大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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日常編⑲

第550話、雨降る日のルミナ

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 ある日の朝。
 ルミナは、ニコニコアザラシのモフ助と一緒に、薬院の隅っこに置いてあるコタツから這い出した。
 
「みゃぁぁぅぅぅ……ごろごろ」
『きゅぅぅ~』

 大きな欠伸をすると、コタツに積み重なっている本の山がぐらぐら揺れる。
 ルミナは、本を倒さないようにコタツから這い出る。
 何気なく外を見ると。

「みゃ……雨」

 外は、大雨だった。
 麦や畑にとっては恵みの雨。だが、ブドウ畑にとって雨は天敵だ。雨が病気を運び、雨に濡れたブドウは病気にかかりやすくなる。だが、アシュトの魔力によって潤っている大地は病気に強い。
 でも、ハイエルフたちが雨対策をしているから大丈夫だ。
 ルミナは、ぼんやり外を眺め、お腹を押さえる。

「おなかへった」
『もきゅ』
「おまえは花の蜜。あとお水」

 モフ助は、薬院にある鉢植えへ向かい、花の蜜を吸っていた。
 それで満足したのか、そのまま床で二度寝を始める。
 ルミナは薬院を出て、使用人の家へ。
 キッチンへ向かうと、ルミナ用の朝食プレートがあった。
 
「みゃう……」

 まだ眠い。
 だが、ルミナは椅子に座り、ご飯を食べ始める。
 サラダ、ベーコン、卵料理、焼いた魚、おにぎりだ。ルミナは五分で食べ終え、プレートを流しに漬ける。
 薬院へ戻り、のんびりソファで読書をしていると。

「おはようございます!……あ」
「みゃあ。うるさい」
「うるさくないです! 朝の挨拶です!」
「……」

 エルフのココロだ。
 薬院にある小さな更衣室で着替えをして出てきた。
 そして、朝の日課である掃除を始める。

「ちょっと。あなたも手伝ってください!」
「…………」
『もきゅぅ』
「あ、あなたは大丈夫ですよ。って、無視しないでくださいー!」

 塵取りを咥えてきたモフ助を撫で、ルミナに文句を言う。
 だが、ルミナは無視。読書をつづける。
 それから、ココロと険悪なまま時間は流れ、アシュトがやってきた。

「おはよう。二人とも」
「先生、おはようございます!」
「みゃう」
「おっと。よしよし」
「ごろごろ……」

 ルミナは、アシュトに抱き着いて甘える。アシュトも、ルミナのネコミミを撫でた。
 アシュトはルミナを撫でながら言う。

「今日は雨か……こういう日は仕事休みのところが多いんだ。だから、今日は患者さんは来ないかも」
「ですね。じゃあ、何をしますか?」
「そうだな。包帯は前に洗ったし、薬の備蓄は昨日確認して補充したし……診療記録の整理でもしようか」
「はい!」
「みゃう。あたい、図書館行ってくる」

 ルミナは、図書館で借りた本を大きな防水カバンに入れた。
 十冊以上あるが、全て読んだのだ。
 そして、ルミナはアシュトに言う。

「おい、頼みがある」
「頼み? 珍しいな」
「みゃう。部屋がほしい」
「え」

 アシュトは驚いた。 
 ルミナが、部屋を欲しがるとは。
 今まで、何度か部屋をくれようとしたことはあった。だが、ルミナは拒否。薬院の隅っこにコタツを置き、その中で寝ているのだ。
 
「本、コタツに置いておくとグラグラする。小さい部屋でいい。本棚と勉強机ほしい」
「おお……! お前が部屋を欲しがるなんて! わかった。任せておけ!」
「みゃあ。小さい部屋だぞ。広かったり大きい部屋は嫌。本棚と勉強机とコタツが入ればいい」
「わ、わかった」

