大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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日常編⑱

第524話、ミュディとココロ

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 ココロは、一人で温室の手入れをしていた。 
 今日は休日。薬院での指導はお休みなので、のんびり一人で温室の手入れをしていた。
 土、薬草いじりは嫌いではない。
 森の民エルフであるココロは、幼い頃から自然と共にあった。

「あ、パラライ草に虫食い……」

 麻痺薬の元になるパラライ草に虫食いが。
 虫食い部分を丁寧に取り除き、霧吹きで水をかけて 布で拭く。
 エルフの村から持ってきた種、魔法学園で育てていた薬草もここに植えた。
 元はフレキが使っていた温室で、土の手入れも行き届いていた。おかげで、植えた全ての植物が順調に育っている。
 ココロは、汗を拭う。

「……ストン草にルコの根、ピリリの実もそろそろ収穫できそう。タヌスケさんのところで買ってくれるかな」
 
 ココロは、薬草を育て収穫。それらを売って生計を立てていた。
 幼い頃、流行り病で両親が死別。両親が残した書物を読み、薬草関係の知識を得た。
 魔法学園に入ったのは、薬師と医師の資格を取るため。
 必死で勉強し、特待生として入学。三年間勉強して卒業資格は得たが、薬師と医師の試験には落ちてしまった。 
 薬師や医師に直接学べばいいのだが……ココロにはその伝手がない。
 そこに現れたのが、臨時講師のアシュトだった。
 
「アシュト先生……」

 名門エストレイヤ家の次男。
 十六歳で薬師と医師の資格を取り、教員免許も取得。他にも、様々な博士号を取得し、数々の論文を書いた、軍門エストレイヤ家の異端にして天才。それがココロや一般生徒が知るアシュトだった。
 どんな人なのか。初めて見た印象は……。

『えー、初めまして』
『もきゅぅ~』
『あ、ちょっとすみません。こらモフ助、前に出るなって……あはは』
『きゅぅぅ』

 優し気な、どこにでもいそうな青年だった。
 ちょっと困ったような笑みが印象だった。
 だが、知識は本物だった。授業はわかりやすく、どんな質問も的確に答えてくれる。さらに、本にはない深い知識でみんなを驚かせた。
 この人しかいない。ココロはそう考えた。
 そして、弟子入り。

「まさか、オーベルシュタインの領主だったなんて……」
『もきゅ』
「あ、ニコニコアザラシ」

 ココロは、温室に迷い込んだニコニコアザラシを抱っこする。
 この白いモフモフ、オーベルシュタインの固有種なのだ。
 大人のニコニコアザラシを見て驚いた。それに、一軒家ほどの羊、全身が帯電している巨牛、喋るムカデに木の巨人……ココロは何度か気を失いそうになった。

「でも、これはチャンスかも」

 アシュトから学べば、きっと薬師に、医師になれる。
 ココロは、アシュトから学べることに感謝していた。

 ◇◇◇◇◇◇

 温室の手入れを終え、自宅に戻ろうと歩いていると。

「あ、ココロちゃん」
「ミュディさん。こんにちは」

 アシュトの妻、ミュディと出会った。
 ミュディは、可愛らしい手提げ袋を持っている。

「ココロちゃん、どこか行くの?」
「えっと。家に行って着替えようと」
「お着換え?」
「はい。今日はお休みですので、温室の手入れをしたので」
「あ、じゃあお風呂行かない?」
「お風呂……ですか?」
「うん。わたしも今日はお休みでね、一日の~~~んびりしようと思って」
「の~~~んびり、ですか」
「そう。ココロちゃん、せっかくだし一緒にどう?」
「…………」

 悪くないかもしれない。
 ミュディ。アシュトの幼馴染で妻。アシュトの初恋の相手。相思相愛。シェリーから聞いたのは、アシュトとミュディは互いに愛し合っている存在と言うことだ。
 
「行きます! その、お風呂入りたいです」
「うん! じゃあ、行こう」

 こうして、ココロはミュディと一緒に休日を満喫することにした。

 ◇◇◇◇◇◇

 さっそく、二人は温泉へ。
 ココロは女湯へ行こうとしたが、ミュディに誘われ『村長湯』へ。

「あの、いいんですか?」
「大丈夫。わたしが一緒だから」
「はい……ありがとうございます」

 初めての村長湯へ。
 広い脱衣所。広い休憩所だ。さすが村長専用……そう思った。
 脱衣所で服を脱ぐココロ。すると、ミュディが服を脱ぐ瞬間を見た。

「わぁ……」
「ん、しょっと」

 ミュディは、色っぽかった。
 ココロとは違い、女性らしい身体つきだ。
 胸は大きく、腰はくびれ、足は細い。
 ココロも、ないわけではない。だが、ミュディより小さかった。

「さ、ココロちゃん。身体を洗って湯船にゆ~~~っくり浸かろうね」
「はい!」

 だが、ココロは知らない。
 ミュディは村で一番の長湯……まだミュディに遠慮のあるココロは、先に湯船から上がることもできず、のぼせる寸前までミュディに付き合った。

 ◇◇◇◇◇◇

 風呂から上がり、二人は果実水を飲む。

「ん~~~美味しいねぇ」
「ふぁ、ふぁぃぃ……」

 のぼせかけているココロは、果実水を一気に飲み干した。
 ミュディと一緒に風呂に入るのは止めよう。そう思うココロだった。
 
「ココロちゃん、村には慣れた?」
「ふぇ……あ、はい。生活には慣れてきました。いろんな種族の方が良くしてくれますし」

 ココロは一人暮らしだ。
 薬院近くにある家を借り、暮らしている。
 一人暮らしは慣れていた。家事や料理も一通りこなせるので、最初だけ銀猫族のサポートを受けた。 
 
「本当に驚きました。ここ、希少種族しかいませんし」
「あはは。わたしも最初は驚いたよ。ふふ、ここじゃあココロちゃんが希少種族だね」
「え」
「だって、エルフってココロちゃんしかいないし」
「…………」

 確かにそうだった。
 ミュディは、ココロの頭を撫でる。

「ココロちゃん。わからないことや助けて欲しいことがあったら、遠慮なく言ってね?」
「は、はい。ありがとうございます」
「そうだ。これから『ブランシュネージュ』でお茶しない? 美味しいケーキがあるよ」
「いいですね! あ、でも……まだお金が」
「そっか。お給料まだだもんね。とりあえず、ここはわたしに任せて!」
「いいんですか?……って、お給料?」
「え? 知らないの? 薬院で働いた分のお給料、もうすぐでしょ?」
「そ、そうなんですか!?」

 アシュトの弟子だが、薬院で働いているのだ。給料は当然出る。
 アシュトの説明不足もある。だが、薬草を売らずともお金がもらえることに、ココロは衝撃を受けた。
 
「ま、その話はアシュトからね。今は美味しいケーキを食べに行こう!」
「は、はい!」

 ミュディとココロは、お菓子屋ブランシュネージュで、美味しいケーキをたくさん食べた。
 ココロにとって、緑龍の村はとても住みやすい理想の地だったとさ。
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