119 / 214
第120話、祝勝会と報告
しおりを挟む
アバランチを討伐し、倒した証拠として右手を切断して麻袋に入れ、討伐の喜びなど皆無の状態で町まで戻った。二人は冒険者ではない、鍛錬と検証のためだけに大型危険魔獣と戦っただけ。普通の冒険者だったら凱旋レベルの功績でも、特に変わらず町に戻ってきた。
一応、リンの名前で受けた依頼であり、報告すればリンの功績になる。
A級賞金首と盗賊団、大型の危険魔獣の討伐は、報告すれば昇格間違いなし。現在青銅級のリンだが、この功績を報告すれば銀級冒険者になるだろう。そうすれば、依頼のランク上限なしに受けることができる。それこそ、シンクと同格のS級賞金首も討伐できる。
ライトは、冒険者ギルドでなく宿を目指しながら手綱を握る。報告の前に宿で落ち合うというのは最初に決めたことだ。
「リンが昇格すればS級も狩れる。戦力アップのチャンスだ」
「それだけじゃありませんわ。国家指定のS級盗賊団や組織も相手にできますわ」
「くくっ、いいなそれ……全部潰して祝福弾にしてやる」
ライトとマリアは、御者席で凶悪な笑みを浮かべる。
個人でS級盗賊団や組織を相手にすることはもちろん可能だ。だが、居場所がわからなければどうしようもない。
冒険者ギルドの情報収集能力ならそれができる。隠密に特化した情報収集専門の冒険者や、どこからか知らない場所の情報も集まるのだ。現に、アバランチの居場所も冒険者ギルドの情報のおかげだった。
「腹減ったな……なぁ、リンたちが帰ってなかったら、鍋でも食うか?」
「あら? デートのお誘いですか?」
「バーカ」
「ふふ、ご一緒しますわ。もちろん、あなたの奢りで」
「…………」
ライトは苦笑した。
マリアは微笑んだ。
カドゥケウスとシャルティナがボソボソ喋っている。
『聞いたかシャルティナ、この二人がデートだとよ』
『聞いたわ。ああ、あたしの可愛いマリアが男とデートだなんて』
『なぁなぁ、リンの嬢ちゃんは抱いたのか?』
『ええ。女同士の熱い夜を過ごしたわ。最初は嫌がってたリンだけど、夜も更ける頃にはすっかりハマっちゃってねぇ』
『ケケケッ、なぁシャルティナ、聞きたいんだけどよ……オレらの誓約の痛みって、痛覚を麻痺させりゃ感じないと思うか?』
『うーん……試したことないけど、なんで?』
『いや、マリアの嬢ちゃんが相棒に抱かれるためにゃ、やっぱ誓約の痛みが問題なんだよなー……第四相の祝福弾を応用すりゃ、痛覚だけを遮断することができると思うんだが』
『マリアも男を知るいい機会かもねぇ……試す?』
『ああっぶぉあぁぁぁぁぁっ!?』
ライトは、久しぶりにカドゥケウスを投げ捨てた。
だが、すぐにライトのホルスターに転移して戻ってくる。
『なにすんだよ相棒……』
「全部聞こえてるぞ、この野郎」
『あん、マリアってば怖いぃ』
「シャルティナ、冗談はやめてくれません?」
ギャーギャー騒ぎながらも、宿に到着した。
◇◇◇◇◇◇
宿に戻ると、リンとシンクが鍋をつついていた。
ライトとマリアは顔を合わせて苦笑し、部屋に戻ることなく二人の元へ。
「あ、おかえり」
「おかえり。二人とも大丈夫? 怪我はない? 怪我してるなら私が治すから」
「大丈夫。雑魚だったし怪我もしてねーよ」
「そちらはどうでした? リン、シンク」
「あー……」
「むぐむぐ」
シンクが肉鍋をがっつき、リンは頬をポリポリ掻く。
それだけで、何かあったのだとわかった。
「で、どうなったんだ?」
ライトは宿の給仕を呼び、ホットワインを注文。マリアも同じものを注文し、すでに肉が消えつつある肉鍋のほかに、山菜鍋を注文した。
「シンクが頑張ったから依頼は達成。盗賊団は壊滅……それと、第二相の情報が二つ、手に入ったわ」
「二つか……」
「うん。盗賊団のリーダーが言ってたの」
「マリア、山菜鍋も食べていい?」
「いいですけど……あなた、肉鍋の野菜も食べなさいな」
「んー」
運ばれてきた山菜鍋のキノコが気になるのか、シンクは鍋をジッと見ている。だがマリアは、肉鍋の野菜が残っていることを指摘し、山菜鍋には触れさせない。
ライトとマリアは、運ばれてきたホットワインのグラスを持ち、特に何も言わずに軽く合わせた。
「で、盗賊のリーダーは何て言ってた?」
「あ、うん。一つは、第二相は吹雪の中心地である大雪山の頂上に氷の城を建てて住んでいるらしいわ。もう一つは、大雪山とは別の雪山の頂上で、光る物体を目撃したとか」
「大雪山と別の雪山か……どっちも面倒だな」
「うん。登れば途中で必ず凍り付くらしい。生きて登った人や帰ってきた人がいないとか……要は、向かったら死ぬ山ね」
「なるほどな……じゃあ、馬は連れて行けないな。行くのも、俺とシンクだけか」
「は!?」
リンは目を見開いた。
「もともと、こいつの頼みを受けたのは俺だ。危険を冒すなら俺だけでいい。どっちに登るとしても、無理だ」
「はぁ~……あのさライト、今更それはないと思う。というか……雪山に登る方法、私にはあるんだけどなぁ」
「は?」
「ふふ……おいで、マルシア」
『きゃう?』
リンは、自分の影からチビ黒狼のマルシアを呼ぶ。
宿の飲食スペースなので、名前を呼ぶだけだが。
「この子に頼んで、みんなを私の影のなかに入れて運んでもらうの。そうすれば全員、無傷で山頂まで行けるよ」
「…………む」
「さ、何か言うことは?」
「…………」
「マリア、野菜たべたー」
「なら食べていいですわ」
「やった!」
シンクは山菜鍋に手を伸ばし、マリアと一緒に食べ始めた。
一応、リンの名前で受けた依頼であり、報告すればリンの功績になる。
A級賞金首と盗賊団、大型の危険魔獣の討伐は、報告すれば昇格間違いなし。現在青銅級のリンだが、この功績を報告すれば銀級冒険者になるだろう。そうすれば、依頼のランク上限なしに受けることができる。それこそ、シンクと同格のS級賞金首も討伐できる。
ライトは、冒険者ギルドでなく宿を目指しながら手綱を握る。報告の前に宿で落ち合うというのは最初に決めたことだ。
「リンが昇格すればS級も狩れる。戦力アップのチャンスだ」
「それだけじゃありませんわ。国家指定のS級盗賊団や組織も相手にできますわ」
「くくっ、いいなそれ……全部潰して祝福弾にしてやる」
ライトとマリアは、御者席で凶悪な笑みを浮かべる。
個人でS級盗賊団や組織を相手にすることはもちろん可能だ。だが、居場所がわからなければどうしようもない。
冒険者ギルドの情報収集能力ならそれができる。隠密に特化した情報収集専門の冒険者や、どこからか知らない場所の情報も集まるのだ。現に、アバランチの居場所も冒険者ギルドの情報のおかげだった。
「腹減ったな……なぁ、リンたちが帰ってなかったら、鍋でも食うか?」
「あら? デートのお誘いですか?」
「バーカ」
「ふふ、ご一緒しますわ。もちろん、あなたの奢りで」
「…………」
ライトは苦笑した。
マリアは微笑んだ。
カドゥケウスとシャルティナがボソボソ喋っている。
『聞いたかシャルティナ、この二人がデートだとよ』
『聞いたわ。ああ、あたしの可愛いマリアが男とデートだなんて』
『なぁなぁ、リンの嬢ちゃんは抱いたのか?』
『ええ。女同士の熱い夜を過ごしたわ。最初は嫌がってたリンだけど、夜も更ける頃にはすっかりハマっちゃってねぇ』
