した。

「ん……おいしい」
「ああ。深みのあるいい酒だ」
「アシュトがそれっぽいこと言ってるしー」
「う、うるさいな」

 すると、ミリアリアがスライム製の容器に入れた飴を出してきた。

「少し甘めのキャンディです。ニャンコニャックによく合います」
「ほほう、面白そうね」
「じゃ、俺も」
「飴はしばらく口の中で転がし、嚙み砕いてください。その後ニャンコニャックをお口の中へ」

 カロ───ボリッ、メキッ、バリ……ゴクッ……ポリ…ミキ。

 飴を口の中へ、軽く舐めて砕き、ニャンコニャックを飲む。そして残った飴を噛んだ。
 確かに美味い。これはハマりそうだ。

「ん~……お酒ってやっぱり美味しい!」
「なぁ、ちょっと思ったんだけど……お前っていつから酒飲んでるんだ?」
「え? ん~……たぶん五十歳くらいかな? おじいちゃんのお酒を水と間違えて飲んじゃってね。安酒だったけど初めて酔っぱらったのよ。酔うってふわふわして気持ちよくてね~……」

 エルミナは頬を紅潮させる……っていうか、五十歳から飲んでるのか。つまり……九千年以上飲んでるってことだよな? ハイエルフって身体の造りどうなってんだ? 今度健康診断やろう。
 そうだ。健康診断……住人たちも増えたし、一度やるべきかな。

「アシュト、あんたはお酒どうなの? けっこう飲んでるの?」
「ん~……俺はたまにかな。十五歳で初めて飲んで、こんなの飲めるかって思ったんだけど、付き合いで飲んでいるうちになんとなく飲めるようになった」
「つまんないわねぇ」
「やかましい。飲み初めに面白いも何もないだろ」
「私の場合、初めて飲んだ次の日にはメージュたちにお酒勧めて、みんなで飲み会したわねぇ」
「…………」

 ま、まぁ人それぞれってことで。
 ミリアリアがチコレートを出してくれたので、一つ摘まむ。

「ミリアリア、お前も食べろよ」
「ありがとうございます。ご主人様」

 ミリアリアにチコレートを渡そうと手を伸ばす……すると、ミリアリアがそのままパクっと食べた。
 ちょっとびっくりすると、ミリアリアがクスリと笑う。おいおい、ポニーテールネコミミ可愛いじゃないか。

「……ちょっと、なにだらしない顔してんのよ」
「し、してないって。ほ、ほらお前も」
「むー……あむっ」

 俺の腕にぎゅーっと抱き着くエルミナにチコレートを食べさせる。こいつも嫉妬ハイエルフ可愛いな。やばい酔ってるのか変な単語が混ざる。
 すると、バーのドア……家に繋がっていない、店の入口ドアがノックされる。
 ここはプライベートな酒場なので住人は入れないが、俺や奥さんたちの紹介なら入ることができる。いずれはバーテンダーを増やし、村にも何件かバーを作る予定だ。もちろんベルゼ通貨でのお支払いで飲めるようなバーだ。
 ドアが開くと、入ってきたのはハイエルフたちだった。

「やっほー。エルミナに誘われたから来ちゃいました」
「ども」
「飲んでる~?」
「うふふ。村長とエルミナちゃん、すっごくベタベタ甘々ねぇ~♪」

 メージュ、ルネア、シレーヌ、エレインだ。エルミナの幼馴染で、村での最高齢メンバーでもある。

「…………村長、失礼なこと考えてる」
「そ、そんなことないぞ? ほらルネア、座れよ」
「ん」

 ルネアが隣に座ると、なぜが腕にべったり甘えてきた。
 エルミナも何も言わないし、なぜかメージュたちがニヤニヤしている……なにこれ?
 
「とりあえず、お任せで!」
「わたしも」
「あ、あたしも~」
「私は甘めでお願いしま~す」

 メージュたちが注文を取り、俺は念のため言っておく。

「いいか、ここは静かに厳かにお酒を楽しむ場所だ。大きな声を出したりしちゃダメだぞ」
「わかってるわかってる。村長、あたしらだって馬鹿飲みばっかりしてるわけじゃないって。ねぇみんな」

 メージュがそう言うと、ルネアたちはうんうん頷く。
 するとエルミナがチコレートを摘まんで言った。

「そう言うけど、メージュは昨日浴場で酔っぱらって裸踊りしてたわよ。ルネアはエールをがぶ飲みして吐くし、シレーヌはエール樽に頭突っ込んでたし、エレインなんて裸のまま男浴場に突入したのよ?」
「ちょ、馬鹿エルミナ!! 変なこと言うなっ!!」
「ほんとのことでしょ? メージュ」
「え、エルミナだって酔っぱらいすぎて、ミュディを村長と勘違いして襲ってたじゃん!! ミュディ泣いてたんだからね!?」
「ば、それ言うなぁぁぁっ!! 謝りまくってようやく許してもらったんだからね!?」
「おま、そんなことしてたのか……」
「ち、違うし!!」

 そういや最近、ミュディがエルミナを避けてるような気がしてたけど……まさか、こいつが原因だったのか。
 
「わたし、吐いてない」
「あたしはちゃんと謝ったし! 樽も綺麗に洗ったし!」
「はぅぅ……は、裸で男湯……ぅぅ」

 結局、バーは大騒ぎになってしまい、ミリアリアに怒られるまでデカい声を出し続けるのだった。
しおりを挟む
感想 1,145

あなたにおすすめの小説

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。