大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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日常編㉑

第626話、シオンの風呂

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「ふにゃぁぁぁ~~~……いい湯」
「…………」

 ある日、俺はミュアちゃんとルミナを連れて村長湯に入っていた。
 のんびり湯船に浸かっていると、素っ裸のシオンが現れ湯船に飛び込んで来たのだ。

「にゃああ」
「みゃうー」

 ミュアちゃんとルミナは全く気にしていないけど……俺はする。
 だってシオン、裸だぞ。
 ミュアちゃんとルミナは子供だからまだいい。でも、シオンは十六歳。
 いろいろ成長してるし、俺と一緒は問題がある。それと……シオンは羞恥心がない。
 俺の部屋にたまーに来て寝るけど、裸で潜りこんでくるし胸にしがみついて寝るし、気が気じゃない。
 やめるように言っても「アタシの勝手だろ」の一言で終わる。

「おい、髪洗え」
「え……俺?」
「オマエ以外に誰がいる」

 シオンはザバッと湯船から出ると、風呂椅子に座った。
 あの……お願いだから足開かないで。
 俺は背中側に回り、シオンの髪の毛を植物石鹸で洗う。

「ふみゃ……おい、もっと強く」
「はいはい。ほら、ネコミミ閉じて」

 そう言うと、シオンのネコミミがパタッと閉じる。耳に泡が入ると痛いもんな。
 シオンの髪は長い。ミュディが少し切ったみたいだ。初めて会ったときは伸びっぱなしで、汚れでボロボロだった。でも、ハイエルフ製の植物石鹸と、ミュディのお手入れでこんなにも綺麗になった。
 毛量が多い、サラサラした髪の毛。ネコミミも丁寧に洗うと、ごきげんなのか尻尾が揺れた。

「みゃぁ~……おい、背中も洗え」
「はいはい」
「みゃふぅぅ……前」
「いや、それは無理」
「いいから洗え」
「お、おいこっち向くな!!」

 シオンは羞恥心がない……頼むから、足開いて堂々とこっち向かないでくれ。

 ◇◇◇◇◇◇

「……ってことがあったんだ。ミュディ、なんとかしてくれ」
「そ、そんなことが。確かに、シオンちゃんはアシュトにも懐き始めてるよねぇ。わたしが、寝る前にアシュトのこといっぱい話すからかもしれないけど」
「お、俺のこと話してるのか?」
「まぁ、わたしの旦那様だしね」

 ミュディはクスクス笑う。
 とりあえず、シオンのことはミュディに任せるか。
 すると、ミュアちゃんの代わりにお茶を淹れにきたシルメリアさんが言う。

「……シオン。全く、あの子はもう」

 ボソリと、シオンを咎めるように言った。
 そして、俺に向かって言う。

「ご主人様。シオンのことですが、私にもお任せいただけないでしょうか」
「え、シルメリアさんに?」
「はい。あの子の我儘を、直したいと思います」
「……わかった。シルメリアさんにも任せるよ」
「ありがとうございます」

 さて、シルメリアさんはどうするのだろうか?

 ◇◇◇◇◇◇

「さ、こっちに来なさいシオン、洗いますよ」
「ううう、なんでオマエがここに……」
「ご主人様にあなたのことを頼まれたからですよ」
「にゃあー」
「みゃぅぅ」
「あなたたちも、こっちに来なさい。順番に洗いますから」

 えー……村長湯に、新たにシルメリアさんが来ました。いやもう、裸で。
 あの、なんでここに?……そう言わずにはいられなかった。

「シオンがご迷惑をおかけしているようなので、これからは毎日、私がシオンを洗います」
「は、はあ……」

 違う、違うんだよシルメリアさん……ここじゃなくて、女湯でやってくれ。
 二人を直視できない。暴れるシオンを羽交い絞めするシルメリアさん。裸なので、見るに見れない……うう、ここで暴れないでくれ。
 すると、ミュアちゃんが俺の元へ。

「にゃあ。ご主人様、髪洗ってー」
「みゃう、あたいも」
「……ああ。わかった」

 この二人は安心するなぁ。
 風呂椅子に座り、尻尾をフリフリしながら俺を待つ。
 すると、シルメリアさんが。

「ご主人様、私が」
「いや、俺がやるよ。シルメリアさんは、シオンを」
「……わかりました」
「ふしゃーっ!! 言加減離せっ!!」

 俺は、ミュアちゃんの髪を丁寧に洗い、ネコミミを揉み洗いする。
 同じく、ルミナのネコミミも。するとシオンが。

「おい、アタシも洗えっ」
「シルメリアさん、お願い」
「かしこまりました」
「うみゃっ!?」

 シオンは、シルメリアさんにごしごし洗いされていた。

 ◇◇◇◇◇◇

 最初こそ、シルメリアさんがシオンを洗うようになっていたが、シオンはシルメリアさんに対する恐怖からか、村長湯ではなく女湯で、しかも一人で洗うようになった。
 シルメリアさんも、お役御免と村長湯に来ることはなくなった。
 おかげで、今はのんびりエルミナと二人で入っている。

