大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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春の訪れ

第453話、兄さんたちの予定

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「え! じゃあ……こっちに来れるんだ!」
『ああ。休暇がようやく取れた。本格的な春になる前の、わずか二十日ほどだが……』
「二十日……うん、大丈夫。じゃあ竜騎士を迎えに出すよ。父上や母上も待ってるからさ、兄さん」
『そうだな。休暇は七日後からだ。ルナマリアも同時期に休暇が取れてな』
「……ヒュンケル兄だね?」
『ああ。全く、あいつは気を遣いすぎだ』

 ある日の午後。
 雪の降る頻度がめっきり減り、暖かい日が続くようになった頃。
 俺はリュドガ兄さんからの連絡を受け、大いに喜んだ。
 内容は今の通り……兄さんとルナマリア義姉さんが、休暇を取れたのだ。
 そして、スサノオとエクレールを連れ、緑龍の村にやってくる。
 俺は窓際に飾ってあるリンリンベルに向かって話しかける。

「兄さんとルナマリア義姉さんが一緒に休暇ってことは……」
『そうだ。ヒュンケルは仕事だ。さすがに、あいつまで抜けたら大変だしな。でも、ヒュンケルは四十日も休暇を取ったからな。休んだ分は働くと言ってるよ』
「……たぶん、それ」
『言うな。はは……あいつらしい』

 ま、それがヒュンケル兄らしいってことだ。
 兄さんと話をしていると、ドアがノックされた。

「お兄ちゃん、入るよー」
「お、シェリー。ちょうどいい、兄さんと喋ってるんだ。お前も来いよ」
「え、リュウ兄?」

 シェリーが俺の隣に椅子を持って座った。

「やっほ、リュウ兄。元気?」
『シェリーか。もちろん元気だぞ。ルナマリアも子供たちもな』
「えへへ、リュウ兄の声って安心するね」
「だな。俺もそう思う……と、そうだ」

 俺はシェリーに休暇のことを話すと、シェリーは大いに喜んだ。

「リュウ兄、こっち来れるの!?」
『ああ。子供たちとルナマリアを連れていくよ』
「やった! あ、お父さんとお母さんに話さなきゃ! お兄ちゃん、準備しないと準備!」
「お、おお。って……落ち着けって。兄さんたち、すぐ来るわけじゃないぞ」
「いーの! 久しぶりに家族が揃うんだし、嬉しいんだもん!」

 そういって、シェリーは部屋を飛び出した。
 全く、あいつは……まぁ、いいか。

『はは。シェリーは可愛いな』
「確かに。あいつ、リュドガ兄さんのこと大好きだからな」
『そうだな。可愛い自慢の妹だよ』

 もちろん。俺も大好き……とは言わなかった。恥ずかしいからね。

 ◇◇◇◇◇◇

 さて。兄さんたち一家がやってくる。
 滞在期間は二十日ほど。たぶん十日くらいしか滞在できないと思うけど……それでも、兄さんたちが来ることは、父上も母上も大いに喜んだ。
 現在、俺とシェリーは父上と母上の家にいる。

「そうかそうか。リュドガたちが……」
「嬉しいわね。でも……子供たちは、私のことを知らないと思うわ」
「だからどうした? 胸を張って会えばいいではないか」
「アイゼン……そうね。私はあの子たちの祖母だものね」

 あの、父上と母上……息子と娘の前でイチャイチャしないでほしい。
 シェリーは肩をすくめて苦笑してるしさ。

「こほん。ねぇお父さん、お母さん。久しぶりに家族が揃うしさ、お茶会とか食事会開かない? お母さんはスサノオとエクレールにちゃんと挨拶したいでしょ?」
「おお、いいな」
「ええ。ちゃんと挨拶しなきゃね」
「お兄ちゃんは、リュウ兄たちを迎える準備! 宿の手配と、銀猫たちを何人か世話係として付けて。あ、そうだ。ランスロー団長とメージュの結婚式に参列できないかな? 春ごろの挙式って言ってたし、準備は進んでるんだよね? うんうん。よーし、あたしちょっとメージュのところに行ってくる!!」

 シェリーは家を飛び出した。
 俺も父上も母上も、何も言えなかった。

「あの子ってば……本当に変わったわねぇ」
「年相応ってやつだよ。ん……? 母上、顔色が優れないようですが」
「え? ええ……少し、疲れかしらね」
「アリューシア。この村には優れた薬師がいる。何かあればすぐに診てもらうんだぞ」
「ええ。ふふ、シャヘル先生と同じくらい、信用できるものね」
「うぐ……ふ、二人とも、からかわないでください!」

 俺は紅茶を一気に飲み欲し、顔が赤くなるのを誤魔化した。

 ◇◇◇◇◇◇

 父上たちの家から出た俺は、散歩がてら村を歩いていた。
 村はすっかり春だ。地面に雑草が生え、小さな花が生えている。

 そういえば、ニコニコアザラシも徐々に冬眠から目覚めていた。
 牧場に設けた鉄扉を開けようと身体をぶつけていたのをバルギルドさんが見つけ、扉を開けるとのそのそと何匹かが元の場所に戻ったとか。
 だが、目が覚めたのに動かずのんびりしているニコニコアザラシもけっこういるらしい。バルギルドさん曰く『ここが気に入ったのでは?』とのことだ。
 ニコニコアザラシの子供も、村の中に普通にいるし……まぁ、別にいいか。

「ん?……お、あれは」

 村の中央広場に、いろいろな種族が集まっていた。
 
「あ、村長なんだな!」
「お、村長! お久しぶりですー!」
「また、こちらでお世話になります」

 集まっていたのは、ブラックモール族のポンタさんとその仲間たち。
 アラクネー族のステンナとその仲間たち。
 ゴルゴーン族のメイニーとその仲間たちだ。けっこうな数で広場が埋まっていた。
 久しぶりの仲間たちに嬉しくなり、俺は駆け寄る。

「みんな! また会えてうれしいよ」
「村長に挨拶に行こうとしてたんだな。また会えてうれしいんだな!」

 ポンタさん……相変わらずの可愛さだ。

「ふふふ。またお仕事頑張っちゃいますよー!」

 下半身が蜘蛛、上半身が女の子のアラクネー族たち。代表のステンナは胸を張った。
 そうだな。お前たちがいないと。製糸場の戦力として期待してる。

「うちらも、ようやく冬眠から覚めたっす……またバリバリ仕事するっす!」

 下半身が蛇、上半身が女性のゴルゴーン族の代表メイニー。
 うんうん。石材場がまたにぎわう。ゴルゴーン族の作る石造の注文、結構入ってるんだよね。
 俺はみんなに挨拶した。
 みんなの住む家は、銀猫たちが冬の間に掃除している。荷物を持って家に向かってもらった。
 故郷に戻った種族たちも、少しずつ戻ってきた。

「春だなぁ……」

 新年会、またやろう。
 その前にランスローたちの結婚式。リュドガ兄さんたちも来る。
 温室の土壌も手入れしないとな。あ、フレキくんたちもそろそろ帰って来るかも。
 
「やること、いっぱいだ……うん、また忙しくなるぞ」

 俺は大きく伸びをし、これからたくさんやらなくてはならない仕事を頭の中で整理し始めた。
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