大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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竜騎士とハイエルフ

第445話、探ってみよう!

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 さて。メージュにランスロー攻略の手伝いを頼まれた。
 薬院で作戦会議をしていると、メージュが言う。

「いい。絶対にこのことは言わないでよ。エルミナもルネアも、シレーヌもエレインにもね!」
「お、おお……でもさ、俺とお前だけってのも」
「ランスローさんに好きなもの聞くだけじゃん。あいつらには、あたしから折を見て話すからさ」
「わかった。で、作戦だけど……」

 いくつか作戦を考えた。
 どれも俺が身体を張る内容だ。メージュは関われないから仕方ない。
 
「村長、悪いけど頼むよ」
「ああ、任せろ……なんか緊張してきた」
「……ほんと頼むよ?」

 というわけで、ランスロー攻略の情報収集をすることになった。

 ◇◇◇◇◇◇

 翌日。
 俺は図書館へ向かう。情報によれば、ここでクララベルがランスローに勉強を教わっている。
 図書館一階の端に、机に突っ伏してウンウン唸るクララベルと、教科書片手にクララベルに勉強を教えるランスローがいた……これはチャンス。
 さっそく俺は二人に接近する。

「ん……あ、お兄ちゃん!」
「アシュト様、お疲れ様です」
「や、やぁ二人とも。勉強中?」
「うん。ランスローってば厳しいのー……」
「姫様。お勉強は王族の義務です。しっかり学んでもらわなければ。このランスロー、姫様のためならドラゴンになりますよ!」
「うー……わたしだってドラゴンなのにぃ」

 クララベル、勉強が苦手だからな。
 ローレライのいる図書館でなら勉強するって言うので、自宅の部屋じゃなくてここで勉強している。ごくたまにだが、俺のいる薬院で勉強することもあった。
 おっと、さっそく作戦開始。

「俺も読書しに来たんだけど、お前たちが見えたから来たんだ。せっかくだし、少し休憩してお茶でも飲まないか?」
「のむ!」
「姫様!……わかりました。アシュト様、お茶の支度をします」
「うん。あ、ランスロー、自分の分も持って来いよ?」
「いえ、私は」
「いいから。な、クララベル」
「そうそう。ランスローってば頭硬いんだし、あまーい果実水飲んで頭ふにゃふにゃにしないと」
「姫様、いくら私が甘党だからって、果実水でふにゃふにゃにはなりませんよ」
「……(なるほど)」

 ランスローは甘党、と。
 さっそくいい情報が手に入った。
 飲み物を取りに行ったランスローと入れ替わるように、クララベルの向かい側に座る。

「えへへ。お兄ちゃん」
「クララベル、ちゃんと勉強しないとダメだぞ?」
「はーい」

 クララベル……まったく、可愛い奴め。
 すると、ランスローがカップを三つ持って戻ってきた。
 俺はカーフィー、クララベルは果実水、ランスローは……おお、果実水だ。なんとなく紅茶やカーフィーが似合いそうなイケメンなのに。
 ランスローは躊躇ったが、俺とクララベルに急かされて座った。

「ランスロぉ……おやつー」
「駄目です。甘い物は勉強のあとで。ローレライ様にきつく言われてますので」
「ぶぅ~……」
「姫様、そんな顔してもダメですよ?」
「むぅぅ~……ランスローってばわたしの騎士なのに姉さまの言うことばかりー」
「申し訳ございません。ですが、姫様のためですよ」

 クララベルもランスローも本気じゃないな。
 ランスローは、クララベルが赤ん坊のころからクララベルの騎士だ。騎士というより……年の離れた親戚のお兄さんって感じがする。
 さて、俺も動くか。

「ところでランスロー、ちょっと聞いていいか?」
「なんなりと」
「実は、いろんな年代、いろんな種族の男性の趣味を聞いて回ってるんだけど……ランスローって何か趣味ある?」
「趣味、ですか?」
「あ、ああ。えーっと……その、みんなの娯楽を聞いてさ、村でどんな趣味や創作活動をしてるのか、とかを……」

 ちょ、ちょっと苦しいかな……いやでも、『みんな』を強調したからたぶん大丈夫。
 ちなみに、いろんな種族に聞いてるってのはちょっとだけ嘘だ。このくらいの嘘は許してほしい。
 ランスローは少し考えこむ。

「はいはーい! わたしはお菓子作り好き!」
「あ、ああ。知ってる」
「えへへー! あ、お兄ちゃん。今度シュークリーム作るね!」
「う、うん……ありがとう」

 クララベルの無邪気さが可愛い。
 すると、ランスローが言う。

「趣味は剣術、彼女の世話、読書……ですかね」
「え」
「申し訳ございません。ずっと騎士として生きてきたので……」
「ランスロー、あまりお休み取らないもんね。たまのお休みも本読んだり、わたしのお買い物に付き合ってくれたり、ギネヴィアを水浴びさせたりー」

 クララベルが果実水を飲みながら言う。

「聞いてお兄ちゃん。ランスローってば甘い物大好きなの! 何年か前ね、こっそり変装してドラゴンロード王国の洋菓子店巡りしてたんだよ」
「ひ、姫様!!」
「お酒はあんまり飲めないし、お肉よりもお魚好き、欠けたギネヴィアの爪を加工してペンダントやアクセサリーにしたり……あ!! そういえばランスロー、家庭菜園始めたんだっけ!」
「……はぁぁ」

 クララベル、マジで天使だな。
 ランスローの個人情報をこれでもかと喋るわ喋る。おかげで顔を赤くしたランスローが頭抱えて俯いちゃったよ。
 それより、気になったことが。

「ランスロー、家庭菜園って?」
「……その、銀猫族の方から苗をいくつかいただきまして、宿舎の裏に小さな農園を作ったのです」
「ぜーんぶ、果物だよね!」
「……はい。果実酒やジャムの作り方を教わりましたので、試してみようと」
「ははは。なんか女子みたい……ご、ごめんごめん!!」

 女子みたい、そう言った途端にランスローがうつむく。
 ああ、本人も気にしてたのね……そういや、父上やナナミと何か喋ってたことがあったけど、農園やジャムのこと聞いてたのか。
 でも、これでわかった。

「あはは。ランスローってば本当に甘い物好きだねー」
「……そうです。甘党ですよ私は」

 ランスローは甘党。
 これをメージュに報告してみるか。
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