「いや~……最近、いろいろあって疲れたよ」
「シオンでしょ? あんたも大変ねぇ」
「まーな。あの子、羞恥心がないから……」
「ほらほら、マッサージしてあげるから後ろ向いて」
「おお、ありがとな」
 
 エルミナは、湯船で俺の背中をマッサージしてくれる。
 これがまた気持ちいい……さすがエルミナ。
 すると、ドアが開いてローレライとクララベルが入ってきた。ローレライはしっかりタオルを巻いているが、クララベルは素っ裸だ。

「お兄ちゃん、来たよーっ!!」
「ああ、いらっしゃい……ふぁぁ」
「二人ともお疲れ。ふふん、今なら私がマッサージしてあげるわよ」
「やったぁ!! よーし」
「クララベル、まずは身体を洗うわよ」

 エルミナにマッサージされ、意識が落ちかけた。
 とろんとした眼で洗い場を見ると、ローレライがクララベルの髪を洗っている。

「あ~~~……やばい、寝る」
「風呂で寝ちゃダメ。はい、おしまい」
「おお、ありがとよ。お前、マッサージこんなに上手だったのか」
「まぁね。じゃあ次は私ね」
「え、俺? まぁやってみるけど」

 とりあえず、肩を揉む。
 研究疲れなのか、凝っているな。

「あ~~~……気持ちいいわ」
「よくわからんから、適当だけどな」
「それでも気持ちいいの……ふぁぁ」
「おい、寝るなよ」
「ん~~~」
「終わった!! お兄ちゃん、入るよーっ!!」

 クララベルが飛び込んで来た。
 ローレライも、ゆっくり湯船に。

「……あれ、ローレライ? それは?」
「本を持ってきたの。濡らさないように、カバーに入れてね」

 ローレライは本を持参していた。
 風呂で読書か……なるほど、そういうのもいいな。

「そういえば、以前ルシファーが言ってたな。足だけ湯に浸かってのんびりするカフェがあるって。確か……『足湯』だったかな」
「へぇ、そんなのあるんだ」
「ああ。足だけでも気持ちいいみたいだぞ? ふーむ」

 足湯……ちょっと、フロズキーさんに相談してみるか。

「お兄ちゃん、マッサージしてー!」
「はいはい。クララベル、こっちおいで」

 とりあえず、今はクララベルに構ってやるか。

 ◇◇◇◇◇◇

 数日後、公衆浴場の隣に『足湯』ができた。
 フロズキーさんに相談するなり、「ああ、そういやそういう風呂もあったな。ちょっと待ってろ」と、翌日に工事を開始。その日のうちに足湯用の浴槽と、東屋がいくつか完成した。
 足を湯に浸しながらのんびりする場所だ。ここは無料で使用できる。
 完成するなり、ローレライは足湯へ。

「フフ、気持ちいい……足湯、最高じゃない」
「確かに……いいな」

 俺も、ローレライの隣にいる。
 ズボンをまくり上げ、素足を踝の上まで湯へ。
 気分も落ち着き、読書するにはピッタリだ。
 すると、漆黒の骸骨が俺たちの東屋へ。

『失礼しまス。相席、よろしいですカ?』
「ええ、どうぞ」
「ど、どうぞ……」

 ビックリした……エルダーリッチ族の、えーっと……ボーンズさんか。
 エルダーリッチ、見た目で判別できないから、魔犬族の少女たちが名前を刺繍した腕章を作ってくれたんだ。みんな、腕章に大喜びしてたっけ。
 ボーンズさんは座り、足湯を堪能している。

『ホホ、これは気持ちいいですナ……』
「ふふ、そうでしょう?」
『でハ、私も読書するとしましょウ』
「あら、あなたも本が好きなの?」
『エエ。本は素晴らしい、ココには大量の蔵書があるので、退屈しませんヨ』
「ふふ、おススメの本などあったら教えてほしいわ」

 いつの間にか、ローレライとボーンズさんは仲良くなっていた。
 うーん、足湯で読書仲間か……こういうのも、悪くないな。
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