勇者の野郎と元婚約者、あいつら全員ぶっ潰す

さとう

文字の大きさ
34 / 214

34・リンの依頼

しおりを挟む
 ライトとリンは、騎士隊長ハワードの言っていた町に到着した。
 ファーレン王国ほどではないがなかなか活気のある街で、往来はとても騒がしい。
 道路で露店を構えたり、木の棒を持って剣士ごっこをしている子供、グループで町を練り歩く集団と、見ていて飽きない光景だ。

「ここに来たことあるか?」
「ええと……見覚えはあるわね。立ち寄ってすぐに出ちゃったかなぁ」
「とりあえず、宿を取るか。ハワード騎士に甘えて、いい部屋にしよう」
「うん。私、お風呂入りたい。それにこれだけ大きい街なら、鍛冶屋くらいありそう。いい素材もあるし、私の望む剣を打ってくれるはず」
「なんだお前、鍛冶の心得でもあるのか?」
「ううん、でも、構想ならあるよ」
「……ふ~ん」

 よくわからないので、ライトは口出しをやめた。
 馬車を走らせること数十分。町の中央辺りまで来た。

「高級宿ってのは、だいたいが町の中心にあるもんだ」
「あ、見てあれ、あの高い建物」
「おお……うん、あれは宿だな。行くか」
「うん!」

 リンはご機嫌だった。
 宿の前には従業員らしき男性がいて、話を聞くとこの建物は宿で間違いないようだ。
 泊る旨を伝え、チップを支払い馬車を任せて宿の中へ。
 受付で金貨10枚を支払い、最上階の部屋を借りた。

「一泊一名金貨一枚で、五日分の支払いか……金貨十枚が吹っ飛んだ」
「まぁまぁ、いいじゃない。こんないい部屋に泊れるんだから」

 部屋は広く、ベッドも大きい。
 調度品や家具も高価な物で間違いない。夕食や朝食は専用の個室で食べられるという充実ぶりだ。
 ライトも、こんな部屋は見たことがない。
 バルコニーのドアを開けて外へ出ると、町が一望できた。

「すっげぇ……いい街だな」
『相棒相棒、オレ腹減ったぜぇ~……新鮮な死体を喰わせてくれよぉ』
「うるさい。そう簡単に死体なんて食えるわけないだろ」

 ライトはカドゥケウスのグリップを手で掴む。すると右目がジュワッと疼き、視界が広まった。
 カドゥケウスを掴むことで発動する能力・『ベルゼブブの眼』である。

「お、こりゃいいな……町がよく見える」

 もう一度町を覗くと、歩く人や建物の看板の文字もよく見える。
 面白いので、ライトはしばらく町を見ていた。

「パン屋、武器屋、鍛冶屋、防具屋、八百屋、宿屋、道具屋……お、ギルドか。冒険者ギルド、商業ギルド、錬金ギルドに……」

 先ほどすれ違ったグループは、冒険者だろう。
 騎士だったころレグルスが言っていた。『金と仕事がなければとりあえず冒険者になれ』と。冒険者なら日銭を稼ぐくらいはできるし、一攫千金も夢じゃない、と。

「一攫千金かぁ……冒険者になる前にドラゴン退治して、相場の五倍支払うって話聞いたら、お前はどう思うよ?」

 ライトの手には、『硬化』の祝福弾がある。
 
『相棒、惨めだからやめとけ。それはただのギフト、おめーの友達じゃねぇよ』
「…………やかましい」

 ライトは弾丸を握りしめ、晴れ渡る空を見上げた。

 ◇◇◇◇◇◇

 部屋に戻ると、リンがいなかった。
 着替えや下着の洗濯、馬の世話は宿に任せ、財布などはこの部屋にある。どこかへ出かけたのなら一言あるはずだし、そもそもお金を入れていたバッグはベッドの上にあった。
 すると。

