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第四章
野獣
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「ぶはぁ、ぶはぁ、ぶはぁ……ッ!!」
「ダモクレス、『融合』を解きな!! ここからはあたしが!!」
「ぐ、ぬぅ……」
召喚獣タイタンとの融合を解除したダモクレスは、全身疲労で膝を付く。
そして、ダモクレスの援護に徹していたヴィーナスが、大剣を構え叫んだ。
「『融合』───『重剣エッケザックス』!!」
全身が鋼の鎧に包まれ、十メートル級の大剣を二刀流で構えたヴィーナス。
そのままオウガに向かって斬り込むが、やはりオウガは嗤っていた。
「いいぜいいぜタノシマセロォォォォォォゥゥゥゥ!!」
「この戦闘狂め!! ガーネット、アルジャン、援護を!!」
「任せな!!」
「本気を出そうかのぉ!!」
ガーネットとアルジャンが『融合』を使用。
全身に紫雲を纏ったガーネットと、龍と一体化したアルジャンがオウガに迫る。
「『マジックミスト』!!」
「『破龍砲』!!」
紫雲がオウガを包み込むと、オウガは全身の穴という穴から血を噴き出す。
そして、龍となったアルジャンの口から、極太の圧縮火炎砲が放たれ、オウガは黒焦げの肉塊へ。
とどめ───ヴィーナスの巨大二刀が、目に見えない連続斬りを叩き込む。
「『千烈刃』!!」
オウガは細切れになり、肉片が周囲に散らばった。
同時に、三人は『融合』を解除───強烈な肉体への負担に、片膝を付く。
アルジャンは、真っ青になりながら呟く。
「と、歳は……取りたく、ない、モン、じゃの……はぁ、はぁ、はぁ」
「同感、だね……はは、あたしもババァになったもんだ」
ヴィーナスが同意する。
ガーネットも苦笑し、二人に話しかけようとした瞬間───。
「ハーッハッハッハッハァァァァァ!! いいねいいねいいねぇぇぇぇぇぇっ!!」
何事もなかったかのように、オウガは復活した。
そして、斧を振りかぶり突進……ガーネットの目の前まで来た。
ガーネットは動けない。
ダモクレスが、アルジャンが、ヴィーナスが動くが……間に合わない。
「『獣の一撃』!!」
ドゴン!!と、オウガの真横から伸びた巨大な『手』が、オウガを吹き飛ばした。
それは、アルフェンの右手。
オウガはノーダメージで立ちあがる。
「『超絶貫通弾』!!」
「『ハリケーンスラッシュ』!!」
翡翠の弾丸とグリーンの風刃が飛ぶ。
オウガの頭が吹き飛び、身体に大きな傷を付けた。
頭部を失いフラフラしたオウガの身体。
「フッッ飛べぇぇぇぇっ!!」
その身体を、懐に潜り込んだアネルの『カドゥーケウス』が蹴り上げる。
オウガの身体は真上に飛ぶ。
その身体を追うように、校舎によじ登って跳躍したアルフェンが追い、右腕を思いきり握り締めた。
「くぅら、えやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「お前がな」
「───ッ!?」
一瞬で復元したオウガの右手が、アルフェンの腹を貫通した。
勢いを付け過ぎた。頭部が消失し隙だらけだった。アルフェンの油断が命取りになった。
「がハッ!? ぁ……っぐ、オォォォォォォッ!!」
「ん!?」
アルフェンは、血を吐きながら右眼を発動させる。
黄金の瞳がオウガを射抜くと、オウガは舌打ちした。
「ムカつく眼だ!! ジャガーノート……裏切りモンの眼ぇぇぇぇっ!!」
「ぐ、うぅぅぅぅっ!!」
腹が熱く、口の中が鉄の味。さらに眠気も襲ってきた。
だが、アルフェンは見る。
右目が燃えるように熱く、脳が焼けるような感覚がした。
だが───体力が持たなかった。
「───ぁ」
血を吐き、オウガにぶん投げられ、アルフェンは地面に激突。
「アルフェンっ!!」
フェニアが叫んだような気がした。
フェニアが泣いている。ウィルが舌打ちし、アネルが口元を震わせていた。
ダモクレスたちも何かを叫んでいる。
アルフェンは、静かに目を閉じ───聞いた。
『死ぬな、アルフェン───』
◇◇◇◇◇◇
アルフェンがやられた。
血濡れで倒れるアルフェンを見て、ダモクレスがブチ切れた。
「テメェェェェぇぇぇっ!! やりやがったなぁぁぁぁぁっ!?」
