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日常編㉑
第624話、アウグストさんの帰省とお兄さん
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「悪い村長、ちょっと兄貴に呼び出されてな。ちょっくら穴倉に帰るとすらぁ」
「あ、はい」
ある日、アウグストさんがお酒に誘ってくれたのでバーで飲んでいると、そんな話をされた。
帰省はいいけど、お兄さんか……まだまだ知らないこと多いな。
最初の住人であるアウグストさんに、お兄さんがいるなんて思わなかった。
「アウグストさん、お兄さんがいたんですね」
「ああ。ザイドリッツっていうんだが、これまたクソみたいな野郎でなぁ。穴倉から飛び出して旅に出るわ、黒髑髏族の弟子を大量に抱えて戻ってくるわ、穴倉で受け入れられねぇからって、穴倉の傍にデケェ集落作って暮らし始めるわ、もうメチャクチャな野郎よ」
「……エルダーリッチ?」
「ああ、リッチ族は知ってるか?」
「し、知ってるも何も……リッチって、魔獣じゃ」
「そりゃ知能を持たねーやつのことだ。知能を持つリッチをハイリッチ族、ハイリッチの上位種がエルダーリッチ族ってんだ」
「なるほど。って……また上位種か」
リッチ(低能、意志を持たない魔獣)
ハイリッチ(知能を持つリッチ。普通の人間と変わらないらしい)
エルダーリッチ(ハイリッチの上位種、レア種族)
こんな感じか。ちなみに、リッチとハイリッチは人間とゴブリンくらい違うらしい。同じように扱うと本気でキレるらしいので注意が必要とか。
「で、兄貴がワシを呼んでるんだよ。あー……そうだ、村長も来るか?」
「え」
「あの野郎の頼みなんてロクなもんじゃねぇ。ワシがこの村に住んでることも秘密にしてたんだが、どうもバレちまったみたいだしな……恐らく、それ絡みだろうさ」
「えー……」
「よし、決まりだ。じゃあ明日出発するぞ」
「はい。って、明日!?」
こうして、俺とアウグストさんは、アウグストさんのお兄さんであるザイドリッツさんに会いに、エルダードワーフの故郷である《穴倉》……の、近くにある《エルダーリッチの村》へ行くことになった。
もう、この時点で嫌な予感しかしないよ……なんてな。
◇◇◇◇◇◇
翌日。アウグストさん、俺、ルミナの三人でエルダードワーフの穴倉へ向かった。
クジャタ便、エルダードワーフの穴倉まで行けるようになったんだな。おかげで、簡単に帰省できるようになったって、エルダードワーフの皆さんが喜んでた。
というか……なぜ、ルミナがいるのか。
「みゃう。別にいいだろ」
「うーん……まぁ、いいけど」
「ごろごろ」
頭をなでると喉がゴロゴロ鳴る。
アウグストさんは、ポケットから携帯用小瓶を取り出し、酒を飲んでいた。
「ふぃぃ、久しぶりに乗ったが中々いい乗り心地だ。穴倉まで一日で到着するのもいい」
「ですね。クジャタも慣れたのか、迷いなく走ってるし」
クジャタ、たまに放電するんだよな。護衛に乗ってるサラマンダー族に雷が直撃するけど平然としているし。
貨物車の整備師として同乗しているエルダードワーフのガレオンさんは、後ろの席で爆睡してる。
他にも、乗車しているのは十人くらいかな。エルダードワーフ、悪魔族、ハイエルフも何人かいる。
「みゃうー」
「おっと、おやつの時間だな」
ルミナにおやつのクッキーをあげるとすぐに食べてしまう。
そして、眠いのか俺の太腿を枕にしてスヤスヤ眠り始めた。
ルミナのネコミミを触っていると、アウグストさんが言う。
「村長、来てもらってこんな言い方はアレだが……ザイドリッツの野郎の言うことは聞かんでもいい。というか、全部拒否で頼むぜ」
「い、いいんですか?」
「ああ。どうせクソつまんねぇことだろうしな」
く、クソつまんねぇことって……どんなことだろうか。
そんなわけで、クジャタ便はエルダードワーフの穴倉へ到着した。
◇◇◇◇◇◇
エルダードワーフの穴倉。
その正体は《でっかい火山》だ。火山の下に、アリの巣のような空間が広がっており、そこでエルダードワーフたちは生活をしている。
