大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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これから先の話

第668話、ようやく帰ってきたアシュトたち

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「やっと帰ってきた~~~っ!!」

 俺は村の入口で、思わずデカい声で叫んでしまう。
 そりゃそうだ……ドラゴンエイジ森国からようやく帰ってこれた。挨拶だけのはずなのに、コロコロ容姿が変わるトルトニス様に懐かれて帰るに帰れなかった。
 ってか、幼女の姿で「もう帰るの……?」って言って袖引くの反則だろ。あれで泣かれたら帰れないって。
 なので、チャラい系の姿に変身している時、タイミングを見計らって「じゃ帰ります」って言い、ようやく帰ってこれたのだ。
 村の入口にいたウッド、フンババ、ベヨーテたちも「遅カッタナ」って言うし……みんなに迷惑かけた。

『アシュト、オカエリ、オカエリ、オソカッター』
「う……ごめんよ」
「ふふ、楽しかったけどね」
「わたし、疲れたー」

 ローレライもクララベルも疲れているようだ。
 ウッドを連れて屋敷に戻る。道中、住人たちが「おかえりなさい!!」って言ってくれると本当に戻って来たんだなーって感じるよ。
 屋敷に戻ると。

「おかえりなさいませ、ご主人様」
「ただいま、シルメリアさん。いや~……遅くなりまして」
「いえ。さっそくお茶の支度をしますので、お寛ぎください」

 リビングルームのソファに座る俺、ローレライ、クララベル。
 すると、ドアが開きルミナが一瞬で俺の胸に飛び込み、胸に頭を擦り付けた。

「ごろろ……おそいぞ」
「悪かった。帰るに帰れなくてな……」
「ふん、なでろ」

 ルミナを撫で、ネコミミを揉む……ああ、久しぶりのネコミミはいい。
 そして、ミュアちゃんがティーカートを押してきた。

「にゃ……ご主人さま」
「ただいま、ミュアちゃん」
「にゃう……」
「ミュアちゃんもおいで。撫でるから」
「ごろごろ」

 ルミナを羨ましがっているのが見え見えだ。
 ミュアちゃんはシルメリアさんをチラッと見たが、小さく頷いた。
 俺は近づいてきたミュアちゃんの頭を撫で、ネコミミを揉む。

「にゃぅぅ……きもちいい」
「遅くなってごめんね。じゃあ、お茶もらえるかな?」
「にゃあ!!」

 機嫌をよくしたミュアちゃんは、俺たちにお茶を淹れてくれた。
 しばし、お茶で一服すると。

「あ、おかえりー」
「ふにゃー」

 シロネちゃんを抱っこしたミュディが来た。
 その姿を見て俺は、少しだけ思う。

「…………」
「アシュト? おかえりなさい」
「え、ああ……ただいま」
「……? どうしたの? 疲れてるのかな?」
「ふにゃあう」

 シロネちゃんがミュディの胸で甘えている。
 そして、今度は酒瓶を持ったエルミナが玄関に飛び込んできた。

「アシュトおかえりっ!! ね、お土産あるんでしょ!? ドラゴンエイジ森国のお酒ある!?」
「お前な……その手にある酒瓶なんだよ」
「ふふん。私の今の仕事は『酒造り』だからね!! 常日頃から『研究所』で新作開発してるのよ!!」
「ったく。天職というか、なんというか……お土産なら後で出すから、少し休ませてくれ」
「え~……? まあいいわ。よし、遅く帰ったぶん、しばらくは私たちに付き合ってよね!! 私もミュディもシェリーも寂しかったんだから!!」
「わかった。今度釣りにでも行こう」
「うん!!」

 エルミナは相変わらず元気だ。こっちまで元気になるよ。

「ふふ。アシュト、わたしにもちゃんと、付き合ってよね」
「ごろごろ」
「あ、ああ……」

 ミュディはシロネちゃんを抱きしめ、優しく甘やかしていた。

 ◇◇◇◇◇◇

 その日の夜。
 お土産をみんなに渡し、各種族たちに渡すようシルメリアさんにお願い。
 風呂に入り、疲れたのでその日は一人で寝ることにした。
 いつもはルミナやマンドレイク、アルラウネが来るのだが……今日はミュディたちが気を遣ったのか、俺の部屋には誰も来ない。
 俺はベッドで寝転がり、ミュディを見て思ったことを考えていた。
 すると……。

