大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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獣王国の家庭教師

第531話、いざ獣王国サファリへ

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話し合い・・・・の結果、私が同行することになりました」
「そ、そう」

 翌朝。
 シルメリアさんが俺の前で一礼。
 どんな話し合いがあったのか知らないが、平和的に解決したらしい。
 とにかく、これで獣王国サファリへ行くメンバーが決まった。
 俺、ミュアちゃん、シルメリアさん。そして護衛の竜騎士二名。
 さて……一応、ルミナには言わないとな。
 俺はシルメリアさんと別れ、すでに朝食を終えて暖炉の前でのんびりしているルミナに言う。

「ルミナ」
「みゃう?……」
「っと、よしよし」
「ごろごろ……なにか用か?」

 ルミナは、俺を見るなり抱きついて甘えてきた。
 なので、ネコミミを揉むように撫でながら言う。

「ルミナ。もう少ししたら、獣王国サファリってところに行かなくちゃならないんだ」
「みゃあ」
「今回、お前は連れて行かないから。いいな、ついて来ちゃダメだぞ」
「…………」

 あらら、ルミナがムスッとしてる。
 でも、これにはちゃんとわけがある。

「ごめんな。今回行くところは、今までのところと違って、決められたルールは守らなきゃいけないんだ。もしルールを破ったら、とても危ないかもしれない」
「みゃう……」

 今回、他国に家庭教師として向かう。
 従者は四名まで。二名が護衛、二名が世話係として同行を許可されている。ただ付いてきたという理由だけでルミナを連れて行くのはまずい。
 不法侵入になるかもしれないし、捕まる可能性だってあるしな。
 ルミナに説明すると、ネコミミがシュンと萎れた。

「……わかった。でも、すぐに帰って来いよ」
「大丈夫。何日かは泊まると思うけど、基本的に家から転移魔法で通うから」
「みゃあ」

 ジーニアス先生が、過去に獣王国サファリに設置した転移刻印を、俺にも使用できるようにしてくれたんだ。なので、移動は一瞬で行ける。数日は滞在し、できるだけ家から通うようにする。
 授業時間はバラつきがあるし、俺の受け持ち時間は数時間。薬院で仕事をしながら授業もできるだろう。
 ここまで説明すると、ルミナは頭を胸に擦りつける。

「みゃう。その代わり、いっぱい撫でろ」
「はいはい。よしよし、ごーろごろ」
「ごろごろ……みゃあ」

 あとは、出発までしっかり勉強しないとな。
 俺の担当は獣王国サファリの歴史。図書館にある本だけじゃなく、ビッグバロッグ王国にある歴史書や、シャヘル先生が持っている本も借りて読もう。
 エストレイヤ家の名を借りてる以上、恥をかくわけにはいかない。

 ◇◇◇◇◇◇

 出発当日。
 俺、ミュアちゃん、シルメリアさん、グリフレッド、ユーウェインの五人は、家の前でミュディたちに見送りされていた。

「アシュト、気を付けてね」
「ああ。今日はあっちに泊まると思う。留守はよろしくな」
「アシュト、お土産はお酒ね!!」
「エルミナはブレないな……わかったよ」

 ミュディはともかく、エルミナは相変わらずだ。
 俺は、少しオドオドしているココロに話しかける。

「ココロ。留守の間、薬院は任せるぞ」
「は、はい……で、でも、わたしみたいな半人前で……」
「大丈夫。ここ数日、付きっきりで見てたけど、ココロの診断や治療は正確だ。もちろん、まだ甘いところもある。慢心だけはしないように」
「は、はい!」
「大丈夫。いざとなったらあたしがお兄ちゃん呼ぶからさ」

 シェリーが杖をくるっと回転させながら言う。
 一応、転移魔法はシェリーも使えるようにした。もし何かあれば、シェリーが獣王国サファリまで転移し、俺に連絡する手はずになっている。
 クララベルは、シルメリアさんに言った。

「珍しい食材とか、お菓子に仕えそうな香辛料見つけたらお願いね!」
「かしこまりました」
「香辛料?」

 俺が首を傾げると、ローレライが言う。

「獣王国サファリは、香辛料が有名なの。ドラゴンロード王国も輸入してるわ」
「へぇ……」
「にゃあ。楽しみー」
「みゃう……」

 見送りに来たルミナは、楽しそうなミュアちゃんを見てそっぽ向く。
 一応、魔法王国ではルミナに付きっきりだったしな。今回くらい、しっかり留守番してほしい。
 ミュアちゃんは、ルミナやライラちゃんに言う。

「おみやげ、いっぱい買ってくるね」
「わぅん。楽しみにしてる」
「みゃう。まぁ、すきにしろ」

 可愛いねぇ。癒される……うんうん。
 と、挨拶はこんなものか。
 俺は杖を取り出し、シルメリアさんたちを近くに呼ぶ。

「それじゃあ、行ってくる───……転移」

 転移魔法を発動させ、獣王国サファリへと飛んだ。

 ◇◇◇◇◇◇

 転移したのは───……蒸し暑い森の中だった。
 
「な、なんだここ?」
「にゃうー……あつい」

 ミュアちゃんがさっそくダレてしまった。
 グリフレッドは周囲を見回し、ユーウェインが頷いて言う。

「アシュト様。少し偵察していますのでお待ちください」
「は、はい」

 すると、ユーウェインは大きなカバンを開ける。
 何が入っているのかと思いきや……なんと、小さなドラゴンだった。
 
「ど、ドラゴンの……赤ちゃん?」
「いえ、これで成体です。私とグリフレッドは竜騎士の中でも特別な『竜戦士』なのです」
「竜戦士……?」

 聞いたことないな。
 グリフレッドも大きなカバンを持っていた。もしかしてこの中にもドラゴンが?
 ミュアちゃんは、小さなドラゴンをじーっと見ていた。

「にゃあ。かわいいー」
「ふふ、ありがとう。だが、この『ウィングドラゴン』は可愛いだけじゃない」
『キュルルル……』

 すると、ウィングドラゴンは翼を広げ、ユーウェインが着ている鎧の背中部分にある取っ手を掴み飛んだ。
 そのままユーウェインは上昇……空を飛んでいる。
 グリフレッドは、解説する。

「竜騎士はドラゴンに騎乗して戦い、竜戦士はドラゴンと一つになり空を駆けます。最大の特徴は、竜戦士は小回りが利くので、対人戦に特化しているというところでしょうか」
「おおー……すごい」
「にゃあー!」

 ユーウェインは、数分で降りてきた。

「あちらが出口です。数分も歩けば出られましょう。それと、大きな国が見えます……間違いなく、獣王国サファリでしょう」
「なるほど。この転移魔法陣は、目立たないように設置されてたのか……」
「にゃあ。ご主人さま、早く行こう!」
「ああ」

 よし。蒸し暑い森を出て、獣王国サファリへ行こう!
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