「ハッハッハァァァ!! いいね、昔みてぇな気迫じゃねぇか!! さぁさぁまだまだ遊ぼうぜェぇぇぇ!?」
「ヴィーナス!! ガーネットぉ!! アルジャン!! 根性見せろぉ!!」
「ふん───当たり前だ!!」
「あたしの教え子をぉぉぉぉぉっっ!!」
「生涯最後の全力じゃぁぁぁ!!」
四人の英雄が立ち上がり、オウガへ向かって行く。
体力などもうないだろう。だが……それでも向かって行った。
そして、倒れたアルフェンの傍には、フェニアたちが。
「いやいやいやぁぁ!! 起きて、起きてぇぇ!!」
「クッソ……誰もいねぇのか!! おい!! ちっくしょう、A級召喚士もいねぇ!!」
「あ、あ……ど、どうしよう」
フェニアは泣き叫び、ウィルは誰かいないか探し、アネルは蒼白だった。
アルフェンの命は、今にも消えかけていた。
「……………………」
だが、アルフェンは聞こえていた。
声も出せない、瞼も開けない、指一本動かせない。
フェニアたちの叫びが、聞こえていた。
(死ぬ───)
意識が、飛びかけていた───。
◇◇◇◇◇◇
「───あ」
目を覚ますと、そこは見慣れた場所だった。
日陰でどこか寂しい。でも懐かしい場所……リグヴェータ家の裏庭。
家の壁に寄りかかっていたアルフェンは、立ち上がる。
「ここは───」
ここは、自分とモグのお気に入りの場所。
モグがミミズを探し、アルフェンはよくその光景を眺めていた。
「……俺、また死んだのか」
モグと一つになって、初めての死の恐怖。
アルフェンは、ずるずると座りこむ。
「…………あー」
魔人、倒せなかったな───と、顔を押さえた瞬間だった。
『もぐ!』
「え……」
モグが、アルフェンの目の前……地面からボコっと現れた。
「も、モグ……?」
『もぐー』
「あ……あはは、モグっ!!───あれっ?」
モグに手を伸ばすが、触れられない。
地面も、モグも透き通っていた。触れられなかった。
だが、モグはここにいる。
「モグ……なんでだよ、触らせてくれよ、抱かせてくれよ……」
『…………』
モグは首を振る。
そして、地面から這い出るとふわりと浮いた。
『まだ、やれるか?』
「モグ……」
『大丈夫。お前はあんなやつに負けない。私が傍にいる』
「……うん」
『闘おう。平穏のために……人と召喚獣が生きる、アルフェンの世界のために』
「ああ……」
モグの身体が透き通り、小さな光となってアルフェンと一つになる。
不思議な暖かさに包まれ、アルフェンの意識は消えた。
◇◇◇◇◇◇
ダモクレスはオウガに殴られ、何度も地面を転がった。
「ご、っがぁぁぁぁっ!?」
タイタンはすでに血まみれで倒れている。
ヴィーナスの剣も折れ、ガーネットは血濡れで倒れ、アルジャンの龍も横たわり呻いている。
四人の英雄は、たった一人の魔人に圧倒されていた。
二十一人の召喚士ですら倒し切ることができなかった最強の魔人相手に、たった四人で挑んでいるのだ。そして何より……英雄たちも、『老い』には勝てなかったのだ。
「く、ソがぁ……!!」
「あーあーあー、弱くなったなぁ……? おめー、昔のが強かったぜ?」
「がぁぁっ!?」
オウガに蹴られ、ダモクレスは再び地面を転がる。
すると、ニスロクが転がるダモクレスを受け止めた。
ダモクレスを支え、レイヴィニアは震えながら前へ。
「お、オウガ……も、もうやめろよ」
「あぁん? 腰抜けどもが。ヒトに尻尾振る裏切りモンが」
「う、裏切ってない!! ってか、なんでこんなことするんだ!! うちらは、ヒトの世界の『色』に憧れてこの世界に来たんだろ!? ヒトの魂を通じて来たのに、なんでヒトにこんなこと」
「うっせぇなぁ。ヒトなんて魔帝だけでいいだろ。それに、この世界は面白れぇモンで溢れてやがる。オレが暴れるのにヒトは邪魔なんだっつーの。それにおめーらだってヒト相手に暴れてたじゃねぇか」
「そ、それは……魔帝様が望んだから」
「同じだっつーの。オレもおめーも」
「ち、違う。うちは、魔帝様のためにやっただけ。うち、ヒトは嫌いじゃないし、ヒトの世界にヒトがいてもいい!! フェニアもアネルも好き、美味しい物も好き!!」
「ケッ……くっだらねぇ。ああ、最後に教えてやるよ」
オウガは、斧をレイヴィニアへ向ける。
ニスロクが庇うように前に出たが、その身体は震えていた。
