大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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秋の訪れ

第594話、家族風呂

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 村長湯。
 ここに、ミュディとシェリー、ルナマリア、ラクシュミ、アリューシア、エクレール、そしてミュアの六人が集まっていた。
 明日にはビッグバロッグ王国に帰る。なので、最終日くらいみんなでお風呂!となったのだ。
 なぜミュアがいるかと言うと、エクレールが。

「ねことお風呂!」
「にゃうー……ミュアなのにぃ。あと尻尾つかまないでー」

 エクレールが、ミュアの尻尾から手を離さないのだ。
 そういうわけで、六人でお風呂にやってきたのである。
 ラクシュミは、村長湯を見上げて言う。

「それにしても、デカいわね……アシュトくん、一人でここ使ってるの?」
「お兄ちゃん、最初は乗り気じゃなかったわよ。ここ、お兄ちゃんに内緒で建てたようなモンだし」
「そうなんだ……なんか、アシュトくんらしいや」

 村人も増え、浴場利用者も多い。
 アシュトは何度も「村長湯を解放しよう」と言っているのだが、種族の代表者たちは誰も「うん」と言わないのである。村長はある程度の「特権」があった方がいいと皆が言うのだが、アシュトは未だに納得していなかった。
 すると、エクレールがミュアの尻尾を引っ張りながら言う。

「ねこ、お風呂いこっ!」
「にゃう!」

 二人は浴場へ。
 そして、アリューシアが言う。

「とりあえず、行きましょうか。貸切というなら遠慮しないで使いましょう」
「アリューシア様。今日の薬草湯、カズラの葉とヨモギの葉をブレンドしたんです。お肌スベスベ、血行もよくなるってアシュトが言ってました!」
「それは楽しみ。さ、行きましょうかミュディ」
「はい!」

 美容を気にする二人は仲良く中へ。
 シェリーとラクシュミは顔を合わせた。

「ま、いっか」
「そうね。さぁて、シェリーの成長具合を確かめよっかな!」
「わわ、押さないでよ!」

 ラクシュミがシェリーの背を押し、村長湯へ入って行った。

 ◇◇◇◇◇◇

 妖狐の宿にも、村長湯がある。
 俺、リュドガ兄さん、父上、スサノオ、ヒュンケル兄の五人は風呂へ来た。
 父上は、妖狐の湯を見て「ほほう」と唸る。

「ここは初めてだな……」
「ここも温泉です。えーと……細かい説明は省きますけど、妖狐の里から温泉を引いています」
「ほぉ……」

 今の人間には不可能な魔法をいくつも組み合わせて温泉送ってるなんて信じてもらえないよな。
 兄さんはスサノオを抱っこしながら言う。

「ここも村長湯なんだな」
「まぁ……俺は許可した覚えないけど、いつの間にかできてた」
「ははは。きっと、お前のために内緒で作ったんだろうな」
「かもね……ま、ありがたいけど」
「父上。おじ上。早く行きましょう!」
「ああ。行こうか、スサノオ」

 父上とスサノオ、リュドガ兄さんは中へ。
 そして、俺の肩を組むヒュンケル兄。

「あのよ、なんでオレを誘うんだよ」
「え、ダメだった?」
「家族で入れよ……お前が誘うからアイゼン様にも誘われるし、断りきれなかったんだぞ」
「そうなんだ。でもまぁいいじゃん。ヒュンケル兄」
「……はぁ」

 ヒュンケル兄は苦笑し、俺の背中を叩く。

「ま、いいか。じゃ、行きますか」
「うん」

 俺たちも温泉内へ。
 そういや、俺も久しぶりに来たな。
 中に入ると、父上たちが止まっている……なんと、カエデがいた。

「いらっしゃいなのじゃ」
「……なんでいるんだ?」
「うむ。三助なのじゃ」
「「「「?」」」」

 全員が首を傾げた。
 カエデは大きなもふもふ尻尾を揺らしながら言う。

「三助とは、浴場で身体を洗う人のことを言うのじゃ。ふふふ、わらわが綺麗に背中を洗ってやるぞ」
「いや、いいよ」
「なにぃ!?」
「ほら、女の子だし……スサノオが恥ずかしがるし」

 スサノオは照れていた。
 まだ三歳なのに、お年頃なのかねぇ。
 カエデはムスッとしていたが、背中を押す。

「悪いな、三助は大丈夫。その代わり、風呂上りの飲み物やおつまみを準備してくれるか?」
「むぅぅ……わかったのじゃ」

 カエデは出て行った。
 さて、脱衣所へ向かい服を脱ぐ……くっ、兄さんやヒュンケル兄、父上、しっかり腹筋割れてやがる。現役の軍人はこうも違うのかい。
 俺も毎朝軽く筋トレ始めたけど……あと何年したら腹筋割れるんだ。
 服を脱ぎ、浴場へ。

