最強スキル『忍術』で始めるアサシン教団生活

さとう

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第一章 シャドウ

忍術の秘密

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 修行を開始して、二か月が経過した。

「七……八……九、あれっ……っく、十!!」

 指先に魔力を集中、鍵穴に魔力を差し、先端を硬質化させて鍵を作り、捻って開ける。
 現在シャドウは、一分間に最大で十個まで南京錠を開けることができた。
 が、ハンゾウは言う。

「遅い!! いいか、目標は一分間に五十、一分半で百個だ!!」
「は、はい!!」

 目標は、限りなく高い。
 魔力を指先に集中して伸ばし、鍵穴に刺し、魔力で南京錠の内部を探り、鍵を開けるための形状に変化させ、魔力を硬質化し、捻る。
 これを、一個の南京錠につき約六秒で解除できた。
 だが、まだまだ足りない。しかも、ハンゾウが用意した南京錠は千個以上……毎日、南京錠の種類が代わるので、南京錠に付いた僅かな傷などでこれまで開けた南京錠を判別するのは不可能だった。
 鍵開けが終わると、次は『水たまり』に移動。
 水たまりの中心に移動し、シャドウは手を水面に付ける。

「───はっ!!」

 ボン!! と、放出された魔力が小さく破裂……飛沫が上がる。

「弱い。いいか、魔力はイメージだ。魔力を練り、一気に放出するイメージ!! 血液が全身を回るように、魔力を体内で回転させ、手のひらから一気に放て!!」
「はい!!」

 口では簡単だが……実際には恐ろしい難易度だった。
 いまだに、小規模の破裂しか起こせない。しかも、この水たまりの底はたっぷり五十メートル以上ある……今のシャドウでは、何年かかるかわからなかった。
 放出の訓練を終え、次は森の中に作った『手裏剣術』の訓練場へ。
 
「いいか、一つも外すな。外したら……わかるな」
「はい!!」
 
 シャドウの腰には、ハンゾウ特製の『手裏剣ポーチ』がある。
 身を低くし、ハンゾウが叫んだ。

「始め!!」
「っ!!」

 シャドウは走る。
 訓練場は円形のコースになっており、シャドウはコースを全力疾走する。
 そして、道中にある的に、走りながら手裏剣を投げ当てる訓練をしていた。

「一、二!!」

 的の位置は、毎回変わる。
 観察力、そして体力、投擲の正確さが試される。
 
「三、四……五!!」

 コースの両サイドに設置された的に投げた。手裏剣は命中……そして、上空から落ちてきた的に手裏剣を投げ、命中させた。

「六、七、八、九!!」

 全く同時に落ちてきた的に、連続で手裏剣を投げ命中させる。
 そしてコースの最後、シャドウは手裏剣ではなく、投擲にもナイフにも使える『苦無』という刃を抜き、ゴールに置いてあった藁人形目掛けて投げた。

「十!!」
 
 藁人形の頭部に苦無は刺さる。そしてゴール……シャドウ肩で息をしてハンゾウに向き直った。

「失格だ。四つ目、そして七つ目の的が中心からズレていたぞ。いいか、万発万中……絶対にミスは許されない。二つ外したから、この後の筋トレは二倍の量をこなしてもらうぞ」
「は、はい……」
「返事!!」
「はい!!」

 次は、全身に重りを付けた筋力トレーニングだが……宣言通り、シャドウは二倍の量の重りを付けさせられた。それでもシャドウは弱音を吐かず、決められたトレーニングをやり遂げた。
 そして、昼休憩を挟み、午後は体術の訓練。
 ひたすら、ハンゾウと組手である。

「いいか、投げ、締め、打撃を組み合わせ、柔軟な攻撃を繰り出せ。さらに武器、忍術を組み合わせれば攻撃パターンは無限に広がる!!」
「はい!!」

 シャドウはハンゾウに向かって連続で拳を振るうが、一つも当たらない。
 蹴りを混ぜ、タックルをして掴みかかるが、あっさり回避される。

「ワンパターンだ!! フェイントを混ぜてかく乱しろ!!」
「はい!!」

 修行は、続いた……だが、シャドウは一切、弱音を吐かなかった。
 それどころか……毎日が、楽しかった。
 身体を酷使し、全身筋肉痛の日々が続く。
 毎日極限まで魔力を使い、魔術回路も痛み出す。
 それでもシャドウは弱音を吐かない。むしろ……今が一番、『生きている』と実感できた。
 
 ◇◇◇◇◇◇

 修行を始めて四か月が経過……シャドウは朝食時、ハンゾウに聞いた。

「あの、師匠……」
「ん?」
「今日も同じ訓練、ですか?」
「ああ。なんだ、何か不満か?」
「いえ、その……」
「……いいぞ、言ってみろ」

 筋トレ、魔力操作、魔力維持、魔力放出、武器術、手裏剣術、体術。これらの訓練を毎日行っていたが……シャドウはどうしても気になっていた。

「その……『忍術』は、いつ教えてくれるんですか?」
「ははは、やっぱそうきたか」
「え……」
「まあ、そろそろだとは思ってた。だから、お前がそう質問してきた日から、忍術は教えようと思ってたんだ」
「え~……な、なんですかそれ」
「はっはっは。お前、オイラの訓練に文句の一つも言わずに、黙々淡々とこなすからなぁ。ちょっといじわるしてみたくなっただけよ」
「…………はあ」

