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第九章
左きゝの拳銃 /アウトロー・スター
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ウィルとアポカリプスは、アルフェンたちから遠く離れた場所で向かい合っていた。
剣を構えるアポカリプス、対するウィルは右手で帽子を押さえ、ギラギラした目をアポカリプスに向けている。それが気に喰わないのか、アポカリプスはウィルに言った。
「貴様、その眼をやめろ。胸糞悪い」
「はっ……雑魚決定。おいビビリ野郎、ブルッちまってるところ悪いが、もうお前に勝ちはねぇよ。降参して犬みてぇに鳴くなら許してやらんこともねぇが、どうする?」
ウィルは絶好調だった。
これでもかと相手を馬鹿にする。だが、舐めているわけではない。話術もまたウィルの戦術だ。
アポカリプスは静かに剣を構え、ウィルに突き付けた。
「『宝剣』」
「───何ぃ!?」
すると突然、黄金の宝剣が何本も現れた。
空中に浮かび、切っ先は全てウィルを捉えている。
馬鹿な───そう思い、ウィルは左手の『ヘッズマン』を向けた。
「行け」
「【機関銃】───『大暴れ』」
ウィルの左手が機関銃となり、飛んでくる宝剣を粉々に砕く。
戦いは始まった。
ウィルは左手を狙撃銃に変え、高速で移動しながらアポカリプスを狙う。
「【狙撃銃】───『一点集中』」
跳躍し、空中で狙いを付け───翡翠の弾丸を発射。
狙いは頭部。頑強な兜に守られているが、ウィルの『貫通』に貫けないものはない。
勝った───そう確信したウィル。
だが、ウィルは聞いた。
「───スンスン」
アポカリプスは、匂いを嗅いだ。
そして、ほんの少し首を動かし、弾丸を躱した。
さらに、右手をウィルに向けると……手から『蠅』が飛び出した。
「な、にぃ!?」
「喰らい尽くせ」
蠅は数千匹はいる。
ウィルはがむしゃらに『機関銃』をばら撒き、蠅を打ち落とす。
だが、全てを撃ち落とせなかった。蠅がウィルを襲う。
「ッチ……うざってぇ!!」
蠅相手に格闘していると、アポカリプスは大きく息を吸った。
そして、思いきり吐きだす。
吐きだされたのは息ではない。炎のブレスだった。
「なんだ、とぉぉぉ!? ぐぁぁぁぁっ!!」
「貴様は弱い」
「!?」
一瞬で接近───された。
ウィルは動けなかった。正確には、動きがノロくなっていた。
まるで水の中にいるような動き。だが、アポカリプスは通常の速度。
アポカリプスの剣が振るわれる。
「ぐ───あぁ───っ!?」
身体を斬られ、ウィルは吹っ飛んだ。
肩から脇にかけて斬られた。不幸中の幸いか、ギリギリで後ろに飛んだおかげで傷は浅い。
ウィルは傷口を押さえ、確信した。
「テメェの能力……魔人のだな」
アポカリプスは、剣を下ろし頷く。
「そう。我が能力は『七大罪』だ。『暴食の魔人アベル』、『傲慢の魔人ヒュブリス』、『色欲の魔人フロレンティア』、『嫉妬の魔人バハムート、同じくレイヴィニア』、『怠惰の魔人ミドガルズオルム、同じくニスロク』、『強欲の魔人ベルゼブブ』、『憤怒の魔人オウガ』の能力を使用できる」
「……チッ」
つまり、九つの能力を宿した魔神だ。
確かに最強。ウィルは血をペッと吐きながら帽子を押さえた。
「我は最強。魔人の頂点。我が名は『大罪』の魔人アポカリプス。人間、一度だけ見逃してやる。今逃げれば、ほんの少しだけ寿命が延びるぞ」
「…………」
ウィルはくだらなそうに肩をすくめた。
そして、ポケットからスキットルを取り出し口に含み、傷口に向けて霧のように吹きだした。
さらに、スキットルの中身……スコッチを飲み干す。
「っつぅぅ……あーいてぇ。まぁ、舐めた報いとしておこう」
「……何を飲んでいるのだ?」
「酒。ま、オレの燃料みたいなもんだ」
