大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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バーでカクテルを

第395話、若者たちとお話を

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「にゃあ」
「みゃうー」
「くぅぅん」
「……うーん、若すぎるな」

 ある日。自室で書き物をしているときに遊びに来た子供たちを見て思った。
 ミュアちゃん、ルミナ、ライラちゃん……さすがに、バーでお酒を飲むには若すぎる。ここにはいないけど、日光浴してるマンドレイクとアルラウネ、ウッドもだ。
 というか、ウッドたちってお酒飲めるのかな? 栄養剤をエールみたいにゴクゴク飲んでいるのを見たことはあるけど……そういえば、俺たちの飲み会の真似して、栄養剤の瓶をいっぱい集めてフンババやベヨーテたち植物組で宴会の真似事してたな。
 少し考え込んでいると、ソファに座って読書をしているルミナが言った。

「みゃあ。どうした」
「ん、ああ。あと十年後くらいかなって」
「なにがだ?」
「はは、みんなとお酒が飲めるようになる日ってこと」
「おさけ……ああ、あの臭いやつか」
「いや、美味いんだぞ?」

 すると、テーブルの上でお絵かき……いや、新作デザインを考えているライラちゃんが言う。

「わぅぅ、お酒ってお鼻が痛くなるの。ベイクドやゲイツは美味しいって言ってた。匂いに慣れると痛くなくなるって」
「魔犬族は鼻がいいからね。ライラちゃんも大変だな」
「わん。でもでも、ダスクやシャインは『大人になればわかる』って」
「確かに、お酒は大人の味だからね」

 お喋りしていると、ベッドの上でゴロゴロしていたミュアちゃんが言う。

「にゃあ。ご主人さま、わたしもお酒飲みたいー」
「んー……ミュアちゃんはあと十年後かな? シルメリアさんにお許しをもらってからね」
「にゃうぅ。ナナミおねえちゃんもまだ飲んだことないって言ってた。わたし、はやく大人になりたいー」
「あはは……」

 いつまでも可愛い銀猫のままで、ってわけにはいかないよなぁ。
 ミュアちゃん、もうすぐ九才になるんだよな。身長も伸びてきたし体付きも徐々に女の子らしくなっていく。俺にべったり甘えてくるのは変わらないけど、いつかそれもなくなる。
 俺、甘えてくる小さな子が好きなのかも……ならば。
 
「……猫でも飼おうかなぁ」
「にゃう!? ご主人さま、猫を飼うの!?」
「え、い、いや……というか、オーベルシュタインには猫いないしね、冗談だよ」
「にゃあ……ねこ、ほしいー」

 うーん、ミュアちゃん、猫欲しいみたい。
 とりあえず、この子たちとお酒を飲むのは十年後ってことで!
 俺は書き物を再開しながら呟く。

「若すぎるなら、ちょっとだけ若い子と飲むか」

 ◇◇◇◇◇◇

「こ、こんばんわー!」
「お邪魔します、村長」
「やっほー!」
「わぁ、綺麗なところ……」

 夜。俺がバーに招待したのは村の若者たちだ。
 フレキくん、キリンジくん、ノーマちゃん、マカミちゃんの四人組だ。エンジュを誘ったんだけど、ハイエルフたちとホルモン焼きしながら清酒飲むらしく無理だった……なんか明日、頭痛薬や胃の薬が一気になくなりそうな気がする。
 
「いらっしゃい。五人もいるし、カウンター席じゃなくてテーブルに席にしようか」

 先に来ていた俺は一人でカウンター席に座っていたが、フレキくんたちが来たのでテーブル席に移動する。
 壁沿いのソファ席には女の子二人が座り、柔らかい肘掛け付き椅子にはフレキくんとキリンジくん。そんな四人を見れる間の位置に俺が座った。
 さっそくお酒の注文をする……けど、念のため聞く。