 ハンゾウは、どこか楽しそうに笑った。
 師は、もう六十を超えた老人であるが、この笑い方はどこか子供っぽかった。
 
「うし。じゃあ今日から、基礎訓練の中に『忍術』と『お勉強会』を混ぜるぞ」
「はい。って……お勉強会?」
「おう。まさか、このままずっと森で修行してるわけにもいかんだろ。お前さん、元貴族だが……勉強はできるのか?」
「勉強は、その……実家では、本とかも見せてもらえなかったんで」
「じゃあ、一般常識と、社会情勢も叩きこんでやる。楽しみにしておけ」
「はい!!」
「……お前さんくらいのガキは、勉強を嫌うモンだがなあ」

 確かにそうかもしれない。だが……今のシャドウは、とにかく飢えていた。
 できること、学べることは、全て学ぶ。そんな意欲にあふれていた。

 ◇◇◇◇◇◇

 今日は、身体を休める代わりに、脳を酷使する勉強会となった。
 洞窟内にハンゾウが用意したボードを設置、そして、どこから持って来たのか大量の本も用意してあった。

「本……あの師匠、これどこで」
「街に行った時に仕入れてきた」
「街? え、師匠……街に行ったんですか?」
「そりゃ、酒とか調味料とか、お前のパンツとかも買いに行ってんだぞ。まあそんなことどうでもいい……まず、忍術から教えてやる」

 ハンゾウは、両手開いた。

「まず、魔法ってなんだ?」
「はい?」
「魔法だ、魔法」
「え、えっと……体内の魔力を練って、『魔法式』を通して、体外に放出する技術……ですよね」
「正解」

 魔法式。
 貴族は皆、魔力を持つ。
 だが魔法式は違う。魔法式は身体に刻むことで使用できる。
 魔力を練り、身体に刻んだ『魔法式』に通すことで、魔力に『属性』を持たせる。そして、刻んだ魔法式の形状に形を変え、体外に放出される。
 これら一連の流れが、『魔法』である。

「魔法の属性は全部で六つ。地水火風、光闇の六つだ。魔法師は一般的に、一つの属性を身体に刻み、『テンプレート』と呼ばれる式を杖に刻んで様々な魔法を操る」
「テンプレート……?」
「例えば、『火』の魔法式を身体に刻み、『炎の槍ファイアランス』のテンプレートを杖に刻むことで、『炎の槍ファイアランス』を使うことができる」
「あ……」

 姉セレーナ。
 セレーナは、練習用の杖で『炎の槍』を使っていた。
 『炎の槍』は誰でも使える初級魔法であり、最も簡単な魔法である。

「だがこの世には稀に、身体に複数の『魔法式』を刻むことができるヤツがいる。二つ以上を『ダブル』、三つを『トリプル』、四つを『スクウェア』という。刻む魔法式が多ければ多いほど、多彩な魔法を操ることができるんだ」
「……すごい」

 シャドウは感心していた。
 ハンゾウは続ける。

「そして、五つの魔法式を宿し、一つの魔法式を極限まで磨き上げた七人の魔法師を『虹色の魔法師アルコバレーノ』と呼ぶ。覚えておけシャドウ……お前の実家、ハーフィンクス家当主ウォーレンは、『虹色の魔法師アルコバレーノ』の一人にして、『イグニス』の称号を持つ最強の魔法師の一人だ」
「……ち、父上、が」
「ああ。ハーフィンクス家は、火属性最強の貴族だ」

 知らなかった。
 シャドウは今更、ハーフィンクス家の強さを知った。

「と、魔法はここまで。この辺の詳しい話は、また今度」
「は、はい……」
「さて問題。『忍術』とはなんだ?」
「……わ、わかりません」

 わからないから習っている……と、言いたかった。
 ハンゾウはケラケラ笑う。

「はっはっは。いいか、忍術ってのは魔法と違う。魔力を使うことは同じだが……オイラの考えた最強の力だ」
「は、はい」
「まず、忍術は魔法式を刻まない」
「えっ……そ、それじゃあ、魔力に属性を持たせられないんじゃ」
「そうだ。だが、魔法式を刻まない代わりに、『いん』を結ぶ」
「いん?」
「そうだ」
 
 ハンゾウは、両手を動かし複雑な形を作る。
 一つずつ、指や手の形を変え、説明する。

「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥……これらを『十二支印』と呼び、臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前の『九字護法印』と呼ぶ。これら二十一の『忍道二十一印』を組み合わせ、属性を作り、忍術を使う」
「…………???」

 情報量が多く、シャドウは理解できない。
 
「とにかく、指や手の形を組み合わせて、属性を作るんだよ。そうすれば魔法式を刻まなくても、全部の属性を使った忍術を発動できる」
「……お、おお~、これ、師匠が考えたんですか?」
「ああ。好きだった漫画やアニメの影響を受けてな」
「まんが? あにめ?」
「こっちの話だ。とにかく、この二十一の印の形を覚えておけ。一つ一つの意味はあとで教える」
「……」
「なんだ、不満そうだな」
「いえ……これ、指や手の形を変えるだけで、本当に忍術が使えるのかな……って」
「まあ確かに。よし、見てろ」

 ハンゾウは立ち上がり、手を複雑に動かす。

「まず、『火』の魔法式を『印』で代用する。そして、魔力を練る……火の式は、子・丑・寅。ここに九字護法印を加えることでテンプレートの代わりとし……」

 印を結び、右手を外に向けた。

「火遁、『火玉の術』」

 指先から炎の玉が出現し、放たれた。
 ハンゾウがすぐ手を握ると、玉は消える。

「っと……今のは基礎中の基礎だ。もっと複雑な印を組めば、さらに高度な忍術を使える」
「…………」
「オイラが開発した術は全部で九十九。シャドウ、これらをお前に叩きこむ。それと……印の仕組みさえ理解すれば、お前でも好きな属性、そして新たな属性を作り出せる」
「…………」
「聞いてんのか?」
「……すげえ」

 シャドウの目は、これまでにないくらい、輝いていた。
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