170 / 178
第九章
赤黒き光と青白き闇
しおりを挟む
壮絶な衝撃波だった。
「『獣の一撃』!!」
「あははっ!! 『女王の一撃』!!」
硬化したアルフェンの右拳が、ニュクスの巨大化させた手刀と激突し、衝撃波が発生した。
アルフェンは衝撃で弾かれるが、気合で踏ん張る。
ニュクスは弾かれもせず、「うーん」と首を傾げた。
「ねぇ、不思議に思うんだけど……どうやって強くなったの? お城で戦った時とは別人だよね? あのときのあたしは四割くらいの力だった。今は十割の力で戦ってる。アルフェンはこの百日で何をしたの?」
「さぁな……でも、俺は全力で戦うだけだ」
右手が巨大化し、硬化する。
右目もギラギラしていた。
アルフェンは、全力で戦っているだけだ。ピースメーカー部隊との戦いで、自身の限界まで力を引き出すことを覚えた。
今までももちろん全力だ。だが、今はそれ以上に全力。
たとえアルフェンの身体がどうなろうと、アルフェンはジャガーノートの力を限界まで引き出すだろう。
相手が100%の力で来るなら、200%の力を出せばいい。それがアルフェンの戦いで、現に今、ニュクスと互角に戦えていた。
「まぁいいわ。ふふ、楽しいねぇ……なんの策もない。能力も単純。ただひたすら力をぶつけ合う戦い。こういうの、すっごく好き」
「……俺は嫌だ」
「え?」
「俺、本当は……戦いなんてしたくない。誰だって平和が好きだし、穏やかに過ごしたいって思う」
「ふーん。つまんないね」
「そんなことない。お前は……戦いが好きなのか?」
「…………」
ニュクスは黙ってしまった。
本気で考えているのか、空を見上げている。
そして、左手をスッと下ろして言う。
「あたし、ドレッドノートが《世界》が欲しいって言ったから、世界を手に入れようとしただけ。べつに戦いとか……好きじゃない、のかな?」
「だったら……!!」
「やめないよ。だって……面白いからね」
ニュクスの左手が巨大化し、右目が黄金に染まる。
「それに、この世界を召喚獣の世界にするって約束だから。人間を一掃して、召喚獣の世界にする。アルフェン、新しい世界で最初の人間になろうよ? あたしとあなただけの、優しい世界」
「断る。そんなの、優しくなんかない……ヒトの世界はヒトのもんだ!!」
アルフェンの右手が巨大化する。
ニュクスと同じくらい強く、大きく。
ニュクスは、大きくため息を吐いた。
「ジャガーノートと同じこと言ってる……ねぇ知ってるの? そう言ったジャガーノートは、あたしとドレッドノートに負けたんだよ?」
「知ってる。でも、今度は違う。俺とジャガーノートなら負けない」
アルフェンは跳躍。
巨大化させた右腕をガバッと開き、ニュクスめがけて叩き付けた。
「『獣の大地爆砕』!!」
「───……あっそ」
だが、アルフェンの右手は、同じくらい巨大化したニュクスの左手に止められた。
ギシギシと握られ、アルフェンの手はピクリとも動かない。
ニュクスは、興味を失ったように呟いた。
「じゃあいいや───……やっぱり、人間はいらない。全部ツブして、世界を浄化する」
「───ッ!? っがぁ!?」
ニュクスは、アルフェンの右手を掴んだまま持ち上げ、地面に叩き付けた。
地面が陥没する。衝撃がアルフェンの身体を伝わる。
血を吐き、眩暈で頭がおかしくなりそうだった。
「教えてあげる。あのね、人間のアルフェンじゃどうあがいてもあたしには勝てないの。だって、あたしは長い年月をかけて、この身体を構築してきた。『我儘な女王』の誓約に苦しめられてきたけど、この身体じゃその誓約も通用しない。女王の力だって使い放題……ね? わかった? アルフェン、あなたじゃ勝てない。勝てないんだよ」
「う、る……せぇ!!」
「わわっ」
アルフェンは、血だらけの身体で無理やりニュクスの左手を引き剥がす。
叩き付けられたダメージは決して軽くない。
アルフェンは構えを取ると───。
「『我儘な女王』───〝王の隣〟」
「えっ」
「『女王の一撃』!!」
「がっ!? っぁあああっ!?」
いきなりアルフェンの隣に現れたニュクスに殴られ、アルフェンは地面を転がった。
いつ、いかなる状況にあろうと『王の隣』に立つ能力だ。
複数の能力を行使できる『我儘な女王』は、かなり厄介だ。
「だったらぁぁぁ!! 『完全侵食』!!」
ジャガーノート化。
魔獣のような外観に変身し、禍々しく変わった右腕を巨大化させる。
この姿なら、そう簡単にダメージは受けない。
すると、ニュクスは微笑を浮かべていた。
「いいよ。見せてあげる……『ドレッドノート』の姿を。ジャガーノートと対を成す、召喚獣の女王の姿を」
ニュクスは両手を開き、静かに呟いた。
「『完全侵食』」
ニュクスの全身が凍り付いたように透き通る。
そして、ニュクスの身体が白い、神々しい鎧のような材質に覆われていく。
ジャガーノートとは真逆。禍々しさではなく神々しさが現れる。
アルフェンも、思わず見とれていた。
全身を覆う、女王のドレスのような姿。
長い銀髪、仮面のような顔、広がったスカートのような青白の装甲、だが手は両手とも大きい。
