召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう

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第九章

左きゝの拳銃 /アウトロー・スター

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 ウィルとアポカリプスは、アルフェンたちから遠く離れた場所で向かい合っていた。
 剣を構えるアポカリプス、対するウィルは右手で帽子を押さえ、ギラギラした目をアポカリプスに向けている。それが気に喰わないのか、アポカリプスはウィルに言った。

「貴様、その眼をやめろ。胸糞悪い」
「はっ……雑魚決定。おいビビリ野郎、ブルッちまってるところ悪いが、もうお前に勝ちはねぇよ。降参して犬みてぇに鳴くなら許してやらんこともねぇが、どうする?」

 ウィルは絶好調だった。
 これでもかと相手を馬鹿にする。だが、舐めているわけではない。話術もまたウィルの戦術だ。
 アポカリプスは静かに剣を構え、ウィルに突き付けた。

「『宝剣』」
「───何ぃ!?」

 すると突然、黄金の宝剣・・・・・が何本も現れた。
 空中に浮かび、切っ先は全てウィルを捉えている。
 馬鹿な───そう思い、ウィルは左手の『ヘッズマン』を向けた。

「行け」
「【機関銃マシンガン】───『大暴れファンダンゴ』」

 ウィルの左手が機関銃となり、飛んでくる宝剣を粉々に砕く。
 戦いは始まった。
 ウィルは左手を狙撃銃に変え、高速で移動しながらアポカリプスを狙う。

「【狙撃銃スナイパー】───『一点集中ワイアット』」

 跳躍し、空中で狙いを付け───翡翠の弾丸を発射。
 狙いは頭部。頑強な兜に守られているが、ウィルの『貫通』に貫けないものはない。
 勝った───そう確信したウィル。
 だが、ウィルは聞いた。

「───スンスン」

 アポカリプスは、匂いを嗅いだ。
 そして、ほんの少し首を動かし、弾丸を躱した。
 さらに、右手をウィルに向けると……手から『蠅』が飛び出した。

「な、にぃ!?」
「喰らい尽くせ」

 蠅は数千匹はいる。
 ウィルはがむしゃらに『機関銃』をばら撒き、蠅を打ち落とす。
 だが、全てを撃ち落とせなかった。蠅がウィルを襲う。

「ッチ……うざってぇ!!」

 蠅相手に格闘していると、アポカリプスは大きく息を吸った。
 そして、思いきり吐きだす。
 吐きだされたのは息ではない。炎のブレスだった。

「なんだ、とぉぉぉ!? ぐぁぁぁぁっ!!」
「貴様は弱い」
「!?」

 一瞬で接近───された。
 ウィルは動けなかった。正確には、動きがノロく・・・なっていた。
 まるで水の中にいるような動き。だが、アポカリプスは通常の速度。
 アポカリプスの剣が振るわれる。

「ぐ───あぁ───っ!?」

 身体を斬られ、ウィルは吹っ飛んだ。
 肩から脇にかけて斬られた。不幸中の幸いか、ギリギリで後ろに飛んだおかげで傷は浅い。
 ウィルは傷口を押さえ、確信した。

「テメェの能力……魔人のだな」

 アポカリプスは、剣を下ろし頷く。

「そう。我が能力は『七大罪』だ。『暴食の魔人アベル』、『傲慢の魔人ヒュブリス』、『色欲の魔人フロレンティア』、『嫉妬の魔人バハムート、同じくレイヴィニア』、『怠惰の魔人ミドガルズオルム、同じくニスロク』、『強欲の魔人ベルゼブブ』、『憤怒の魔人オウガ』の能力を使用できる」
「……チッ」

 つまり、九つの能力を宿した魔神だ。
 確かに最強。ウィルは血をペッと吐きながら帽子を押さえた。

「我は最強。魔人の頂点。我が名は『大罪』の魔人アポカリプス。人間、一度だけ見逃してやる。今逃げれば、ほんの少しだけ寿命が延びるぞ」
「…………」

 ウィルはくだらなそうに肩をすくめた。
 そして、ポケットからスキットルを取り出し口に含み、傷口に向けて霧のように吹きだした。
 さらに、スキットルの中身……スコッチを飲み干す。