「おめーら。最初からベルゼブブに監視されてんだよ。オレもヒュブリスもアベルも、たぶんフロレンティアも。あいつの『蠅』が体内にいる。オレを起こしたのはフロレンティアだけどよ、フロレンティアにそれを命じたの、ベルゼブブだぜ」
「え……」
「魔帝の完全復活、近いぜ。そのためにあいつはいろいろ準備してる。お前とニスロクは用済みだとよ」
「よ、用済みぃぃ~?」
「ああ。魔獣を操れる能力は珍しいが……魔帝が完全復活すりゃもう必要ねぇからな。それに……『ドレッドノート』もいる」
「そ、そんな……」
「つーわけだ。あばよ、クソ雑魚」
オウガが、レイヴィニアとニスロクに迫る。
ニスロクは姉を守ろうと、震える身体で盾になる。
レイヴィニアは涙を浮かべ、震えていた。
「じゃあな」
斧が、振り下ろされ───。
「───あん? ッッオォォッブ!?」
───振り下ろされた斧を巻き込むように、ニスロクのすぐ横から『黒い何か』が現れ、オウガの身体にぶつかり吹っ飛ばした。
「え……?」
「これぇ……?」
レイヴィニアとニスロクが振り返る。
そこにいたのは。
「あ、アルフェン……?」
「な、なんだ、お前……」
「うそ……」
フェニアが、ウィルが、アネルが驚愕する。
「……な、なんじゃあ?」
「これは……」
「アルフェン……なのか?」
「……なんと」
ダモクレスが、ヴィーナスが、ガーネットが、アルジャンが驚愕する。
立ち上がったアルフェンの右腕。その変異部分が胸を覆っていた。
黒く盛り上がった魔獣の甲殻とでも表現すればいいのか。右腕自身もいつもより巨大に、禍々しく形状が変化していた。
「……大丈夫」
「アルフェン!!」
「フェニア、モグが……モグが、『生きろ』って……」
アルフェンの眼から、一筋の涙がこぼれた。
伸びた右腕が戻り、アルフェンはそっと撫でる。
すると───オウガが叫んだ。
「ハッハッハァァァァーーー!! んだテメェ、まだ元気じゃねぇか!!」
「………………」
「だがもう仕舞いだ!! テメェら全員ぶっ殺して、ここにいるヒトを食い尽くしてやらぁ!!」
斧をブンブン振り回すオウガ。
アルフェンは、右手をそっと胸に当てた。
「ありがとう、モグ。俺……まだやれる」
心臓が、力強く脈動していた。
禍々しい右腕だが、温かく、やさしさにあふれている気がした。
アルフェンは、右腕を構える。
「『完全侵食』」
ドクン───心臓が高鳴った。
右腕を中心に漆黒の皮膚、そして外殻が形成される。
外殻は全身を覆い、ヒトならざる姿……まるで、魔獣のような姿へ。
「な……」
オウガは、レイヴィニアは、ニスロクは驚愕する。
その姿は、召喚獣なら知らないはずがない存在だった。
「じゃ、ジャガーノート……!!」
召喚獣の王、ジャガーノート。
アルフェンの右腕、真の姿が覚醒した。
「終わらせる……行くぞ、モグ……いや、ジャガーノート!!」
『憤怒』の魔人オウガと、最後の戦いが始まった。
「ダモクレス、『融合』を解きな!! ここからはあたしが!!」
「ぐ、ぬぅ……」
召喚獣タイタンとの融合を解除したダモクレスは、全身疲労で膝を付く。
そして、ダモクレスの援護に徹していたヴィーナスが、大剣を構え叫んだ。
「『融合』───『重剣エッケザックス』!!」
全身が鋼の鎧に包まれ、十メートル級の大剣を二刀流で構えたヴィーナス。
そのままオウガに向かって斬り込むが、やはりオウガは嗤っていた。
「いいぜいいぜタノシマセロォォォォォォゥゥゥゥ!!」
「この戦闘狂め!! ガーネット、アルジャン、援護を!!」
「任せな!!」
「本気を出そうかのぉ!!」
ガーネットとアルジャンが『融合』を使用。
全身に紫雲を纏ったガーネットと、龍と一体化したアルジャンがオウガに迫る。
「『マジックミスト』!!」
「『破龍砲』!!」
紫雲がオウガを包み込むと、オウガは全身の穴という穴から血を噴き出す。
そして、龍となったアルジャンの口から、極太の圧縮火炎砲が放たれ、オウガは黒焦げの肉塊へ。
とどめ───ヴィーナスの巨大二刀が、目に見えない連続斬りを叩き込む。
「『千烈刃』!!」
オウガは細切れになり、肉片が周囲に散らばった。
同時に、三人は『融合』を解除───強烈な肉体への負担に、片膝を付く。
アルジャンは、真っ青になりながら呟く。
「と、歳は……取りたく、ない、モン、じゃの……はぁ、はぁ、はぁ」
「同感、だね……はは、あたしもババァになったもんだ」
ヴィーナスが同意する。
ガーネットも苦笑し、二人に話しかけようとした瞬間───。
「ハーッハッハッハッハァァァァァ!! いいねいいねいいねぇぇぇぇぇぇっ!!」
何事もなかったかのように、オウガは復活した。
そして、斧を振りかぶり突進……ガーネットの目の前まで来た。
ガーネットは動けない。
ダモクレスが、アルジャンが、ヴィーナスが動くが……間に合わない。
「『獣の一撃』!!」
ドゴン!!と、オウガの真横から伸びた巨大な『手』が、オウガを吹き飛ばした。
それは、アルフェンの右手。
オウガはノーダメージで立ちあがる。
「『超絶貫通弾』!!」
「『ハリケーンスラッシュ』!!」
翡翠の弾丸とグリーンの風刃が飛ぶ。
オウガの頭が吹き飛び、身体に大きな傷を付けた。
頭部を失いフラフラしたオウガの身体。
「フッッ飛べぇぇぇぇっ!!」
その身体を、懐に潜り込んだアネルの『カドゥーケウス』が蹴り上げる。
オウガの身体は真上に飛ぶ。
その身体を追うように、校舎によじ登って跳躍したアルフェンが追い、右腕を思いきり握り締めた。
「くぅら、えやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「お前がな」
「───ッ!?」
一瞬で復元したオウガの右手が、アルフェンの腹を貫通した。
勢いを付け過ぎた。頭部が消失し隙だらけだった。アルフェンの油断が命取りになった。
「がハッ!? ぁ……っぐ、オォォォォォォッ!!」
「ん!?」
アルフェンは、血を吐きながら右眼を発動させる。
黄金の瞳がオウガを射抜くと、オウガは舌打ちした。
「ムカつく眼だ!! ジャガーノート……裏切りモンの眼ぇぇぇぇっ!!」
「ぐ、うぅぅぅぅっ!!」
腹が熱く、口の中が鉄の味。さらに眠気も襲ってきた。
だが、アルフェンは見る。
右目が燃えるように熱く、脳が焼けるような感覚がした。
だが───体力が持たなかった。
「───ぁ」
血を吐き、オウガにぶん投げられ、アルフェンは地面に激突。
「アルフェンっ!!」
フェニアが叫んだような気がした。
フェニアが泣いている。ウィルが舌打ちし、アネルが口元を震わせていた。
ダモクレスたちも何かを叫んでいる。
アルフェンは、静かに目を閉じ───聞いた。
『死ぬな、アルフェン───』
◇◇◇◇◇◇
アルフェンがやられた。
血濡れで倒れるアルフェンを見て、ダモクレスがブチ切れた。
「テメェェェェぇぇぇっ!! やりやがったなぁぁぁぁぁっ!?」
「ハッハッハァァァ!! いいね、昔みてぇな気迫じゃねぇか!! さぁさぁまだまだ遊ぼうぜェぇぇぇ!?」
「ヴィーナス!! ガーネットぉ!! アルジャン!! 根性見せろぉ!!」
「ふん───当たり前だ!!」
「あたしの教え子をぉぉぉぉぉっっ!!」
「生涯最後の全力じゃぁぁぁ!!」
四人の英雄が立ち上がり、オウガへ向かって行く。
体力などもうないだろう。だが……それでも向かって行った。
そして、倒れたアルフェンの傍には、フェニアたちが。
「いやいやいやぁぁ!! 起きて、起きてぇぇ!!」
「クッソ……誰もいねぇのか!! おい!! ちっくしょう、A級召喚士もいねぇ!!」
「あ、あ……ど、どうしよう」
フェニアは泣き叫び、ウィルは誰かいないか探し、アネルは蒼白だった。
アルフェンの命は、今にも消えかけていた。
「……………………」
だが、アルフェンは聞こえていた。
声も出せない、瞼も開けない、指一本動かせない。
フェニアたちの叫びが、聞こえていた。
(死ぬ───)
意識が、飛びかけていた───。
◇◇◇◇◇◇
「───あ」
目を覚ますと、そこは見慣れた場所だった。
日陰でどこか寂しい。でも懐かしい場所……リグヴェータ家の裏庭。
家の壁に寄りかかっていたアルフェンは、立ち上がる。
「ここは───」
ここは、自分とモグのお気に入りの場所。
モグがミミズを探し、アルフェンはよくその光景を眺めていた。
「……俺、また死んだのか」
モグと一つになって、初めての死の恐怖。
アルフェンは、ずるずると座りこむ。
「…………あー」
魔人、倒せなかったな───と、顔を押さえた瞬間だった。
『もぐ!』
「え……」
モグが、アルフェンの目の前……地面からボコっと現れた。
「も、モグ……?」
『もぐー』
「あ……あはは、モグっ!!───あれっ?」
モグに手を伸ばすが、触れられない。
地面も、モグも透き通っていた。触れられなかった。
だが、モグはここにいる。
「モグ……なんでだよ、触らせてくれよ、抱かせてくれよ……」
『…………』
モグは首を振る。
そして、地面から這い出るとふわりと浮いた。
『まだ、やれるか?』
「モグ……」
『大丈夫。お前はあんなやつに負けない。私が傍にいる』
「……うん」
『闘おう。平穏のために……人と召喚獣が生きる、アルフェンの世界のために』
「ああ……」
モグの身体が透き通り、小さな光となってアルフェンと一つになる。
不思議な暖かさに包まれ、アルフェンの意識は消えた。
◇◇◇◇◇◇
ダモクレスはオウガに殴られ、何度も地面を転がった。
「ご、っがぁぁぁぁっ!?」
タイタンはすでに血まみれで倒れている。
ヴィーナスの剣も折れ、ガーネットは血濡れで倒れ、アルジャンの龍も横たわり呻いている。
四人の英雄は、たった一人の魔人に圧倒されていた。
二十一人の召喚士ですら倒し切ることができなかった最強の魔人相手に、たった四人で挑んでいるのだ。そして何より……英雄たちも、『老い』には勝てなかったのだ。
「く、ソがぁ……!!」
「あーあーあー、弱くなったなぁ……? おめー、昔のが強かったぜ?」
「がぁぁっ!?」
オウガに蹴られ、ダモクレスは再び地面を転がる。
すると、ニスロクが転がるダモクレスを受け止めた。
ダモクレスを支え、レイヴィニアは震えながら前へ。
「お、オウガ……も、もうやめろよ」
「あぁん? 腰抜けどもが。ヒトに尻尾振る裏切りモンが」
「う、裏切ってない!! ってか、なんでこんなことするんだ!! うちらは、ヒトの世界の『色』に憧れてこの世界に来たんだろ!? ヒトの魂を通じて来たのに、なんでヒトにこんなこと」
「うっせぇなぁ。ヒトなんて魔帝だけでいいだろ。それに、この世界は面白れぇモンで溢れてやがる。オレが暴れるのにヒトは邪魔なんだっつーの。それにおめーらだってヒト相手に暴れてたじゃねぇか」
「そ、それは……魔帝様が望んだから」
「同じだっつーの。オレもおめーも」
「ち、違う。うちは、魔帝様のためにやっただけ。うち、ヒトは嫌いじゃないし、ヒトの世界にヒトがいてもいい!! フェニアもアネルも好き、美味しい物も好き!!」
「ケッ……くっだらねぇ。ああ、最後に教えてやるよ」
オウガは、斧をレイヴィニアへ向ける。
ニスロクが庇うように前に出たが、その身体は震えていた。
「おめーら。最初からベルゼブブに監視されてんだよ。オレもヒュブリスもアベルも、たぶんフロレンティアも。あいつの『蠅』が体内にいる。オレを起こしたのはフロレンティアだけどよ、フロレンティアにそれを命じたの、ベルゼブブだぜ」
「え……」
「魔帝の完全復活、近いぜ。そのためにあいつはいろいろ準備してる。お前とニスロクは用済みだとよ」
「よ、用済みぃぃ~?」
「ああ。魔獣を操れる能力は珍しいが……魔帝が完全復活すりゃもう必要ねぇからな。それに……『ドレッドノート』もいる」
「そ、そんな……」
「つーわけだ。あばよ、クソ雑魚」
オウガが、レイヴィニアとニスロクに迫る。
ニスロクは姉を守ろうと、震える身体で盾になる。
レイヴィニアは涙を浮かべ、震えていた。
「じゃあな」
斧が、振り下ろされ───。
「───あん? ッッオォォッブ!?」
───振り下ろされた斧を巻き込むように、ニスロクのすぐ横から『黒い何か』が現れ、オウガの身体にぶつかり吹っ飛ばした。
「え……?」
「これぇ……?」
レイヴィニアとニスロクが振り返る。
そこにいたのは。
「あ、アルフェン……?」
「な、なんだ、お前……」
「うそ……」
フェニアが、ウィルが、アネルが驚愕する。
「……な、なんじゃあ?」
「これは……」
「アルフェン……なのか?」
「……なんと」
ダモクレスが、ヴィーナスが、ガーネットが、アルジャンが驚愕する。
立ち上がったアルフェンの右腕。その変異部分が胸を覆っていた。
黒く盛り上がった魔獣の甲殻とでも表現すればいいのか。右腕自身もいつもより巨大に、禍々しく形状が変化していた。
「……大丈夫」
「アルフェン!!」
「フェニア、モグが……モグが、『生きろ』って……」
アルフェンの眼から、一筋の涙がこぼれた。
伸びた右腕が戻り、アルフェンはそっと撫でる。
すると───オウガが叫んだ。
「ハッハッハァァァァーーー!! んだテメェ、まだ元気じゃねぇか!!」
「………………」
「だがもう仕舞いだ!! テメェら全員ぶっ殺して、ここにいるヒトを食い尽くしてやらぁ!!」
斧をブンブン振り回すオウガ。
アルフェンは、右手をそっと胸に当てた。
「ありがとう、モグ。俺……まだやれる」
心臓が、力強く脈動していた。
禍々しい右腕だが、温かく、やさしさにあふれている気がした。
アルフェンは、右腕を構える。
「『完全侵食』」
ドクン───心臓が高鳴った。
右腕を中心に漆黒の皮膚、そして外殻が形成される。
外殻は全身を覆い、ヒトならざる姿……まるで、魔獣のような姿へ。
「な……」
オウガは、レイヴィニアは、ニスロクは驚愕する。
その姿は、召喚獣なら知らないはずがない存在だった。
「じゃ、ジャガーノート……!!」
召喚獣の王、ジャガーノート。
アルフェンの右腕、真の姿が覚醒した。
「終わらせる……行くぞ、モグ……いや、ジャガーノート!!」
『憤怒』の魔人オウガと、最後の戦いが始まった。
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偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話
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ここは、地球とはまた別の世界――
田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。
暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。
仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン>
「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。
最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。
しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。
ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと――
――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。
しかもその姿は、
血まみれ。
右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。
「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~
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女神の信託を受け、勇者のひとりとして迎えられた『アイサック=ベルキッド』。
この日、勇者リーダーにより追放が宣告され、そのゴシップニュースは箝口令解除を待って、世界中にバラまかれることとなった。
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『サック』は田舎への帰り道、野党に襲われる少女『二オーレ』を助け、お礼に施しを受ける。しかしその家族には大きな秘密があり、サックの今後の運命を左右することとなった。二オーレとの出会いにより、新たに『女神への復讐』の選択肢が生まれたサックは、女神へのコンタクト方法を探る旅に目的を変更し、その道中、ゴシップ記事を飛ばした記者や、暗殺者の少女、元勇者の同僚との出会いを重ね、魔王との決戦時に女神が現れることを知る。そして一度は追放された身でありながら、彼は元仲間たちの元へむかう。本気で女神を一発ぶん殴る──ただそれだけのために。
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