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第九章
真なる女王
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ニュクスに触れた。
ニュクスの魂とドレッドノートの魂が『停止』した。
アルフェンの右手は、確かにニュクスに届いた。
そして、目に見えない『魂』を右目で捉えた。ゆらめく炎のような、青と白の混ざりあった炎。
それが完全に停止している。アルフェンは五指を操り、その魂を操作する。
「───ッいける」
ぴしぴし、ぴりぴり、びきびき。
混ざりあった魂が、分かれていく───が。
「───え」
ボン!!───と、アルフェンの右手が爆発。肘のあたりまで消失した。
痛みはなかった。だが、右腕が消えたことに衝撃を受ける。
さらに───停止しているはずのニュクスが。左目が輝いた。
『ふふふ───』
「───ッ!?」
ニュクスの、完全侵食状態の仮面のような顔が……口元が裂けていく。
亀裂が、まるで笑っているように裂けた。
目覚めた。アルフェンは確信した。
『おはようジャガーノート……そして、久しぶり』
「ドレッドノート……ッ!!」
『あら? ジャガーノートじゃない……ああ、器の人間ね。まぁいいわ。外からある程度見てたけど……私の世界はまだ手に入っていないようね? まったく、ニュクスも遅いわねぇ』
「っく……」
アルフェンは離れる。
右腕は、じゅるじゅると水っぽい音を立てて生えてきた。
もはや、ニュクスではない。
ニュクスとドレッドノートの魂は分離できなかった。それどころか、『停止』させた魂に干渉したおかげで、ドレッドノートの魂がニュクスの魂を飲み込み、ドレッドノートが完全に覚醒した。
『ふふふ……ニュクス、あなたの身体、すっごく心地いいわぁ♪ ……悪いけど、あなたはもう必要ない。あとは私が、私の世界を手に入れて、私だけの楽園を創る。あぁ~……色のある世界って素敵。この『女王』たる私に相応しい!!』
「ドレッドノート……お前」
『ジャガーノート。あちらの世界はあなたに、こちらの世界は私、これでよくないかしら? もう争う必要なんてない。王と女王が同じ世界に存在するのっておかしかったのよ。きっと、私はこの『色がある世界』の女王に君臨するために生まれてきたのよ!!』
ドレッドノートは、興奮していた。
ニュクスの意識を封印し、その身体を乗っ取ったのである。
本来なら、引き剥がした魂は『あちらの世界』に送るつもりだった。だが……その予定は崩れた。
「……お前が女王? ふざけんな」
『は?』
「お前の世界? ……違う。ここは俺たち人間の世界だ!! 人と召喚獣が共に生きる世界なんだよ!!」
『だから、私が女王として君臨すると言ってるの』
「いらねぇ……お前は、この世界の人間をどうするつもりだ?」
『消す。だって、いらないから。ここは私と召喚獣だけでいい』
「……やっぱり話にならないな」
アルフェンは、再び右手を構え巨大化させる。
すると───ドレッドノートは両手を広げた。
『この身体、本当にいいわね。ふふ……ジャガーノートとその器、まずは過去の恨みを晴らさせてもらおうかしら』
ビキビキと、ドレッドノートの背中に腕が生える。
先端が妙な形だった。槌、球、カード、そして断頭台の刃。
どういうイメージなのか。だが、間違いなくジャガーノートに向けられたものだ。
『うふふ、『我儘な女王』最終形態。〝死刑が先決、判決は後〟……さぁジャガーノート、最後の戦いを。いえ……私の始まりを見届けなさい!!』
「…………」
アルフェンは、右手を構えて呟いた。
「ずっと気になってた」
『んん……?』
「『完全侵食』……この姿。俺はジャガーノートの姿になっている。文字通り、召喚獣に肉体が侵食されてこの姿になってるんだ。つまり……これは、ジャガーノートの力」
『何言ってるの?』
「ずっと思ってた。それに……モグが怯えてた。きっと、『完全侵食』には先があるんだ」
『はぁ?』
アルフェンは、右の拳を砕けんばかりに握る。
「摑んでみせる。人間の俺と、召喚獣ジャガーノートで」
アルフェンは、ジャガーノートの……モグが怯えていた理由を確信した。
