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獣王国の家庭教師

第532話、砂漠の王国

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 森を出て、獣王国サファリへ向かう。
 目の前に大きな国が見えるので迷うことはない。というか……暑い。
 ジワジワした暑さではなく、ジリジリと焼かれるような暑さだ。汗を掻いているが、服を脱ぐと肌が焼けてしまう気がする。
 グリフレッドとユーウェインは涼しい顔をしていたが、ミュアちゃんは辛そうだった。

「にゃうー……」
「ミュアちゃん、大丈夫?」
「にゃあ。暑いー」
「ミュア。このマントをかぶりなさい」
「ありがとー!」

 シルメリアさんは荷物からマントを取り出し、ミュアちゃんに被せる。
 俺も、ミュディに頼んで作ってもらったマントを被った。一応、獣王国サファリに関して調べてある。避暑地でもあるが、生身の人間には住みにくい環境だと。 
 その理由の一つが、この気温である。
 日中の温度は非常に高く、肌を露出したままだと火傷を起こす可能性がある。
 オアシスがあるところでは、日光に強い樹が多く植えられ、日陰が多いのでまだ安心らしい。
 
「そういえば、オアシスがあるんだっけ……時間があったら寄ってみよう」

 歩くこと十分。
 獣王国サファリの巨大門へ到着した。
 いやー……並んでること。しかも、獣人や亜人がいっぱい。

「にゃあ! ご主人さま、ネコミミ!」
「ほんとだ。ほら、あっちにはウサ耳もいる。あっちにはクマ耳も」
「にゃうー……すごい」
「ミュア、騒がず静かにしてなさい」
「はーい」
 
 検問があるので、列に並ぶことにした。
 列に並び、気付いた。

「そういえば、みんなの着ている服……独特だな」

 全員、肌を一切露出してない。
 露出している人もいたが、露出しているのは全員、亜人系の人ばかりだ。体毛が濃かったり、蟲人だったり……やはり、生身の肌を持っている人は、皮膚を見せていない。
 俺は太陽を見上げる。

「この太陽じゃな……」
「ご主人さま。のど乾いた……」
「ん、水ね」

 水筒を取り出し、ミュアちゃんに飲ませる。
 ミュアちゃんは小さいし、早く休めるところに行きたい。
 というか、こんなに並ぶことになるとは考えていなかった。

「シルメリアさん、ミュアちゃんのこと、気にしててください」
「はい」
「グリフレッド、ユーウェインも、水分はしっかりと取ること。それと、ドラゴン……」
「大丈夫です。竜戦士の証を見せれば問題ありませんので」
「わかった」

 グリフレッドとユーウェインの背中に、小さいドラゴンが張り付いている状態だ。
 このまま入国できるのか心配だったが、どうやら問題ないようだ。
 それから、三十分ほど経過……ようやく、俺たちの検問になった。
 虎の獣人が門番なのか……かなり巨体で強そうだ。
 俺は、ビッグバロッグ王国エストレイヤ家の紋章印と、獣王国サファリの王印が押された羊皮紙を門番に渡す。

「獣王国の王族から要請があり参りました。ビッグバロッグ王国エストレイヤ家のアシュトと申します」
「こ、これは……まさか、ビッグバロッグ王国エストレイヤ家!? な、なぜここへ!?」
「え、いや。入国審査を……」
「最初にこれを見せれば、すぐに入国できたのですが……」
「え」

 というわけで……なんとか入国できました。

 ◇◇◇◇◇◇

 荷物の検査を受け、獣王国サファリへ入国できた。
 それから、検問所の一室に呼ばれ、身元の確認を改めて行う。
 俺がエストレイヤ家のアシュトだと証明されると、今後の予定について言われた。

「申し訳ございません。国王との謁見が三日後となっていまして……家庭教師が始まるのは、五日後からとなります」
「え、そうなんですか?」
「はい。申し訳ございません」

 一応、エストレイヤ家から今日の午前中に到着すると連絡はしてあるはずだ。
 予定がずれたのか。まぁ仕方ない。
 俺は、少しだけ嬉しかった。

「じゃあ、王都を観光します。どこかいい宿があれば教えていただけないでしょうか?」

 いくつか宿を紹介してもらい、一番いい宿へ向かうことにした。
 三日後に、迎えを寄越してくれるので、それまでは観光しよう。
 馬車も用意してくれたが、せっかくなので歩いて行くことにした。
 地図ももらったし、お金はエストレイヤ家からたんまりもらったしな。心配はない。
 ようやく検問所から解放され、俺たちは獣王国サファリへ本格的に入った。
 俺は、ミュアちゃんたちに言う。

「聞いてたと思うけど、謁見が三日後になった。なので……今日と明日、のんびり町を観光しよう!」
「にゃったぁー!」
「かしこまりました。ご主人様」
「護衛はお任せください」
「危険は我らが排除します」

 ここで、ミュアちゃんのお腹が鳴った。

「にゃうっ……」
「あはは。お腹減ったよね。さっそくサファリの名物でも食べに行こうか」
「にゃあ! ご主人さま、行こっ!」
「うん。あ、迷子にならないように、手を繋ごうね」
「にゃう」
「ミュア。ご主人様に迷惑をかけないように」
「それと、シルメリアさん。ここでは同行者としてふるまうこと。だから、食事は一緒にね。もちろん、グリフレッドとユーウェインも」
「「かしこまりました」」
「……わかりました」

 グリフレッド、ユーウェイン、シルメリアさんは頭を下げた。
 ミュアちゃんは、ワクワクしているのか俺の手を引っ張る。

「ご主人さま、はやくー!」
「はいはい。じゃあ、獣王国サファリ、楽しもうか!」

 こうして、俺たちは獣王国サファリを観光することにした。
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