大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

文字の大きさ
468 / 474
もう一つの龍人族

第662話、ちょっとその……勘弁してください

しおりを挟む
 準備されていた服に着替えると、浴場の前にいた案内人さんが別室へ案内してくれた。
 そこで、髪や顔に化粧水っぽいのを付けてくれる。
 いい匂い。なにかの樹液か、葉を潰したものか……薬師として興味あるな。
 そんなことを考えていると、化粧が終わり、また別室へ。
 そこには、ローレライたちがいた。全員ドレス姿で、髪も丁寧にまとめている。

「ふふ、似合ってるわ、アシュト」
「お、おう……お前もな」

 ローレライ。
 胸元を強調した、白いドレスで、所々にブルー系の装飾が施されている。背中にはなんと月の刺繍……すごいな、ローレライにピッタリだ。

「お兄ちゃん、わたしは?」
「うん、クララベルは可愛いね」
「やったぁ」

 クララベルも白いドレスだ。
 長い髪はポニーテールにして、髪飾りを付けている。
 白いツノにもリングみたいなのをはめており、綺麗というよりは可愛らしい。

「あ、うちに感想はいらないっすよん」
「お前ならそう言うと思ったよ……ま、似合ってるけど」
「い、いらないって言ったべさ!!」

 照れてるアイオーン。
 こっちは紫系のドレス。なんというか、ローレライよりも胸元を強調してるせいで、普段は野暮ったい服装のアイオーンが色っぽく見えてしまう。
 俺はコホンと咳払いした。

「これから宴なんだよな?」
「そうらしいわね。ふぅ……トルトニス様、不思議なお方ね」
「なんか可愛くなったよね」
「うんうん。ショタはいいねぇ」
「シエラ様が言うには、感情でいろいろ変わるらしい。まぁ、怖い感じじゃなくて安心したよ」
「そうね。友好的みたいだし……お爺様やお父様も、ちゃんとご挨拶できれば、ドラゴンロード王国と友好関係を結べるかもしれないわ」

 と、ここでドアがノックされ、ドレス姿のレヴィが入ってきた。

「支度はできたか? 会場へ案内しよう」
「ああ、頼む」
「……王はやや不安定だ。いいか、刺激するなよ」

 レヴィは俺をジロッと睨み、さっさと歩き出す。
 俺たちはそのあとに続き、城の渡り廊下を抜け、別館にある宴会場へ。
 宴会場は立食形式のようだ。たくさんの円卓に、この国の重役っぽいおじさん、おばさんが大勢いる。みんなツノが生えているし、龍人族なのかもな。
 玉座には、よぼよぼのおじいさんが座っていた……ああ、あれが今のトルトニス様か。

「き、き、来たか……おっふぉっふぉっふぉ」

 トルトニス様は立ち上がるとプルプルしながらグラスを手に取った。

「さささ、アシュトくんや、こっちにおいで」
「は、はい」
 
 レヴィにこっそり背中を小突かれ玉座の隣にある椅子へ。
 うわっ……トルトニス様、めちゃくちゃヨボヨボじゃん。手足が骨と皮みたいだし、眼もほとんど閉じてるし、顔も染みだらけで腰めちゃくちゃ曲がってる。
 ローレライたちは、俺の隣に並んで座った。
 トルトニス様は、立ち上がって言う。

「みな、聞けぃ……今宵は、素晴らしき出会いに、グェッホエッホ!! かか、感謝!! 新たな同胞、えーっと……アシュト? だっけ? えーと……まぁうん、今宵はよく飲み、よく食べるように!! では乾杯しようかの」

 め、めちゃくちゃボケてる……さっきの凛々しい青年トルトニス様と別人すぎるぞ。
 重役たちや龍人たちは慣れっこなのか、特に何も言わずグラスを取る。
 俺たちもグラスを取り、トルトニス様がグラスを掲げた。

「では、かんぱいっ、っぐぇっふぉえっほ!!」

 トルトニス様は盛大にせき込み、なんとも言えない乾杯となった。

 ◇◇◇◇◇

 さっそく宴会が始まった。
 だが……俺は飲み物をさっそくこぼしたトルトニス様のために、おしぼりを手にする。

「トルトニス様、大丈夫ですか?」
「おお、すまんの、すまんのぉぉ」

 おしぼりで口を拭き、新しい飲み物を給仕に頼む。
 目の前には料理のテーブルがあるので、聞いてみた。

「トルトニス様、何か食べます?」
「ふむぉぉ……肉がいいのぉ」
「肉ですね。じゃ、取りますね」
「すまんのぉ……優しいのぉ」

 シエラ様に頼まれてるからな……でもこれ、友達ってか介護みたいだな。
 まぁ別にいいか。俺は肉の皿をトルトニス様の前に置き、フォークを渡す。

「肉、切りますか?」
「頼んでいいかのぉ?」
「もちろん」
「……ね、アシュト。大丈夫?」

 と、ローレライが小声で言う。
 よく見ると、周りの重役や龍人たちは俺たちを見ていた。会話こそちゃんとしているが、視線はこっちを向いている……なんだろうか?
 すると、レヴィがローレライの背後へ。

「おい、あまり世話を焼きすぎるな……後悔するぞ」
「え? どういうことかしら?」
「……まぁ、我々としては構わん、ということだ」
「レヴィ? ね、意味を」

 ローレライたちが何かを喋っている。
 俺は肉を切り分け、フォークをトルトニス様へと渡した。

「どうぞ。小さくカットしたので食べやすいと思いますよ」
「優しいのぉ……本当に、優しいのぉ」
「いやいや、そんな」
「優しい……フフ、優しい子、好きよ?」
「え」

 トルトニス様は一瞬で、金髪の巨乳美人へと変わっていた。
 え、え、え……せ、性別も変わるのかい!? めちゃくちゃ妖艶。ローレライ以上の巨乳が、服からこぼれそうなんですけど!?
 そ、そうか……感情でいろいろ変わるけど、《愛情》を抱くと女になっちゃうのね。

「ね、アシュトくん。アナタのこと、すごく好きになっちゃった……私と、結婚しない?」
「え、いや、その、俺にはもう奥さんいますし」
「フフ、ドラゴンの生は長いの。ちょっとだけ、火遊びしてもいいでしょ?」
「え、遠慮します……」

 すると、ローレライが俺の腕を取った。

「申し訳ございません。トルトニス様……アシュトは、私の物なので」
「わぉ、可愛い。フフ……アツアツで火傷しちゃいそう♪」

 トルトニス様は妖艶に微笑み、俺とローレライに投げキッスした。

 ◇◇◇◇◇

 宴会は夜まで続き、ようやく終わり部屋へ。
 部屋は一室だけ。俺、ローレライ、クララベル、アイオーンの四人で、めちゃくちゃデカいサイズのベッドで寝るようにとのこと……いやこれ、めちゃくちゃ気を使われてるし。俺、そんなつもりないですけど。

「あ、おっぱじめるなら言ってくださいね。うち、ソファにいますんで」
「するか!! そういう気は使うな!!」
「うしし、ざんねん。うちも混ざりたかったのにぃ~……なんちゃって」

 アイオーンは自分の頭をポンと叩いて舌を出した。
 悪いがそんなつもりはない。そもそも、クララベルがおねむの時間だ。

「姉さま……眠いー」
「たくさん食べるからよ。ほら、着替えなさい」
「んー」

 クララベルはドレスを脱いで全裸になり、ローレライが用意した寝間着をモゾモゾ着る。
 着替えが終わると、なぜか俺に抱き着いた。

「お、おい」
「お兄ちゃん、なでて~」
「はいはい。ったく、甘えん坊め」

 ベッドに寝かせ、クララベルを撫でると……五分もしないうちに寝てしまった。

「緊張もあったんでしょうね。気疲れも多かったみたいだし、疲れてたみたい」
「そういうお前は?」
「私は平気。アシュトは?」
「俺も。アイオーンは?」
「ま、ふつーですね。クララベルだけがお子様だべさ」

 俺たちは笑う。
 すると、ドアが控えめにノックされた。
 こんな時間に、しかも寝室に来るとは……誰だろう? 
 俺がドアを開けると、十七歳くらいの金髪少女が、枕を手にペコっと頭を下げた。

「あ、あの……きょ、今日、ここで寝ていいかな?」
「……えっと」
「わ、私……トルトニス」
「え」

 と、トルトニス様かい。
 美女モードから少女モードへ。こっちはすごくびくびくしてる。
 長い金髪、大きかった胸は普通サイズに、身長も縮み、やや気弱な女の子にしか見えない。
 トルトニス様は小さく微笑んだ。

「私、お友達と一緒に、パジャマでおしゃべりしてみたくて……ダメ、かな?」
「…………」

 こっちはなんか可愛いな。
 ってか、どれが本当の《トルトニス様》なんだろう?
 とりあえず部屋に入れて紹介するが、もうローレライたちも驚かなかった。
 ベッドに座り、俺は聞く。

「あの、今日だけでいろんなトルトニス様を見ましたけど……どれが本当のトルトニス様なんですか?」
「へ、変だよね……でも、でもね? みんな《私》なの。私は、私たちで《トルトニス》なの。共通しているのは、みんなシエラ様が大好きってことなの。だからアシュトくんがすっごく羨ましいの……」
「……そう、なんですか」
「ね、アシュトくん。今日いろいろあってびっくりしたと思うけど……私を、私たちを怖がらないでほしいの。私たちみんな、アシュトくんのこと知りたいから」
「俺のこと?」
「うん。シエラ様が気に入った男の子……みんな、知りたいの」
「…………」
「次に会う時は今の私じゃない、別の私だけど……気持ちは同じだから。ね」
「……ああ、そうだね」
「ね、おねがい。友達になろ?」
「ああ、いいよ」

 握手する。
 トルトニス様……龍人の始祖の一人。いろんな人格を持つ、ちょっと変わったドラゴンさん。
 俺の新しい友人として、俺はしっかり握手をするのだった。
しおりを挟む
感想 1,145

あなたにおすすめの小説

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。