最強スキル『忍術』で始めるアサシン教団生活

さとう

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第二章 クオルデン王立魔法学園

新たな出会い

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 地図を見ながら森を抜け、シャドウは久しぶりに街道に出た。
 舗装された街道を見て、何となく笑顔になってしまう。

「えーと……アルマス王国はこっちかな」

 地図を眺め、太陽の位置や雲の流れで方角を確認……これも、ハンゾウから習った技術だ。
 方向を確認し終え、さっそく街道を歩く。

「ふう……なんだか、不思議な感じだ。実家を追放されて、一年間森で修行して……暗殺者になって。そしてアルマス王国に向かっているなんて」

 魔法の使えないクズ……ハーフィンクス家ではそう呼ばれ、疎まれてきた。
 今頃、実家は何をしているのか……と、考え、気付いた。

「あれ?」

 シャドウは、ハンゾウの手紙を取り出し読み直す。
 そこには、『クオルデン王国にあるクオルデン王立魔法学園に入学しろ』と書いてあった。
 久しぶりに思い出すハーフィンクス家の名前。そして、目的である学園。

「……待てよ? クオルデン王国学園って、姉さんが通って、シェリアが入学する学園じゃねぇか!? おいおい、鉢合わせとか冗談じゃないぞ!?」
 
 青ざめるシャドウ。だが、そのことをハンゾウが想定していないはずがない。
 考え直し、手紙を見る。

「師匠の弟子……俺以外の弟子が、クサナギ男爵家にいるのか。まさか……その人も忍術を使うのかな? そういえば師匠、物資の補給とかで、俺が修行している時、よく出かけていたが……そっか、補給先はアルマス王国なのか。ここから意外に近いし」

 ブツブツ言いながら歩いていると、シャドウは立ち止まる。
 
「……」

 周囲は見晴らしのいい街道。身を隠す場所はない……が、大岩が一つだけあった。
 そして、うつ伏せになれば身を隠すことができそうな草むらも。
 車道は地図をしまい、印を結ぶ。

「闇遁、『黒霧こくむの術』───っふぅぅぅぅ!!」

 印を結び、口から一気に黒い霧を吐き出し完全に身を隠す。

「気付きやがった!! おい、闇魔法だ!! こいつ貴族だぞ!!」

 岩から男が飛び出し、草むらから大勢の男たちが立ち上がる。
 盗賊……全員が武装し、手には剣を持っていた。
 
「迂闊に近づくなよ。相手は貴族、魔法師だ!! 囲め!! この霧が消えたら、一斉に取り囲んでふん縛れ!!」

 盗賊のリーダーが叫ぶ。
 だがシャドウはすでに、数十メートル離れた藪の中に身を潜めていた。

「けっこういい指示だけど……もう俺はそこにいないぞ」

 霧を吹くと同時に、シャドウは『土遁』で地面に潜って掘り進み、盗賊たちから離れた場所に出ていた。
 風下なので、気配や匂いで気付かれることもない。
 このまま無視して進んでもよかったのだが。

「ん? おいお頭ぁ!! 馬車が一台来ますぜ!!」
「へへ、いいカモだ。一台なら小細工はいらねぇ、襲うぜ!!」
「お、しかも貴族だ!! いい馬車乗ってやがる」
「魔法使う前に囲むぞ!!」

 最悪なことに、霧が晴れると同時に、後方から馬車が来た。
 盗賊の言う通り、かなりいい馬車だ。装飾に凝っており、普通の乗合馬車ではない。
 盗賊はシャドウの霧を無視し、馬車に向かっていく。

「……仕方ない、か」

 シャドウはフードを被り、マスクで口元を隠す。 
 そして、両手に手裏剣を持つと、電光石火の如く草むらから飛び出し、盗賊に向けて手裏剣を投げた。

「いでぇ!?」「なんだ!?」「ぐぁ!?」

 手裏剣は、盗賊の手や足に刺さり転倒。
 シャドウは『夢幻』を抜き、近くにいた盗賊たちを連続で斬り付ける。

「て、テメェ!!」

 そして、最後──盗賊の頭に急接近し、手首を掴んで足払いし、高速で回転させ地面に叩き付けた。
 脳天から地面に突き刺さり、盗賊の頭は気を失い痙攣……失神する。
 向かって来た馬車から護衛騎士が降りて来る頃には、全て終わっていた。

「貴様……何者だ!!」

 護衛騎士……女性騎士だった。
 シャドウに剣を向けるが、シャドウは無視。印を結び、煙を吐き出し攪乱……その隙に藪に飛び込んで気配を完全に消した。
 馬車が去るまで隠れていようとすると……馬車から、一人の少女が降りて来た。

「ソニア、もう大丈夫なの……?」
「ラウラ姫様!! まだ出てはなりません!! まだ近くに賊がいるかもしれませんので!!」
「う、うん……と、盗賊、だよね」
「はい。一瞬でした……妙な何者かが、一瞬で盗賊を」
「……助けて、くれたの?」
「わかりません。賊同士の抗争かもしれません……馬車にお戻りください。父君……国王陛下が心配しますよ」
「う、うん……」
「全く。クオルデン王立魔法学園の下見帰りに、とんだ厄介ごとだ。姫様、どうかご心配なさらず。姫様の敵は、この守護騎士ソニアが全て倒しますので」
「うん……でもでも、わたしだって魔法師なんだし、学園で強い魔法いっぱい習って、ソニアを守ってあげるからね!!」
「姫様……ありがとうございます。そのお言葉だけで、嬉しいです」
「えへへ、魔法学園、同じクラスになれるといいね」

 二人は馬車に乗り込み、盗賊たちを無視して去っていく。
 しばし待ち、シャドウは草むらから出てフードとマスクを外した。

「姫様、守護騎士……なるほどね、アルマス王国のお姫様か。参ったな、顔は見せてないけど、姿は見られた……まあ、いいか」

 そう言い、盗賊たちを縛って放置し、シャドウはアルマス王国に向かうのだった。

 ◇◇◇◇◇◇

 アルマス王国、王都アルマス。
 国境の近くにある小国で、国境から半日も進むと到着した。

「思った以上に近かった……」

 正門を見上げると、やはりクオルデン王国よりも小さいことがわかる。
 入国書を見せて王都内へ。特にトラブルもなく入国できた。
 シャドウは、寄り道も考えたが、あと数時間で夜になると思い、すぐにクサナギ男爵家へ。

「えっと……貴族街はこっちか」

 王都の一区画に、貴族が屋敷を構える貴族街があった。
 シャドウは地図を見ながら進み、あっという間にクサナギ男爵家へ。

「……まあ、男爵家だしな」

 屋敷の大きさは、ハーフィンクス家の半分以下だ。
 男爵家とは言え領地を持つ貴族。王都の屋敷はそれほど必要ないのかもしれない。
 門兵などもいないので、シャドウは普通にドアをノックする。
 すると……ドアが開かれた。

「はい、何か御用でしょうか?」
「あ、えっと……」

 出てきたのは、五十代後半の女性だった。
 顔のシワが見え始め、髪は丁寧にまとめているがところどころで白髪が混じっている。
 エプロンドレスはシンプルで、飾り気のない事務的な装い。ヘッドドレスも地味だった。
 使用人だろうかと、シャドウはカバンから『クサナギ男爵』の爵位を証明する証書を見せる。

「師匠……ハンゾウの弟子、シャドウです。この意味がわかる人をお願いします」
「…………」
「あなたも、師匠の関係者ですよね」
「…………こちらへ」

 ドアが開き、シャドウは中へ。
 玄関は広くも狭くもない。どう見ても普通の屋敷にしか見えない。
 ドアが閉じる……だが、おかしかった。

「あの……えっ」

 女性が消えた。
 正確には、エプロンドレスとヘッドドレスがその場にあった。
 人だけがいない。シャドウは右手を逸らしブレードを展開すると、側頭部に殺意を感じ……無意識に防御する。
 ギィン!! と、金属が擦れる音。シャドウは完全にスイッチを入れ、気配の方に向けてブレードを突き出すと……手をあっさり掴まれ、投げられた。

「くっ……」

 印を結ぶ暇がない。シャドウは投げられた瞬間に足を動かし態勢を整え着地。
 目の前にいたのは───少女だった。

「えっ……」
「まだまだ甘いですね」

 初老の女性ではない、シャドウと同年代の少女がいた。
 身体のラインがわかるぴっちりしたスーツを着て、手には苦無を持っている。
 長い黒髪が流れ、顔立ちはまだ幼さを感じる。

「あなたが、ハンゾウ師の……」
「師、って……きみは」

 少女は苦無を下げ、シャドウを見る。

「初めまして。アサシン、シャドウ。ハンゾウ師の、そして忍術の後継者」
「……は、初めまして」
「私はあなたの補佐をするアサシン、ヒナタと申します」
「……え、あれ? さ、さっきの女性は?」
「私です。私は師が独自に開発した魔法、『変化の術』で他者になりきることができるのです」

 ヒナタは一礼……そして、跪いた。

「本日より、あなたの手足となるよう、師から仰せつかっています。何なりとお申し付けください」
「あ、はい……どうも。あの~……ヒナタさん、は……おいくつですか?」
「先日、十六になりました」

 同い年かい!! と、シャドウはツッコみたかった。
 まさか、協力者が同い年の少女とは思わず、シャドウは困る。
 そんなシャドウの気持ちを理解したのか、ヒナタは言う。

「ご安心ください。私は、忍術こそ習得できませんでしたが……ハンゾウ師の元で、三歳から十二年間、特殊技能を叩きこまれ育ちました。実力は師のお墨付きです」
「あ、はい……えーっと、何からやればいいんだ」
「お話の前に、まずは旅の汗をお流しください。入浴の準備はできています」
「あ、どうも。えーっと……そういやなんでいきなり襲って来たの?」
「師の命令です。シャドウ様が来たら、殺すつもりで襲い掛かれと」
「……師匠の野郎」

 もういない師であるハンゾウが、悪戯っぽく笑ったような気がしたシャドウだった。
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