大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

文字の大きさ
324 / 474
日常編⑱

第517話、ココロにネタばらし

しおりを挟む
「えっと……ここはオーベルシュタイン領土で、先生がここに住み始めたら様々な種族がやってきて、大きな村になった。それで先生はここに薬院を構えて生活してる……ですか?」
「そうなんだ……ごめん、黙ってて」

 ココロが村にきて数日。
 ココロは学園を卒業し、本格的に村に住み始めた。ラビリンさんや友達と涙の別れをして、また会うことを約束してた……ああいうの、俺弱いんだよね。
 本格的に住むと、やはりいろいろ気になるようだ。

「あの、あんな大きなお風呂初めてです!」
「エルフ? 同族っぽいんですけど、あんな綺麗な髪色は……」
「わわ、ドワーフです! でも、なんか変な感じ……」
「オーガ族……あれ? あんな浅黒い肌でしたっけ?」
「と、図書館!? え!? これが!?」
「わぁ~……え? た、狸? えっと、こんな種族初めて見ました」

 と、こんな感じで驚いていた。
 だが、マンドレイクやアルラウネとはすっかり仲良し。フレキくんが使っていた小さな温室をそのまま使い、持ってきた薬草などを埋めて栽培を始めたりと、少しずつ生活にはなじんでいる。
 この辺りで、ここがエストレイヤ家の管理する辺境領地ではなく、未開の領地オーベルシュタインだとネタばらし。すると、ココロはポカンとしていた。

「せ、先生が言うなら間違いないでしょうけど……え、ホントなんですよね?」
「うん。ここはオーベルシュタインで間違いないよ」
「……はぁ」

 まだ受け入れられないのか、ポカンとしたままだ。
 とりあえず、少しずつ受け入れてもらおう。

「さて。ネタばらしも済んだし、今日はここまで」
「え、まだお昼前ですけど」
「基本的に、俺の指導は午前中でおしまい。午後は自習だよ」
「自習……」
「うん。今日の復習をするのもいいし、習った薬を造ってもいい。図書館で本を読んだり、買い物したり……休むのもよし、勉強するのもココロに任せる。ココロ、ここに来て数日だけど、村はちゃんと見た?」
「えっと……まだ図書館くらいしか」
「うん。じゃあ、せっかくだし村を案内しようか。一緒に行こう」
「い、いいんですか?」
「もちろん」

 急患が来たらシルメリアさんに呼んでもらうことにして、俺はココロに村の案内をすることにした。

 ◇◇◇◇◇◇

「ここがタヌスケ商店。村で一番大きな雑貨屋さんだね。大抵のものはここで揃うよ」
「なるほど。というか、大きい建物です……」

 タヌスケ商店を見上げるココロ。
 ちなみに、ベルゼ硬貨を持っていないので、ココロが持っていた金貨や銀貨などをベルゼ通貨に両替した。
 次に向かったのは、クララベルのお菓子屋さんだ。

「ここは『お菓子屋ブランシュネージュ』っていうカフェを兼ねたお菓子屋さんだよ。ここの店長のクララベルは、俺の奥さんの一人なんだ。今度紹介するよ」
「は、はい! お菓子……」
「カフェもあるからね。きっと楽しめるよ」

 ちなみに、増築してカフェスペースは広くなっている。従業員も増え、とても忙しそうだ。
 今日は村の案内なので寄らないけど、ココロは気に入ったようだ。
 次に向かったのは、ハイエルフたちの管理する果樹園。

「おおー! 果物がいっぱいです!」
「ここはハイエルフの果樹園。ブドウがメインで、村の名産の一つであるワインの加工場もあるんだ」
「なるほど! ワイン………………ん?」
「ん?」

 ココロは、ギギギギと首を俺に向けた。

「は、ハイ、エルフ?」
「あ。言ってなかった。そう、実は……村にいるエルフは全員、ハイエルフなんだ」
「ぶっふぉ!?」

 そういえば、エルフにとってハイエルフは伝説みたいな存在だっけ。シャヘル先生ですらエルミナに跪いていたし……ココロ、ガチガチに震え出した。

「えっと、ハイエルフと言っても普通の連中と変わんないぞ? みんないい奴で」
「あ、アシュトみっけ! ココロも、なにしてんのー?」
「ひっ!? ははは、ハイエルフさまままままままま!?」

 エルミナだった。
 抱えている大きな籠にはオレンジがたくさん詰まっている。エルミナ、酒の研究のために農園を辞めたが、たまにメージュに頼まれて手伝っている。
 エルミナは首を傾げた。

「この子、どうしたの?」
「いや、お前がハイエルフだって知って驚いちゃってさ……」
「あー……変なの。ハイエルフなんてどこにでもいるじゃない」
「いや、オーベルシュタインの外では希少種族で、エルフにとっては伝説みたいな存在なんだよ」
「ふーん」

 ふーん、って……それだけかい。
 エルミナは、オレンジを一個掴み、俺に渡す。

「ま、そのうち慣れるでしょ。じゃ、忙しいからバイバーイ」
「お、おお」

 エルミナは行ってしまった。
 さらに、他のハイエルフたちもフツーに素通りしていく。ココロはそれにもビビり、仕方ないので早めにここから離れることにした。
 ま、少しずつ慣れるしかないだろう。
 
 ◇◇◇◇◇◇

「はぁ……すごいところです」
「でしょ? 自慢の村だ」

 ココロを案内し、村の東屋で休憩した。
 ミュディの製糸場に行ったり、牧場でキングシープをモフモフしたり、竜騎士たちの訓練を見学したりと、ココロは驚きつつも楽しんでいたと思う。
 俺は、ココロの頭を撫でる。

「わっ」
「あ、ごめん。つい……」
「い、いえ。その……気持ちいいです」

 顔が赤くなっている。ちょっと可愛いな。
 俺は、真面目に言う。

「最後に、俺の仕事」
「え?」
「俺の仕事は、この村で出た病人や怪我人の治療なんだ」
「あ……」
「ココロ、お前にも手伝ってもらうぞ。勉強も大事だけど、ここでは実地指導もあるからね」
「……はい!!」

 ココロは気合を入れなおした。
 まるで、村に来たばかりのフレキくんみたいだ。

「さて、夕飯はうちで食べて行きなよ。シルメリアさんの料理は絶品だぞ」
「はい! 楽しみです!」

 薬師見習のココロ。
 彼女はきっと、いい薬師になれる。俺はそう思った。
しおりを挟む
感想 1,145

あなたにおすすめの小説

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。