「っつぅぅ……あーいてぇ。まぁ、舐めた報いとしておこう」
「……何を飲んでいるのだ?」
「酒。ま、オレの燃料みたいなもんだ」
「不謹慎な……戦いの最中に酒だと?」
「ああ。これがまたいいんだ」

 ウィルはスキットルをポケットにしまい、煙管を取り出す。
 煙草に火を点け、煙管を咥え、煙を吐きだした。

「ふぅ~~~───っ……はぁ、美味い」
「……貴様、戦いを舐めているのか?」
「バーカ。戦いなんざ勝ち負けがはっきりしてりゃそれでいい。それまでの過程なんてクソだね。つまり、オレかお前のどっちかが死ねば終わりってこった」
「……私は、生まれて主に仕えて知った。戦いとは神聖なモノである。それを汚す貴様は……人間は、やはり滅ぼさねば」
「やってみろ。まぁ、死ぬのはテメェだけどな」

 ウィルは煙管を咥えたまま、左手を向ける。

「さぁて、テメェの手札はわかった。つまり……雑魚の寄せ集めってこった。蓋を開けりゃ大したことのねぇ中身だぜ」
「もういい。貴様は消えろ」

 宝剣が再び浮かぶ。
 ウィルは煙管を加えたまま、ニヤリと笑った。

 ◇◇◇◇◇◇

 ウィルは帽子を押さえ、静かに告げる。

「『完全侵食エヴォリューション』───」

 ウィルの姿が変わる。
 鷹のような、隼のような、鷲のような、烏のような───鳥人間とでも言うべき姿へ。背中に大きな翼が生え、全身が異形の姿へと変わる。
 帽子が消え、変異したウィルは両手をアポカリプスへ向けた。
 両手が『拳銃』形態へ変わり、翼が大きく広がる。

「クソ雑魚の能力寄せ集めクソ野郎。どんな能力を持とうが───……オレの弾丸は全てを『貫通』する。諦めてケツ振るなら楽にしてやるぜ?」
「下品なガキめ。姿が変わろうと貴様程度」

 アポカリプスは剣を構える。
 ウィルはふわりと浮かび上がり、弾丸を発射した。
 弾丸は、アポカリプスの身体を貫通するが、すぐに回復───いや、『回帰』した。
 魔人オウガの能力。つまり、最強の自分へ戻している。
 ウィルは舌打ちするが、すぐに不敵な笑みを浮かべた。

「くっだらねぇ……!! 喰らえ、『能力貫通弾ティルフィング』!!」
「ぬ!?」

 ウィルの放った銃弾がアポカリプスの肩を貫通。
 すぐに『回帰』を発動させるが、肩は治らなかった。
 
「これは……」
「テメェの『能力』そのものを破壊する弾丸だ。オレの『貫通』はあらゆるものを貫通する。人、モノ、時間、空間……そして『能力』も。イメージするのがクソ面倒くせぇから多用できねぇがな」

 一日三発だけの大技だ。
 ウィルは、完全侵食を得たことで、新しい弾丸をいくつか精製できるようになっていた。
 かつて、オウガに歯が立たなかった自分。その無力さに報いるために生まれたのが『能力貫通弾ティルフィング』だ。
 ウィルは、左手をアポカリプスに向ける。

「さぁ……テメェの能力、ブチ抜いてやるよ」
「……フン。《回帰》を失ったところで問題ない」
「なら、試してやるよ!!」

 ウィルは急上昇。
 急降下しながら弾丸を連射。アポカリプスは高速で動きながら、黄金の宝剣を数百本生み出し、ウィルに向けて射出。
 ウィルは急降下しながら宝剣を躱す。
 弾丸の雨が飛んでくるが、すべてアポカリプスの半径数メートルに接近すると動きがノロくなる。
 さらにアポカリプスは、口を大きく開けて炎を吐きだした。

「───ッちぃ!!」

 舌打ちし、ウィルは翼を思い切り羽ばたかせる。すると、炎の勢いが少しだけ弱まり、その隙にウィルは再び急上昇。両腕を《機関銃》に変え、雨のようにアポカリプスの頭上へ放つ。

「無駄」

 だが───アポカリプスは、『スロウ』の能力で全ての弾丸をノロくする。
 銃弾は遅いので容易く回避可能だ。アポカリプスはバックステップで銃弾の位置から下がった。
 そして、気付いた。

