大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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もう一つの龍人族

第660話、いざドラゴンエイジ森国へ

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「よし、とりあえずこんなもんかな」

 俺は一人、薬院で書類の整理を終えて背伸びをする。
 明日はレヴィの国である『ドラゴンエイジ森国』という、もう一つの龍人族が作った国へ行くのだ。
 ドラゴン……正直、面倒なことになる予感しかない。
 俺は薬院を出て屋敷へ戻る。すると、エルミナがリビングのソファに座って晩酌していた。

「ん、アシュト」
「エルミナ。飲みすぎるなよ」
「はいはーい。ね、あんたも飲みなさいよ。ほれほれ」
「わかったわかった。少しだけな」
 
 エルミナの隣に座り、酒を注いでもらう。
 綺麗な琥珀色の酒だ。エルダードワーフたちと共同開発したとかいう酒らしいけど。
 飲むと、喉が焼けそうなくらい熱い。

「っか、すっごいなこれ。喉が焼けそうだ」
「んふふ。おいしいでしょ?」
「まぁ確かに、美味い」

 おかわりをもらい、口を濡らす。
 飲むもんじゃないな、口を濡らしながら舐めるのが正しい飲み方かも。
 俺は、テーブルにあったキャンディを口に入れ、酒を舐めた。

「ん、合うな……うまい」
「でしょ? これ、甘いキャンディに合うのよ。最近、こうやって飲むのが好きなのよね。アウグストたちはガブガブ飲むけど」
「相変わらず酒好きだな……」

 エルミナは、口元を酒で濡らす。
 けっこう顔が赤い。酔ってるみたいだな。

「ねえ、明日行くの? 私も行きたいかも~」
「ダメダメ。行けるのは俺と、ローレライとクララベル、あとアイオーンだけだ。初めて行く場所だし、龍人族の国だって言うし」
「ぶ~……いいなぁ」
「悪いな。今度また釣りに行くか」
「うん。あ!? 釣りで思い出した!! 明日メージュたちと早朝海釣りするんだった!! のんびり飲んでる場合じゃない!!」
「うぉぉぉ!?」

 エルミナは立ち上がり、酒瓶やおつまみを担いで屋敷を飛び出していった。
 なんなんだあいつ……まぁ、最近あまり遊んでないし、一緒に釣りとかはしたいな。
 部屋に戻ろうとすると、屋敷のドアが開いた。

「は~いみんな、到着で~す」
「にゃあ」「みゃうー」「ふにゃ」「くぅん」
「まんどれーいく」「あるらうねー」
「くぁ~あ……眠くなってきた」

 なんだなんだ。
 ミュディ、シェリーが子供たちをいっぱい連れてきた。
 ミュアちゃん、ルミナ、シロネちゃん、ライラちゃん。
 マンドレイクとアルラウネにシオン。ぞろぞろと屋敷に入ってきたぞ。

「あ、お兄ちゃん」
「おお、シェリー……どうしたんだ? こんないっぱい」
「今日はみんなでお泊り会なのよ」
「にゃああ。ご主人さまも一緒にお泊りする?」
「みゃうう、なでろ」
「ふにゃあー」
「おっとっと。ははは……」

 子供たちがまとわりついてきたので、全員の頭を撫でる。

「ミュディ、みんなを頼むな。俺は明日から留守にするから」
「うん、任せて。えへへ……みんな可愛いし、お泊りすっごく嬉しいの」
「ミュディが一番喜んでるわ……ま、気を付けてね、お兄ちゃん」
「ああ」

