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35・アンジェラの剣とリリカの怒り
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「やぁぁっ!! たぁぁっ!! はぁぁっ!!」
「よっ、っほ、ほいっ」
ファーレン王城中庭。
現在、勇者レイジことファーレン王国・国王レイジは、妻であり王妃のアンジェラに剣の稽古を付けていた。
新しく聖剣の使い手になったアンジェラは剣の素人。剣の握り方から教えなくてはならなかった。
体力づくりや素振りから始まり、軽い模擬戦も行い、剣に慣れていく。
レイジだけじゃなく、セエレやアルシェもアンジェラに稽古を付けていた。
「はぁぁぁっ!」
「っと、ほいっ」
「あっ……」
アンジェラの剣を躱し、レイジは木剣を叩いて落とす。
もちろん、アンジェラの敗北である。
「アンジェラ、何度も言うけどよ、剣を振るときには叫ばなくてもいいんだぜ?」
「あっ……やだ、わたくしったらはしたない」
「あっはは。気合が入るならいいけどよ」
赤くなるアンジェラに微笑み、木剣を拾うレイジ。
「さ、今日はここまでだ。汗もかいたし風呂に入って来いよ」
「え……あ、やだ、わたくし、レイジ様の前で……」
「それとも、オレが洗ってやろうか?」
「~~~っ!? だだ、ダメですダメです!! 失礼しますっ!!」
アンジェラは、慌てて走り去った。
何度か身体を合わせているが、未だに初心な反応はとても可愛いとレイジは思う。
そして、それ以上に驚くべきこともあった。
「…………ふぅ」
「お疲れ様です、レイジ様」
「ああ、アルシェか……見てたのか?」
「はい。模擬戦からずっと」
「…………わかったか?」
「はい」
レイジとアルシェは、アンジェラが走り去った方向を見ていた。
「アンジェラ、とんでもない剣の才能がありやがる。間違いなくオレ以上……」
「…………」
王妃アンジェラは、レイジよりも剣の才能にあふれていた。
◇◇◇◇◇◇
ファーレン王国地下。
ここは、過去に罪人を処刑するための地下牢があり、今では使われることのない朽ちた空間だ。
その朽ちた空間に、聖剣使いリリカはいた。
ライトにやられた負傷は見る影もなく、長く美しい黒髪に整った容姿、スタイル抜群の肢体は今夜もレイジを満足させるだろう。
「…………震えろ、夜叉鬼刃」
手に持った大太刀こと『鬼太刀』が巨大化し、リリカの身体も変化する。
頭から角が二本伸び、身長は2メートルを越え、筋骨隆々の体躯に変化する。
口から牙も生え、目はギョロリと見開かれた。
「グ、ゥゥゥゥ……っ!! ウッガァァァァァァァァーーーっ!!」
リリカは、鬼太刀を全力で振り回した。
的があるわけではない、ただ空間を全力で切りつける。
「らいと、ライト、ライと、ライト、らいト、ライトォォォォォォヲヲヲヲヲヲヲーーーーーッ!!!」
それは、怒りだった。恨みだった。憎しみだった。
「あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎ぅぉぉぉぉぉぉっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああがががががががぁぁぁぁぁぁあーーーーーーーーーーっ!!!!!」
リリカ、全力の、喉が切れて血が出るほどの叫びだった。
もし近くに人間がいれば、鼓膜が破裂して両耳から出血していたであろう。
地下の頑丈な造りの部屋がビリビリと響き、壁に亀裂が入った。
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁあぁぁぁぁぁ……殺す」
リリカの腕の筋肉が膨れ上がり、血管が破裂した。
まさに、鬼のような形相で歯を食いしばり、眼も真っ赤に充血していた。
「ライトの野郎……ブッ殺「駄目よ」
リリカは、いきなり被せられた声の主を睨む。
「セエレ……っ!!」
「悪いけど、今のあなたじゃライトには勝てない。単純な力押しじゃライトは倒せない……」
「なんだと貴様ぁぁぁぁっ!!!」
「落ち着け、気付いてないのか? 今のお前、女の顔じゃないぞ?」
「っっ!?」
「レイジが見たらどんな顔をするかな……」
「や、やめてっ!! やめてやめてやめて!!」
リリカは鬼化を解き、セエレに抱き着いた。
「冗談だよ、リリカ」
「もう……セエレのばか」
「ははは。それより、ライトを殺す方法を考えないと。あれだけの力、この先きっとレイジの障害になる。レイジはファーレン王国から動く気がないみたいだし、私たちでやろう」
「うん。でも、どうやって?」
「ライトの戦いを見てたけど、どうやらライトのギフトは、他のギフトを吸収して自在に扱えるような能力だ。つまり、ライトは戦えば戦うほど強くなる可能性がある」
「え……それじゃ、まずいよ」
「うん。たぶんライトはファーレン王国から出た。外の世界を回って、強くなって帰ってくる。きっと、私たちだけじゃ対応できないくらい強く……」
「でも、この国にはレイジがいるよ?」
「そうだけど……不安は残したくない。レイジは王様になったばかりだし、これからもっと忙しくなる。だから、さっさと殺して不安を消す。私たちだって安心できるしね」
「うん……ほんっと、面倒くさい」
「仕方ないよ」
二人は子供の頃からの親友。それはずっと変わらない。
ライトのことなど忘れ、レイジに恋をしたこと以外は。
「あのさ、セエレ。ちょっといいこと考えたの」
「……なに? リリカの考えってのが怖いんだけど」
「ひどっ!? ちゃんとした考えだってば」