「遅い」
「なっ」

 ウィルが背後にいた。
 バックステップした目と鼻の先。
 『スロウ』は効いている。ウィルの動きは遅い。
 だが、下がった先にウィルはいた。ウィルの銃口がアポカリプスの背中に触れた。
 放たれた銃弾はアポカリプスの背中を貫通。腹から飛び出た。

「ぐ、オォォッ!?」
「へ、ノロい能力は消えたぜ!!」
「き、さまっ!!」

 アポカリプスが剣を振うと、ウィルの胸に切っ先が触れ斬れた。
 ウィルの胸から血が出る。接近戦はアポカリプスに分があった。
 再び飛ぼうとするが、アポカリプスが急接近する───ウィルを空へ向かわせないためだ。
 光速で振られる剣は、ウィルの反射速度を軽く超えていた。

「ッちぃぃぃ!! この野郎……ッ!!」
「貴様はここで斬る!!」

 接近戦はアポカリプスのが強い。
 現に、ウィルは押されていた。剣をギリで躱すが、反撃できない。
 アポカリプスは剣速をさらに上げる。
 もう能力は必要ない。この距離ならウィルを両断できる。
 
「はハハハハハハハッ!! 主のためにぃぃぃぃぃぃっ!!」
「ッチ……クソが」

 そして───一刀両断するべく、剣が縦に振り下ろされる。

「チェストぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
「ガァァァァァァァァッ!!」

 ウィルは、掴んだ。
 振り下ろされる剣を、両手で。
 両手から鮮血が吹きだす。
 パワーもアポカリプスが上。ギリギリと押されていく。

「っぐ、ぅぅぅ……!!」
「クハハハハハッ!! このまま両断してやる!!」
「こ、の……野郎」

 アポカリプスは腕力に加え体重をかける。ウィルは両腕を封じられ、ぎりぎりと押されていく。
 剣は、ウィルの頭に触れた……そして、額へ触れ、血が出た。

「終わりだ!! このまま両断してやる!!」
「───ああ、終わりだな」

 ドン!!───と、一発の銃声。
 ジワリと、アポカリプスの腹が熱くなる。
 
「げふっ……? な、にぃ?」
「バーカ……気づけよ、クソ野郎」

 アポカリプスは気付いた。
 ウィルの右足。足の親指が銃口と化し、アポカリプスの腹に銃弾を放った。
 しかも、ただの銃弾じゃない。
 ウィルの切り札。『究極消滅弾ロンギヌス』だ。
  時間、空間、存在、命、起源、全。その全てを『貫通』し、破壊する弾丸。一日一発の切り札が、アポカリプスの身体を貫通した。

「ば、馬鹿な……」
「オレの両手を封じたから弾丸は放てないって思っただろ? それこそがオレの狙い。お前の無防備なドテッ腹に銃弾を撃ち込むチャンスをな」
「き、さま……ひ、卑劣、な」
「聞こえねぇなぁ~? へへへ、さっきも言ったがよ、過程なんてクソどうでもいい。勝ちゃあいいんだよ。バァーカ」

 『究極消滅弾ロンギヌス』を受けたことで、アポカリプスの存在が揺らいだ。
 さらさらと、徐々に粒子化していくアポカリプス。
 ウィルはアポカリプスから離れ、『完全侵食』を解除して『ヘッズマン』をアポカリプスに向ける。

「ひ、卑劣な、人間め……貴様のような、奴が、いるから……魔帝様、は」
「知るかボケ。つーか、どう考えてもあの女のがやってること悪じゃねぇか」
「……貴様は、知らない。あのお方は、お優しい……」

 最後まで言い切ることなく、ウィルの放った銃弾がアポカリプスの心臓を貫通した。
 アポカリプスは砕け散るように消滅───何も残らなかった。
 ウィルは煙管を取り出し、煙草に火を付ける。

「ま、どうなるかはあの馬鹿次第だろ。あとはあいつに任せて、オレは一服させてもらうぜ」

 そう言い、予備のスキットルを取り出しながら、近くの岩に腰かけた。
 煙草と酒を楽しもうとするウィルだが、やってきたアネルたちに邪魔され、一服はお預けとなるのだった。
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