最強スキル『忍術』で始めるアサシン教団生活

さとう

文字の大きさ
48 / 62
第五章 ダンジョン実習

ダンジョン実習②

しおりを挟む
 クヌート遺跡は、初心者向けダンジョンの割には広い。
 一年一~三組の生徒九十名が同時に入っても、他の同級生とすれ違うこともなければ、気配を感じることもない。
 シャドウは忍術を使いたかったが……『見張り』がいると聞いた以上、使えない。
 せっかく堂々と忍術を使えると思ったが、面倒くさい『杖』でこっそり印を結び、弱い魔法に見立てた忍術しか使えないことに、ややイライラする。

「あ~……なんかもっと派手にやりたい」
「はっはっは。ま、ここはオレが目立たせてもらうぜ」
「シャドウ様。ここはこのお調子者に任せてよいかと」
「わ、わたしも頑張りたいけど……ライザーくん。お任せします」

 現れるのは、ゴブリンやコボルトなどの雑魚魔獣ばかり。
 最初こそ魔法による攻撃を仕掛けていたが、ライザーは素手、格闘技だけで戦っていた。

「ライザー、相変わらず格闘も強いな」
「まあな。魔法の腕前が大したことねえから鍛えたんだよ。魔法ナシなら学年最強かもしれねえぜ」

 拳をパシッとぶつけてニカっと笑う。
 見張りがいても、不自然なところはない。目立ちたがり屋のライザーが、シャドウたちに戦わせず自分で暴れているだけにしか見えないだろう。
 ふと、シャドウは聞く。

「そういえば……師匠はここで何かしてたんだよな」
「はい」
「……ヒナタ、何か知ってるか?」
「いえ。大怪我をしていたこと、『面白い何か』があることは聞いていました……あ」
 
 と、ヒナタは何かを思い出したのか、ハッとしてシャドウを見た。

「そういえば……『いつか必ずモノにする』と言っていました。もしかしたら、ここには何か秘宝でもあるのかも」
「いつか必ずモノにする、ね……でもここ初心者向けダンジョンだろ? 師匠が怪我するようなとんでもないトラップでもあるのかな」
「不明です。ハンゾウ様が向かったのは、クヌート遺跡北部ということはわかっていますが……」
「……せっかくだし、探してみるか」

 クヌート遺跡は五階層のダンジョン。最下層までは数時間もあれば到着する。
 行き、帰りと合わせても夕方まで掛からないだろう。
 すると、ルクレに無理矢理戦わせようとしていたライザーが言う。

「シャドウ、こっちは終わったぜ。先進むぞ先!!」
「ううう……ライザーくん、酷いです……こ、怖かったあ」

 シャドウたちは、クヌート遺跡北部へ進む。
 地下への入口はいくつかあるが、全て北側から進むことにした。

 ◇◇◇◇◇◇

 クヌート遺跡北部は、かなり荒れていた。
 倒壊した壁、倒れた柱、ボロボロの石畳……まるで何かが暴れたような跡が多かった。
 シャドウはルクレに聞く。

「先生、特に危険な場所とか言ってなかったよな?」
「は、はい。最深部まで進んで、証を取ってこいとしか」

 ライザーが石を蹴って言う。

「ボロボロだぜ。それに、人気がねえな……」
「……ここまで来る途中、下に通じる階段はいくつもありました。まさか、階段を素通りして、ここまで来る生徒は私たちくらいでしょうね」

 ヒナタが補足。
 確かに、ここまで来る途中に階下へ続く階段はいくつかあった。
 目的でもない限り、わざわざその階段を素通りする者はいないだろう。
 シャドウは気配を探る。

「……見張り、いると思うか?」
「恐らくいないかと……先ほども言いましたが、隠蔽系の魔法でも使われたら察知できませんが」

 すると、ライザーが叫んだ。

「おい!! 見てんだろ!? 先輩か先生よぉ!! ちと聞きてえことあるんだ、出てきてくれや!!」

 ライザーが叫ぶ……だが、誰も出てこない。
 ライザーはシャドウを見て頷いた。

「……たぶん、いないな。ここは俺たちだけだ」
「……いきなり怒鳴り声出さないでください。驚きました」
「はっはっは!! そーいう役目だしな!!」

 ライザーがゲラゲラ笑い、ルクレもクスっと微笑んだ……その時だった。

「……あれ?」

 ルクレが何かに気付いた。
 ボロボロの壁、その一部を見て首を傾げている。
 シャドウはそんなルクレが気になったのか、隣に並んで聞く。

「どうした?」
「いえ……なんだろう、そこ……妙な気配が」
「妙な気配?」
「はい。壁……違和感というか、なんだろう?」

 ルクレが指差した壁は、何の変哲もないただの壁だ。
 隙間から風が吹いているわけでもない、ただのぼろい壁。
 ヒナタはルクレに聞く。

「ルクレ、何か気付いたことでも?」
「え、えっと……その、気のせいかも。なんていうか、その……魔力というか」
「魔力?」
「は、はい……その壁から、違和感が。ぞわぞわするというか、なんというか」
「意味が分かりませんね……どのあたりですか?」
「……そこです」

 ルクレが指差したのは、壁の中心。
 シャドウ、ヒナタが近づいて確認……そして、ヒナタが目を見開いた。

「こ、これは……シャドウ様、見てください!! この壁……」

 ヒナタが壁に触れると、なんと壁の一部がボロッと落ち、取っ手のようなモノが現れた。
 その取っ手をよく見ると、妙な模様が刻まれている。
 その模様は、シャドウも見覚えがあった。

「こ、この模様……」

 模様には『忍』と刻まれている。正確には模様ではなく、ハンゾウが住んでいた世界の『漢字』であるが、そのことまでは気付かない。
 間違いなく、ハンゾウが隠した『何か』の扉だった。

「おいおいおい、マジか!! ここ……師匠が何か見つけた場所か?」
「ルクレ。あなたどうしてこれを……」
「え、えっと、違和感としか……」
「……もしかしたらだけどよ。ルクレ、お前……『魔力感知』ができんのか?」
「え?」

 ライザーが言うと、ルクレが首を傾げた。
 
「姉貴が得意なんだよ。魔力ってのは魔法師なら感じることができるけど『魔力感知』はほんの僅かな魔力を感知し、普通の魔法師には感じることのできない魔力の痕跡も察知できるって。そいつはどんだけ鍛えても身に付かない、完全な『才能』の力だって聞いたぜ」
「わ、私が……?」
「シャドウ、お前わかるか? こいつの言う『違和感』ってやつ」
「さっぱりだ。どう見てもただの『壁』だし……違和感って何なんだ?」
「ヒナタ、おめーは?」
「……わかりません」
「当然、オレもだ。こりゃ確定だな」
「え、え……でも私、気になっただけで」

 オロオロするルクレ。才能と言われ驚いているようだ。
 シャドウは言う。

「とりあえず……見張りが俺たちを探す前に、みんなで行ってみよう」

 シャドウが取っ手を掴み、ゆっくりスライドさせると……扉は引き戸のように動いた。
 ヒナタは取っ手を隠していたパーツを掴み、再び取っ手を隠す。
 四人は中に入ると、内側から完全に扉を閉めた。

「暗いな……光遁」

 印を結び忍術を使うと、光玉がシャドウの指先からふわりと浮かぶ。
 もう遠慮なく忍術を使える。
 扉の先は広い空間になっており、椅子や机、野営の跡が残っていた。
 そして、その先には地下へ続く階段があった。

「……みんな、装備を整えよう。完全装備で下に進む」

 妙な胸騒ぎ……シャドウの背中に、冷たい汗が流れるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム 前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した 記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた 村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた 私は捨てられたので村をすてる

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

婚約破棄された上に、追放された伯爵家三男カールは、実は剣聖だった!これからしっかり復讐します!婚約破棄から始まる追放生活!!

山田 バルス
ファンタジー
カールは学園の卒業式を終え、心の中で晴れやかな気持ちを抱えていた。長年の努力が実を結び、婚約者リリスとの結婚式の日が近づいていたからだ。しかし、その期待は一瞬で裏切られた。 「カール、私たちの婚約は解消するわ。」 リリスの冷たい声がカール…

処理中です...