「不謹慎な……戦いの最中に酒だと?」
「ああ。これがまたいいんだ」
ウィルはスキットルをポケットにしまい、煙管を取り出す。
煙草に火を点け、煙管を咥え、煙を吐きだした。
「ふぅ~~~───っ……はぁ、美味い」
「……貴様、戦いを舐めているのか?」
「バーカ。戦いなんざ勝ち負けがはっきりしてりゃそれでいい。それまでの過程なんてクソだね。つまり、オレかお前のどっちかが死ねば終わりってこった」
「……私は、生まれて主に仕えて知った。戦いとは神聖なモノである。それを汚す貴様は……人間は、やはり滅ぼさねば」
「やってみろ。まぁ、死ぬのはテメェだけどな」
ウィルは煙管を咥えたまま、左手を向ける。
「さぁて、テメェの手札はわかった。つまり……雑魚の寄せ集めってこった。蓋を開けりゃ大したことのねぇ中身だぜ」
「もういい。貴様は消えろ」
宝剣が再び浮かぶ。
ウィルは煙管を加えたまま、ニヤリと笑った。
◇◇◇◇◇◇
ウィルは帽子を押さえ、静かに告げる。
「『完全侵食』───」
ウィルの姿が変わる。
鷹のような、隼のような、鷲のような、烏のような───鳥人間とでも言うべき姿へ。背中に大きな翼が生え、全身が異形の姿へと変わる。
帽子が消え、変異したウィルは両手をアポカリプスへ向けた。
両手が『拳銃』形態へ変わり、翼が大きく広がる。
「クソ雑魚の能力寄せ集めクソ野郎。どんな能力を持とうが───……オレの弾丸は全てを『貫通』する。諦めてケツ振るなら楽にしてやるぜ?」
「下品なガキめ。姿が変わろうと貴様程度」
アポカリプスは剣を構える。
ウィルはふわりと浮かび上がり、弾丸を発射した。
弾丸は、アポカリプスの身体を貫通するが、すぐに回復───いや、『回帰』した。
魔人オウガの能力。つまり、最強の自分へ戻している。
ウィルは舌打ちするが、すぐに不敵な笑みを浮かべた。
「くっだらねぇ……!! 喰らえ、『能力貫通弾』!!」
「ぬ!?」
ウィルの放った銃弾がアポカリプスの肩を貫通。
すぐに『回帰』を発動させるが、肩は治らなかった。
「これは……」
「テメェの『能力』そのものを破壊する弾丸だ。オレの『貫通』はあらゆるものを貫通する。人、モノ、時間、空間……そして『能力』も。イメージするのがクソ面倒くせぇから多用できねぇがな」
一日三発だけの大技だ。
ウィルは、完全侵食を得たことで、新しい弾丸をいくつか精製できるようになっていた。
かつて、オウガに歯が立たなかった自分。その無力さに報いるために生まれたのが『能力貫通弾』だ。
ウィルは、左手をアポカリプスに向ける。
「さぁ……テメェの能力、ブチ抜いてやるよ」
「……フン。《回帰》を失ったところで問題ない」
「なら、試してやるよ!!」
ウィルは急上昇。
急降下しながら弾丸を連射。アポカリプスは高速で動きながら、黄金の宝剣を数百本生み出し、ウィルに向けて射出。
ウィルは急降下しながら宝剣を躱す。
弾丸の雨が飛んでくるが、すべてアポカリプスの半径数メートルに接近すると動きがノロくなる。
さらにアポカリプスは、口を大きく開けて炎を吐きだした。
「───ッちぃ!!」
舌打ちし、ウィルは翼を思い切り羽ばたかせる。すると、炎の勢いが少しだけ弱まり、その隙にウィルは再び急上昇。両腕を《機関銃》に変え、雨のようにアポカリプスの頭上へ放つ。
「無駄」
だが───アポカリプスは、『スロウ』の能力で全ての弾丸をノロくする。
銃弾は遅いので容易く回避可能だ。アポカリプスはバックステップで銃弾の位置から下がった。
そして、気付いた。
「遅い」
「なっ」
ウィルが背後にいた。
バックステップした目と鼻の先。
『スロウ』は効いている。ウィルの動きは遅い。
だが、下がった先にウィルはいた。ウィルの銃口がアポカリプスの背中に触れた。
放たれた銃弾はアポカリプスの背中を貫通。腹から飛び出た。
「ぐ、オォォッ!?」
「へ、ノロい能力は消えたぜ!!」
「き、さまっ!!」
アポカリプスが剣を振うと、ウィルの胸に切っ先が触れ斬れた。
ウィルの胸から血が出る。接近戦はアポカリプスに分があった。
再び飛ぼうとするが、アポカリプスが急接近する───ウィルを空へ向かわせないためだ。
光速で振られる剣は、ウィルの反射速度を軽く超えていた。
「ッちぃぃぃ!! この野郎……ッ!!」
「貴様はここで斬る!!」
接近戦はアポカリプスのが強い。
現に、ウィルは押されていた。剣をギリで躱すが、反撃できない。
アポカリプスは剣速をさらに上げる。
もう能力は必要ない。この距離ならウィルを両断できる。
「はハハハハハハハッ!! 主のためにぃぃぃぃぃぃっ!!」
「ッチ……クソが」
そして───一刀両断するべく、剣が縦に振り下ろされる。
「チェストぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
「ガァァァァァァァァッ!!」
ウィルは、掴んだ。
振り下ろされる剣を、両手で。
両手から鮮血が吹きだす。
パワーもアポカリプスが上。ギリギリと押されていく。
「っぐ、ぅぅぅ……!!」
「クハハハハハッ!! このまま両断してやる!!」
「こ、の……野郎」
アポカリプスは腕力に加え体重をかける。ウィルは両腕を封じられ、ぎりぎりと押されていく。
剣は、ウィルの頭に触れた……そして、額へ触れ、血が出た。
「終わりだ!! このまま両断してやる!!」
「───ああ、終わりだな」
ドン!!───と、一発の銃声。
ジワリと、アポカリプスの腹が熱くなる。
「げふっ……? な、にぃ?」
「バーカ……気づけよ、クソ野郎」
アポカリプスは気付いた。
ウィルの右足。足の親指が銃口と化し、アポカリプスの腹に銃弾を放った。
しかも、ただの銃弾じゃない。
ウィルの切り札。『究極消滅弾』だ。
時間、空間、存在、命、起源、全。その全てを『貫通』し、破壊する弾丸。一日一発の切り札が、アポカリプスの身体を貫通した。
「ば、馬鹿な……」
「オレの両手を封じたから弾丸は放てないって思っただろ? それこそがオレの狙い。お前の無防備なドテッ腹に銃弾を撃ち込むチャンスをな」
「き、さま……ひ、卑劣、な」
「聞こえねぇなぁ~? へへへ、さっきも言ったがよ、過程なんてクソどうでもいい。勝ちゃあいいんだよ。バァーカ」
『究極消滅弾』を受けたことで、アポカリプスの存在が揺らいだ。
さらさらと、徐々に粒子化していくアポカリプス。
ウィルはアポカリプスから離れ、『完全侵食』を解除して『ヘッズマン』をアポカリプスに向ける。
「ひ、卑劣な、人間め……貴様のような、奴が、いるから……魔帝様、は」
「知るかボケ。つーか、どう考えてもあの女のがやってること悪じゃねぇか」
「……貴様は、知らない。あのお方は、お優しい……」
最後まで言い切ることなく、ウィルの放った銃弾がアポカリプスの心臓を貫通した。
アポカリプスは砕け散るように消滅───何も残らなかった。
ウィルは煙管を取り出し、煙草に火を付ける。
「ま、どうなるかはあの馬鹿次第だろ。あとはあいつに任せて、オレは一服させてもらうぜ」
そう言い、予備のスキットルを取り出しながら、近くの岩に腰かけた。
煙草と酒を楽しもうとするウィルだが、やってきたアネルたちに邪魔され、一服はお預けとなるのだった。
剣を構えるアポカリプス、対するウィルは右手で帽子を押さえ、ギラギラした目をアポカリプスに向けている。それが気に喰わないのか、アポカリプスはウィルに言った。
「貴様、その眼をやめろ。胸糞悪い」
「はっ……雑魚決定。おいビビリ野郎、ブルッちまってるところ悪いが、もうお前に勝ちはねぇよ。降参して犬みてぇに鳴くなら許してやらんこともねぇが、どうする?」
ウィルは絶好調だった。
これでもかと相手を馬鹿にする。だが、舐めているわけではない。話術もまたウィルの戦術だ。
アポカリプスは静かに剣を構え、ウィルに突き付けた。
「『宝剣』」
「───何ぃ!?」
すると突然、黄金の宝剣が何本も現れた。
空中に浮かび、切っ先は全てウィルを捉えている。
馬鹿な───そう思い、ウィルは左手の『ヘッズマン』を向けた。
「行け」
「【機関銃】───『大暴れ』」
ウィルの左手が機関銃となり、飛んでくる宝剣を粉々に砕く。
戦いは始まった。
ウィルは左手を狙撃銃に変え、高速で移動しながらアポカリプスを狙う。
「【狙撃銃】───『一点集中』」
跳躍し、空中で狙いを付け───翡翠の弾丸を発射。
狙いは頭部。頑強な兜に守られているが、ウィルの『貫通』に貫けないものはない。
勝った───そう確信したウィル。
だが、ウィルは聞いた。
「───スンスン」
アポカリプスは、匂いを嗅いだ。
そして、ほんの少し首を動かし、弾丸を躱した。
さらに、右手をウィルに向けると……手から『蠅』が飛び出した。
「な、にぃ!?」
「喰らい尽くせ」
蠅は数千匹はいる。
ウィルはがむしゃらに『機関銃』をばら撒き、蠅を打ち落とす。
だが、全てを撃ち落とせなかった。蠅がウィルを襲う。
「ッチ……うざってぇ!!」
蠅相手に格闘していると、アポカリプスは大きく息を吸った。
そして、思いきり吐きだす。
吐きだされたのは息ではない。炎のブレスだった。
「なんだ、とぉぉぉ!? ぐぁぁぁぁっ!!」
「貴様は弱い」
「!?」
一瞬で接近───された。
ウィルは動けなかった。正確には、動きがノロくなっていた。
まるで水の中にいるような動き。だが、アポカリプスは通常の速度。
アポカリプスの剣が振るわれる。
「ぐ───あぁ───っ!?」
身体を斬られ、ウィルは吹っ飛んだ。
肩から脇にかけて斬られた。不幸中の幸いか、ギリギリで後ろに飛んだおかげで傷は浅い。
ウィルは傷口を押さえ、確信した。
「テメェの能力……魔人のだな」
アポカリプスは、剣を下ろし頷く。
「そう。我が能力は『七大罪』だ。『暴食の魔人アベル』、『傲慢の魔人ヒュブリス』、『色欲の魔人フロレンティア』、『嫉妬の魔人バハムート、同じくレイヴィニア』、『怠惰の魔人ミドガルズオルム、同じくニスロク』、『強欲の魔人ベルゼブブ』、『憤怒の魔人オウガ』の能力を使用できる」
「……チッ」
つまり、九つの能力を宿した魔神だ。
確かに最強。ウィルは血をペッと吐きながら帽子を押さえた。
「我は最強。魔人の頂点。我が名は『大罪』の魔人アポカリプス。人間、一度だけ見逃してやる。今逃げれば、ほんの少しだけ寿命が延びるぞ」
「…………」
ウィルはくだらなそうに肩をすくめた。
そして、ポケットからスキットルを取り出し口に含み、傷口に向けて霧のように吹きだした。
さらに、スキットルの中身……スコッチを飲み干す。
「っつぅぅ……あーいてぇ。まぁ、舐めた報いとしておこう」
「……何を飲んでいるのだ?」
「酒。ま、オレの燃料みたいなもんだ」
「不謹慎な……戦いの最中に酒だと?」
「ああ。これがまたいいんだ」
ウィルはスキットルをポケットにしまい、煙管を取り出す。
煙草に火を点け、煙管を咥え、煙を吐きだした。
「ふぅ~~~───っ……はぁ、美味い」
「……貴様、戦いを舐めているのか?」
「バーカ。戦いなんざ勝ち負けがはっきりしてりゃそれでいい。それまでの過程なんてクソだね。つまり、オレかお前のどっちかが死ねば終わりってこった」
「……私は、生まれて主に仕えて知った。戦いとは神聖なモノである。それを汚す貴様は……人間は、やはり滅ぼさねば」
「やってみろ。まぁ、死ぬのはテメェだけどな」
ウィルは煙管を咥えたまま、左手を向ける。
「さぁて、テメェの手札はわかった。つまり……雑魚の寄せ集めってこった。蓋を開けりゃ大したことのねぇ中身だぜ」
「もういい。貴様は消えろ」
宝剣が再び浮かぶ。
ウィルは煙管を加えたまま、ニヤリと笑った。
◇◇◇◇◇◇
ウィルは帽子を押さえ、静かに告げる。
「『完全侵食』───」
ウィルの姿が変わる。
鷹のような、隼のような、鷲のような、烏のような───鳥人間とでも言うべき姿へ。背中に大きな翼が生え、全身が異形の姿へと変わる。
帽子が消え、変異したウィルは両手をアポカリプスへ向けた。
両手が『拳銃』形態へ変わり、翼が大きく広がる。
「クソ雑魚の能力寄せ集めクソ野郎。どんな能力を持とうが───……オレの弾丸は全てを『貫通』する。諦めてケツ振るなら楽にしてやるぜ?」
「下品なガキめ。姿が変わろうと貴様程度」
アポカリプスは剣を構える。
ウィルはふわりと浮かび上がり、弾丸を発射した。
弾丸は、アポカリプスの身体を貫通するが、すぐに回復───いや、『回帰』した。
魔人オウガの能力。つまり、最強の自分へ戻している。
ウィルは舌打ちするが、すぐに不敵な笑みを浮かべた。
「くっだらねぇ……!! 喰らえ、『能力貫通弾』!!」
「ぬ!?」
ウィルの放った銃弾がアポカリプスの肩を貫通。
すぐに『回帰』を発動させるが、肩は治らなかった。
「これは……」
「テメェの『能力』そのものを破壊する弾丸だ。オレの『貫通』はあらゆるものを貫通する。人、モノ、時間、空間……そして『能力』も。イメージするのがクソ面倒くせぇから多用できねぇがな」
一日三発だけの大技だ。
ウィルは、完全侵食を得たことで、新しい弾丸をいくつか精製できるようになっていた。
かつて、オウガに歯が立たなかった自分。その無力さに報いるために生まれたのが『能力貫通弾』だ。
ウィルは、左手をアポカリプスに向ける。
「さぁ……テメェの能力、ブチ抜いてやるよ」
「……フン。《回帰》を失ったところで問題ない」
「なら、試してやるよ!!」
ウィルは急上昇。
急降下しながら弾丸を連射。アポカリプスは高速で動きながら、黄金の宝剣を数百本生み出し、ウィルに向けて射出。
ウィルは急降下しながら宝剣を躱す。
弾丸の雨が飛んでくるが、すべてアポカリプスの半径数メートルに接近すると動きがノロくなる。
さらにアポカリプスは、口を大きく開けて炎を吐きだした。
「───ッちぃ!!」
舌打ちし、ウィルは翼を思い切り羽ばたかせる。すると、炎の勢いが少しだけ弱まり、その隙にウィルは再び急上昇。両腕を《機関銃》に変え、雨のようにアポカリプスの頭上へ放つ。
「無駄」
だが───アポカリプスは、『スロウ』の能力で全ての弾丸をノロくする。
銃弾は遅いので容易く回避可能だ。アポカリプスはバックステップで銃弾の位置から下がった。
そして、気付いた。
「遅い」
「なっ」
ウィルが背後にいた。
バックステップした目と鼻の先。
『スロウ』は効いている。ウィルの動きは遅い。
だが、下がった先にウィルはいた。ウィルの銃口がアポカリプスの背中に触れた。
放たれた銃弾はアポカリプスの背中を貫通。腹から飛び出た。
「ぐ、オォォッ!?」
「へ、ノロい能力は消えたぜ!!」
「き、さまっ!!」
アポカリプスが剣を振うと、ウィルの胸に切っ先が触れ斬れた。
ウィルの胸から血が出る。接近戦はアポカリプスに分があった。
再び飛ぼうとするが、アポカリプスが急接近する───ウィルを空へ向かわせないためだ。
光速で振られる剣は、ウィルの反射速度を軽く超えていた。
「ッちぃぃぃ!! この野郎……ッ!!」
「貴様はここで斬る!!」
接近戦はアポカリプスのが強い。
現に、ウィルは押されていた。剣をギリで躱すが、反撃できない。
アポカリプスは剣速をさらに上げる。
もう能力は必要ない。この距離ならウィルを両断できる。
「はハハハハハハハッ!! 主のためにぃぃぃぃぃぃっ!!」
「ッチ……クソが」
そして───一刀両断するべく、剣が縦に振り下ろされる。
「チェストぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
「ガァァァァァァァァッ!!」
ウィルは、掴んだ。
