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バーでカクテルを

第393話、漢たちと飲もう(正直まだ怖い)

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 さて、今日俺がバーに誘ったのは、ガタイのいい男たちだ。いや『漢』だちだ。
 
「……いいところだな」
「ああ。ビッグバロッグ王国を思い出す」
「……オレは知らん。そう言えば、お前が行ったのだったな」
「ああ……美味い酒が多いところだ」
「むぅ……村長、今度外に出るときはオレを連れて行け。頼む」
「は、はい」

 バルギルドさんとディアムドさん、俺を挟むようにカウンター席に座ってるから圧がすごい。
 身長高いし、ドワーフ製とはいえ椅子の強度が心配だ。さらにその隣には。

「親分。ここはいい店ですな」
「だろう? バカ騒ぎして飲むのもいいが、こういう静かなところでキツイ酒を飲むのも悪かねぇ。なぁ村長」
「そ、そうですね」
「叔父貴。お注ぎいたしやす」
「ど、どうも。でもここはバーですし、好きに頼んで大丈夫ですので」

 アウグストさんとグラッドさんだ。
 アウグストさんはともかく、グラッドさんが座っている椅子は鉄製だ。こういうこともあろうかと用意しておいた……今度は、バルギルドさんとディアムドさんの分も用意しておこう。
 いつも女性陣とばかり飲んでいるし、たまにはこういう男っぽい飲み会もいい。ちょっとメンツが濃くて息苦しいけどね。
 俺はチコレートをつまむ。バルギルドさんとディアムドさんはサシミを、アウグストさんはチーズ、グラッドさんは生魚を一匹丸のみした。
 お付き合いなので、俺も少し強い酒……ウィスキーを飲む。

「くぅ……けっこうキツいウィスキーですね」
「がはは。村長にゃまだ早かったか? おい銀猫姉ちゃん、水やってくれや」
「はい」

 ミリアリアから水をもらい一気に飲む。
 
「いやぁ……お酒って美味しいけど、キツイのはほんとにキツイですね……」

 苦笑……いや、お酒は嫌いじゃないよ?
 子供の頃は大人の飲み物ってことで憧れたし、実家のキッチンにあった調理酒をこっそり飲んで火を噴きそうになったこともあった。でも、十五歳のときに初めて飲んだお酒は美味しかった。後で知ったんだけど、兄さんが俺のために甘めのお酒を用意してくれたんだ。
 酒精の弱い果実酒……うん、俺が好きな酒だ。
 バルギルドさんは、ドロドロしてそうなブランデーを軽く飲む。

「……オレたちデーモンオーガに毒は効かん」
「え?」
「ヒドラの毒、ポイズンヴァイパーの猛毒、デッドスパイダーの超猛毒。全て一度受けたことがあるが……オレには全く効かなかった」
「え」

 あの、今言った毒、一滴でも体内に入ると即死レベルの猛毒なんですけど。

「そんなオレも、酒で酔うことはできる。酔うという感覚はいい……自分が自分でなくなるような、不思議な高揚感……ふふ」

 バルギルドさんはグラスを軽く揺らす。
 ディアムドさんも同じなのか、微笑んでいた。そして俺に言う。

「村長はまだ若い。あと十年も飲めば酒の味がわかるだろう」
「そ、そうですかね……」
「まぁ焦んな焦んな。酒の味が知りたいなら、ワシらがいつでも付き合うからよ」
「アウグストさん……」
「叔父貴。僭越ながらオレもいます」
「グラッドさんも……ありがとうございます」

 なんかいい話っぽい。酒ってすごいなぁ。

 ◇◇◇◇◇◇

 さらに翌日の夜。
 今度はディミトリを誘って飲んでいる。そして、いつもお世話になっているカシエルさんと、呼んでないのに来たアドナエルも一緒だ。

「ヘイヘイ、オレを差し置いて飲むなんて酷いゼェ~?」
「わ、悪かったって……カシエルさんがいるし、別にいいかなーって」
「どーゆうことナノ!?」

 アドナエルのツッコミを無視し、カシエルさんに言う。

「カシエルさん。新婚旅行ではお世話になりました。今日は好きなだけ飲んでください」
「あ、ありがとうございます……」

 カシエルさんはアドナエルをチラッと見る。そういえば、カシエルさんの雇用主ってアドナエルだった。でも、天使族の中で好感度が最も高いのはカシエルさんなんだよなぁ。

「アシュト村長。ワタクシも忘れないでほしいですねぇ」
「わかってる。ミュディの件では世話になってるし、お前もいっぱい飲め飲め」
「フフフ、ありがとうございます」
「その代わり、アドナエルと喧嘩はしないでくれよ」
「ええ。モチロン……ワタクシからは何も言いません。フフフ、ミュディ・ブランド事業で大忙しなので、アドナエル社長に構っている暇はないのですよ」
「ハァァァ~ン!? それを言うなら、ウチだってアシュト村長が提供してくれた『マスクメィロン』事業で大忙しなのサ! いやぁ、魔界都市ベルゼブブでもメィロンが大ブームって聞いたゼェ~?」
「っぐ、ぬぬぬ……ふ、ふん。確かにマスクメィロンは認めましょう」
「オウオウ。いずれベルゼブブ中に広める予定ッサ!!」

 う、うるせぇ……いつもと変わんないじゃん。
 俺はミリアリアにセントウのカクテルを注文する。さっぱり系のカクテルなので、おつまみに串焼きが出てきた。肉の脂とセントウカクテルがこれまた合う。
 カシエルさんも同じのを注文。ディミトリとアドナエルはやかましいので放置した。

「うん、美味い。肉の脂とセントウカクテル、合いますね」
「そうですね。実はお酒は好きなのですが……まさか、こんなに美味しいカクテルを村で飲めるとは思いませんでした。ありがとうございます、アシュト村長」
「いえいえ。カシエルさんにはお世話になってますので」

 カシエルさんへの好感度はかなり高い。イケメン、礼儀正しい、優しくて温和、腹筋割れしてるよ四拍子だ。

「ヘイヘイ!! 腹筋ならオレも割れてるゼ!!」
「ワタクシもです!! こう見えて昔はブイブイ言わせてたのです!!」
「いや脱ぐな!! つーかなんで心の中読めるんだよ!?」

 割れた腹筋を見せつけるディミトリとアドナエル、苦笑するカシエルさん、そしてツッコむ俺。
 ミリアリアに怒られるまで、バカ騒ぎをしたのだった。
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