大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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緑龍の村・夏祭り

第584話、出店巡り①

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 村内は、住人やお客さんでごった返していた。
 いやはや、すごい人だ。ハイエルフやエルダードワーフはもちろん、悪魔族や天使族、ブラックモールにゴルゴーン族、アラクネー族……もうわけわからん。
 エルミナは、ため息を吐いた。

「すっごい人数ね。出店の数も半端じゃないし、これ大丈夫なの?」
「……出店は多すぎたかも。次回は抽選にするか」

 エルミナの言う通りだ。
 出店、多すぎた。
 道沿いに、ぴっちりと出店が並んでいる。店が多いことで並んだりすることはないけど、やはり道で立ち止まることにより通行人の邪魔になっている。
 俺は少し考え込む。するとミュディが言う。

「お店、村の中いっぱいじゃなくて、どこか広い場所に統一すればいいかも。村の中には休憩スペースを多くしたり、長椅子を増やしたりして、座ってお喋りしたり、買ったご飯をみんなで食べれたり……」
「それいいな。休憩スペースか……」

 これも次回の課題かな。
 さすがミュディ。いい着眼点。
 と、ここで袖が引かれた。

「みゃあ。おなかへったぞ」
「あ、悪い悪い。じゃあ、シェリーたちの屋台に行くか」
「氷菓子だっけ? ミュディ、聞いてる?」
「んー。あんまり。当日のお楽しみってシェリーちゃんが」
「えーと、村のマップにマークしておいたんだ……お、こっちこっち」

 マップ通りに進み、シェリーたちの元へ。
 その途中に、とてもいい匂いがした。
 ルミナが立ち止まりジーっと見ていたので、俺たちも止まる。
 そこにいたのは、デーモンオーガ両家だ。

「む、村長か」
「バルギルドさん。屋台……ですよね?」
「ああ。最初は家族でやろうと思ったのだがな……ディアムド一家も混ぜてやることにした」
「うむ。喰うか?」

 バルギルドさんが焼いていたのは肉だ。
 しかも、串焼き。
 たぶん、アウグストさんが作ったであろう専用の鉄板に、五十本以上の串焼きが豪快に焼けていた。
 バルギルドさんの後ろでは、エイラちゃんやキリンジくんがせっせと串焼きを作り、ノーマちゃんが肉を切り分けていた。そして、シンハくんが呼び込みをしていた。
 
「あれ、ディアムドさんは?」
「追加の肉を狩りに行った」
「お、おお……そうなんですか」
「ちなみに、アーモとネマは飲み物を売っている」

 いつの間にかエルミナが隣の屋台にミュディと一緒にいた。
 
「わぁ~! 美味しそうなお酒!」
「ふふ、屋台オリジナルカクテル。お祭りだけの限定品よ?」
「ミュディ、飲むわよ!」
「う、うん。飲みすぎちゃダメだからね?」
「はーいオリジナルカクテル二つ入りまーす!」

 なんだか楽しそうだ。
 せっかくなので、俺も串焼きを二本買い、一本をルミナへ。
 ルミナは大きく口を開け、肉をガブっと食べた。

「みゃぅ……んまい」
「俺も。あむっ……ん、塩が利いてて美味い!」
「ふ……」

 あ、バルギルドさんが笑っていた。
 今更だが、ねじり鉢巻きを巻いて上半身裸で串焼きを焼くスタイル、めちゃくちゃ似合ってるな。

 ◇◇◇◇◇◇

 串焼きを食べ、次の出店へ。
 シェリーたちの屋台へ到着した。
 出店が多いせいか、人が並んでいない。
 顔を出すと、クララベルとシェリー、ミュアちゃんが出迎えた。

「あ、お兄ちゃん!」
「やっほー……あー、あっつい。お兄ちゃん、何か飲み物ない?」
「いきなりだな……どうした?」
「たった今までお客さん捌いてたのよ」
「にゃあー……」