「ほぉ! これは素晴らしいな」

 父上が感嘆の声を上げる。
 村長湯よりも狭いが、クオリティには拘った浴場がそこにはあった。
 魔法で夜空や星を再現し、魔法で室内の温度調整、魔法で温泉が循環し……とにかく魔法の風呂だ。
 身体を洗い、全員で湯船に。
 露天風呂は素晴らしい。

「あ~~~……いい、最高だ。なぁリュドガ」
「ええ、父上。提案なのですが、エストレイヤ家にも浴場を作りませんか?」
「いい案だが、湯はどうする? 温泉が湧いているならともかく、湯船に張るだけの湯を沸かすのは大変だ」
「父上の魔法では?」
「できんことはないが、火力調節に神経を使いそうだ。火加減を間違えると一瞬で蒸発してしまう」
「水はルナマリアの魔法でなんとかなるな……父上、帰ったらもう一度考えましょう」
「ああ。風呂のためにな」

 なにやら父上と兄さんが熱く語っていた。
 すると、スサノオとヒュンケル兄が。

「スサノオ、熱くないか?」
「はいぃ……ちょっとあついです」
「無理すんなよ。熱かったら上がっていいぞ」
「大丈夫。ぼくだって男です。たえてみせます!」
「お、おう……男らしいけど、風呂まで耐えなくていいぞ?」

 こっちは平和だ。
 俺ものんびりお湯につかっていると……桶が流れてきた。

「ん? 桶……に、なんだこれ? 徳利とお猪口だ」

 桶の上には、徳利とお猪口が。匂いから冷たい清酒だとわかった。
 すると、どこからかカエデの声が。

『サービスなのじゃ。温泉で飲むお酒はおいしいのじゃ』
「これはいい。ではさっそく」
「父上、お注ぎします」
「じゃ、兄さんには俺が」
「じゃあアシュトはオレが注ぐぜ」
「じゃあぼくはヒュンケルに!」

 それぞれのお猪口にお酒を注ぐ。もちろんスサノオは冷えた果実水だ。
 というかスサノオ……ヒュンケル兄のこと呼び捨てなのか。
 軽くお猪口を合わせ、清酒を飲む。

「はぁ~~~……おいしい」

 ひんやりした酒が喉を流れていく。
 父上も兄さんもヒュンケル兄も同じ気持ちのようだ。
 そして、父上は言う。

「緑龍の村は、本当に素晴らしいな」

 明日、父上たちは帰る。それがなんとも寂しい。
 寂しいか……もしビッグバロッグ王国に来なかったら、こんな気持ちにならなかっただろうな。

 ◇◇◇◇◇◇

 村長湯では、シェリーたちがのんびり湯に浸かっていた。
 ラクシュミは、シェリーを見て言う。

「シェリー、なんかすっごく引き締まったわね……胸はそうでもないけど」
「氷漬けにするわよ。まぁ、竜騎士と一緒に訓練してるからね」

 チラッとラクシュミを見る。
 ラクシュミは、胸が大きい。ミュディと同じくらいだろうか。
 さらにミュディ、アリューシアを見る。

「…………むぅ」

 ミュディ、また大きくなった。
 アリューシア、孫もいるのに肌が三十代前半としか思えない若々しさ。
 ルナマリアも同じくデカい。
 洗い場を見ると、エクレールの背中を洗うミュア。

「ごしごしにゃんにゃ~ん♪」
「にゃうぅ~! きれいきれい~」

 二人ともご機嫌だ。
 この二人はまだ子供だが、将来はわからない。

「シェリー~~~……大丈夫だって。胸なんて飾りだしさ」
「デカいあんたに言われたくないし!」

 ラクシュミがじゃれついてくるのを引き剥がし、話題を変えようとルナマリアに聞く。

「ルナマリアさん、次はいつ来れる?」
「次か。そうだな……次の休暇がいつ取れるかわからん。未定ということにしてくれ」
「そっかー……」
「お姉様、今度はわたしたちがビッグバロッグ王国に行くね」
「それはいいな。ね、アリューシア様」
「ええ。うちの庭園を案内してあげる」
「庭園って……お母さん、あそこ雑草だらけだったじゃん」
「お手入れしたのよ。うちの子のご飯を育てないといけないしね」

 そういえば、エストレイヤ家にはニコニコアザラシがいた。
 主食は花の蜜。きっと、アリューシアが育てた花の蜜を吸っているのだろう。

「ふふ、楽しみです。アリューシア様」
「ミュディにも見てもらいたいわ。楽しみにしててね」
「はい!」
「にゃうーっ! お風呂っ!」
「じゃんぷっ!」

 ミュアとエクレールが湯船に飛び込み、全員ずぶ濡れになり話は中断。
 二人はこっぴどく叱られたとさ……。
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