「これが、『ドレッドノート』の……」
「さぁ、始めようか。王と女王の戦い。昔の続きを始めよう!!」
ジャガーノートとドレッドノート、最後の戦いが始まった。
◇◇◇◇◇◇
完全侵食同士、ジャガーノートとドレッドノートの戦いが始まる。
アルフェンは右腕を巨大化、対するドレッドノートは左腕を巨大化させる。
完全侵食状態では、その規模も迫力も違う。
アルフェンは、五指に『終焉世界』を込め、五指を開く。
この五指に触れたら、全ての召喚獣は『能力』を失う。
「行くぞォォォォォォォっ!!」
「ふふ───」
走るたびに、大地に亀裂が入る。
ジャガーノート化したアルフェンは、人間態とは比べ物にならない速度でニュクスに接近した。
「喰らいやがれぇ!! 『終焉世界』!!」
五指がニュクスに迫る。だが、ニュクスは軽い動きでその手を躱す。
そして、左手でジャガーノートの腹を殴った。
「ごっヴぁ!?」
「大技に頼りすぎ。隙だらけ。お腹丸見え~」
「っが、あ……ガァァァァァァーーーーーーッ!!」
「おっと」
アルフェンは左、右のラッシュを繰り出す。
だが、ニュクスは全ての攻撃をかわし、流す。
能力ではない。純粋な『技術』で躱していた。
「力任せじゃ、あたしに勝てないよん───」
「───ッ!?」
するりと、自然な動きで懐に潜り込んで来た。
そして、アルフェンの数倍の速度で左右のラッシュを繰り出す。
拳は全て、アルフェンの腹に突き刺さった。
「グブッッげぇぇぇぇ!? ガッはぁぁぁっ!?」
吐血し、吹き飛ぶアルフェン。
ニュクスは、ゆっくりと近づいてきた。姿から、白いドレスを纏った仮面の貴婦人のように見えたが、恐るべき格闘、体術の使い手だった。
能力を使わない。純粋な強さを見せつけている。
「『我儘な女王』の一つ、〝女王は知っている〟……アルフェン、キミの動きは全てわかる。この力はね、アルフェンの動きを先読みできるの。だから、もう無理。完全侵食状態でも、同等の存在であるあたしには敵わない」
「が、っが……」
「わかったでしょ? ドレッドノートの能力、完全侵食状態での差、単純な肉体の差……アルフェン、あなたじゃ勝てない。勝てないの」
ニュクスは、しゃがんでアルフェンの頭を撫でる。
格の差を教え込むように、優しく、愛を込めて。
だが、アルフェンはその手を振り払った。
「まだだ……まだ、負けてない」
「でも勝てない」
「がっ!?」
ドレッドノートは、アルフェンの頭を踏み潰した。
地面に亀裂が入り、ジャガーノートの頭から血が噴き出す。
アルフェンは、それでも負けない。
右手で、ドレッドノートの足を掴む。
「『硬化』も、『終焉世界』も通じないよ。王の能力は女王に通じない」
「…………」
「だから、もうやめよう? アルフェン……楽になりなよ」
「嫌、だ……!!」
「…………」
ニュクスはため息を吐く。
本当に、アルフェンは諦めていない。
仮に、ニュクスがアルフェンの立場でも、諦めているだろう。
「もういいじゃん。アルフェン、あたしと一緒に来なよ? なんだってしてあげる。いっぱいいっぱい愛してあげる。あなたの大事なものなら、残してもいいから」
「……大事な、もの」
アルフェンは、ニュクスの足をさらに強く握った。
「大事なモノは、誰にだってある……ニュクス、お前に、それを踏みにじる権利は……ない!!」
「…………」
「だから、俺は戦う……本当に大事なものを、この世界を……ヒトの世界のために!!」
「───ッ」
ビギン、と……ニュクスの足に亀裂が入る。
ニュクスは、アルフェンを蹴り飛ばし距離を取った。
アルフェンは立ち上がる。そして……右手を突き出した。
「新しい力……『硬化』の先にあるジャガーノートの力、『王の詩』!!」
右手が巨大化し、変質していく。
全てを硬化する右手。時間も空間も事象も無限も命も、この世に存在する全て。そして、硬化の先にあるのは、停止。今のアルフェンは、この『停止』を操れた。
ジャガーノートの右手は、あらゆるものを停止させる。そして、停止させたものに干渉することができる。停止させたものは、ジャガーノートの右手で簡単に操れる。
これを使い、アルフェンはニュクスの中にある『ニュクスの魂』と『ドレッドノートの魂』を完全に止め、その内のドレッドノートの魂だけを切り離す。そして、再び動かそうとしていた。
今のアルフェンなら、『停止』させた物を動かすこともできる。
一度ニュクスを停止させ、魂を切り離し、再び動かす。
きっとできる。きっと。
「ニュクス!! これで……ケリをつける!!」
「なっ……なに、これ」
アルフェンの右手から、かつてない重圧を感じたニュクス。
だが、もう遅い。
アルフェンの右手は、すでに放たれていた。
「『黄昏世界』!!」
「───ッ!?」
放たれた拳が、ニュクスに直撃───その動きを止めた。
「『獣の一撃』!!」
「あははっ!! 『女王の一撃』!!」
硬化したアルフェンの右拳が、ニュクスの巨大化させた手刀と激突し、衝撃波が発生した。
アルフェンは衝撃で弾かれるが、気合で踏ん張る。
ニュクスは弾かれもせず、「うーん」と首を傾げた。
「ねぇ、不思議に思うんだけど……どうやって強くなったの? お城で戦った時とは別人だよね? あのときのあたしは四割くらいの力だった。今は十割の力で戦ってる。アルフェンはこの百日で何をしたの?」
「さぁな……でも、俺は全力で戦うだけだ」
右手が巨大化し、硬化する。
右目もギラギラしていた。
アルフェンは、全力で戦っているだけだ。ピースメーカー部隊との戦いで、自身の限界まで力を引き出すことを覚えた。
今までももちろん全力だ。だが、今はそれ以上に全力。
たとえアルフェンの身体がどうなろうと、アルフェンはジャガーノートの力を限界まで引き出すだろう。
相手が100%の力で来るなら、200%の力を出せばいい。それがアルフェンの戦いで、現に今、ニュクスと互角に戦えていた。
「まぁいいわ。ふふ、楽しいねぇ……なんの策もない。能力も単純。ただひたすら力をぶつけ合う戦い。こういうの、すっごく好き」
「……俺は嫌だ」
「え?」
「俺、本当は……戦いなんてしたくない。誰だって平和が好きだし、穏やかに過ごしたいって思う」
「ふーん。つまんないね」
「そんなことない。お前は……戦いが好きなのか?」
「…………」
ニュクスは黙ってしまった。
本気で考えているのか、空を見上げている。
そして、左手をスッと下ろして言う。
「あたし、ドレッドノートが《世界》が欲しいって言ったから、世界を手に入れようとしただけ。べつに戦いとか……好きじゃない、のかな?」
「だったら……!!」
「やめないよ。だって……面白いからね」
ニュクスの左手が巨大化し、右目が黄金に染まる。
「それに、この世界を召喚獣の世界にするって約束だから。人間を一掃して、召喚獣の世界にする。アルフェン、新しい世界で最初の人間になろうよ? あたしとあなただけの、優しい世界」
「断る。そんなの、優しくなんかない……ヒトの世界はヒトのもんだ!!」
アルフェンの右手が巨大化する。
ニュクスと同じくらい強く、大きく。
ニュクスは、大きくため息を吐いた。
「ジャガーノートと同じこと言ってる……ねぇ知ってるの? そう言ったジャガーノートは、あたしとドレッドノートに負けたんだよ?」
「知ってる。でも、今度は違う。俺とジャガーノートなら負けない」
アルフェンは跳躍。
巨大化させた右腕をガバッと開き、ニュクスめがけて叩き付けた。
「『獣の大地爆砕』!!」
「───……あっそ」
だが、アルフェンの右手は、同じくらい巨大化したニュクスの左手に止められた。
ギシギシと握られ、アルフェンの手はピクリとも動かない。
ニュクスは、興味を失ったように呟いた。
「じゃあいいや───……やっぱり、人間はいらない。全部ツブして、世界を浄化する」
「───ッ!? っがぁ!?」
ニュクスは、アルフェンの右手を掴んだまま持ち上げ、地面に叩き付けた。
地面が陥没する。衝撃がアルフェンの身体を伝わる。
血を吐き、眩暈で頭がおかしくなりそうだった。
「教えてあげる。あのね、人間のアルフェンじゃどうあがいてもあたしには勝てないの。だって、あたしは長い年月をかけて、この身体を構築してきた。『我儘な女王』の誓約に苦しめられてきたけど、この身体じゃその誓約も通用しない。女王の力だって使い放題……ね? わかった? アルフェン、あなたじゃ勝てない。勝てないんだよ」
「う、る……せぇ!!」
「わわっ」
アルフェンは、血だらけの身体で無理やりニュクスの左手を引き剥がす。
叩き付けられたダメージは決して軽くない。
アルフェンは構えを取ると───。
「『我儘な女王』───〝王の隣〟」
「えっ」
「『女王の一撃』!!」
「がっ!? っぁあああっ!?」
いきなりアルフェンの隣に現れたニュクスに殴られ、アルフェンは地面を転がった。
いつ、いかなる状況にあろうと『王の隣』に立つ能力だ。
複数の能力を行使できる『我儘な女王』は、かなり厄介だ。
「だったらぁぁぁ!! 『完全侵食』!!」
ジャガーノート化。
魔獣のような外観に変身し、禍々しく変わった右腕を巨大化させる。
この姿なら、そう簡単にダメージは受けない。
すると、ニュクスは微笑を浮かべていた。
「いいよ。見せてあげる……『ドレッドノート』の姿を。ジャガーノートと対を成す、召喚獣の女王の姿を」
ニュクスは両手を開き、静かに呟いた。
「『完全侵食』」
ニュクスの全身が凍り付いたように透き通る。
そして、ニュクスの身体が白い、神々しい鎧のような材質に覆われていく。
ジャガーノートとは真逆。禍々しさではなく神々しさが現れる。
アルフェンも、思わず見とれていた。
全身を覆う、女王のドレスのような姿。
長い銀髪、仮面のような顔、広がったスカートのような青白の装甲、だが手は両手とも大きい。
「これが、『ドレッドノート』の……」
「さぁ、始めようか。王と女王の戦い。昔の続きを始めよう!!」
ジャガーノートとドレッドノート、最後の戦いが始まった。
◇◇◇◇◇◇
完全侵食同士、ジャガーノートとドレッドノートの戦いが始まる。
アルフェンは右腕を巨大化、対するドレッドノートは左腕を巨大化させる。
完全侵食状態では、その規模も迫力も違う。
