118 / 214
第119話・アバランチ討伐
しおりを挟む
大型危険魔獣『アバランチ』。
その正体は、全長10メートルほどの『ゴリラ』だった。
真っ白な体毛、顔や五指など皮膚の見えるところは紫色をして、五指から伸びる爪や口から生える牙は鋭利で凶悪だ。
そんなアバランチは、大きなシカをボリボリと食っていた。その数、実に10頭を超える。
アバランチの討伐理由は、餌を食いすぎて生態系を崩しているから。アバランチ一匹が一日に食べるシカの数は、三十頭を超える。しかも、シカだけでなく、狼や他の魔獣も食べてしまう……いわば、悪食の魔獣だ。
「悪食、ね……」
『オレを差し置いて悪食たぁ許せねぇなぁ……相棒』
「はいはい。それより、生態系が荒らされている方が問題だ。このままじゃ、狩りで生計立てている猟師が仕事を失うぞ」
「で、どうしますの?」
「決まってる」
ライトとマリアは、アバランチから後方、風下の藪の中で、アバランチの食事を見ていた。
捕らえたシカを骨ごと食いちぎる姿はおぞましく、マリアは露骨に顔をしかめる。
ライトは、ポケットから祝福弾を取り出す。
「『液状化』で頭を狙い撃ちしますの?」
「そんな勿体ないことはしない。あれほどの相手を真正面から倒せないようじゃ、これから先の戦いもきついだろうしな」
『硬化』・『液状化』・『重量変化』・『強化』・『鑑定』
『浮遊』・『調理師』・『爆破』・『筋力増強』・『分身』
そして、『神喰狼』・『天津甕星』。
合計11発の祝福弾。これがライトの戦力。それ以外に、カドゥケウスの能力がある。
「使ってないのは……『筋力増強』か」
ワイファ王国で倒した『海坊主』のギフトだ。
使うと筋力増強効果があるはずだが、海坊主がこのギフトを使用すると、筋肉が膨張して身長も伸びた。正直、かなり気持ち悪い。
リンに使おうとしたが、本気で拒絶されたので、お蔵入りになっていた祝福弾だ。
「…………」
「なんですの?」
「あ、いや……なんでもない」
一瞬、マリアに使おうか考えたが却下。もし使えば殺されるような気がした。
使い勝手のいい『硬化』と『強化』の組み合わせで行くか、『浮遊』で空から近付いて不意打ちするか、それともやはり『筋力増強』を使うか……。
「あの、早く決めないとわたしが出ちゃいますわよ?」
「ま、待て。う~ん……わかった。こいつでいくよ」
ライトは『筋力増強』の祝福弾を装填した。
◇◇◇◇◇◇
『ゴォルルルル……』
「よお」
ライトは、アバランチの前に堂々と姿を現した。
アバランチは振り向き、キョロキョロと周囲を見て、自分の足下に小さな人間がいることにようやく気が付き、アリでも踏みつぶすかのように足を上げて振り落とす。
怒りも困惑もない。ただ、目の前にいたから潰しただけ。
アバランチは踏み潰したモノを確認しようと─────。
「おぉ……確かに、筋力あがってるな。それに、海坊主ほど膨張していない」
ライトは、『筋力増強』の祝福弾で己を強化し、アバランチの踏み潰しを受け止めた。
これは、『筋力増強』のテスト。実戦でどれほど強化されるのか、その実験。
「じゃあ……脚力と腕力、同時に……っだらぁぁぁっ!!」
ライトはアバランチの顔目がけてジャンプし、ゴリラのような顔を全力でぶん殴った。
殴られたアバランチの片方の眼球が飛び出し、アバランチはゴロゴロ転がる。
「き、気持ちいぃ……これで勇者レイジをぶん殴ったらもっとキモチイイかも」
殴った感触が腕に、拳に、全身に伝わる。
劣化しているはずだが、かなりの能力だ。肉弾戦で『強化』を併用すれば、凄まじい破壊力が出るに違いない。
筋力増強できるのは、腕力と脚力のみ。細かいコントロールができず、かなり極端なところが弱点と言えば弱点だ。
『グァァァァオォォォォッ!!』
「これ、使えるな。近距離戦闘の要になりそうだ」
『グォルルルルルッ!!』
「あ、ご苦労さん。もういいよ」
ライトはカドゥケウスを構え発砲……アバランチの頭が吹き飛んだ。
『爆破』の祝福弾。まさに、必殺の一撃だった。
ずっと様子を見ていたマリアがライトに近づく。
「わたしも暴れたかったですわ」
「悪いな。今回は俺に譲ってくれて」
「別に。それで、どうですの?」
「ああ、使える」
祝福弾の検証。それが、魔獣討伐の本当の目的。
もはや、A級以上の危険魔獣でも、ライトの敵ではなかった。
