大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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獣王国の家庭教師

第534話、獣王国サファリの観光(後編)

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 翌日。
 ドラゴンロード王国の別荘はベッドも最高だった。
 というか、夜が寒すぎた。温度の差が激しいとは聞いていたが、まさか冬並みに冷えるとは。
 ミュアちゃんはシルメリアさんに抱き着いて眠り、俺は毛布を何枚も敷いて寝た。グリフレッドとユーウェインは特に何も感じていないのか、交代で起きて見張りしていたようだ。
 俺は、シルメリアさんが作った朝食をミュアちゃんと食べながら言う。

「今日はオアシスで泳ごう。ミュアちゃん、泳いだことないでしょ?」
「にゃあ。川で遊んだことはあるよ」

 ミュアちゃんは、焼き立てのパンを頬張りながら言う。
 ちなみに、グリフレッドとユーウェイン、シルメリアさんも席に座っている。いつもなら絶対に座らないで待機しているが、今回は特別だ。
 ユーウェインは、果実水を飲みながら言う。

「確か、オアシスの傍に『ミズギ屋』がありますぜ。そこで泳ぐ用の服に着替えるようです」
「ミズギか。まさか、ここにもあるとは」
 
 マーメイド族の陸の村にもあったな。ミズギ。
 俺は、グリフレッドとユーウェインに顔を向ける。

「お前たちもミズギに着替えて泳ごう。あ、二人とも泳げる?」
「一応、水中訓練は受けています。装備一式を担いで流れの速い対岸まで泳ぐ訓練とか」
「ありゃキツかったな。グリフレッド、溺れたことあったし」
「お前もだろう……」
「ま、まぁまぁ。とりあえず、泳げるんだな?」

 外を見ると、二人の小さなドラゴンが日光浴していた。
 朝から日差しがきつい。今日も晴れそうだ。
 すると、シルメリアさんが。

「……ご主人様。私もでしょうか?」
「え、うん。もちろん。ミュアちゃんも泳ぎたいよね?」
「にゃあ! 泳ぎたい!」
「わかりました。ですが……その、以前のように水中で呼吸できれば」
「あ、そっか」

 そういえば、以前はギーナに『水中で呼吸ができる魔法』をかけてもらったんだ。
 後で知ったことだが、水中で呼吸をする魔法は生活魔法に分類される。だが、生活魔法の中でもかなり高度で、魔法学園でも使えるのは数人しかいないとか。
 俺は、『緑龍の知識書ムルシエラゴ・グリモワール』を開く。


◇◇◇◇◇◇
生活魔法・上級
水中呼吸アクアブレス

これを使えば水中で呼吸できるよぉ。
魔力切れたら効果も切れるから気を付けてねぇ~
◇◇◇◇◇◇


 あったあった。
 これ、『海龍アマツミカボシ』様だよな?
 あのまんまるで優し気なお方。本当にありがとうございます。

「大丈夫。その魔法なら俺が使える」
「……(ほっ)」

 シルメリアさんは、胸をなでおろしていた。

 ◇◇◇◇◇◇

 朝食を終え、少し食休みをしてオアシスへ向かった。
 ユーウェインの言う通り、途中で大きな建物があり、そこにミズギが売っていたので購入。俺、グリフレッド、ユーウェインは適当なハーフパンツを買い、そこで着替えてオアシスへ。
 ミュアちゃんとシルメリアさんは、着替えて行くというので先に向かった。
 グリフレッドは、大きな荷物を抱えている。

「それ、なに?」
「これはパラソルとテーブル、そしてビーチチェアです」
「……?」
「日よけの傘、机、砂浜用の椅子です」
「ああなるほど」
 
 ユーウェインは傘を広げて砂浜に差し、椅子と机を並べた。
 シートを敷き、荷物もドサッと置く。
 
「旦那。日除けの木は植えられてますが、この国の日光を長時間浴びるのはよろしくありません。砂浜も焼けるように熱いんで、サンダルはオアシスに入る時以外は脱がないように」
「わかった。ありがとう」
「お待たせしました。ご主人様」