なぜ、こんなクソ暑いところに住んでいるのかというと、《大地の血液》とかいう真っ赤なドロドロした高温の液体が、鍛冶や火仕事をするのにもってこいだとか。
だが、今回はエルダードワーフの穴倉ではない。
「確か、こっちだな」
アウグストさんの案内で、穴倉を素通りして、その奥にある森の中へ。
森の中は、非常に……というか、寒気を感じた。
「な、なんか寒いですね」
「そうか? ほれ、地面はあったけぇぞ? 《大地の血液》が流れてる」
「え、ええ……」
「みゃあ。たしかにあったかいぞ」
ルミナはしゃがみ、地面に触れて確認していた。
寒いのは俺だけなのかな……寒いというか、凍りそうというか。
森の奥に進むにつれ、日が差し込みにくく、暗くなっていく。
そして、ついに到着した。
「ここがザイドリッツの村だ」
「…………」
薄暗く、先が良く見えない。でも、家が建っているのは見えた。
すると、アウグストさんが叫ぶ。
「ザイドリッツ!! ザイド!! ワシだ、アウグストだ!! 来てやったぞこのクソッタレめ!!」
どこか怒りに満ちた声だった。
そして───俺の背中に冷たい何かが流れる。
『ア、アウグストさんではありませんカ。お久しぶりでス』
「よお、ゲヘナ。ザイドリッツはいるかい?」
『は、はイ。親方なら工房にいまス』
「わかった。入らせてもらうぜ……ん、どうした村長」
「…………」
俺の時間は、ピッタリ止まっていた。
俺たちの前に現れたのは、完全完璧な『黒い骸骨』だった。
皮の鎧っぽいのを着ている。骨は焼けたように真っ黒で、頭蓋骨の眼球部分のくぼみには赤い光が灯っている。どう見ても骸骨。動く骸骨だ。
『ア、りょ、緑龍の村の村長さんですネ。初めましテ、ワタシはゲヘナと申しまス』
「…………ど、どうも」
そう声を出すので精一杯だった。
これが、エルダーリッチ。リッチ種族の最上位。
黒い動く骸骨ことゲヘナさんが手を差し出してきたので、俺は意を決して握手する……う、すっごくひんやりしている。体温とかないのかな。
アウグストさんはズンズンと村の中へ。ルミナも気にしていないのか歩きだす。
俺なんて超ビビってるのに……うう、情けない。
『ア、どうもアウグストさン』
『オ客様、ですかネ』
『アウグストさン、一杯どうでス?』
現れる大量の骸骨たち。アウグストさんは笑顔で対応していた。
ルミナも気にしていないし、俺も何とか会釈だけはする。
村の一番奥にある家のドアを、アウグストさんは乱暴に叩く。
「おいザイド、来てやったぞ」
返事を待たずにドアを開けると、アウグストさんそっくりのエルダードワーフが、何かを書いていた。
こっちに気付かないほど熱中しており、アウグストさんはため息を吐いて頭にゲンコツを落とした。
「いっで!? テメ、何しやがる!!」
「そりゃこっちのセリフじゃ。せっかく来てやったのに無視しおって」
「あ? って、アウグストじゃねぇか!!」
「おう。で、用件を言え」
早ッ……アウグストさん、速いよ。
◇◇◇◇◇◇
挨拶もそこそこに、ザイドリッツさんは煙管を吹かしながらニヤッとした。
「アウグスト。おめー、今話題の緑龍の村で仕事してるみてぇだな」
「まぁな。建築関係を仕切ってる」
「相談なんだが……ウチの若けぇ衆を何人か揉んでくれねぇか?」
も、揉むって……あの骸骨集団を? めちゃくちゃ硬そうなんですが。
アウグストさんはため息を吐いた。
「あのな、エルダーリッチをいきなり連れて行けるワケねぇだろうが。日当たりのいい緑龍の村で、暗黒の化身ともいわれるエルダーリッチが暮らしていけるとでも思ってんのか?」
く、暗闇の化身?……なんかすっごい恐ろしい単語が聞こえたぞ。
「ワシもそう思ってたんだがな、そりゃ勘違いだ。あいつら、話せばいい連中だし疲労っつーもんを感じねぇのかほっときゃ永遠に仕事しやがる。長期の仕事をさせりゃだいぶ工期を短縮できるぜ」
「む……」
「おめぇもここに来るの久しぶりだし、連中と挨拶くらいしかしねぇだろ。騙されたと思って十人くれぇ連れて仕事してみな。ついでに、おめーの技術も叩きこんでくれや」
「ったく……くだらねぇ用事だったらブン殴ってやろうかと思ったが。村長、いいか?」
「え!? あ、はい」
「あ? んだ小僧、おめーが村長なのか?」
「は、はい」
ようやくザイドリッツさんは俺を見た。
「ふむ、いいツラしてるじゃねぇか」
「ど、どうも」
「村長よ、今言ったこと、頼んでもいいか?」
「え、えーっと……」
チラリと、部屋の中にいる骸骨たちを見ると、全員が口を開けて顎をカタカタさせた。
怖すぎる……ミュディとかいたらブッ倒れてるぞ。
ってか、怖すぎて拒否しようものなら襲い掛かってくる気がする。
「わ、わかりました」
「よし決まり。おいオメーら、自己紹介」
『『『『『『『『『『ヘイ、親方』』』』』』』』』』
黒い骸骨の一人が前に出て俺に向かって一礼する。
『自分、親方の一番弟子、ワイトと申しまス。村長、よろしくお願いしまス』
「よ、よろしくお願いします……」
『カカカカカッ!! 村の外に出るのは初めてデ、楽しみデス!!』
「…………」
こ、怖い。
ワイトさん。黒い骸骨が全身をカタカタさせながら喜んでいる姿は怖すぎる。
というか、村に連れて行って大丈夫かな……すっごい不安。
「とりあえず、オメーらは全員、ワシんとこで預かる。ザイド、こいつら何ができる?」
「とりあえず建築関係の初歩。村の家を見ただろ? それがこいつらの仕事だ」
「ふむ……わかった。教えることは山ほどありそうだ。ところで、こんなに建築を仕込んでどうするんだ?」
「穴倉の外で暮らせるように、町を作る予定だ。だが、地下のドワーフ連中は穴倉に引きこもって出て来やしねぇ。だから、エルダーリッチたちが穴倉に引きこもってるドワーフよりもいい家を作って、そこに他種族が住むようになれば出てくるかもしれねぇだろ? それと地下温泉と『大地の血液』を地上に引っ張る方法も探してる。知ってるか? こいつら、大地の血液に触れても溶けねぇんだよ」
「ほぉ……馬鹿はバカなりに考えてるっちゅうわけか」
「バカは余計だっつの。まぁいい……おいアウグスト、酒は持って来たんだろ? おいオメーら、今日は宴会だ!! 全員で準備するぜ!!」
『『『『『『『『『『ヘイ、親方!!』』』』』』』』』』
「うおっ!?」
大量の骸骨たちが骨をカタカタさせながら、宴会の準備に取り掛かった。
こうして、緑龍の村に『エルダーリッチ族』が十名、来ることになった。
「あ、はい」
ある日、アウグストさんがお酒に誘ってくれたのでバーで飲んでいると、そんな話をされた。
帰省はいいけど、お兄さんか……まだまだ知らないこと多いな。
最初の住人であるアウグストさんに、お兄さんがいるなんて思わなかった。
「アウグストさん、お兄さんがいたんですね」
「ああ。ザイドリッツっていうんだが、これまたクソみたいな野郎でなぁ。穴倉から飛び出して旅に出るわ、黒髑髏族の弟子を大量に抱えて戻ってくるわ、穴倉で受け入れられねぇからって、穴倉の傍にデケェ集落作って暮らし始めるわ、もうメチャクチャな野郎よ」
「……エルダーリッチ?」
「ああ、リッチ族は知ってるか?」
「し、知ってるも何も……リッチって、魔獣じゃ」
「そりゃ知能を持たねーやつのことだ。知能を持つリッチをハイリッチ族、ハイリッチの上位種がエルダーリッチ族ってんだ」
「なるほど。って……また上位種か」
リッチ(低能、意志を持たない魔獣)
ハイリッチ(知能を持つリッチ。普通の人間と変わらないらしい)
エルダーリッチ(ハイリッチの上位種、レア種族)
こんな感じか。ちなみに、リッチとハイリッチは人間とゴブリンくらい違うらしい。同じように扱うと本気でキレるらしいので注意が必要とか。
「で、兄貴がワシを呼んでるんだよ。あー……そうだ、村長も来るか?」
「え」
「あの野郎の頼みなんてロクなもんじゃねぇ。ワシがこの村に住んでることも秘密にしてたんだが、どうもバレちまったみたいだしな……恐らく、それ絡みだろうさ」
「えー……」
「よし、決まりだ。じゃあ明日出発するぞ」
「はい。って、明日!?」
こうして、俺とアウグストさんは、アウグストさんのお兄さんであるザイドリッツさんに会いに、エルダードワーフの故郷である《穴倉》……の、近くにある《エルダーリッチの村》へ行くことになった。
もう、この時点で嫌な予感しかしないよ……なんてな。
◇◇◇◇◇◇
翌日。アウグストさん、俺、ルミナの三人でエルダードワーフの穴倉へ向かった。
クジャタ便、エルダードワーフの穴倉まで行けるようになったんだな。おかげで、簡単に帰省できるようになったって、エルダードワーフの皆さんが喜んでた。
というか……なぜ、ルミナがいるのか。
「みゃう。別にいいだろ」
「うーん……まぁ、いいけど」
「ごろごろ」
頭をなでると喉がゴロゴロ鳴る。
アウグストさんは、ポケットから携帯用小瓶を取り出し、酒を飲んでいた。
「ふぃぃ、久しぶりに乗ったが中々いい乗り心地だ。穴倉まで一日で到着するのもいい」
「ですね。クジャタも慣れたのか、迷いなく走ってるし」
クジャタ、たまに放電するんだよな。護衛に乗ってるサラマンダー族に雷が直撃するけど平然としているし。
貨物車の整備師として同乗しているエルダードワーフのガレオンさんは、後ろの席で爆睡してる。
他にも、乗車しているのは十人くらいかな。エルダードワーフ、悪魔族、ハイエルフも何人かいる。
「みゃうー」
「おっと、おやつの時間だな」
ルミナにおやつのクッキーをあげるとすぐに食べてしまう。
そして、眠いのか俺の太腿を枕にしてスヤスヤ眠り始めた。
ルミナのネコミミを触っていると、アウグストさんが言う。
「村長、来てもらってこんな言い方はアレだが……ザイドリッツの野郎の言うことは聞かんでもいい。というか、全部拒否で頼むぜ」
「い、いいんですか?」
「ああ。どうせクソつまんねぇことだろうしな」
く、クソつまんねぇことって……どんなことだろうか。
そんなわけで、クジャタ便はエルダードワーフの穴倉へ到着した。
◇◇◇◇◇◇
エルダードワーフの穴倉。
その正体は《でっかい火山》だ。火山の下に、アリの巣のような空間が広がっており、そこでエルダードワーフたちは生活をしている。
なぜ、こんなクソ暑いところに住んでいるのかというと、《大地の血液》とかいう真っ赤なドロドロした高温の液体が、鍛冶や火仕事をするのにもってこいだとか。
だが、今回はエルダードワーフの穴倉ではない。
「確か、こっちだな」
アウグストさんの案内で、穴倉を素通りして、その奥にある森の中へ。
森の中は、非常に……というか、寒気を感じた。
「な、なんか寒いですね」
「そうか? ほれ、地面はあったけぇぞ? 《大地の血液》が流れてる」
「え、ええ……」
「みゃあ。たしかにあったかいぞ」
ルミナはしゃがみ、地面に触れて確認していた。
寒いのは俺だけなのかな……寒いというか、凍りそうというか。
森の奥に進むにつれ、日が差し込みにくく、暗くなっていく。
そして、ついに到着した。
「ここがザイドリッツの村だ」
「…………」
薄暗く、先が良く見えない。でも、家が建っているのは見えた。
すると、アウグストさんが叫ぶ。
「ザイドリッツ!! ザイド!! ワシだ、アウグストだ!! 来てやったぞこのクソッタレめ!!」
どこか怒りに満ちた声だった。
そして───俺の背中に冷たい何かが流れる。
『ア、アウグストさんではありませんカ。お久しぶりでス』
「よお、ゲヘナ。ザイドリッツはいるかい?」
『は、はイ。親方なら工房にいまス』
「わかった。入らせてもらうぜ……ん、どうした村長」
「…………」
俺の時間は、ピッタリ止まっていた。
俺たちの前に現れたのは、完全完璧な『黒い骸骨』だった。
皮の鎧っぽいのを着ている。骨は焼けたように真っ黒で、頭蓋骨の眼球部分のくぼみには赤い光が灯っている。どう見ても骸骨。動く骸骨だ。
『ア、りょ、緑龍の村の村長さんですネ。初めましテ、ワタシはゲヘナと申しまス』
「…………ど、どうも」
そう声を出すので精一杯だった。
これが、エルダーリッチ。リッチ種族の最上位。
黒い動く骸骨ことゲヘナさんが手を差し出してきたので、俺は意を決して握手する……う、すっごくひんやりしている。体温とかないのかな。
アウグストさんはズンズンと村の中へ。ルミナも気にしていないのか歩きだす。
俺なんて超ビビってるのに……うう、情けない。
『ア、どうもアウグストさン』
『オ客様、ですかネ』
『アウグストさン、一杯どうでス?』
現れる大量の骸骨たち。アウグストさんは笑顔で対応していた。
ルミナも気にしていないし、俺も何とか会釈だけはする。
