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バーでカクテルを
第396話、ミュディとシルメリアさん
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バーで飲むようになってそこそこ経過した。
毎日毎晩というわけではないが、今まであまり喋ったことのない住人たちを招待して一緒に飲んだ。静かな場所でお酒を飲みながら話す……けっこう、本音で語れるもんだ。
住人の要望や、住人間のトラブル……は特にないな、ちょっとした噂話を聞けた。
例えば、竜騎士のアクセルとハイエルフのミーナがこっそり付き合ってるとか、エルミナが人狼族に清酒の作り方指導の見返りに清酒を横流ししてもらってるとか……これは後で説教だな。
ある日、天気がいいのでウッドとシロと一緒にユグドラシルの下で読書をしていた。
『クァァ~……アシュト、ネムイ』
『くぅぅん』
「天気がいいからな。ウッド、シロ、眠いなら寝ていいぞ」
『フアンン~……』
『くわぅぅん』
ウッドとシロは大きな欠伸をして、互いに寄り添って寝てしまった。
俺は二人を撫で、ユグドラシルの木陰で読書を再開する。
すると、珍しい二人がバスケット片手に来た。
「アシュト、やっほー」
「失礼いたします。ご主人様」
「ミュディ、シルメリアさん。どうしたの?」
「ふふ。アシュトが外で本を読んでるのが見えたから、シルメリアさんとサンドイッチとお茶を淹れて持ってきたの。たまには外でお昼もいいよね」
「お、いいね」
「では、準備をします」
シルメリアさんがシートを敷くと、ウッドとシロも起きた。
シートの上に移動し、ミュディが水筒に入ったお茶を淹れてくれる。少し甘めの紅茶はサンドイッチによく合い、とても美味しい。
「……そう言えば」
「ん?」
「ご主人様?」
「二人と飲んだことないな。なぁ、今夜ヒマ? バーで飲まないか?」
「バー? あ、アシュトが作ってみんなを呼んでるところね」
「ご主人様。もしかして……私もでしょうか?」
「うん。お酒、たまにはいいだろ?」
サンドイッチを齧りながら言う。
ミュディとシルメリアさんは顔を見合わせ、にっこり微笑んだ。
「うん。いいよ」
「僭越ながら、私も」
「よーし。じゃあ今日は二人と飲むか」
というわけで、今日はミュディとシルメリアさんと飲むぞ。
◇◇◇◇◇◇
というわけで夜。シルメリアさんは明日の仕込みと夕飯の片付け、ミュディはシェリーたちとお風呂に行ったので、俺は一人でバーに来ていた。
カウンター席ではなくテーブル席に座り、ミリアリアに注文をする。
ヒュンケル兄が言ってた。『待ち合わせて一緒に行くより、先に入ってゆっくり飲みつつ待つのがバーでの流儀だ』とかなんとか……正直、それを理解できるほど飲み慣れてないのでよくわからない。
先に飲んでて酔い潰れるとかにならないように、メィロンカクテルをチビチビ飲んでいる。すると、バーのドアが静かに開いた。
「みゃあ」
「……って、ルミナ? どうした?」
「べつに。お前がいないから探してたら、ここから匂いがした」
「ミュアちゃんたちは?」
「寝た。あいつら子供だし」
「お前もだろ……それに、ここはお酒を飲む場所だぞ。子供は入っちゃダメだぞ」
「ふん。お前ばかりずるいぞ。あたいも飲む」
そう言って、ルミナは俺の隣に座り、身体を擦り付けてきた。
仕方ないので軽く撫で、おつまみのチコレート皿をそっと差し出すと、ルミナは待ってましたとばかりに手を伸ばす……うん、かわいいな。
すると、ミリアリアが来た。
「ご注文は?」
「え、いや、さすがに子供だし」
「いえ、お酒を使わないカクテルもあります。こんなこともあろうかと、いくつかレシピを仕入れておいたのです」
「なんと。聞いたかルミナ、お酒じゃないカクテルもあるってさ」
