大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

文字の大きさ
377 / 474
常夏の村

第571話、ウッドシャワー

「まんどれーいく……」
「あるらうねー」

 マンドレイクとアルラウネは、温室の近くにある小屋で休んでいた。
 マンドレイクは汗をダラダラ流し、水のボトルをゴクゴク飲む。対してアルラウネは、涼しい顔でブドウを食べていた。
 マンドレイクは、寒いのは平気だが暑いのは苦手。アルラウネは、寒いのは苦手だが暑いのは平気のようだ。
 すると、小屋にウッドが入ってきた。

『フタリトモ、アソボ、アソボ! シャワー、シャワー!』
「!!」
「あるらうねー」

 マンドレイクはガバッと起き上がりウッドに抱きつく。
 シャワーとは、ウッドが右手から出した根で水を吸い、左手から出した根で雨のように放水する技だ。温室の水くれで大いに役立っている。
 夏の今では、ウッドのシャワーはとても気持ちいい。雨のように降らせたり、霧のように噴霧させたりと自由自在で、川べりで休んでいるハイエルフたちに噴霧したら大好評だった。
 ウッドは、マンドレイクに抱きつかれながら言う。

『ハイエルフ、ミンナアツイ、アツイ。ウッド、シャワースルトミンナヨロコブ!』
「まんどれーいく!」
『エヘヘ、ウッド、ウレシイ』

 ウッドは仲間たちの役に立てるのが嬉しいようだ。
 小屋の外に出ると、木陰でグテッとしているシロがいる。

『シロ、アソボ』
『くぅん』

 どうやら暑いようだ。
 だが、ウッドが遊びたがっているのを見て立ち上がる。
 ウッドたちは川へ向かう。そこには、涼みに来ているハイエルフやドワーフたちが大勢いた。
 心なしか、川も温い。
 ウッドは根を伸ばし、川の水を吸収。そのまま霧状にして噴射した。

「おお~、きもちいい……」
「ウッド、ありがとねぇ~」
「はぁ~……」
「まんどれーいく……」
『くぅ~ん……』
「あるらうねー」

 みんな喜んでいた。
 ウッドは嬉しくなり、思いきり根を伸ばして霧を噴霧した。

 ◇◇◇◇◇◇

『……オラ、アツイ』
『ソウカ? イイヒザシジャネェカ』

 村の入口では、暑さで全く動かないフンババと、目いっぱい日差しを浴びて気持ちよさげなベヨーテがいた。
 フンババは寒さに強いが暑さは苦手。ベヨーテはその逆のようだ。
 ベヨーテは、太陽を眺めながら言う。

『ナツ、カ……ナガビキソウダゼ』

 夏は、いきなり来る。
 期間もバラバラで、数日で終わる夏もあれば、数年、数十年かかる夏もある。
 緑龍の村にやってきた夏は、どれほど長引くのか。
 熱に強いベヨーテはともかく、フンババは耐えられるだろうか。
 以前、冬が来た時。寒さに弱いベヨーテはアシュトの家に避難した。フンババの場合、アシュトの家には入れない。なんとかしなければと思う。

『オイフンババ。ソノヘンノヒカゲデヤスンデナ』
『ウウ……』

 フンババはのしのしと、木陰に入った。
 今、できることは。相棒の代わりに自分がしっかり門番をすることだけだ。

『オーイ!』
『ン……ウッドカ。ドウシタ? ッテ、ナンダソリャ?』

 ウッドが来た。
 だが、いつもと違う。背中から何本も根が伸びていた。しかも、とんでもない長さ。
 すると、ウッドの両手から根が伸びる。

『フンババ、ベヨーテ、オスソワケ!』

 根から冷たい水がシャワーとなって降り注ぐ。
 フンババの身体が冷たい水で冷やされ、さらに水を吸収したことで元気になる。ベヨーテはびしょ濡れだったが、どこか気持ちよさそうにしていた。

『フオオ! ウッド、アリガトー! オラ、フッカツ!』
『ナルホドナ、カワニツナガッテルノカ』

 ウッドの根は、川まで伸びているようだ。
 どうやら、村中回ってシャワーを撒いているらしい。

『ヨーシ! モットモットガンバルゾー!』

 この夏。ウッドは緑龍の村で英雄視されることになった。

 ◇◇◇◇◇◇

 村の役場に、エルミナとシェリーがいた。
 役場の会議室には、ハイエルフや悪魔族、天使族など、村の種族代表たちが集まっている。
 アシュト不在の今、次に権力があるのはアシュトの妻であるエルミナたちだ。
 エルミナは、さっそく本題に入る。

「えー、緑龍の村に夏が来ました! 毎日毎日蒸し暑くてもうほんっとに限界……ディミトリが『扇風機』くれなかったら、マジで死人出てたかも」
「ウォッフォン!! フフフ……」
「ホリィシット……!!」

 ディミトリが勝ち誇ったように咳をして、アドナエルをチラッと見て笑う。
 アドナエルはハンカチを噛み千切らんばかりに悔しがっていた。
 
「ってわけで。アシュトがいないけど、この夏をなんとか乗り切るために……『水場』の設置をしたいと思います!!」

 水場?
 と、全員が首を傾げた。
 エルミナは説明をする。

「ま、泳げる池みたいなもんね。おっきな穴を掘って、そこに水を貯めて泳ぐの! 以前、天使の国の別荘に行った時に見たのよ」

 すると、アドナエルが挙手した。

「ヘイヘイヘイ!! そりゃ『プール』のことダゼ!!」
「プール?」
「オゥイエス!! それなら、アドナエル・カンパニーに任せて欲しいゼ。娯楽なら天使族がどの種族よりも上を行ってる。我が社に任せてくれたら、とびっきりのプールを準備するゼ!!」
「おお、なんかすごそうね。じゃあ、あんたに任せた!!」
「イェェ~~~ッス!! フッフッフ……」
「ぐぬぬ……」

