大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

文字の大きさ
225 / 474
オーベルシュタイン、二度目の冬

第418話、緑龍の村・雪合戦大会と鍋会!(前編)

しおりを挟む
 ドラゴンチェス大会から数日後。
 毎日しんしんと雪が降り、たまに吹雪き、除雪作業が仕事となりつつあるドワーフや竜騎士たちに労いの酒を振舞ったりと、冬の時間は過ぎていく。
 俺とエルミナは家の前に作ったかまくらの中で、のんびりお茶と団子を食べていた。

「ねーねー、そろそろ次のイベントでしょ?」
「ああ。今、ディアーナたちが雪合戦大会の参加者たちをまとめてる」
「ふふん。楽しみね!」

 雪合戦大会。
 五人チームで登録し、村の近くにある森の中を舞台にして戦う。
 村の中だと少し狭い。そのため、雪合戦のためだけに、除雪部隊を増員して会場設営と村の除雪に分けて作業をさせている最中だ。
 俺はリョク茶を啜り息を吐く……外は吹雪いているが、かまくらの中は暖かい。
 
「ん……んん?」
「どうした?」
「なんか変な感触が……あれ?」

 エルミナがこたつでモゾモゾしていた。
 何をしているのかと見ていると、なんとエルミナの方に可愛らしいネコミミが出てきた。というかミュアちゃんがこたつの中から出てきた。

「うにゃ……」
「ミュア、あんた……って、前もこんなことあったわね」
「にゃう。この中あったかいの。お昼寝はこの中でするの」
「ほら、おいで」
「にゃうー」

 エルミナはミュアちゃんを抱っこした。
 すると、俺の方もモゾモゾと何かが動いた……まさか。

「みゃう……」
「ルミナ、お前もか……やれやれ」

 こたつの中からルミナが現れ、俺に抱き着いて甘えてきた。
 頭とネコミミを撫で、エルミナと笑いあう。

「子供は自由ねぇ」
「そうだな。ま、いいんじゃないか?」
「そうね。それより、雪合戦の日取りはいつ頃になる?」
「たぶん、数日中には。その時は伝えるよ」
「頼むわよ! さーて、雪が止んだらメージュたち誘って特訓しないと!」
「張り切ってるなぁ……この寒いのに」
「あんたはもうちょっと身体動かしなさいよ。食っちゃ寝してると太るわよ」
「はいはい。ありがとよ」

 ちなみに、雪合戦大会での俺の役目は審判である……参加はできないけど、エルミナの言う通り少しは運動しないとな。太るのは嫌だ!

 ◇◇◇◇◇◇

 数日後。
 雪合戦当日。今日は晴れで雪が降っていない、絶好の雪合戦日和だった。
 村の広場には、雪合戦参加者がチーム毎に集まって並んでいる。その中にはシェリーと父上、エルミナ、ローレライとクララベルがいた。
 俺は審判で、隣にはミュディ、そしてネコミミニット帽子と防寒着を纏ったミュアちゃんだ。ルミナは雪合戦に興味がないのか家の前のコタツの中で、マンドレイクとアルラウネ、ウッドらと寝ている。
 そして、開会式が始まった。
 
「にゃあ。いっぱいー!」
「すごいね……みんな参加者なんだ」
「ああ。全50チーム参加だよ。ひとチーム五人だから250人か……すごいな」
 
 ちなみに、審判はディアーナとその部下。
 俺は審判長という立場で、大会本部であるかまくらの中でのんびり過ごす。ミュディとミュアちゃんは俺が誘ったのだ……話し相手が欲しかったからね。
 まず、村の広場で開会式。俺は軽く挨拶し、ディアーナにルール説明をお願いする。
 まずは、クラスごとに予選を行う。
 雪合戦にあまり興味のないミュディは首を傾げた。
 