アルフェンは、五指に『終焉世界』を込め、五指を開く。
この五指に触れたら、全ての召喚獣は『能力』を失う。
「行くぞォォォォォォォっ!!」
「ふふ───」
走るたびに、大地に亀裂が入る。
ジャガーノート化したアルフェンは、人間態とは比べ物にならない速度でニュクスに接近した。
「喰らいやがれぇ!! 『終焉世界』!!」
五指がニュクスに迫る。だが、ニュクスは軽い動きでその手を躱す。
そして、左手でジャガーノートの腹を殴った。
「ごっヴぁ!?」
「大技に頼りすぎ。隙だらけ。お腹丸見え~」
「っが、あ……ガァァァァァァーーーーーーッ!!」
「おっと」
アルフェンは左、右のラッシュを繰り出す。
だが、ニュクスは全ての攻撃をかわし、流す。
能力ではない。純粋な『技術』で躱していた。
「力任せじゃ、あたしに勝てないよん───」
「───ッ!?」
するりと、自然な動きで懐に潜り込んで来た。
そして、アルフェンの数倍の速度で左右のラッシュを繰り出す。
拳は全て、アルフェンの腹に突き刺さった。
「グブッッげぇぇぇぇ!? ガッはぁぁぁっ!?」
吐血し、吹き飛ぶアルフェン。
ニュクスは、ゆっくりと近づいてきた。姿から、白いドレスを纏った仮面の貴婦人のように見えたが、恐るべき格闘、体術の使い手だった。
能力を使わない。純粋な強さを見せつけている。
「『我儘な女王』の一つ、〝女王は知っている〟……アルフェン、キミの動きは全てわかる。この力はね、アルフェンの動きを先読みできるの。だから、もう無理。完全侵食状態でも、同等の存在であるあたしには敵わない」
「が、っが……」
「わかったでしょ? ドレッドノートの能力、完全侵食状態での差、単純な肉体の差……アルフェン、あなたじゃ勝てない。勝てないの」
ニュクスは、しゃがんでアルフェンの頭を撫でる。
格の差を教え込むように、優しく、愛を込めて。
だが、アルフェンはその手を振り払った。
「まだだ……まだ、負けてない」
「でも勝てない」
「がっ!?」
ドレッドノートは、アルフェンの頭を踏み潰した。
地面に亀裂が入り、ジャガーノートの頭から血が噴き出す。
アルフェンは、それでも負けない。
右手で、ドレッドノートの足を掴む。
「『硬化』も、『終焉世界』も通じないよ。王の能力は女王に通じない」
「…………」
「だから、もうやめよう? アルフェン……楽になりなよ」
「嫌、だ……!!」
「…………」
ニュクスはため息を吐く。
本当に、アルフェンは諦めていない。
仮に、ニュクスがアルフェンの立場でも、諦めているだろう。
「もういいじゃん。アルフェン、あたしと一緒に来なよ? なんだってしてあげる。いっぱいいっぱい愛してあげる。あなたの大事なものなら、残してもいいから」
「……大事な、もの」
アルフェンは、ニュクスの足をさらに強く握った。
「大事なモノは、誰にだってある……ニュクス、お前に、それを踏みにじる権利は……ない!!」
「…………」
「だから、俺は戦う……本当に大事なものを、この世界を……ヒトの世界のために!!」
「───ッ」
ビギン、と……ニュクスの足に亀裂が入る。
ニュクスは、アルフェンを蹴り飛ばし距離を取った。
アルフェンは立ち上がる。そして……右手を突き出した。
「新しい力……『硬化』の先にあるジャガーノートの力、『王の詩』!!」
右手が巨大化し、変質していく。
全てを硬化する右手。時間も空間も事象も無限も命も、この世に存在する全て。そして、硬化の先にあるのは、停止。今のアルフェンは、この『停止』を操れた。
ジャガーノートの右手は、あらゆるものを停止させる。そして、停止させたものに干渉することができる。停止させたものは、ジャガーノートの右手で簡単に操れる。
これを使い、アルフェンはニュクスの中にある『ニュクスの魂』と『ドレッドノートの魂』を完全に止め、その内のドレッドノートの魂だけを切り離す。そして、再び動かそうとしていた。
今のアルフェンなら、『停止』させた物を動かすこともできる。
一度ニュクスを停止させ、魂を切り離し、再び動かす。
きっとできる。きっと。
「ニュクス!! これで……ケリをつける!!」
「なっ……なに、これ」
アルフェンの右手から、かつてない重圧を感じたニュクス。
だが、もう遅い。
アルフェンの右手は、すでに放たれていた。
「『黄昏世界』!!」
「───ッ!?」
放たれた拳が、ニュクスに直撃───その動きを止めた。
10
あなたにおすすめの小説
スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜
東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。
ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。
「おい雑魚、これを持っていけ」
ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。
ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。
怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。
いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。
だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。
ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。
勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。
自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。
今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。
だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。
その時だった。
目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。
その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。
ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。
そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。
これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。
※小説家になろうにて掲載中
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜
ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。
アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった
騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。
今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。
しかし、この賭けは罠であった。
アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。
賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。
アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。
小説家になろうにも投稿しています。
なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。
掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~
テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。
しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。
ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。
「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」
彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ――
目が覚めると未知の洞窟にいた。
貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。
その中から現れたモノは……
「えっ? 女の子???」
これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。
億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。
彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。
四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?
道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!
気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?
※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる