大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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魔法学園の講師

第504話、子猫と歓迎会

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 ルミナは、子猫と親猫の診察を終えた。
 傍にはミュア、そして補佐としてエンジュが付いている。魔獣解体の知識はあるエンジュだが、動物の病気については専門外。それでも、念のため傍にいたのだ。
 エルミナたちは成り行きを見守っている。
 そして、子猫を柔らかなタオル包み、親猫をそっと撫でる。親猫は子猫の傍で丸くなっていた。

「みゃう。子猫は栄養失調だ。親猫も同じだけど、子猫の方が体力がないから危険だ。親猫、栄養失調でお乳が出なくなってる……まず、親猫に栄養あるもの食べさせて、お乳を出るようにしないと。子猫の方は、ぬるめにしたミルク……ほんとは親猫のお乳が一番だけど仕方ない。牛の乳で代用する」

 ここまで言うと、壁際に控えていたシルメリアが準備を始めた。
 親猫には魚の身をほぐし混ぜたコメ、子猫には温めたミルクを少量だ。
 ルミナは、エンジュに言う。

「たぶん、自分じゃ飲めない。スポイトあるか?」
「村長の実験用ならあるで。新しいのは……これやな」

 エンジュは、アシュトの実験道具から新品のスポイトを取り出し、ミルクを吸う。
 そして、子猫をそっと抱き上げようとした。

「にゃあ。わたしがやる!」
「だめ。あたいがやる。あたいがこの子たちの保護者だからな」
「にゃうー! わたしが見つけたからわたしが保護者なの!」
「ふん。お前じゃむりだ。いざという時には獣医のあたいが見れるしな」
「関係ないもん!」

 ミュアとルミナは睨み合う。
 すると、ローレライが近づきそっと子猫を抱いた。

「こら。二人とも静かになさい。子猫が怯えちゃうでしょう?」
「にゃあ。ルミナがー」
「みゃう。お前がわるい」
「にゃにぃ!? ふしゃーっ!!」
「しゃぁぁぁぁっ!!」

 すると、ミュアをクララベルが、ルミナをエルミナが抱きしめた。
 
「はいそこまで! 姉さま、ミルクお願いね」
「ええ」
「にゃぁぁ!」
「ルミナ、落ち着きなさいって。ほれほれ~」
「みゃぅぅぅ!? 触るなーっ!!」

 ローレライが子猫に少しずつミルクを与える。
 その間、エンジュとシルメリアは親猫の元へ。

「なるほど……あそこには捨て猫が多いのですか?」
『にゃぁご。ごろごろ……うにゃあ』
「そうですか……なんとかできればいいのですが」
『なぁ~お』
「……猫とお喋りできるのええなぁ」

 シルメリアが聞いた内容はこうだ。
 魔法学園には『従魔法』という、魔獣や動物と契約する魔法の研究が多く行われている。その中で、小動物を使った実験も行われており、この猫はそこで飼われていた動物らしい。
 施設を脱走し、半分野良となっていたところでミュアに拾われたのだとか。

「なんや。実験とは嫌な響きやなぁ……」
「実験といっても、そんな非道な実験じゃないみたい。ちゃんと餌ももらえるし、専用の遊び場もある。でも……やっぱり自由に憧れて、施設を出る猫がいるみたいよ」
「ほーん……自由、わかるわー」

 エンジュはウンウン頷く。
 シルメリアは親猫を撫で、ミルクのおかわりを注ぐ。

「まずは、ゆっくり休んで体調を整えてください。あなたの子供たちにミルクが与えるのがあなたの仕事です。子供たちはしっかり面倒を見ますので、ご安心ください」
『ごろごろごろ』
「喉めっちゃ鳴っとる……かわええ」

 エンジュは親猫を撫でた。
 子猫の方も落ち着き、ミルクを飲むと寝てしまったようだ。
 シルメリアは、ポツリと言った。

「猫……この村なら、のんびり過ごせそうですね」

 ◇◇◇◇◇◇

 魔法学園の地下には、お酒を飲める大人の店がある。
 そのうち一軒を貸し切り、俺はジョッキを持っていた。
 
「えー、二ヶ月ですが、よろしくお願いいたします」

 集まった教師は約二十人。
 女性が多いのはジーニアス先生がいるからだろう……俺の挨拶、聞いてないよね。まぁいいさ。うんうん……ごめん、ちょっと悲しい。
 すると、いわおみたいな顔の先生が俺の肩をバシッと叩く。

「さぁて!! 堅苦しいのはここまでにして、みんな飲もうぜ!! かんぱーい!!」
「「「「「かんぱーい!!」」」」」

 乾杯もそこそこに、飲み会が始まった。
 さっそく、女性教師の何人かがジーニアス先生の元へ。

「ジーニアス先生、これどうぞ」
「あ、こっちのお肉もどうぞ♪」
「エールのおかわりどうですか?」
「はは。ありがとうございます」

 イケメンだ……あの笑顔、反則だろ。

「イケメンだ……あの笑顔、反則だろ」
「え」
「いいよなぁ。オレ、同僚の女性教師にお酌なんてされたことないぜ」
「あ、はい」

 乾杯の音頭をとった巌の先生だ。
 巌の先生はエールジョッキを掲げ、ニカッと笑う。

「挨拶が送れたな。オレは魔法生物教師のイワオだ。イワオ先生でいいぜ」
「ぶっ……は、はい。イワオ先生」

 心の中で『巌の先生』って呼んでた。まさか本名もイワオだとは。
 笑いを誤魔化すように、俺はイワオ先生に聞く。

「魔法生物とは……?」
「ああ、大型魔獣や小型魔獣の生態。魔法使いの使い魔に関する講義を担当してる。教師も受講できるから、気になったら参加してくれ」
「はい。面白そうです」
「がっはっは。それと、アシュト先生の評判も聞いてるぜぇ~?」

 イワオ先生は店員に新しいエールを注文。女性教師に囲まれてるジーニアス先生を見て、逆に男性教師に囲まれているシエラ様……シエラ先生を見た。
 
「あのシエラ先生とジーニアス先生の推薦だってなぁ? 臨時講師みてぇだけど、評判いいぜ? 薬学のアシュト先生の授業わかりやすいってよ」
「そ、それはどうも……」
「ってか、エストレイヤ家の次男だってなぁ。あの『紅蓮将軍』アイゼン様の息子で、『雷帝』リュドガ将軍の次男が魔法学園の講師ってのはすげぇことだ。さらに、『氷姫』シェリーさんも短期留学とは」
「あはは。そうですね」
「ま、わかんねぇことあったらオレに相談しな。こう見えてオレは『魔法学園のおやっさん』って呼ばれてるくらい頼られてるからよ!」
「ありがとうございます。その時はぜひ」
「おう! お、酒が切れてやがる。おーい姉ちゃん! おかわりだー!」

 イワオ先生、いい人そうだ。
 しばらくイワオ先生と飲んでいると、ジーニアス先生とシエラ先生が俺の左右に座った。
 イワオ先生、さりげなくシエラ先生の隣に座ってやがる……視線は胸の谷間に釘付けだよ。絶対にシエラ先生気付いてるけど気にしていない。

「楽しんでますか、アシュト先生」
「はい。いやぁ、歓迎会って初めてで……いつもは開く側ですから」
「うふふ♪ アシュト先生、こういう職場の飲み会も楽しまないとね。今度は私が個人的にお誘いしちゃおうかしら?」
「え……あ、あはは。よ、よろしくお願いいたします」

 シエラ先生、色っぽいわ……男性教師がトリコになるはずだよ。
 ジーニアス先生も言う。

「シエラ先生。冗談はほどほどに……アシュト先生、わからないことがあったら私に聞いてください。力になりましょう」
「あ、ありがとうございます」
「いえ。それと、たまにはお酒に付き合ってくださいね」
「はい。よろしくお願いいたします」
「む~っ! ジーニアス、アシュト先生を誘惑しちゃダメよ!」
「先生、ですよ。ムルシエラゴ」
「むぅぅ! いつからこんな小生意気になっちゃったのかしら!」

 シエラ先生もジーニアス先生も優しいな。
 俺は歓迎会をそっても楽しむことができた……また明日から頑張ろう。
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