大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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もう一つの龍人族

第661話、龍の祖

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 レヴィに案内されて到着した王城の控室にて。
 半龍人のメイドさんが淹れてくれたお茶を飲みながら、すごくふかふかなソファで待っていた。
 レヴィは「陛下に報告してくる」と言って行ってしまい、部屋にいるのは俺たち四人だけ。
 俺は、紅茶を飲み終えると持参したお土産を確認する。

「えっと、最高級セントウ酒を持ってきたけど……うん、大丈夫だな」

 最高級セントウ酒。
 エルミナの研究により、熟成させることでセントウ酒に深みが増すことがわかった。持ってきたセントウ酒は、村でセントウが収穫されてすぐに仕込んだ物で、数が少ないので俺が管理している物だ。
 熟成期間が長ければ長いほど味に深みが増す。今回、ちょっと『成長促進グロウアップ』の魔法で熟成をさらに深めてみたら、すっごく味わい深い酒になった。
 それを、今回の訪問のために特別に作ってもらった瓶と木箱に入れて持ってきた。

「クンクン……アシュト村長、それ気になってましたけど~……すっごくいい匂いしますねぇ」
「王様に献上する酒だからな。たぶん、村で一番高級なやつだぞ」

 さらにもう一本。
 こっちはヤマタノオロチの酒だ。俺がいないときにエルミナが狩った魔獣で、超巨大な瓶に入れて、村の片隅に保存してある。専用の建物まで建てて、お祝い事がある時とか少量ずつ飲んでいる。
 こっちも立派な瓶に入れて持ってきた。

「よし、お土産は大丈夫だ。今回は挨拶だから、うん……」
「アシュト、緊張してるの?」
「そりゃするだろ……」

 ローレライは、紅茶を飲みながら待っている。
 優雅な姿だ。緊張の欠片もないな。

「お兄ちゃん、緊張してるならわたしがほぐしてあげるね!!」
「え?」
「はいはい、こっちきてー」

 クララベルの言う通りに座ると、クララベルが背後に回り、肩を揉んでくれた。

「えへへ、お兄ちゃん凝ってますねー」
「おぉ~……気持ちいい」
「パパとママにもよくやってあげてるんだー」

 クララベルは俺の肩を揉んでくれる。
 緊張をほぐす、肩を揉む、意味がつながらないけど、気持ちいいことに変わりない。
 しばらく肩もみしてもらうと、緊張もほぐれた……気がする。
 すると、ドアがノックされた。

「失礼する。陛下がお待ちだ、案内する」
「ええ、お願いね」
「おお」
「うん!!」
「ほぉ~い」

 さて、肩のコリもほぐれたし、王様にご挨拶しますかね。

 ◇◇◇◇◇

 さて、やってきました謁見の間。
 すごい。今まで王様に謁見する機会は何度かあったけど、こんな立派な謁見の間は初めて見た。
 黄金のドラゴン像がいくつも並び、壁にはドラゴンの壁画、ドラゴンの像の口からは水がドバドバ出て、謁見の間の中を流れている。
 謁見の間には何人も兵士がいるけど、装備がどれも高級そうで立派な鎧だ。剣、槍を手に持ち……うん、全員がイケメンです。
 玉座は数段高い場所にあり、ドラゴンを模した大きな椅子には誰かが座っている。

「近こう寄れ」

 若い声。
 言われた通りに近づくと、その姿が見えた。
 金髪、金眼の美青年だ。二十代前半くらいにしか見えない。超絶イケメン青年。
 黄金を基調とした立派な服を着て、アクセサリーがいっぱい付いてる。俺たちを見て笑みを浮かべ、ほんの少しだけ首を傾げている。
 この人が、もう一つの龍人の祖。

「朕は『神龍皇王ゴッド・ゼウス・ドラゴン』トルトニス。初にお目にかかる……ムルシエラゴ様の眷属、アシュトよ」

 すっごい威厳を感じる。ルシファーよりもオーラがある。
 俺は頭を下げた。

「は、初めまして。緑龍の村、村長のアシュトです。此度はお招きいただき、ありがとうございます」
「うむ。遥々ご苦労であった……そちらは?」

 と、トルトニス様はローレライたちを見る。

「お初にお目にかかります。私はアシュトの妻、『真龍天帝エンシェント・ノウヴァ・ドラゴンアンフィスバエナ』を祖とする、『|月光龍《ムーンライト・ドラゴン』ローレライです」
「ほう、話に聞いていた、もう一つの祖か……」
「同じく、『白雪龍ブランシュネージュ・ドラゴン』クララベルです」
「同じく、『時流龍クロノスタシス・ドラゴン』アイオーンです」
「ほほう……確かに、朕とは違う龍の力を感じる」