 と、ここでシルメリアさんとミュアちゃんが合流。

「~ピュゥ♪」
「…………」

 ユーウェインは口笛を吹き、グリフレッドがそっと目を反らす。
 シルメリアさんは、白を基調としたビキニだった。腰にはパレオを巻いている。スレンダーだが、出てるところは出て引っ込むところは引っ込んでいるシルメリアさんのスタイルは、あまりにも凶悪だった。
 というか、すごい。

「にゃあ。ご主人さまー」
「おっと。はは、よしよし」
「にゃうー」

 ミュアちゃんが抱き着いてきたので撫でる。
 ミュアちゃんは、白いワンピースだった。麦わら帽子をかぶり、可愛らしく尻尾を振っている。ちなみに、獣人の国なだけあり、ミズギも獣人用に尻尾穴が開いていた。
 よし。これで全員集合だな。

「よし。じゃあさっそく、水中で呼吸できる魔法をかけるよ。グリフレッドとユーウェインはどうする?」
「お願いします」
「オレも。水中で呼吸とかしたことねぇしな」

 俺は杖を取り出し、全員に魔法をかける。
 俺の魔力が尽きない限り効果は持続する……え、つまり無限じゃん。
 杖から全員にキラキラした粒子が降りかかる。これで魔法はかかったはず。

「よし。じゃあミュアちゃん、さっそく行こうか」
「荷物はオレが見ています。ユーウェイン、護衛を」
「あいよ。じゃあシルメリアさん、行きましょうか」
「はい」
 
 ユーウェインは、シルメリアさんに手を差し出す。だが、シルメリアさんはやんわり拒絶し、砂浜に向かってスタスタ歩きだした。
 俺はミュアちゃんと手を繋ぎ、オアシスへ。
 海とは違い、透き通った水だ。ミュアちゃんは少し怖がっている。

「大丈夫。見てて」
「にゃ……」

 ミュアちゃんから手を離し、オアシスへザブザブ入っていく。 
 そして、大きく息を吸って潜った……どうだ?

「……ぁ、あ、あああ! よし、呼吸できる」

 水面から顔を上げ、ミュアちゃんに言う。

「大丈夫。魔法はちゃんとかかってるよ。ミュアちゃん、おいで」
「にゃうー……わかった」

 俺は、ミュアちゃんと手を繋ぎ、ゆっくり水の中へ。 
 すると、いつの間にか潜っていたシルメリアさんが俺たちの前に浮上してきた。

「っぷはぁ……ふぅ、気持ちいいですね。魚がいれば完璧なのですが」
「にゃあ! シルメリア、気持ちよさそう」
「ふふ。ミュア、水の中はとても気持ちいいですよ。では」

 再び、シルメリアさんは潜っていった。
 ミュアちゃんは、俺の手を離すと思いきり潜っていく。
 なるほど……シルメリアさん、自分が楽しんでいるところを見せて、ミュアちゃんの恐怖を和らげようとしているのか。さすがだな。
 俺はユーウェインに顔を向けて頷き、思いきり水の中へ潜った。

「にゃあー! きもちいいー!」
「ふふ、行きますよ、ミュア」
「にゃうー!」

 お、シルメリアさんとミュアちゃんだ。  
 手を繋ぎ、仲良く泳いでいる。

「綺麗っスねぇ……」
「うん。まるで姉妹みたいだな」
「いやー……惚れそうっすわ」

 ユーウェイン。シルメリアさんに見惚れていた。
 確かに、あれは見惚れる。
 まるで、水の中で舞っているような。シルメリアさんは可憐に泳いでいた。
 俺は、ユーウェインの背を叩く。

「さて、俺たちも楽しもう。仕事前の休暇だと思ってさ!」
「ですね。へへ、部隊の連中に自慢できますわ」
「あはは。グリフレッドとも交換してやれよ?」
「了解っす」

 この日。俺たちは日が暮れるまで、オアシスを満喫した。
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