 シェリーの頭もついでに撫でると、「や、やめてよ」と照れたシェリーに手を叩かれた。

 ◇◇◇◇◇

 翌日。
 朝食を食べて外へ出ると、レヴィが待っていた。
 
「準備はできたか?」
「ああ。で……どうやって行くんだ?」
「私が運ぶ」

 すると、レヴィが変身。
 水色の、透き通った綺麗なドラゴンとなったレヴィ。クララベルが「わぁ~!」と喜び、ドラゴンとなったレヴィに抱き着いた。

「すっごい!! 家族以外のドラゴン、はじめてかも!!」
『おい、はしゃぐな。さっさと乗れ』
「綺麗……水のような身体ね」
「ほっほ~、これって乗ったらザブンと体内に落っこちませんかねぇ?」

 ローレライとアイオーンも驚いている。
 俺はローレライに聞いてみた。

「な、そういえば……ガーランド王にはこのこと、伝えたのか?」
「一応ね。とりあえず正式な挨拶は後日ってことにするみたい。今回はアシュトがお誘いを受けたから、私たちはドラゴンロード王国の姫君としてではなく、緑龍の村の村長であるアシュトの妻として会うつもりよ」
「なるほど……ん? それじゃあ」

 ちらっとアイオーンを見ると、なぜかニヤッと笑った。
 言っておくが、お前は俺の奥さんじゃないからな。

『おい、さっさと乗れ』
「ああ、わかった」

 クララベルは背中に飛び乗り、俺とローレライは尻尾から、アイオーンは前足から背中に上る。
 当然だが、つかむところはない。
 クララベルは足をパタパタさせ、ローレライはお嬢様みたいに横座り。
 すると、アイオーンが。

「ふふん、あたしに掴まってもいいですよん」
「……じゃ、じゃあ遠慮なく」

 俺はアイオーンにピッタリくっついた。
 そして、レヴィがブワッと翼を広げて浮かび上がる……ちなみに、竜騎士たちは全員敬礼して見送っている。他国へ行く場合は護衛を付けるのが普通なんだけど、今回は親善大使みたいな扱いなのでない。
 上空へ浮かび上がったレヴィが言った。

『一気に行く。落ちるなよ』
「ねーねー、わたしも一緒に飛んでいいー?」
「クララベル、やめなさい」
「ぶー」
「お、おい……あんまり刺激しないでくれ。まだ怖いんだよ」
「くふふ、アシュト村長があたしを抱きしめてる~♪」

 そして───……レヴィは、一気に加速して飛んだ。

 ◇◇◇◇◇

 一時間は飛んだだろうか。
 最初は猛スピードに気絶しそうになったが、徐々に速度に慣れると周りを見る余裕もできた。
 レヴィは、オーベルシュタイン上空をまっすぐ飛んでいる。下を見ると雲しかみえないので、かなりの高度を飛んでいるようだ。
 
『おい、結界を通る。目を閉じていろ』
「結界?」
『ドラゴンエイジ森国は結界に守られている。そこを通れるのは王家の許可を得た者だけだ』

 そう言ってるうちに、レヴィは急降下。
 雲を抜けた瞬間、視界が真っ白になった。

「わぁぁーっ!! あははっ、姉さますごいねっ!!」
「不思議な魔力……温かいわ」
「おおお~っ!! う~ん、心地いいですなぁ」
「うぉぉぉぉぉっ!?」

 真っ白な光を抜けると───……急に温かくなった。
 目を開けると、すごい光景が広がっていた。

「す、すげぇ……」

 そこは、森に囲まれていた不思議な国だった。
 森の中にある巨大な城、城を囲むように街が見える。さらに大きな川が流れ、湖まであり……湖には大きなドラゴンが何体も泳いでおり、上空にもドラゴンが飛んでいる。
 雨でも降った後なのか、虹が国を包み込んでいた。

『ここがドラゴンエイジ森国。我が故郷だ』
「すごーいっ!!」
「大きいわね……ドラゴンロード王国に匹敵するわ」
『このまま王城まで向かう。その後、王に謁見してもらう』
「お、王様か……」

 忘れてた。王様に会いに来たんだ……シエラ様に関係してそうな王様らしいけど、大丈夫かなぁ。
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