「考え事かな~?」
「……シエラ様」

 シエラ様が、いつの間にか部屋にいてベッドで仰向けになる俺の顔を覗き込んだ。
 最近、あまり驚いたりすることがなくなった……もう数年の付き合いだし、シエラ様の驚かしにもだいぶ慣れた。
 俺は身体を起こし、シエラ様に向き直る。

「アシュトくん、悩み事ならお姉さんに相談する?」
「……ええ、そうですね」

 実は、前々から思っていたことだ。
 シエラ様がベッドサイドに座るのを見て、俺は言う。

「その、シロネちゃんを抱っこしてるミュディを見て……ミュディ、子供が欲しいんじゃないかなーって思うようになりました」
「あら~……」
「前々から思ってたんです。ミュディは子供好きだし、ミュアちゃんとかマンドレイクたちをすごく可愛がっている。ルナマリア義姉さんも双子を産んだし、もしかしたらミュディも……って考えちゃって」
「……それで?」
「……俺は正直、まだ自分の子供とか考えられなくて。俺たち、寿命がすごく長くなったし……エルミナも『あと数百年は新婚気分でいたい』とか言うし……ローレライやクララベルもまだ考えてはいない。でもミュディは……その、俺にしかわからないと思うんですけど、もしかしたら子供が欲しいんじゃないかなって」

 ここまで喋り、俺は言葉を切った。
 するとシエラ様が。

「アシュトくんは、子供が欲しい欲しくない以前に……覚悟ができてないんだね」
「…………そうです」

 そう、俺には覚悟がない。
 ルナマリア義姉さんの出産を見て『村で子供が生まれるなら俺が取り上げる』くらいは考えていた。
 でも……自分の子供となると、途端にわからない。
 自分の子供。どうなのだろうか? 
 俺はまだ、わからない。

「……父親になる覚悟が俺にはない。だって、俺は兄さんみたいに立派じゃないし、どうすればいいのかもわからない。今のまま、ミュディに『子供が欲しい』なんて言われたら、たぶん……何も言えない。ミュディを傷付けてしまう……それは、嫌だ」
「じゃあ、覚悟が欲しいの?」
「……わかりません。ははは、情けないです。答えすら出せないなんて」

 頭を抱えると、シエラ様がそっと俺を抱きしめてくれた。

「大事なのは、ミュディちゃんとお話しすることだと思う」
「え?」
「今のは全部、アシュトくんの考え。だったら……まずは、ミュディちゃんとお話ししなくちゃ。覚悟ができてないことも含めて、今の気持ちをミュディちゃんに確認しないと。全部自分で考えて、答えを出して……それだけじゃ駄目だよ?」
「シエラ様……」
「さ、悩むのはミュディちゃんに話を聞いてから。アシュトくんの気持ちをしっかり伝えないとね」
「……はい」

 そう言って、シエラ様は部屋を出て行った。
 俺はベッドに寝転がり、もう一度考える。

「そうだよな……全部、俺の妄想だ」

 だったら、話すしかない。確認するしかない。
 ミュディは子供が欲しいのか。そして、もし欲しいと言われたら……俺は覚悟が出来ていないと、しっかり話すしかないだろうな。
 歳を重ねて大人になったつもりだけど……やっぱり、俺はまだ子供だった。
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みんなの感想(1145件)

uru4
2025.05.30 uru4

単行本10巻まで読んでからこちらに来ました
もう1年更新されてませんが続きはあるのでしょうか?
単行本ででも続いてくれるのなら嬉しいです

解除
zihda
2024.06.27 zihda

誤字報告:副官リュドガとルナマリアを呼び…………リュドガ→ヒュンケルでは?

解除
肉の人
2024.06.25 肉の人

もう(有料コンテンツ化以外の)更新は期待できなさそうね
学園ガー起死回生ガー仲間との絆ガーなバトルものは正直食傷気味なんで、
他ののんびり系小説探してきますね🎵

解除

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