恐らく、これは……命を懸ける、滅びの力だ。
ニュクスの魂とドレッドノートの魂が『停止』した。
アルフェンの右手は、確かにニュクスに届いた。
そして、目に見えない『魂』を右目で捉えた。ゆらめく炎のような、青と白の混ざりあった炎。
それが完全に停止している。アルフェンは五指を操り、その魂を操作する。
「───ッいける」
ぴしぴし、ぴりぴり、びきびき。
混ざりあった魂が、分かれていく───が。
「───え」
ボン!!───と、アルフェンの右手が爆発。肘のあたりまで消失した。
痛みはなかった。だが、右腕が消えたことに衝撃を受ける。
さらに───停止しているはずのニュクスが。左目が輝いた。
『ふふふ───』
「───ッ!?」
ニュクスの、完全侵食状態の仮面のような顔が……口元が裂けていく。
亀裂が、まるで笑っているように裂けた。
目覚めた。アルフェンは確信した。
『おはようジャガーノート……そして、久しぶり』
「ドレッドノート……ッ!!」
『あら? ジャガーノートじゃない……ああ、器の人間ね。まぁいいわ。外からある程度見てたけど……私の世界はまだ手に入っていないようね? まったく、ニュクスも遅いわねぇ』
「っく……」
アルフェンは離れる。
右腕は、じゅるじゅると水っぽい音を立てて生えてきた。
もはや、ニュクスではない。
ニュクスとドレッドノートの魂は分離できなかった。それどころか、『停止』させた魂に干渉したおかげで、ドレッドノートの魂がニュクスの魂を飲み込み、ドレッドノートが完全に覚醒した。
『ふふふ……ニュクス、あなたの身体、すっごく心地いいわぁ♪ ……悪いけど、あなたはもう必要ない。あとは私が、私の世界を手に入れて、私だけの楽園を創る。あぁ~……色のある世界って素敵。この『女王』たる私に相応しい!!』
「ドレッドノート……お前」
『ジャガーノート。あちらの世界はあなたに、こちらの世界は私、これでよくないかしら? もう争う必要なんてない。王と女王が同じ世界に存在するのっておかしかったのよ。きっと、私はこの『色がある世界』の女王に君臨するために生まれてきたのよ!!』
ドレッドノートは、興奮していた。
ニュクスの意識を封印し、その身体を乗っ取ったのである。
本来なら、引き剥がした魂は『あちらの世界』に送るつもりだった。だが……その予定は崩れた。
「……お前が女王? ふざけんな」
『は?』
「お前の世界? ……違う。ここは俺たち人間の世界だ!! 人と召喚獣が共に生きる世界なんだよ!!」
『だから、私が女王として君臨すると言ってるの』
「いらねぇ……お前は、この世界の人間をどうするつもりだ?」
『消す。だって、いらないから。ここは私と召喚獣だけでいい』
「……やっぱり話にならないな」
アルフェンは、再び右手を構え巨大化させる。
すると───ドレッドノートは両手を広げた。
『この身体、本当にいいわね。ふふ……ジャガーノートとその器、まずは過去の恨みを晴らさせてもらおうかしら』
ビキビキと、ドレッドノートの背中に腕が生える。
先端が妙な形だった。槌、球、カード、そして断頭台の刃。
どういうイメージなのか。だが、間違いなくジャガーノートに向けられたものだ。
『うふふ、『我儘な女王』最終形態。〝死刑が先決、判決は後〟……さぁジャガーノート、最後の戦いを。いえ……私の始まりを見届けなさい!!』
「…………」
アルフェンは、右手を構えて呟いた。
「ずっと気になってた」
『んん……?』
「『完全侵食』……この姿。俺はジャガーノートの姿になっている。文字通り、召喚獣に肉体が侵食されてこの姿になってるんだ。つまり……これは、ジャガーノートの力」
『何言ってるの?』
「ずっと思ってた。それに……モグが怯えてた。きっと、『完全侵食』には先があるんだ」
『はぁ?』
アルフェンは、右の拳を砕けんばかりに握る。
「摑んでみせる。人間の俺と、召喚獣ジャガーノートで」
アルフェンは、ジャガーノートの……モグが怯えていた理由を確信した。
恐らく、これは……命を懸ける、滅びの力だ。
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