 ミュアちゃんも汗を掻いていた。
 ちょうど出店の真向かいで飲み物を売っていたので、三人分買って渡す。
 シェリーは『休憩中』と書かれた看板を出し、果実水を一気飲みした。

「ぷっはー……おいしい」
「にゃあ。おいしいー」
「いやー、すごかったねー」
「そんなに売れたのか?」
「もう大盛況! ね、シェリー」
「ええ。すっごく疲れたわ……ミュア、大丈夫?」
「にゃあ。だいじょうぶ!」

 なんだかミュアちゃんは楽しそうだ。
 すると、ミュアちゃんはルミナをジーっと見た。

「ルミナ、その服……」
「もらった」

 ルミナはミュディをチラッと見て言う。
 俺、エルミナ、ミュディ、そしてルミナを見てムーっとした。
 すると、エルミナが言う。

「ところで、氷菓子ってどんなの?」
「あ、わたしも気になってたの。シェリーちゃん、クララベルちゃん」
「ふふふ。わたしのとっておき! シェリー、ミュア、やるよーっ!」
「にゃうーっ!」
「お兄ちゃんたちにも食べさせないとね!」

 三人は立ち上がると、調理場へ。
 まず、ミュアちゃんが冷蔵庫から何かを取り出した。
 シェリーが解説する。

「これ、果実の搾り汁ね。果肉も少し混ぜた氷菓子の元よ。これをかき混ぜて……」
「にゃうーっ!」

 ミュアちゃんが『元』をかき混ぜる。すると、元はトロトロになった。
 これをクララベルに渡し、元を型に流し込み、細い棒を置く。
 そして、シェリーが杖を取り出し軽く振ると、元は一瞬で固まった。
 シェリーは元に置いた棒を掴み、俺たちに渡す。

「はい。これがあたしたちの氷菓子」
「なるほど。果実水と果肉をシェリーの魔法で凍らせたのか……でも、大丈夫なのか?」
「何が?」
「いや、お前の氷って、父上の炎でも溶けないだろ?」
「あのねー、ちゃんと調整してるし。口の中でほどよく溶けて、ひんやりするんだから。夏にピッタリの氷菓子よ」

 と、ここでエルミナとミュディが。

「お、おいしっ! ん~ひんやりぃ!」
「ん~、あまくて美味しい! 溶けはじめると果肉も出てくるわぁ」
「みゃうー、うまい」

 どうやら好評のようだ。
 俺も舐めてみる……ん、甘くて冷たい。しかも美味しい。
 夏にピッタリのお菓子だ。これはいい。

「うまい。さすがだな」
「えへへー」
「ま、当然よね」
「にゃあ!」

 氷菓子、また後で食べに来るか。

 ◇◇◇◇◇◇

 ◇◇◇◇◇◇

 アシュトたちは大満足し、他の出店を見に行くと行ってしまった。
 その後姿を、ミュアは少し寂し気に見送る。
 すると、シェリーとクララベルが。

「ミュア、行きたい?」
「お兄ちゃんと一緒に回りたいよねー?」
「…………」

 二人は、優しい笑みを向けてくれた。
 アシュトとお揃いの浴衣に、手を繋いで一緒に村を回るルミナ。羨ましくないといえばウソになる。
 でも、ミュアは首を振った。

「にゃあ。だいじょうぶ! わたし、お手伝い最後までする!」
「……いいの?」
「うん。ここでお仕事やめて、ご主人さまと一緒に行っても……きっと、つまんない。わたし、自分でやるってきめた仕事、最後までやる!」
「「……」」

 シェリーとクララベルは顔を見合わせた。
 
「ちゃんと成長してるのねぇ」
「うんうん。なんだかうれしいね」
「にゃふぅぅ……」

 二人はミュアの頭をいっぱい撫でまわし、準備した材料を全て売り尽くそうと『休憩中』の看板を外した。
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