 朕。ちんって、珍しい一人称だな……初めて聞いたわ。
 すると、トルトニス様は立ち上がる。そして、俺たちの元へ。

「…………」
「あ、あの」

 なぜかトルトニス様は、俺の顔を覗き込んだ。

「……羨ましい」
「え?」
「いや、なんでもない。さて……今回、そなたたちを呼んだ理由は、特にない。朕とは違う龍の祖の子たちを、見てみたかったのだ。そして、ムルシエラゴ様の眷属……」
「え、えっと……」
「ふ……朕とは違う龍の祖。一度会ってみたいものだ」

 トルトニス様は微笑んだ。
 なんか、そんなに怖くない感じの人だな。あ、そうだ。

「と、トルトニス様……お土産をお持ちしたのですが、ここで出してよろしいですか?」
「土産か。気を遣わせてすまんな。出して構わんぞ」

 さっそく、木箱に入ったお酒を出す。
 トルトニス様に直接ではなく、傍に来たお付きの方へ。中を確認してもらうと。

「これは……セントウ酒、か」
「はい、緑龍の村で育てた、最高級品……」
「───……う、うぅぅ」
「え」

 な、なんと……トルトニス様が泣き出した。
 意味が分からない。なんで? めっちゃ泣いてるんですけど!?

「あ、あの」
「す、すまん……な、懐かしい。幼き頃、シエラ様とよくこの酒を飲んだことを思い出してな……し、シエラ様、ぼく、ぼく……あ、会いたいです、シエラ様」
「え、えっと……だ、大丈夫ですか?」

 きゅ、急に子供みたいに……って、えぇぇぇぇ!?
 
「シエラ様、うぅぅ……ぼく、シエラ様に会いたいよぅ」

 トルトニス様が小さくなった。
 マジで、物理的に縮んだ。二十代前半くらいだったのに、今は六歳くらいになってる!?
 唖然とする俺、ローレライ。クララベルは「かわいい」とか言ってるけど。
 俺はお付きの方を見る。

「陛下。大丈夫ですよ、シエラ様はきっと、陛下の元へ来てくれますから」
「ほんと……? うそじゃない?」
「ええ、きっと」
「……うん」

 子供になったトルトニス様は涙をぬぐい、俺へ。

「アシュトよ。今日は宴を開く。シエラ様のこと、いっぱい聞かせてほしいのだ」
「え、あ……は、はい」
「うんうん。じゃあ、お昼寝の時間だからまたね!!」

 そう言い、トルトニス様はタタタッと駆け出して消えた。
 ポカンとする俺たち……こうして、謁見は終わった。

 ◇◇◇◇◇

 今日は泊まることになった。
 宴の前に身を清めろってことで、黄金の大浴場へ案内される。
 着替えは一応用意してきたけど、綺麗な黄金の礼服を用意してもらった。そして、大浴場にいたのは……大勢の半龍人たち。
 なんでも、俺の身体を洗う人たちらしい。右腕担当、左腕担当、頭髪担当、右足、左足担当、背中担当……いやいや、そんなにいらん!! 
 全員を追い出し、一人で身体を洗い湯舟へ。
 こんだけデカイ湯舟を独り占め……ちょっと気分いいかも。

「はぁぁ~……村の浴場とは違う解放感、最高かも」
「うふふ、そうよねぇ~」
「ええ、最高ってシエラ様!?」

 来るとは思って警戒してたけど、やっぱビビるね。
 しかも裸……ちょ、直視できません。

「トルトニス様に会ったのね?」
「ええ。その、いきなり子供になったんですけど……それに、シエラ様に会いたがってましたよ?」
「あの子の中には、いろんな人格のトルトニスくんがいるの。普段は大人のトルトニスくんだけど、悲しむと子供のトルトニスくんに、怒るとおじさんのトルトニスくん、喜ぶとおじいさんのトルトニスくんに代わるのよ」
「へぇ~……なんか、大変ですね」
「そうなの。あの子……私が育てた子なんだけど、お母さん離れできなくてねぇ。私がそばにいたら、いつまでも独り立ちできないと思って、距離を置いてるのよ。お手紙とかは出してるんだけどね」
「そうなんですか?」
「ええ。あの子、私が大好きで、ずっと眷属になりたがってたから……ね、アシュトくん。あの子のお友達になってあげてくれない?」
「お、お友達ですか? 俺が、龍人の祖と?」
「立場は関係ないわ。あの子は、まだ子供だから」
「……まぁ、俺でよければ」
「ありがとう。じゃあ、今日は楽しんでね」

 ザバッと立ち上がるシエラ様……うおぉ、見ちゃった。
 顔を逸らすと、シエラ様が俺の頬にキスしてくれる。

「じゃ、またね」

 そう言い、シエラ様は出て行った。
 残された俺は、顔を湯で洗う。

「友達、か……」

 なんか、想像してた展開とは違うけど……平和的だし、やってみるか。
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