大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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獣王国の家庭教師

第533話、獣王国サファリの観光(前編)

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 さっそく、獣王国サファリの中心街へ続く道を歩いていた。
 いやはや……獣人や亜人の国とは知っていたが、道行く人のほとんどがそうだ。
 多いのは獣人。その次に蟲人や翼人といった亜人。そしてたまに見る人間だ。
 
「ご主人さま、いい匂いするー」
「ほんとだ。これは……お、露店だね」

 というか、露店多すぎだろ。
 俺たちが歩いている道の横幅はかなり広い。その両サイドに隙間なく並ぶように、いろいろな露店が並んでいた。建物もほとんどが商店。さらに、道行く人たちも商人なのか、大きな四足歩行の動物に荷物を引かせたり、大きなカバンを背負っている熊人などがよく見られる。
 俺、ミュアちゃんは手を繋ぎ、シルメリアさんはミュアちゃんの隣、グリフレッドとユーウェインはその後ろをぴったり付いて歩いていた。

「アシュト様、通行人にお気を付けください」
「ん、わかった。それと……グリフレッド、ユーウェイン」
「「はっ」」
「……あのさ、もう少しだけ普通に接してくれ。できれば、他の騎士団と喋ってる時みたいに、砕けた感じで」
「ですが……」
「さすがに、それは……」
「大丈夫。ランスローには何も言わないからさ。せっかく観光してるんだし、もう少し友達っぽく」
「「…………」」

 二人は顔を見合わせ苦笑。そして、小さく息を吐いた。
 そして、今度は柔らかな笑みを浮かべる。

「そこまで言うなら。そうしよう」
「だな。へへ、実はこっちのが楽なんだよな」

 グリフレッドが頷き、ユーウェインはおどけた。
 うんうん。自然な感じになったな。
 ユーウェインは、俺の肩をポンと叩く。

「じゃ、まずはメシにしようぜ旦那。小さいネコちゃんも限界みたいだ」
「にゃあー」
「シルメリア嬢。荷物をお持ちしましょう」
「ありがとうございます。では」

 ユーウェインはミュアちゃんの頭を撫で、グリフレッドはさりげなくシルメリアさんの荷物を持っていた。
 なんというか、一気に仲間っぽくなった。
 俺は、串焼きを売っている露店を見ながら言った。

「じゃあ、獣王国サファリの露店を楽しもうか!」

 ◇◇◇◇◇◇

 五人で、たくさんの露店巡りをした。
 串焼き屋では大量の串焼きを食べ、サボテンジュースとかいう甘い蜜のドリンクを飲み、香辛料の店がたくさんあったので、シルメリアさんは気になる香辛料をいっぱい買った。
 その後、腹ごなしの散歩をしながら、獣王国サファリの展望台にやってきた。

「おお……あれがオアシスか」
「にゃあー!」
「これは、素晴らしいですね……」
「おぉ~、初めて見たぜ。なぁグリフレッド」
「ああ。湖、ではないのだな」

 展望台から見下ろすように、大オアシスが見えた。
 太陽の光でキラキラ輝いている。まるで海のようだが、海は濃い青色に対し、こちらのオアシスはキラキラと澄んだ水色だ。
 展望台の下を見ると、大きく広い砂浜が見えた。
 そこには、日陰になるように樹が植えられ、たくさんの観光客がミズギを着て寝そべっている。

「そういえばここ、リゾート王国でもあったんだよな」

 すると、俺の背後でグリフレッドとユーウェインが頷いた。
 
「アシュト様。ここで一つ、姫様からのサプライズを」
「え?」
「ご案内します。おいグリフレッド、地図」
「ああ、待て」

 グリフレッドが地図を取り出し、キョロキョロしていた。
 俺、ミュアちゃん、シルメリアさんが首を傾げ、グリフレッドが歩きだす。
 ユーウェインは、俺たちの背を押すように言った。

「お、おい?」
「ふふふ。旦那、旦那は愛されてるってことでさぁ」
「は? 意味わかんないけど」
「まぁまぁ。ささ、ネコちゃんもそろそろ疲れただろ?」
「にゃあー」
「ミュア。しっかり歩きなさい」

 シルメリアさんに手を引かれ、ミュアちゃんは歩きだす。
 それから、五分ほど歩き……ようやく到着した。

「……ここか」
「ああ。見ろ、ドラゴンロード王国の紋章だ。へへへ、到着だ」

 ユーウェインは、目の前にあるデカい建物を指して言う。

「こちらが本日のお宿。ドラゴンロード王族専用の別荘となります」
「え……」

 目の前にあるデカい建物には、ドラゴンロード王国の紋章が刻まれていた。
 オアシス沿いにある。木に囲まれた煉瓦造りの建物だ。すぐそこには大オアシスがある。さらに、別荘の傍にも小さなオアシスがあり、泳げるように整備されていた。
 グリフレッドは、ようやくネタばらしする。

「実は、ローレライ様から『念のため』用意していたのです。ガーランド王に掛け合い、獣王国サファリにある王族専用の別荘を使用できるように、と」
「なんと……ローレライが」
「はい。さすがに、謁見が三日後になるとは予想しておりませんでしたが、『いつでも使えるようにしておくので、もし使うことになったらサプライズとしてアシュト様を驚かせるように』と」
「やられたな……」

 ありがとう、ローレライ。
 ローレライが悪戯っぽく微笑むのが見えた気がした。

「にゃあ。眠いー」
「おっと。ではご案内いたします」

 ユーウェインに案内され中へ。
 中は、なんというか……まさに『別荘』って感じの造りだった。
 広いリビング、高級そうな家具、通気性のいい藁で編んだ椅子が揺れていた。さらに、窓から外を見ると、大オアシスが一望できる。
 シルメリアさんはキッチンへ。料理人がいるのかと思ったが、使用人は誰もいない……たぶん、ローレライが『必要ない』って言ったんだろうな。シルメリアさんがいるから。
 好きに使っていいと言うので、遠慮しないことにした。
 ミュアちゃんはお腹いっぱいになって眠くなったようなので、グリフレッドが部屋に抱っこで連れて行った。そのままベッドで丸くなり、お昼寝を始めたようだ。
 シルメリアさんは、さっそくお茶を淹れてくれた。

「どうぞ」
「ありがとう。シルメリアさんも、ゆっくりして」
「はい。では、失礼します」

 シルメリアさんは、俺の隣に座る。
 フカフカしたソファではなく、藁を編んだ硬い椅子だ。だが、不思議と座り心地がよく、リラックスできる。
 グリフレッドとユーウェインも座り、しばらく無言でお茶を飲んだ。

「なぁ、夕飯どうする?」

 俺が言うと、グリフレッドがメモを見ながら言う。

「近くに、美味い飲食店街があるそうです。ミュア嬢が起きたら行きましょうか?」
「お、いいね。せっかくだし、みんなでお酒飲むか」
「さっすが旦那。わかってますな!」
「あはは。でも、ミュアちゃんいるから少しだけな」

 ユーウェイン。さすがに調子に乗りすぎたのか、グリフレッドに小突かれた。
 でも、俺としてはこっちのが親しみやすい。
 俺たちは、他愛ない話をしながら、のんびりとお茶を啜っていた。
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