大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

文字の大きさ
378 / 474
常夏の村

第572話、プールで遊ぼう

しおりを挟む
 緑龍の村の片隅にできたのは、シンプルな円形のため池……ではなく、天使族の娯楽施設である『プール』だった。
 大きな円形で、ミスリルをふんだんに使ってタイルを敷き、水場周りも整備した。これらは全てエルダードワーフの仕事だ。建築関係において、エルダードワーフに敵う種族はいない。 
 なぜミスリルを使ったのかというと、ミスリルは熱を吸収する特性があり、プールに張った水が、いつまでも温くならないからだ。
 夏が終われば無用の長物になるので、その時はため池として使う予定だ。そのために、シンプルな形状にしたと言っても過言ではない。
 そして、プール傍には男女別の更衣室があり、更衣室内にはタヌスケ商店による『ミズギ』の有料レンタルができるようになっていた。
 全ての作業を終え、プールに水を張り……プールは、無事に解放された。
 解放初日、さっそくエルミナはプールにやってきた。

「ふんふ~ん♪ さ、ミュア、好きな水着選んで! ライラもアセナも遠慮しないでね」
「にゃあー」
「わん! ありがとー」
「エルミナさん、ありがとうございます」

 今日も気温は40度近い。更衣室内なのに、常夏セミがミンミン鳴いているのが聞こえた。
 ミュアたちは水着を選び、着替え、プールに出た。
 プールの傍に、豆狸族がいた。

「へっへっへ……浮き輪はいかがです?」
「にゃ! これ知ってる。浮かぶやつ!」

 ミュアは知っていた。
 砂漠のオアシスで使った浮き輪だった。ミュアは上手く泳げないのでひとつ借りる。すると、ライラとアセナも借りた。
 
「さ、まずは準備運動ね。しっかり身体をほぐさないと、足をつるわよ」
「つる……よくわかんない」
「私もです。足が、つる……?」
「にゃうー、とにかく運動しないと! シルメリアに怒られるー」

 ミュアたちは、エルミナの真似をしながら体を動かす。
 すると、浮き輪に浮かぶ一人の男が近づいてきた。

「よおエルミナ。子供たちの子守か?」
「ん? ああブラン、あんた何してんの?」
「見ての通り、夏を満喫してんだよ」

 デーモンオーガのブランが、浮き輪を使ってプカプカ浮いていた。
 視線の先には、水着姿の天使族や悪魔族。なんとなく察したエルミナは無視した。

「さ、入るわよー」
「にゃう! ライラ、アセナ、泳ぎはわたしに任せて!」
「わぅぅ……ちょっと怖い」
「わ、私も……川などは行きますが、こういう深いところは初めてで」

 プールはそこそこ深い。
 エルミナの肩が見えるか見えないかほどの深さで、子供たちは頭がすっぽり隠れてしまう深さ。なので、浮き輪を使って水に入る。

「わぅぅ……つめたくて気持ちいい」
「はぁ~……火照った身体が冷えますぅ」
「にゃあ! エルミナ泳ごう!」
「よーし!」

 ちなみに、このプールは天使族が魔法によって監視している。もし仮に誰かが溺れるようなら、転移魔法を使い一瞬で救出することができるようになっていた。
 エルミナたちが遊んでいると、メージュとルネアがプールに入ってきた。

「やっほ、エルミナ」
「やほー」
「あ、メージュにルネア。あんたらも涼みに来たの?」
「もちろん。プール、マジで最高よね。外は超暑いのに、冷たい水に浸かってのんびりできるし……海とはまた違う趣があっていいわー」
「いいわ~……」

 ルネアはプカプカ浮かびながら流されてしまった。
 ミュアたちは、浮き輪で浮かびながらクルクル回って遊んでいたので、エルミナはメージュとプールサイドに座る。

「いやー、盛況ね」
「だね。エルミナ、やるじゃん」
「えへへ」

 プールの発案者はエルミナだ。
 エルミナは照れつつ、太陽を見上げる。

「ねぇ、ハイエルフの里の夏、覚えてる?」
「当たり前……毎日毎晩暑くてさ、ブドウの木は枯れちゃうし、夜は寝苦しいし、水はがぶ飲みしちゃうし、海で泳いだりして遊んだり……はぁ、けっこう最悪だったわ」
「海はよかったけどねー」
「うんうん。でも、取引でもないのに海にばかり行くなって、長に言われたじゃん」
「そうそう。おじいちゃんってば余計なことを……」

 と、昔の思い出に浸っていると、水着姿のシェリーがやってきた。 
 水色を基調としたワンピースだ。シェリーにとてもよく似合っている。

「やっほ、二人とも」
「シェリーじゃない。学園はいいの?」
「今日は授業ないからね。それより二人とも、あっちによく冷えた果実水冷えてるけど、どう?」
「「飲む!!」」

 プールサイドにはテーブル、パラソルが置かれ、そこでエルダードワーフたちが酒盛りしていた。
 水を張った木桶に、大量の果実水や酒が浸してあり、シェリーの出した氷が浮かんでいる。
 二人はボトルを取り、一気に飲んだ。

「ッぷはぁ!! さいっこうね!!」
「ん~!! おいっしい!!」
「よかったぁ。よーし、あたしも少し泳いでこよっと」

 シェリーがプールに飛び込み、泳ぎだす。
 エルミナたちは椅子に座り、パラソルの下で眺めていた。

「そういやエルミナ、村長帰って来ないの?」
「さぁ? でも、そろそろ帰ってくるんじゃない?」
「あんた、それくらい知っておきなさいよ」
「どうでもいいわよ。ローレライたちが一緒だし、寂しくないでしょ」
「あんたは寂しいんじゃないの~?」
「う、うっさいわね」
  
 すると、プールから上がったルネアがエルミナの隣に座る。

「二人で冷たいの飲んでずるい……」
「あんたの分もあっちにあるから、取ってきなさいよ」
「そうする」

 常夏セミがミンミン鳴き、日差しがさらに強く照り付ける。
 子供たちが浮き輪を回転させて遊び、ブランに激突。怒ったブランを鬼に追いかけっこが始まる。そこに、シェリーや他のハイエルフたちも混ざり、プール内での鬼ごっことなっていた。

「よーし!! 今日はとことん遊ぶわよ!! メージュ、ルネア、行くわよ!!」
「おーっ!!」
「ごくごく……果実水、冷えてておいしい」

 数日後、アシュトが戻り……アシュトは大変驚くことになるのであった。
しおりを挟む
感想 1,145

あなたにおすすめの小説

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。