その正体は、全長10メートルほどの『ゴリラ』だった。
真っ白な体毛、顔や五指など皮膚の見えるところは紫色をして、五指から伸びる爪や口から生える牙は鋭利で凶悪だ。
そんなアバランチは、大きなシカをボリボリと食っていた。その数、実に10頭を超える。
アバランチの討伐理由は、餌を食いすぎて生態系を崩しているから。アバランチ一匹が一日に食べるシカの数は、三十頭を超える。しかも、シカだけでなく、狼や他の魔獣も食べてしまう……いわば、悪食の魔獣だ。
「悪食、ね……」
『オレを差し置いて悪食たぁ許せねぇなぁ……相棒』
「はいはい。それより、生態系が荒らされている方が問題だ。このままじゃ、狩りで生計立てている猟師が仕事を失うぞ」
「で、どうしますの?」
「決まってる」
ライトとマリアは、アバランチから後方、風下の藪の中で、アバランチの食事を見ていた。
捕らえたシカを骨ごと食いちぎる姿はおぞましく、マリアは露骨に顔をしかめる。
ライトは、ポケットから祝福弾を取り出す。
「『液状化』で頭を狙い撃ちしますの?」
「そんな勿体ないことはしない。あれほどの相手を真正面から倒せないようじゃ、これから先の戦いもきついだろうしな」
『硬化』・『液状化』・『重量変化』・『強化』・『鑑定』
『浮遊』・『調理師』・『爆破』・『筋力増強』・『分身』
そして、『神喰狼』・『天津甕星』。
合計11発の祝福弾。これがライトの戦力。それ以外に、カドゥケウスの能力がある。
「使ってないのは……『筋力増強』か」
ワイファ王国で倒した『海坊主』のギフトだ。
使うと筋力増強効果があるはずだが、海坊主がこのギフトを使用すると、筋肉が膨張して身長も伸びた。正直、かなり気持ち悪い。
リンに使おうとしたが、本気で拒絶されたので、お蔵入りになっていた祝福弾だ。
「…………」
「なんですの?」
「あ、いや……なんでもない」
一瞬、マリアに使おうか考えたが却下。もし使えば殺されるような気がした。
使い勝手のいい『硬化』と『強化』の組み合わせで行くか、『浮遊』で空から近付いて不意打ちするか、それともやはり『筋力増強』を使うか……。
「あの、早く決めないとわたしが出ちゃいますわよ?」
「ま、待て。う~ん……わかった。こいつでいくよ」
ライトは『筋力増強』の祝福弾を装填した。
◇◇◇◇◇◇
『ゴォルルルル……』
「よお」
ライトは、アバランチの前に堂々と姿を現した。
アバランチは振り向き、キョロキョロと周囲を見て、自分の足下に小さな人間がいることにようやく気が付き、アリでも踏みつぶすかのように足を上げて振り落とす。
怒りも困惑もない。ただ、目の前にいたから潰しただけ。
アバランチは踏み潰したモノを確認しようと─────。
「おぉ……確かに、筋力あがってるな。それに、海坊主ほど膨張していない」
ライトは、『筋力増強』の祝福弾で己を強化し、アバランチの踏み潰しを受け止めた。
これは、『筋力増強』のテスト。実戦でどれほど強化されるのか、その実験。
「じゃあ……脚力と腕力、同時に……っだらぁぁぁっ!!」
ライトはアバランチの顔目がけてジャンプし、ゴリラのような顔を全力でぶん殴った。
殴られたアバランチの片方の眼球が飛び出し、アバランチはゴロゴロ転がる。
「き、気持ちいぃ……これで勇者レイジをぶん殴ったらもっとキモチイイかも」
殴った感触が腕に、拳に、全身に伝わる。
劣化しているはずだが、かなりの能力だ。肉弾戦で『強化』を併用すれば、凄まじい破壊力が出るに違いない。
筋力増強できるのは、腕力と脚力のみ。細かいコントロールができず、かなり極端なところが弱点と言えば弱点だ。
『グァァァァオォォォォッ!!』
「これ、使えるな。近距離戦闘の要になりそうだ」
『グォルルルルルッ!!』
「あ、ご苦労さん。もういいよ」
ライトはカドゥケウスを構え発砲……アバランチの頭が吹き飛んだ。
『爆破』の祝福弾。まさに、必殺の一撃だった。
ずっと様子を見ていたマリアがライトに近づく。
「わたしも暴れたかったですわ」
「悪いな。今回は俺に譲ってくれて」
「別に。それで、どうですの?」
「ああ、使える」
祝福弾の検証。それが、魔獣討伐の本当の目的。
もはや、A級以上の危険魔獣でも、ライトの敵ではなかった。
1
あなたにおすすめの小説
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる