召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう

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第八章

魔帝と魔人

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 ニュクスは、ベッドの上で全裸で胡坐をかき、左腕を閉じたり開いたりしていた。
 純白の髪は櫛も通してないのに真っ直ぐで、青く透き通った瞳はとても美しい。
 全体的なスタイルは細身だ。本人は「胸がもっと欲しかった」と言っているが、十分な大きさであり形も美しい。
 そして───ニュクスは、左腕を巨大化させる。

「───……うん、いい。これで完成かな」

 寄生型召喚獣『ドレッドノート』は、完全に適合した。
 アルフェンの右腕とは違い、全体的に角ばっている。純白の甲殻に包まれた腕には青く光る血管のようなラインが光り、禍々しさというより神々しさを感じさせた。
 ニュクスはベッドから降り、左腕を元に戻す。
 脱ぎ捨てた下着、服を着直し、髪の毛を適当に縛る。
 肉体年齢は十五歳ほど。かつて世界を滅ぼしかけた魔帝ニュクス・アースガルズは、大きな欠伸をして部屋を出た。
 
「お腹減ったなぁ……」

 この『ひみつ基地』は、ベルゼブブがニュクスを匿うために作りだした特殊な空間だ。
 ニュクスがいたのは寝室。そして、魔人たちの部屋とキッチン、浴室など、生活に必要な部屋は一通り揃っている。
 ニュクスが向かったのは、キッチンだった。

「ベルゼブブ、アポー、いる?」

 そこにいたのは、『強欲』の魔人ベルゼブブ、ニュクスが名を付けた『大罪』の魔人アポカリプスがいた。
 二人はエプロンを身に着け、調理の真っ最中だ。
 ニュクスが現れると同時に跪く。

「「ご主人様」」
「あーいいって、いちいち跪くの面倒っしょ? それより、ごはんー」
「はい。すぐに準備ができますので」

 ベルゼブブはにっこり笑い、アポカリプスと目を合わせ頷く。
 ベルゼブブはエプロンを外し、ニュクスをダイニングルームへ案内した。

「アポ、どう?」
「なかなかですね。飲み込みも早く従順です」
「ん、そういう風に作ったからね。たぶん戦闘能力はもっとすごいよ。ベルゼブブじゃ勝てないと思う」
「なるほど。それは頼もしい」
「ありゃ? 悔しくないの?」
「ええ。私にとって強さは競うものではなく、主をお守するためのもの」
「ふーん」

 ニュクスは興味ないのか、ダイニングルームに到着すると席に座った。
 そして、アポカリプスが食事を乗せたカートを押して入ってきた……が、その食事量があり得ない量だ。
 ざっと、百人前。

 ニュクスはじゅるりとヨダレを垂らし……さっそく目の前にあるステーキにかぶりついた。

 ◇◇◇◇◇◇

「あぁ~……おなかいっぱい!」

 食後のお茶を飲みながら、ニュクスはお腹をさすった。
 百人前を完食しご満悦のようだ。
 ベルゼブブもご満悦だった。

「完全に回復されましたね」
「うん。あ、あと何日かな~?」
「あと四十日です」
「そっか。はぁ~……ちょっと長く見積もりすぎたかな」

 ニュクスが言い残した期限まで、残り四十日。
 完全に復活した今、その約束を守る理由はない。だが、ニュクスはそうしなかった。

「ま、約束は大事だからね……」
「……」
「……?」

 アポカリプスは、軽く首を傾げていた。
 そして、ニュクスは立ち上がる。

「お風呂入る。んで、寝る」
「かしこまりました。アポカリプス、支度を」
「はっ」

 ニュクスは待つ。
 来るべき戦いの日は近い。
 湯船に浸かりながら、そっと左目を押さえる。

「ジャガーノート……ふふ、楽しみ」

 漆黒の右腕を持つ少年を想いながら、ニュクスは湯船の中に沈んでいく。
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