振り下ろされる剣を、両手で。
両手から鮮血が吹きだす。
パワーもアポカリプスが上。ギリギリと押されていく。
「っぐ、ぅぅぅ……!!」
「クハハハハハッ!! このまま両断してやる!!」
「こ、の……野郎」
アポカリプスは腕力に加え体重をかける。ウィルは両腕を封じられ、ぎりぎりと押されていく。
剣は、ウィルの頭に触れた……そして、額へ触れ、血が出た。
「終わりだ!! このまま両断してやる!!」
「───ああ、終わりだな」
ドン!!───と、一発の銃声。
ジワリと、アポカリプスの腹が熱くなる。
「げふっ……? な、にぃ?」
「バーカ……気づけよ、クソ野郎」
アポカリプスは気付いた。
ウィルの右足。足の親指が銃口と化し、アポカリプスの腹に銃弾を放った。
しかも、ただの銃弾じゃない。
ウィルの切り札。『究極消滅弾』だ。
時間、空間、存在、命、起源、全。その全てを『貫通』し、破壊する弾丸。一日一発の切り札が、アポカリプスの身体を貫通した。
「ば、馬鹿な……」
「オレの両手を封じたから弾丸は放てないって思っただろ? それこそがオレの狙い。お前の無防備なドテッ腹に銃弾を撃ち込むチャンスをな」
「き、さま……ひ、卑劣、な」
「聞こえねぇなぁ~? へへへ、さっきも言ったがよ、過程なんてクソどうでもいい。勝ちゃあいいんだよ。バァーカ」
『究極消滅弾』を受けたことで、アポカリプスの存在が揺らいだ。
さらさらと、徐々に粒子化していくアポカリプス。
ウィルはアポカリプスから離れ、『完全侵食』を解除して『ヘッズマン』をアポカリプスに向ける。
「ひ、卑劣な、人間め……貴様のような、奴が、いるから……魔帝様、は」
「知るかボケ。つーか、どう考えてもあの女のがやってること悪じゃねぇか」
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最後まで言い切ることなく、ウィルの放った銃弾がアポカリプスの心臓を貫通した。
アポカリプスは砕け散るように消滅───何も残らなかった。
ウィルは煙管を取り出し、煙草に火を付ける。
「ま、どうなるかはあの馬鹿次第だろ。あとはあいつに任せて、オレは一服させてもらうぜ」
そう言い、予備のスキットルを取り出しながら、近くの岩に腰かけた。
煙草と酒を楽しもうとするウィルだが、やってきたアネルたちに邪魔され、一服はお預けとなるのだった。
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右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。
「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~
黒片大豆
ファンタジー
「お前、追放な。田舎に帰ってゆっくりしてろ」
女神の信託を受け、勇者のひとりとして迎えられた『アイサック=ベルキッド』。
この日、勇者リーダーにより追放が宣告され、そのゴシップニュースは箝口令解除を待って、世界中にバラまかれることとなった。
『勇者道化師ベルキッド、追放される』
『サック』は田舎への帰り道、野党に襲われる少女『二オーレ』を助け、お礼に施しを受ける。しかしその家族には大きな秘密があり、サックの今後の運命を左右することとなった。二オーレとの出会いにより、新たに『女神への復讐』の選択肢が生まれたサックは、女神へのコンタクト方法を探る旅に目的を変更し、その道中、ゴシップ記事を飛ばした記者や、暗殺者の少女、元勇者の同僚との出会いを重ね、魔王との決戦時に女神が現れることを知る。そして一度は追放された身でありながら、彼は元仲間たちの元へむかう。本気で女神を一発ぶん殴る──ただそれだけのために。
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