『ふんふんふ~ん♪』

 機嫌のよさそうな鼻歌が、ドアを隔てた向こう側から聞こえてきた。
 
「なんだ、風呂か……そういえば入りたがってたしな」

 ライトはベッドサイドの椅子に座る。
 リンが上がったら自分もシャワーでも浴びよう、そう考えたライトはガンベルトを外してカドゥケウスをテーブルに置く。

『相棒。ドラゴンのおかげでしばらく金には苦労しなさそうだ。本格的に弾丸を集めることを考えとけよ』
「…………」
『ったくヘタレ野郎が。いいか、盗賊退治でもして弾丸を集めろ。強くなる強くなるって口だけじゃねぇか』
「わかってるよ。この欠陥武器、死体しか食えねぇくせにやかましいんだよ」
『ふん、人間だって牛だの豚だの殺して喰ってるじゃねぇか。オレとどう違うんだよ?』
「人間は」
『ちゃんと調理してるってか? だったら相棒、死体を焼いてくれよ。時間経過でギフトは消失するが、焼いたくらいなら問題なく喰えるぜ』
「ふざけんな、人間は動物と違う!」
『同じだよ。多少頭が回るのと残虐性が濃いくらいだ。殺して喰うことに変わりない。人間は特別でもなんでもねぇ、ヘタに頭が回る分ちと厄介なだけだ』
「カドゥケウス、てめぇ……」
『オレは事実を言ったまでだ。いいか相棒、人間を喰うのも動物を喰うのも変わりねぇ、グダグダ言ってないで喰えってんだ』
「…………」
『オレが気に喰わないなら捨てていけ。リンの嬢ちゃんを利用して復讐を果たせばいい……ま、二人とも死ぬだろうがね』

 ライトは、カドゥケウスがやっぱり嫌いだった。
 強くなるには死体を喰うしかない、それはわかっているが倫理が邪魔をする。
 死んだ人間にも家族がいる。喰ってしまえば何も残らない。
 でも、ライトの復讐を果たすためには強くなる……喰うしかない。

「はぁ~……気持ちよかったぁ」
「…………」
「あれ、どうしたの?」
「別に……それより、武器はどうするんだ?」
「ん、ちょっと休んだら行こうか。お昼も外で食べよう!」
「……ああ」

 リンの明るさは、ライトにとって眩しく映った。

 ◇◇◇◇◇◇

 外で適当に昼食を済ませた二人は、町の鍛冶屋にやってきた。
 鍛冶屋の中は金属を打つ音が響き、弟子らしき男性が対応してくれた。

「あの、武器を作ってほしいんですけど」
「はい、オーダーメイドっすね。どんな武器をご希望っすか?」
「剣です。あの、素材はあるんでこれを使って下さい」
「持ち込みっすね。素材は……ん、なんですこれ?」

 リンが出したドラゴンの牙と鱗だ。どうやら一般にはあまり馴染みがないらしく、若い弟子は顔をしかめた。
 すると、奥でハンマーを振りかぶった初老の男性がチラリとこちらを見て、眼を思いきり見開いた。

「あ、親方。ちょっといいっすか? あの、この素ざ「バッカタレ!!!」

 親方の男性は弟子を叱りつけ、こちらへ来た。
 ライトとリンも大声に驚き、思わずたじろぐ。

「見ろ!! このしなやかな曲線を描きつつ滑らかな完食、そしてエッジの付いた独特の牙。そしてこのザラザラした黒光りする素材……こいつはドラゴンの牙と鱗だ!!」
「え……え、えぇぇぇぇっ!?」

 弟子は驚愕し、持っていた牙を落としそうになった。
 親方は頭を下げる。

「すまねぇ。こんな上質な素材、久しぶりに見たんでちと興奮した。武器の依頼だったな?」
「は、はい。その……け、剣を打ってほしいんです」
「剣か。わかった、その依頼、このワシが受けよう。どんな剣がいい?」
「あの、デザインはしてきたんですけど……」

 リンは、ポケットから羊皮紙を取り出し、親方に渡す。
 親方は羊皮紙をジロジロ見て、リンを見た。

「なるほどな……ドラゴンの素材なら可能だろうぜ」
「じゃあ、お願いできますか?」
「いいぜ。3日ほどもらう。そのあとで来い」
「あ、ありがとうございます!」

 リンは頭を下げ、ついでにライトも下げた。
 鍛冶屋を出たリンは上機嫌だった。

「なぁ、どんな剣を依頼したんだ?」
「ふふ、秘密♪」

 ライトは、首を傾げた。
しおりを挟む
感想 56

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

処理中です...