村の一番奥にある家のドアを、アウグストさんは乱暴に叩く。
「おいザイド、来てやったぞ」
返事を待たずにドアを開けると、アウグストさんそっくりのエルダードワーフが、何かを書いていた。
こっちに気付かないほど熱中しており、アウグストさんはため息を吐いて頭にゲンコツを落とした。
「いっで!? テメ、何しやがる!!」
「そりゃこっちのセリフじゃ。せっかく来てやったのに無視しおって」
「あ? って、アウグストじゃねぇか!!」
「おう。で、用件を言え」
早ッ……アウグストさん、速いよ。
◇◇◇◇◇◇
挨拶もそこそこに、ザイドリッツさんは煙管を吹かしながらニヤッとした。
「アウグスト。おめー、今話題の緑龍の村で仕事してるみてぇだな」
「まぁな。建築関係を仕切ってる」
「相談なんだが……ウチの若けぇ衆を何人か揉んでくれねぇか?」
も、揉むって……あの骸骨集団を? めちゃくちゃ硬そうなんですが。
アウグストさんはため息を吐いた。
「あのな、エルダーリッチをいきなり連れて行けるワケねぇだろうが。日当たりのいい緑龍の村で、暗黒の化身ともいわれるエルダーリッチが暮らしていけるとでも思ってんのか?」
く、暗闇の化身?……なんかすっごい恐ろしい単語が聞こえたぞ。
「ワシもそう思ってたんだがな、そりゃ勘違いだ。あいつら、話せばいい連中だし疲労っつーもんを感じねぇのかほっときゃ永遠に仕事しやがる。長期の仕事をさせりゃだいぶ工期を短縮できるぜ」
「む……」
「おめぇもここに来るの久しぶりだし、連中と挨拶くらいしかしねぇだろ。騙されたと思って十人くれぇ連れて仕事してみな。ついでに、おめーの技術も叩きこんでくれや」
「ったく……くだらねぇ用事だったらブン殴ってやろうかと思ったが。村長、いいか?」
「え!? あ、はい」
「あ? んだ小僧、おめーが村長なのか?」
「は、はい」
ようやくザイドリッツさんは俺を見た。
「ふむ、いいツラしてるじゃねぇか」
「ど、どうも」
「村長よ、今言ったこと、頼んでもいいか?」
「え、えーっと……」
チラリと、部屋の中にいる骸骨たちを見ると、全員が口を開けて顎をカタカタさせた。
怖すぎる……ミュディとかいたらブッ倒れてるぞ。
ってか、怖すぎて拒否しようものなら襲い掛かってくる気がする。
「わ、わかりました」
「よし決まり。おいオメーら、自己紹介」
『『『『『『『『『『ヘイ、親方』』』』』』』』』』
黒い骸骨の一人が前に出て俺に向かって一礼する。
『自分、親方の一番弟子、ワイトと申しまス。村長、よろしくお願いしまス』
「よ、よろしくお願いします……」
『カカカカカッ!! 村の外に出るのは初めてデ、楽しみデス!!』
「…………」
こ、怖い。
ワイトさん。黒い骸骨が全身をカタカタさせながら喜んでいる姿は怖すぎる。
というか、村に連れて行って大丈夫かな……すっごい不安。
「とりあえず、オメーらは全員、ワシんとこで預かる。ザイド、こいつら何ができる?」
「とりあえず建築関係の初歩。村の家を見ただろ? それがこいつらの仕事だ」
「ふむ……わかった。教えることは山ほどありそうだ。ところで、こんなに建築を仕込んでどうするんだ?」
「穴倉の外で暮らせるように、町を作る予定だ。だが、地下のドワーフ連中は穴倉に引きこもって出て来やしねぇ。だから、エルダーリッチたちが穴倉に引きこもってるドワーフよりもいい家を作って、そこに他種族が住むようになれば出てくるかもしれねぇだろ? それと地下温泉と『大地の血液』を地上に引っ張る方法も探してる。知ってるか? こいつら、大地の血液に触れても溶けねぇんだよ」
「ほぉ……馬鹿はバカなりに考えてるっちゅうわけか」
「バカは余計だっつの。まぁいい……おいアウグスト、酒は持って来たんだろ? おいオメーら、今日は宴会だ!! 全員で準備するぜ!!」
『『『『『『『『『『ヘイ、親方!!』』』』』』』』』』
「うおっ!?」
大量の骸骨たちが骨をカタカタさせながら、宴会の準備に取り掛かった。
こうして、緑龍の村に『エルダーリッチ族』が十名、来ることになった。
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