「クラス?」
「うん。知っての通り、参加者は多種多様な種族で構成されてる。ハイエルフやエルダードワーフ、デーモンオーガにサラマンダー、悪魔族に天使族、半龍人。デーモンオーガの雪玉なんて喰らったら骨折じゃ済まない。だから、サラマンダーやデーモンオーガ、エルダードワーフはAクラス。それ以外の種族はBクラスで予選を行うんだ」
「なるほど……」
「にゃあ。ご主人さま、わたしも遊びたいー」
「あはは。じゃあミュアちゃん、ライラちゃんやフンババたちと遊んでおいで。村の入口にいるフンババが退屈してるだろうからさ」
「にゃう! みんな誘って遊んでくる!」

 ミュアちゃんは走り出し、防寒服を着たハイピクシーやライラちゃんを誘ってフンババの元へ行った。たぶんジッとしてられないから遊ぶだろうと思ってたけどその通りだった。
 というわけで、俺とミュディは二人きり。
 ディアーナによるルール説明が終わると同時に、雄たけびが上がった。

「わわわっ! みんな張り切ってるねぇ……あ、エルミナたちもいる」
「優勝賞品がな……」

 ちなみに、優勝賞品は木箱いっぱいの高級酒。
 ビッグバロッグ王国、ドラゴンロード王国から取り寄せた高級酒にベルゼブブとヘイブンから取り寄せた超高級酒。そして清酒にセントウ酒などが大量にある。これは酒好きの住人たちやエルミナが燃える。
 俺とミュディはこたつに入り、籠に入っていたミカンを剥いた。

「ねぇアシュト。雪合戦って怪我しないのかな?」
「んー、打ち所が悪ければ怪我するかもだけど、そんなに心配しなくても大丈夫かな。いざという時のために救急道具は持ってきてあるし、俺が参加しないのも怪我人が出た時のために待機するためでもある」

 ま、運動音痴の俺が出ても負けるだけだし、正直なところ飛んでくる雪玉は怖い。
 
「それに、ルールもあるから大丈夫だよ」

 雪合戦のルールは簡単だ。
 フィールドは村近くの森の中で、それぞれの陣地の最奥に旗を立てておく。
 敗北条件はチームの全滅か、自陣の旗を取られたら負け。
 雪玉を一発でも喰らったらアウト。速やかに両手を上げてバトルフィールドから出る。
 森の地形を利用してこっそり進んで旗を狙うか、相手を雪玉で全滅させるか……そこはチームで戦略を考えて挑まなければならない。
 ここまで説明すると、ミュディは頷いた。

「なるほど。単純そうで奥が深いね」

 俺はミカンを食べ、リョク茶を啜る……渋くてうまい。

「ちなみに魔法は禁止。純粋な体力と腕力勝負だ」
「そうなんだ……雪もけっこう深いし、汗いっぱい掻きそうだね」
「うん。だからこそ、試合終了後の鍋会が盛り上がるんだよなぁ」

 そう。雪合戦大会終了後は宴会場で鍋会だ。今頃、銀猫たちが準備している。
 酒は大量に準備し、鍋はもちろんおつまみもだ。今夜はたぶん寝れないだろうな。
 
「住人の大半は夜の鍋会……いや、宴会を楽しみにしてるかも」
「あ、あはは……あ、見てアシュト、アリューシア様だよ」
「お、ほんとだ。母上!」

 母上が分厚いコートを着て歩いていたので呼ぶと、俺たちのところへ来た。
 
「母上。寒いのでどうぞ中へ」
「ありがとう。じゃあ失礼して」
「アリューシア様、いまお茶を淹れますね」
「ありがとう、ミュディ」

 母上のコートを預かり、コタツへ案内した。
 リョク茶を啜ると、母上はほっこりする。

「ふぅ……このお茶、渋くて美味しいわ」
「リョク茶です。俺も好きなんですよ……と、母上。もしかして父上の応援ですか?」
「それもあるけど、天気もいいしお散歩してたのよ。ふふ、ちょうどよくお茶が飲めたわ」
「あはは。アリューシア様、ゆっくりなさってください」

 この時、雪合戦がとんでもなく荒れているということに、俺は全く気付かなかった。
しおりを挟む
感想 1,145

あなたにおすすめの小説

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。