『ケケケッ、なぁシャルティナ、聞きたいんだけどよ……オレらの誓約の痛みって、痛覚を麻痺させりゃ感じないと思うか?』
『うーん……試したことないけど、なんで?』
『いや、マリアの嬢ちゃんが相棒に抱かれるためにゃ、やっぱ誓約の痛みが問題なんだよなー……第四相の祝福弾を応用すりゃ、痛覚だけを遮断することができると思うんだが』
『マリアも男を知るいい機会かもねぇ……試す?』
『ああっぶぉあぁぁぁぁぁっ!?』
ライトは、久しぶりにカドゥケウスを投げ捨てた。
だが、すぐにライトのホルスターに転移して戻ってくる。
『なにすんだよ相棒……』
「全部聞こえてるぞ、この野郎」
『あん、マリアってば怖いぃ』
「シャルティナ、冗談はやめてくれません?」
ギャーギャー騒ぎながらも、宿に到着した。
◇◇◇◇◇◇
宿に戻ると、リンとシンクが鍋をつついていた。
ライトとマリアは顔を合わせて苦笑し、部屋に戻ることなく二人の元へ。
「あ、おかえり」
「おかえり。二人とも大丈夫? 怪我はない? 怪我してるなら私が治すから」
「大丈夫。雑魚だったし怪我もしてねーよ」
「そちらはどうでした? リン、シンク」
「あー……」
「むぐむぐ」
シンクが肉鍋をがっつき、リンは頬をポリポリ掻く。
それだけで、何かあったのだとわかった。
「で、どうなったんだ?」
ライトは宿の給仕を呼び、ホットワインを注文。マリアも同じものを注文し、すでに肉が消えつつある肉鍋のほかに、山菜鍋を注文した。
「シンクが頑張ったから依頼は達成。盗賊団は壊滅……それと、第二相の情報が二つ、手に入ったわ」
「二つか……」
「うん。盗賊団のリーダーが言ってたの」
「マリア、山菜鍋も食べていい?」
「いいですけど……あなた、肉鍋の野菜も食べなさいな」
「んー」
運ばれてきた山菜鍋のキノコが気になるのか、シンクは鍋をジッと見ている。だがマリアは、肉鍋の野菜が残っていることを指摘し、山菜鍋には触れさせない。
ライトとマリアは、運ばれてきたホットワインのグラスを持ち、特に何も言わずに軽く合わせた。
「で、盗賊のリーダーは何て言ってた?」
「あ、うん。一つは、第二相は吹雪の中心地である大雪山の頂上に氷の城を建てて住んでいるらしいわ。もう一つは、大雪山とは別の雪山の頂上で、光る物体を目撃したとか」
「大雪山と別の雪山か……どっちも面倒だな」
「うん。登れば途中で必ず凍り付くらしい。生きて登った人や帰ってきた人がいないとか……要は、向かったら死ぬ山ね」
「なるほどな……じゃあ、馬は連れて行けないな。行くのも、俺とシンクだけか」
「は!?」
リンは目を見開いた。
「もともと、こいつの頼みを受けたのは俺だ。危険を冒すなら俺だけでいい。どっちに登るとしても、無理だ」
「はぁ~……あのさライト、今更それはないと思う。というか……雪山に登る方法、私にはあるんだけどなぁ」
「は?」
「ふふ……おいで、マルシア」
『きゃう?』
リンは、自分の影からチビ黒狼のマルシアを呼ぶ。
宿の飲食スペースなので、名前を呼ぶだけだが。
「この子に頼んで、みんなを私の影のなかに入れて運んでもらうの。そうすれば全員、無傷で山頂まで行けるよ」
「…………む」
「さ、何か言うことは?」
「…………」
「マリア、野菜たべたー」
「なら食べていいですわ」
「やった!」
シンクは山菜鍋に手を伸ばし、マリアと一緒に食べ始めた。
1
あなたにおすすめの小説
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる