大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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春の訪れ

第455話、春の結婚式

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 兄さんたちが緑龍の村にやってきた。
 宿となる家でお茶を飲んでいると、シェリーがスサノオとエクレールを連れて戻ってきた。
 村の散歩が終わったのはいいんだが……エクレールがやや興奮している。

「父上、母上! みてみて、これ! もふもふー!」
『もきゅー』

 エクレールは、ニコニコアザラシを連れてきた。
 ニコニコアザラシの子供、花畑に帰らず村に残ってるのがけっこういるんだよな。
 エクレールは抱っこしたが、重いのかすぐに下ろしてしまう。

「おもいー!」
「姉上、ぼくも抱っこしたいです」
「いいよー」
『きゅぅぅ』
「しぇ、シェリー……この生物は?」
「安心してよリュウ兄。ニコニコアザラシの子供は大人しいから」
「……可愛い」

 ルナマリア義姉さんは、もふもふしたニコニコアザラシの子供に夢中だ。
 そう言えばヒュンケル兄が言ってたな。ルナマリア義姉さんは可愛いのが好きだって。
 
「父上、外のぼくじょうにおっきいのがたくさんいたのです。一緒に見にいきましょう!」
「そうだな。よーしスサノオ、父と一緒に行くか。よろしければ父上も」
「む、そうだな。行こうか、スサノオ」
「はい! じいじ、父上!」
「母上、わたしも行きたいのです! ドラゴンがいっぱいいるところがあったのです!」
「ドラゴン……ああ、確か竜騎士の宿舎か。シェリー、案内してもらえないか?」
「もちろん! せっかくだしさ、お母さんも行こうよ! ミュディもどう?」
「そうね。ご一緒させてもらおうかしら」
「じゃあ、わたしも」

 父上、兄さん、スサノオは牧場へ。
 母上、ルナマリア義姉さん、ミュディ、エクレールはドラゴン宿舎へ向かった。
 みんな仲がいいようで何より……って、あれ?

「…………」

 俺は一人、宿に取り残された……べ、別に悲しくないもんね!!

 ◇◇◇◇◇◇

 兄さんたちが来て数日。
 一緒に村で遊んだり、図書館で読書したり、釣りをしたり……テントを張ってキャンプなんかもやってみた。
 仕事が忙しい兄さんとルナマリア義姉さんは、ここぞとばかりに羽を伸ばす。
 スサノオとエクレールも、大都会のビッグバロッグ王国では味わえない自然を満喫していた。
 父上や母上、俺とミュディとシェリーも加わり、エストレイヤ家の絆が強くなった気がする。
 
 そして、兄さんたちが来て四日目。
 この日は、特別な日だ。
 兄さんたちは朝からめかし込み、俺とその嫁たちもめかし込む。

「メージュたちの結婚式か……悪いなエルミナ、任せっきりにして」
「いいの。むしろ私がやりたかったから。ローレライとクララベルも手伝ってくれたし、ハイエルフのみんなも頑張ってくれたからね」

 ハイエルフの伝統衣装を着込み、化粧をしたエルミナが言う。
 エルミナにとってメージュは親友だ。結婚式の準備の総指揮を執り、ローレライとクララベルにも手を貸してもらって準備をしていた。
 俺たちがエストレイヤ家としての時間を過ごせるように気を遣ってくれたというのもあるだろう。
 
「さ、行くわよ。あんたは挨拶があるんだから、しっかりね」
「わかってる」

 エルミナと一緒に家を出る。
 教会では、すでに準備が終わっていた。
 俺もエルミナと一緒の席に座り、始まるのを待つ。
 教会では横一列に椅子が並んでいる。そこに、エストレイヤ家の面々も座っていた。
 座っているのはハイエルフと半龍人が殆ど……どうやらドラゴンロード王国からの招待もあるようだが、招待客云々も任せっきりだったので誰が誰だかわからない。
 さすがに遊び過ぎたと後悔する俺……しまったな。
 ちなみに、神父はカシエルさんだった。これはナイス人選。
 そして、結婚式が始まった。

「お……ランスロー」

 白い礼服を着たランスローが入ってきた。
 礼服にはドラゴンの刺繍が入っている。なかなかに派手だ。
 参列客の最前列にいる半龍人が泣きながら拍手している……あ、もしかしてランスローの両親かな?
 そして、ハイエルフの楽団が笛のような楽器を奏で始めた。
 
「おお、メージュか……すっげぇな」
「ミュディとカレラの合作ドレスだって」

 メージュが着ていたドレスは、緑を基調にした落ち着きのある意匠だった。
 ミュディの隣に座るカレラさんが自信満々にウンウン頷くのが見える。
 そして、メージュと腕を組んでいるのは……?

「メージュのパパよ。あっちがママ」
「お、おお……」

 改めて、ハイエルフは長寿のイケメンだって理解した。
 どう見ても二十代後半にしか見えない。父ってか結婚相手にも見える。
 だが、メージュと一緒に歩くメージュ父は、必死に涙を堪えているようにも見えた。
 メージュとランスローが向かい合い、式が始まった。

「それでは……婚礼の儀を始めます」

 カシエルさんの穏やかな挨拶で、式が始まった。

 ◇◇◇◇◇◇
 
 式は滞りなく進んだ。
 誓いのキス、祝福の矢、そしてゴーヴァン率いる月龍騎士団による空中演武。
 式が終わりを迎えた頃、ちょっとしたサプライズがあった。

「それではここで、祝辞をお願いします」

 祝辞。つまり、お祝いの言葉。
 メージュとランスローは聞いていないのか、首を傾げる。
 ちなみに俺も聞いていない。
 すると、エルミナが立ち上がり、この後のパーティーで振舞われる料理を作っていたクララベルも来た。
 エルミナとクララベルが頷きあい、クララベルが前へ。

「ランスロー」
「姫様……」
「えへへ。お手紙書こうとおもったし、こういう場所では敬語が普通なんだけど……わたしの言葉で伝えるね」

 クララベルは少し照れていた。
 いつも通りのクララベルは、自分の言葉を紡ぐ。

「ランスロー、わたしってば迷惑かけてばかりだよね。勉強から逃げたり、無茶ばかり言ったり……でも、ランスローはわたしを叱っても、最後は言うこと聞いてくれた。わたし、甘えてばかりだった」
「…………」
「ランスロー、結婚してもわたしの騎士だって言ってくれて嬉しかった。わたしが生まれたころから一緒にいるランスローは……お兄ちゃんみたいな人です。だから、幸せになって欲しい」
「…………」
「ランスロー、結婚おめでとう。いっぱいいっぱい、幸せになってね!」
「…………はいっ」

 ランスローは目頭を押さえていた。
 クララベルも目元を拭い、いつの間にかエルミナの傍にいたローレライの胸に飛び込む。
 なんとも感動的……やばい、俺も泣きそう。

「じゃ、私の番ね」
「エルミナ、あんたなの?」
「な、なによ。文句あんの!?」
「ふふっ……冗談よ冗談」

 うん、涙が止まった。
 いつも通りすぎるエルミナとメージュだ。

「あー、その。メージュ、結婚おめでとう」
「ん、ありがと」
「あのさ、結婚っていいよ? アシュトは二人きりの時はすっごく甘やかしてくれるし、頭なんかも撫でてくれる。仕事の邪魔しても怒らないし、一緒に並んでお茶飲んだりお菓子食べたりしてさ、すーっごく楽しいの」

 おい、俺を辱めるのが祝いの言葉なのか?
 恥ずかしくて俯く俺……エルミナのやつ、覚えてろ。

「だからさ、あんたも……思いっきり甘えなさいよ」
「エルミナ……」
「それで、旦那自慢しましょ! 昔よくやったよね? もし結婚したら旦那にあーしてもらいたい、こーしてもらいたいって話したこと! 私はけっこう達成したから、あんたも頑張りなさいよ!」
「あはは、懐かしいね。そうだね……あんたに自慢できるくらい、甘えてやるわ!」
「うん。それと……結婚おめでとう! おしまい!」

 強引に切り上げ、エルミナは席に戻った。
 幼馴染同士、なんとも「らしい」祝辞だった。

 こうして、メージュとランスローの結婚式は終わった。
 懇親会も盛り上がり、クララベルが作った巨大ケーキが振舞われた。
 俺も、ドラゴンロード王国の貴族たちに挨拶したり大変だったけど……すごくいい一日だった。
 
 メージュとランスロー、どうかお幸せに!
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