 アドナエルが勝ち誇ったようにディミトリ見て笑う。
 ディミトリはハンカチを噛み千切らんばかりに悔しがって……実際にハンカチを噛み千切っていた。
 エルミナは机をバンと叩く。

「みんな。夏は数日で過ぎることもあれば、何年何十年と続く場合がある。私たちハイエルフの予想だと、たぶん百日以上は続くと思う……ってわけで、村人たちみんなで協力して、乗り切りましょう!!」

 と、いい感じに締めた。
 そんなエルミナを見て、シェリーが言う。

「お兄ちゃん、帰ってきたら驚きそう……」
感想 1,146

あなたにおすすめの小説

薬草採取しかできない不遇職ですが、なぜか伝説の竜が懐いて離れません。実は全魔法を極めていることに本人気づかず、今日も無自覚に魔王級をワンパン

ホタ
ファンタジー
「君はクビだ。薬草しか採れない無能は、我が勇者パーティーには必要ない」最果ての村で薬草採取を仕事にしていたアルトは、ある日突然、所属していたパーティーから追放を言い渡される。しかし、アルトは悲しまなかった。むしろ「これで大好きな薬草を好きなだけ採れる!」と大喜び。心機一転、森の奥深くで採取を始めたアルトだったが、ひょんなことから傷ついたトカゲ(?)を助ける。だがその正体は、数千年の眠りから目覚めた伝説の「終焉の竜」だった!「この恩、一生かけて返そう」「えっ、いらないですよ。ただのトカゲさんでしょ?」無自覚に神話級の魔法を使いこなし、聖域の薬草を雑草のごとく引き抜くアルト。最強の竜をペットに従え、本人の知らないところで世界を救い、気づけば聖女や王女からも執着されることに……。これは、自覚ゼロの最強青年が、無意識に世界をひっくり返していくスローライフ(?)ファンタジー。

薬草採取しかできないと追放された僕、実は植物に愛されすぎて伝説の神薬を量産していた。無自覚に世界を救うスローライフ、始めます。

ホタ
ファンタジー
辺境の村で「薬草採取」のギフトしか授からなかったアルトは、役立たずとして冒険者パーティを追放されてしまう。失意の中、幼い頃から住んでいた森の奥でひっそり暮らすことを決めるが、アルトには自覚がなかった。彼の「薬草採取」は、植物の意志を読み取り、絶滅したはずの聖樹や伝説の霊草を自在に育てる「神域の庭師」の力だったのだ。アルトが「お茶」として淹れたのは万病を治すエリクサー、焚き火にくべたのは魔王を退ける聖なる香木。本人が「のんびり家庭菜園」を楽しんでいる間に、彼の作る作物を求めて、聖女や帝国騎士、果ては伝説の竜までもが庭先に列を成すようになり――。無自覚な少年が、ただの趣味で世界をひっくり返していく、ほのぼの勘違いファンタジー!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

異世界転生パン職人の美味しい開拓記~最高の食パンを焼いたら没落令嬢ともふもふが家族になりました~

黒崎隼人
ファンタジー
前世で腕の立つパン職人であり農家でもあった青年トールは、異世界に転生して驚愕した。 この世界のパンは、硬くてパサパサで、スープに浸さなければとても食べられないものばかりだったのだ。 「美味しいパンで人々を笑顔にしたい」 その純粋な情熱を胸に、トールは荒れ果てた土地を自らの手で切り拓き、最高の小麦を育て上げる。 そして魔法の力も駆使し、この異世界に初めて、雪のように白くてふかふかの「食パン」を誕生させた! その究極の味に衝撃を受けた没落貴族の令嬢セリア、そしてパンの耳が大好きなもふもふ魔獣のアルルと共に、トールは小さなパン屋「食パン商会」を開店する。 一口食べれば誰もが虜になる至高の食パンは、瞬く間に王都中で大人気に! しかし、その成功を面白く思わない巨大商業ギルドが、卑劣な手段でトールたちの邪魔をしてきて……? 理不尽な妨害も、圧倒的なパンの美味しさと職人の意地で完全粉砕! やがて彼らの焼くパンは王宮の晩餐会にまで供され、世界そのものを温かく変えていく。 これは、パンを愛する青年が、極上の食パンと黄金の小麦畑で、大切な人たちと一緒に最高の居場所を作り上げる、優しくて美味しい成り上がりスローライフ!

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

辺境で掃除屋を始めたら聖域が爆誕した件。元Sランク冒険者の俺、ただの雑用なのに世界平和に貢献していると勘違いされる

ホタ
ファンタジー
「俺の役目は、ただ目の前の汚れを落とすことだけだ」 かつて伝説のSランクパーティで『雑用』を担当していたアルス。仲間の引退と共に、彼もまた辺境のボロ小屋で「掃除屋」を営むことにした。 しかし、アルスは気づいていなかった。彼が掃除に使っているのは伝説の聖遺物を加工した箒で、彼が「汚れ」だと思って消し去っていたのは、世界を滅ぼす級の呪いや高位魔族の残留魔力だったことに。 本人は「ただの掃除」のつもりでも、通り過ぎた後は土地が浄化され、枯れた大地に奇跡の果実が実り、最凶の魔物たちがなぜか懐いてしまう。 そんな彼のもとに、訳ありの聖女や噂を聞きつけた王女が次々と現れて……? 「なんだか最近、お客さんが多いな。まあいい、まずはそこを掃除させてくれ」 無自覚な掃除屋が、無意識に世界を救っていく辺境スローライフ、開幕。