「みんな、お酒は大丈夫だよね?」
「はい!! 師匠に誘われてお酒を飲める日が来るなんて夢のようです!!」
「ちょ、フレキうるさい。こういうところでは静かに喋るのがマナーってもんでしょ」
「ご、ごめんマカミ」
「あっはは。怒られてるしー」
「お前も静かにしろ。村長、オレは何でも飲めます」
「ちょっとキリンジ、あたしはうるさくないし!!」

 いやはや、若いねぇ……いや、俺も若いけどな。
 もう二十歳だけど、ハイヒューマンという種族になったから外見的な変化はない。エルミナだって九千年生きてるのに外見だけで言えば十八歳くらいだしな。
 おっとまた余計な思考が。俺って余計なこと考えちゃうこと多いよね。

「じゃあ、まずは乾杯しよう。その後は好きなのを頼んでいいよ」
「はい!!……じゃなくて、はい」

 フレキくん、静かに返事してくれた。
 ミリアリアに乾杯用の食前酒を運んでもらい、静かに乾杯する……お、今日の食前酒は清酒だ。少し酸味があるってことは、何かに漬け込んだのか?
 
「おいしい……なんか酸っぱいけど飲みやすい」

 マカミちゃんが驚いている。
 そういえば、マカミちゃんやノーマちゃんがお酒を飲んでるところ見たことないな。
 キリンジくんやフレキくんも軽く飲みほし、ノーマちゃんもまったりしている。

「はぁ~……ねぇ、このお酒お代わりしたい!」
「はは、いいよ。ミリアリア、注文いいかな?」
「はい、ご主人様」

 各自、お酒を注文する。
 俺はセントウカクテル(実は一番のお気に入り)、ノーマちゃんとマカミちゃんは清酒、キリンジくんはブランデー、フレキくんは俺と同じセントウカクテルだ。
 おつまみは飴玉、チコレート、サシミ。サシミはキリンジくん用だ。
 さて、お酒も配膳され、いよいよ飲み会が始まる。

「みんな、最近どう?」

 俺がしたのは、飲み会定番の質問だ。
 フレキくんは飴玉を口の中に入れる。

「ボク、毎日がとっても楽しいです。師匠から学んで、図書館で勉強して、人狼族の村で往診して……師匠と出会わなければ、ボクはここまで成長できなかったです。師匠、本当にありがとうございます!」
「あ、ああ。うん……あはは」

 近況を聞いたつもりが、まさかのお礼だった。
 なんか不意打ちで照れる。

「あたしも毎日楽しいかも。前は帰る家なんてなかったし、洞窟暮らしで狩りの毎日だったからねぇ……今じゃこうして帰る家もあるし、食べ物には困らないし、毎日楽しいかも」
「オレもだな。この村で学んだことは数多い。同種族から迫害されるのが運命だと思っていたデーモンオーガが、多種多様な種族と共に暮らすなんて思いもしなかった」
「わたしも、この村に来てから毎日楽しいよ!」

 ノーマちゃん、キリンジくん、マカミちゃんも似たような意見だった。
 みんな充実してるんだなぁ。

「そういえば、師匠はどうなんですか?」
「え?」
「新婚旅行、楽しかったみたいですね。いいなぁ……天空都市」
「あはは。フレキくんも奥さんができたら行くといいよ。そうだ、結婚したら天空都市の別荘を貸してあげる。転移魔方陣を敷いたからいつでも行けるしね」
「ほんとですか? わぁ、うれしいなぁ」
「キリンジくんもどうだい? 天空都市にはグリフォンって生物に乗った騎士団があるんだ。竜騎士みたいな人たちがいっぱいいるよ」
「……面白そうですね」
「うん。って……どうしたの、二人とも?」
「「…………いえ、別に」」

 知らず知らずのうちに、俺は地雷を踏んでいた……そう言えばこの子たち、この二人が好きなんだっけ。
 まぁ、いずれ結婚するだろうし……今はそっとしておくか。
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