リリカはセエレの耳元に口を近づけて言った。
「女神フリアエ様に、力を貸してもらいましょ」
「よっ、っほ、ほいっ」
ファーレン王城中庭。
現在、勇者レイジことファーレン王国・国王レイジは、妻であり王妃のアンジェラに剣の稽古を付けていた。
新しく聖剣の使い手になったアンジェラは剣の素人。剣の握り方から教えなくてはならなかった。
体力づくりや素振りから始まり、軽い模擬戦も行い、剣に慣れていく。
レイジだけじゃなく、セエレやアルシェもアンジェラに稽古を付けていた。
「はぁぁぁっ!」
「っと、ほいっ」
「あっ……」
アンジェラの剣を躱し、レイジは木剣を叩いて落とす。
もちろん、アンジェラの敗北である。
「アンジェラ、何度も言うけどよ、剣を振るときには叫ばなくてもいいんだぜ?」
「あっ……やだ、わたくしったらはしたない」
「あっはは。気合が入るならいいけどよ」
赤くなるアンジェラに微笑み、木剣を拾うレイジ。
「さ、今日はここまでだ。汗もかいたし風呂に入って来いよ」
「え……あ、やだ、わたくし、レイジ様の前で……」
「それとも、オレが洗ってやろうか?」
「~~~っ!? だだ、ダメですダメです!! 失礼しますっ!!」
アンジェラは、慌てて走り去った。
何度か身体を合わせているが、未だに初心な反応はとても可愛いとレイジは思う。
そして、それ以上に驚くべきこともあった。
「…………ふぅ」
「お疲れ様です、レイジ様」
「ああ、アルシェか……見てたのか?」
「はい。模擬戦からずっと」
「…………わかったか?」
「はい」
レイジとアルシェは、アンジェラが走り去った方向を見ていた。
「アンジェラ、とんでもない剣の才能がありやがる。間違いなくオレ以上……」
「…………」
王妃アンジェラは、レイジよりも剣の才能にあふれていた。
◇◇◇◇◇◇
ファーレン王国地下。
ここは、過去に罪人を処刑するための地下牢があり、今では使われることのない朽ちた空間だ。
その朽ちた空間に、聖剣使いリリカはいた。
ライトにやられた負傷は見る影もなく、長く美しい黒髪に整った容姿、スタイル抜群の肢体は今夜もレイジを満足させるだろう。
「…………震えろ、夜叉鬼刃」
手に持った大太刀こと『鬼太刀』が巨大化し、リリカの身体も変化する。
頭から角が二本伸び、身長は2メートルを越え、筋骨隆々の体躯に変化する。
口から牙も生え、目はギョロリと見開かれた。
「グ、ゥゥゥゥ……っ!! ウッガァァァァァァァァーーーっ!!」
リリカは、鬼太刀を全力で振り回した。
的があるわけではない、ただ空間を全力で切りつける。
「らいと、ライト、ライと、ライト、らいト、ライトォォォォォォヲヲヲヲヲヲヲーーーーーッ!!!」
それは、怒りだった。恨みだった。憎しみだった。
「あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎あの野郎ぅぉぉぉぉぉぉっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああがががががががぁぁぁぁぁぁあーーーーーーーーーーっ!!!!!」
リリカ、全力の、喉が切れて血が出るほどの叫びだった。
もし近くに人間がいれば、鼓膜が破裂して両耳から出血していたであろう。
地下の頑丈な造りの部屋がビリビリと響き、壁に亀裂が入った。
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁあぁぁぁぁぁ……殺す」
リリカの腕の筋肉が膨れ上がり、血管が破裂した。
まさに、鬼のような形相で歯を食いしばり、眼も真っ赤に充血していた。
「ライトの野郎……ブッ殺「駄目よ」
リリカは、いきなり被せられた声の主を睨む。
「セエレ……っ!!」
「悪いけど、今のあなたじゃライトには勝てない。単純な力押しじゃライトは倒せない……」
「なんだと貴様ぁぁぁぁっ!!!」
「落ち着け、気付いてないのか? 今のお前、女の顔じゃないぞ?」
「っっ!?」
「レイジが見たらどんな顔をするかな……」
「や、やめてっ!! やめてやめてやめて!!」
リリカは鬼化を解き、セエレに抱き着いた。
「冗談だよ、リリカ」
「もう……セエレのばか」
「ははは。それより、ライトを殺す方法を考えないと。あれだけの力、この先きっとレイジの障害になる。レイジはファーレン王国から動く気がないみたいだし、私たちでやろう」
「うん。でも、どうやって?」
「ライトの戦いを見てたけど、どうやらライトのギフトは、他のギフトを吸収して自在に扱えるような能力だ。つまり、ライトは戦えば戦うほど強くなる可能性がある」
「え……それじゃ、まずいよ」
「うん。たぶんライトはファーレン王国から出た。外の世界を回って、強くなって帰ってくる。きっと、私たちだけじゃ対応できないくらい強く……」
「でも、この国にはレイジがいるよ?」
「そうだけど……不安は残したくない。レイジは王様になったばかりだし、これからもっと忙しくなる。だから、さっさと殺して不安を消す。私たちだって安心できるしね」
「うん……ほんっと、面倒くさい」
「仕方ないよ」
二人は子供の頃からの親友。それはずっと変わらない。
ライトのことなど忘れ、レイジに恋をしたこと以外は。
「あのさ、セエレ。ちょっといいこと考えたの」
「……なに? リリカの考えってのが怖いんだけど」
「ひどっ!? ちゃんとした考えだってば」
リリカはセエレの耳元に口を近づけて言った。
「女神フリアエ様に、力を貸してもらいましょ」
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