「みゃあ。まかせる」
「かしこまりました」
ミリアリアは、お客には最大の敬意を表す。それが子供だろうとだ。
グラスに氷を入れ、数種類の果実水を組み合わせてシェイクしてグラスに注ぐ。
「こちら、オリジナルカクテルの『フルーツエマ』となります。果実水を組み合わせたカクテルです」
「みゃあ。おいしそう」
ルミナはさっそく飲み始めた。
ミュアちゃんたちに知られたら騒ぎになりそうだな……まぁいいや。
ルミナと飲んでいると、シルメリアさんとミュディがやってきた。
「こんばんわー……って、ルミナちゃん?」
「お疲れ様です、ご主人様……ルミナ、あなたは何をしているの? もう寝る時間ですよ」
「みゃう。朝はちゃんと起きるし」
ルミナは俺にぴったりくっついて甘えてきた。
シルメリアさんはため息を吐き、そんなシルメリアさんの背を押してミュディが座る。
二人はセントウカクテルを注文。俺もメィロンカクテルをお代わりし、乾杯した。
「こうやって二人と飲むのは初めてかもな」
「そうだね。二人きりならあるけど」
「私もご主人様とお酒を飲むのは初めてです」
シルメリアさんはセントウカクテルを飲み干し、ブランデーを注文した。
「シルメリア、あなた……飲みすぎには気を付けて」
「問題ありません。ミリアリア」
ミリアリアは何か言いたげだったが、ブランデーを持ってきた。
シルメリアさんはそれもぐいーっと飲み干す。そしてお代わりを注文。
これには、俺とミュディも驚いた。シルメリアさんってけっこう飲むのな。
すると、ミリアリアがこそっと耳打ちする。
「ご主人様。シルメリアはお酒に弱い方ではありませんが……けっこうな量を飲みます」
「え、そうなの?」
「はい。静かに大量に飲み、静かに酔い潰れるのです」
「……そ、そうなんだ」
「ミリアリア、おかわりを」
「……はい」
なんとなくミュディと顔を合わせると、苦笑するしかなかった。
「あ、わたし清酒飲みたいな」
「じゃあ俺も。ミリアリア、清酒を二つ」
「ご主人様。私も」
「じゃあ三つで。おつまみにサシミをよろしく」
「かしこまりました」
「みゃう。チコレートなくなったぞ」
「はいはい。じゃあチコレート追加で」
飲み会は、楽しい時間が流れていく。
すると、俺とミュディも酔ってきた……ルミナはいつの間にか眠り、シルメリアさんもとろーんとしてる。
「なぁミュディ、お前飲みすぎだぞ……」
「アシュトだってぇ……はぁ、暑くなってきちゃった」
ミュディは上着を脱ぐ。
上着の下は薄手のシャツで、少し汗ばんでいた。
顔も紅潮しているのでなんともいろっぽい……やべ、俺もちょっと自制しなくては。
ルミナの頭を撫でて自制……うし。
「はぁぁ~……明日も仕事かぁ。なぁミュディ、どっか行きたいか?」
「ん~……また別荘でお昼寝したいなー」
「あー……いいなぁ」
やべ、眠くなってきた。
シルメリアさんは……寝てる。あ、ミュディもシルメリアさんにもたれかかった。
俺も瞼が重くなり……ふぁぁ、おやすみぃ。
「ご主人様。皆様をお部屋までお運びします。どうかごゆっくりお休みください」
「…………」
そんな、ミリアリアの声が聞こえた気がした。
◇◇◇◇◇◇
翌日。目覚めると自室だった……あ、着替えてない。
昨夜、酔い潰れてしまったようだ。そしてミリアリアがここまで運んでくれたってところかな。
とりあえず、ミリアリアにお礼を言おう。
「アシュトくん♪ ふぅぅっ」
「おおぉぉぉぉっ!? しし、シエラ様っ!?」
「うふふ。ゆっくり寝てたようね」
いつの間にかシエラ様がいて、俺の耳に息を吹きかける。
耳はダメなのよミミは。
シエラ様はいたずらっ子みたいに笑う。
「バーをオープンさせたようね。ふふ、私は誘ってくれないのかしら?」
「も、もちろん誘いますよ! シエラ様がよければ今夜にでも!」
「あら嬉しい♪ じゃあ、今夜はよろしくね♪」
こうして、シエラ様と飲むことになるのだが……このお姉さんは色っぽすぎて、いろんな意味で危険だったとだけ言っておこう。
毎日毎晩というわけではないが、今まであまり喋ったことのない住人たちを招待して一緒に飲んだ。静かな場所でお酒を飲みながら話す……けっこう、本音で語れるもんだ。
住人の要望や、住人間のトラブル……は特にないな、ちょっとした噂話を聞けた。
例えば、竜騎士のアクセルとハイエルフのミーナがこっそり付き合ってるとか、エルミナが人狼族に清酒の作り方指導の見返りに清酒を横流ししてもらってるとか……これは後で説教だな。
ある日、天気がいいのでウッドとシロと一緒にユグドラシルの下で読書をしていた。
『クァァ~……アシュト、ネムイ』
『くぅぅん』
「天気がいいからな。ウッド、シロ、眠いなら寝ていいぞ」
『フアンン~……』
『くわぅぅん』
ウッドとシロは大きな欠伸をして、互いに寄り添って寝てしまった。
俺は二人を撫で、ユグドラシルの木陰で読書を再開する。
すると、珍しい二人がバスケット片手に来た。
「アシュト、やっほー」
「失礼いたします。ご主人様」
「ミュディ、シルメリアさん。どうしたの?」
「ふふ。アシュトが外で本を読んでるのが見えたから、シルメリアさんとサンドイッチとお茶を淹れて持ってきたの。たまには外でお昼もいいよね」
「お、いいね」
「では、準備をします」
シルメリアさんがシートを敷くと、ウッドとシロも起きた。
シートの上に移動し、ミュディが水筒に入ったお茶を淹れてくれる。少し甘めの紅茶はサンドイッチによく合い、とても美味しい。
「……そう言えば」
「ん?」
「ご主人様?」
「二人と飲んだことないな。なぁ、今夜ヒマ? バーで飲まないか?」
「バー? あ、アシュトが作ってみんなを呼んでるところね」
「ご主人様。もしかして……私もでしょうか?」
「うん。お酒、たまにはいいだろ?」
サンドイッチを齧りながら言う。
ミュディとシルメリアさんは顔を見合わせ、にっこり微笑んだ。
「うん。いいよ」
「僭越ながら、私も」
「よーし。じゃあ今日は二人と飲むか」
というわけで、今日はミュディとシルメリアさんと飲むぞ。
◇◇◇◇◇◇
というわけで夜。シルメリアさんは明日の仕込みと夕飯の片付け、ミュディはシェリーたちとお風呂に行ったので、俺は一人でバーに来ていた。
カウンター席ではなくテーブル席に座り、ミリアリアに注文をする。
ヒュンケル兄が言ってた。『待ち合わせて一緒に行くより、先に入ってゆっくり飲みつつ待つのがバーでの流儀だ』とかなんとか……正直、それを理解できるほど飲み慣れてないのでよくわからない。
先に飲んでて酔い潰れるとかにならないように、メィロンカクテルをチビチビ飲んでいる。すると、バーのドアが静かに開いた。
「みゃあ」
「……って、ルミナ? どうした?」
「べつに。お前がいないから探してたら、ここから匂いがした」
「ミュアちゃんたちは?」
「寝た。あいつら子供だし」
「お前もだろ……それに、ここはお酒を飲む場所だぞ。子供は入っちゃダメだぞ」
「ふん。お前ばかりずるいぞ。あたいも飲む」
そう言って、ルミナは俺の隣に座り、身体を擦り付けてきた。
仕方ないので軽く撫で、おつまみのチコレート皿をそっと差し出すと、ルミナは待ってましたとばかりに手を伸ばす……うん、かわいいな。
すると、ミリアリアが来た。
「ご注文は?」
「え、いや、さすがに子供だし」
「いえ、お酒を使わないカクテルもあります。こんなこともあろうかと、いくつかレシピを仕入れておいたのです」
「なんと。聞いたかルミナ、お酒じゃないカクテルもあるってさ」
「みゃあ。まかせる」
「かしこまりました」
ミリアリアは、お客には最大の敬意を表す。それが子供だろうとだ。
グラスに氷を入れ、数種類の果実水を組み合わせてシェイクしてグラスに注ぐ。
「こちら、オリジナルカクテルの『フルーツエマ』となります。果実水を組み合わせたカクテルです」
「みゃあ。おいしそう」
ルミナはさっそく飲み始めた。
ミュアちゃんたちに知られたら騒ぎになりそうだな……まぁいいや。
ルミナと飲んでいると、シルメリアさんとミュディがやってきた。
「こんばんわー……って、ルミナちゃん?」
「お疲れ様です、ご主人様……ルミナ、あなたは何をしているの? もう寝る時間ですよ」
「みゃう。朝はちゃんと起きるし」
ルミナは俺にぴったりくっついて甘えてきた。
シルメリアさんはため息を吐き、そんなシルメリアさんの背を押してミュディが座る。
二人はセントウカクテルを注文。俺もメィロンカクテルをお代わりし、乾杯した。
「こうやって二人と飲むのは初めてかもな」
「そうだね。二人きりならあるけど」
「私もご主人様とお酒を飲むのは初めてです」
シルメリアさんはセントウカクテルを飲み干し、ブランデーを注文した。
「シルメリア、あなた……飲みすぎには気を付けて」
「問題ありません。ミリアリア」
ミリアリアは何か言いたげだったが、ブランデーを持ってきた。
シルメリアさんはそれもぐいーっと飲み干す。そしてお代わりを注文。
これには、俺とミュディも驚いた。シルメリアさんってけっこう飲むのな。
すると、ミリアリアがこそっと耳打ちする。
「ご主人様。シルメリアはお酒に弱い方ではありませんが……けっこうな量を飲みます」
「え、そうなの?」
「はい。静かに大量に飲み、静かに酔い潰れるのです」
「……そ、そうなんだ」
「ミリアリア、おかわりを」
「……はい」
なんとなくミュディと顔を合わせると、苦笑するしかなかった。
「あ、わたし清酒飲みたいな」
「じゃあ俺も。ミリアリア、清酒を二つ」
「ご主人様。私も」
「じゃあ三つで。おつまみにサシミをよろしく」
「かしこまりました」
「みゃう。チコレートなくなったぞ」
「はいはい。じゃあチコレート追加で」
飲み会は、楽しい時間が流れていく。
すると、俺とミュディも酔ってきた……ルミナはいつの間にか眠り、シルメリアさんもとろーんとしてる。
「なぁミュディ、お前飲みすぎだぞ……」
「アシュトだってぇ……はぁ、暑くなってきちゃった」
ミュディは上着を脱ぐ。
上着の下は薄手のシャツで、少し汗ばんでいた。
顔も紅潮しているのでなんともいろっぽい……やべ、俺もちょっと自制しなくては。
ルミナの頭を撫でて自制……うし。
「はぁぁ~……明日も仕事かぁ。なぁミュディ、どっか行きたいか?」
「ん~……また別荘でお昼寝したいなー」
「あー……いいなぁ」
やべ、眠くなってきた。
シルメリアさんは……寝てる。あ、ミュディもシルメリアさんにもたれかかった。
俺も瞼が重くなり……ふぁぁ、おやすみぃ。
「ご主人様。皆様をお部屋までお運びします。どうかごゆっくりお休みください」
「…………」
そんな、ミリアリアの声が聞こえた気がした。
◇◇◇◇◇◇
翌日。目覚めると自室だった……あ、着替えてない。
昨夜、酔い潰れてしまったようだ。そしてミリアリアがここまで運んでくれたってところかな。
とりあえず、ミリアリアにお礼を言おう。
「アシュトくん♪ ふぅぅっ」
「おおぉぉぉぉっ!? しし、シエラ様っ!?」
「うふふ。ゆっくり寝てたようね」
いつの間にかシエラ様がいて、俺の耳に息を吹きかける。
耳はダメなのよミミは。
シエラ様はいたずらっ子みたいに笑う。
「バーをオープンさせたようね。ふふ、私は誘ってくれないのかしら?」
「も、もちろん誘いますよ! シエラ様がよければ今夜にでも!」
「あら嬉しい♪ じゃあ、今夜はよろしくね♪」
こうして、シエラ様と飲むことになるのだが……このお姉さんは色っぽすぎて、いろんな意味で危険だったとだけ言っておこう。
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