 数日後、ルミナの部屋が建てられた。
 場所は、薬院の隣。
 小さな物置小屋のような形で、中には本棚、勉強机、コタツしかない。それと、モフ助用の鉢植えが数個。
 粗末な作りというわけではないが、どうも物置にしか見えない。
 だが、ルミナは満足そうにしていた。

 ◇◇◇◇◇◇

 ルミナの部屋。
 今日もルミナは勉強をしていた。
 外はまたもや雨。どうも最近雨が多い。
 エルミナ曰く「雨季なのかもねー」と言っていた。 
 
「あ、本」

 ルミナは、借りっぱなしの本をカバンに入れ、図書館へ。
 本を返し、新しい本を借り、雨の中を歩いていた。
 ミュディからもらった雨合羽は大きく、防水カバンもあるので濡れはしない。
 
「……みゃう?」

 くんくん、くんくん。 
 どこからか、いい匂いがした。
 ルミナは、雨の中誘われるように匂いの方へ。
 匂いは、エルダードワーフの工房からだ。
 屋根の下で、エルダードワーフ数名が魚を焼いているようだ。さらに、机の上には酒瓶が並んでいる。
 エルダードワーフの一人、アウグストがルミナに気付いた。

「ん? おお、村長んとこの黒猫か。ほれ、こっちこい」
「みゃう」

 誘われるがまま向かう。
 石造りのかまどに網を敷き、そこで魚を焼いているようだ。
 ルミナは、魚を見ながら言う。

「魚、どうしたんだ?」
「ああ。この雨で川が氾濫してねぇか見に行ったらよ、大量の魚が打ち上げられてたんだ。捕まえて焼いて、雨音を聞きながら一杯やるのもいいと思ってな」
「ふーん……」
「ははは。一匹くれぇやるよ」
「!!」

 ルミナのネコミミがピーンと立つ。
 アウグストから魚をもらい、ルミナは食べ始める。
 さらに、エルダードワーフのたちの宴会も始まった。ルミナは、魚の骨をポリポリ食べながら、アウグストの隣に座っていたマディガンに聞く。

「お酒、美味しいのか?」
「おうとも。酒は命の水ってやつだ! がっはっは!」
「みゃう……」
 
 やっぱり、よくわからない。
 ルミナは、エルダードワーフたちの魚から骨をもらい、網の上でパリパリになるまで焼いた。そして、それらを袋に入れる。
 アウグストは、ルミナに聞いた。

「なんだそりゃ?」
「こうすると美味しいの」
「ほぉ~……」

 焼いた骨は、パリパリと香ばしくて美味しい。
 アウグストは試しに真似をして焼き、食べてみる。

「ほお、こりゃいけるの」
「じゃ、あたいは帰る。魚、ありがと」
「おう。たまには遊びに来いよ」
「ん」

 エルダードワーフたちの宴会は、夜まで続きそうだ。
 
 ◇◇◇◇◇◇

 部屋に戻ったルミナは、魚の骨焼きを食べながら読書をした。
 外は大雨。読書か昼寝くらいしかやることがない。
 すると、部屋のドアがノックされた。

「ルミナ、入るぞ」
「みゃう。なんか用?」
「いや、お茶でもどうだ? ずっと本読んでるだけじゃ……ん、魚の匂い?」
「骨焼き。食べるか?」
「へぇ~、魚の骨を焼いたやつか……これ、どこで?」
「エルダードワーフがくれた」

 二人は、並んでコタツに座った。
 アシュトは骨焼きをポリポリ齧り、ルミナはアシュトが持ってきたお茶を飲む。
 それからしばらくすると、ルミナが大きな欠伸をする。

「少し眠い……」
「はは。寝ていいぞ。俺も眠いし……」
「みゃう……」

 二人は大きな欠伸をすると、そのまま寝てしまった。
 二人を起しにきたミュアも加わり、夕食時間になっても来ないことで様子を見に来たシルメリアに起こされるまで、三人はのんびり眠りこけていた。
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