勇者の野郎と元婚約者、あいつら全員ぶっ潰す

さとう

文字の大きさ
193 / 214

第195話・女神訪問

しおりを挟む
「……で、その子は誰ですの?」
「闇夜の女神ツクヨミ……」

 ライトは、裸のまま部屋に入ってきたマリアが無事なことに安堵した。そして、わけもわからず隣の部屋に移動させられ、代わりとばかりにライトに抱き着く裸の少女ツクヨミを見て、苛立ちを隠そうとしない。
 時間は明け方……まだ起きるには早いが、日は登り朝になった。
 カーテンの隙間から漏れる日差しが、ライトの部屋を明るくする。

『ま、マジ? なんでこの子、裸……まさかライト、ヤッたの?』
「ヤッてねぇし。俺が裸なのを見て、こいつも裸になったんだっつーの。揺さぶっても起きないし、なぜか動けないし……こいつが起きるのを待ってるんだよ」

 シャルティナもツクヨミの存在に驚く。
 マリアは裸体を隠そうとせず、やはり苛立ちを隠せなかった。

「全く、そんなにくっついて……」
『あらマリア、ヤキモチかしら?』
「さぁ? ですが、勝手にわたしの別荘に入ったことは許せませんわね。女神というなら敵なのですか?」
『マリア。死にたくなければ手を出さないで。この子、めっちゃ強いわよ』
「む……」
「マリア、手を出すな……お」

 ゆっくりと、ツクヨミの目が開く。
 可愛らしく欠伸をして起き上がり、ライトに跨ったまま背筋を伸ばす。
 ぷるぷると小動物のように首を振り、ようやくライトから離れた。

「ごはん─────たべたい」
「は? め、メシか……わかった。準備しよう」
「は? ちょっとライト」
「いいから、頼む」
「むぅぅ……」
「ありがとう─────やっぱりあなた、温かい」
「あ、ああ……」

 ツクヨミはにっこり笑う。すると、足元の影が身体を覆い、昨夜見た喪服のようなドレスに身を包む。
 ライトとマリアも着替え、ライトはようやく自由になった。

「さて……リンに頼んで、メシを一人分多く作ってもらうか」
「…………もう、わけがわかりませんわ」
「─────♪」

 ツクヨミは、なぜか楽しそうだった。
 ライトとマリアには、ツクヨミの思考回路がまったく読めなかった。

 ◇◇◇◇◇◇

『なんと……神界を闇に染めた暗黒の女神ツクヨミとは』
『わぁお。マジ?』

 イルククゥとアルケイディアも驚いていた。
 ツクヨミは普通に椅子に座り、リンの淹れたお茶を啜っている。

「……め、女神って。なんで?」
「俺が知るか。昨日の夜に襲われたんだよ」
「襲われたって……ま、まさか」
「ヤッてないからな」

 リンは顔を赤くしていたが、ライトはすぐに否定した。
 メリーはどうでもいいのかソファに座ったまま眠り、シンクは興味深々なのを隠そうとせず、なんとツクヨミの隣に座った。

「ねぇねぇ、ボクはシンク。よろしくね」
「ん─────よろしく」
「あなた、どうしてここに来たの?」
「話を、しに─────」
「話? そっか。じゃあボクとお話しよ! ボク、女神とちゃんとお話してみたかったんだ」
「うん─────いいよ」

 シンクは何が嬉しいのか、ツクヨミに話しかけていた。
 ライトとリンはその光景を見て驚く。

「ど、どうするの?」
「どうするもなにも……追い返せるわけないしな。帰るのを待つしか」

 そして、朝食が完成……ツクヨミを加えた六人で食べた。
 妙な緊張感が漂う朝食だったが、シンクとツクヨミはまるで気にしていない。
 とにかく、ツクヨミをどうするか。
 朝食後、ライトは帰ってもらおうと提案する。戦いになるのだけは絶対に避けるべき相手だ。
 意を決してツクヨミに話しかけようとして─────。

「ごめんくださーいっ!! あー……ツクヨミいますかー!!」

 と、ドアが乱暴にノックされた。

  ◇◇◇◇◇◇

「え、えー……と」
「パティオン、こいつらめっちゃ強いよ。死ぬかも」
「って、てか、なんでツクヨミがここに……あの、ツクヨミ?」

 来訪者は、希望の女神パティオン、そして白銀の女神ブリザラだった。
 カドゥケウスを構えたライト、百足鱗を出したマリア、爪を伸ばしたシンクが対応するなり、両手を上げて降伏したのだ。
 パティオンは、両手を上げながら言った。

「争うつもりはないわ。私はあなたたちの話が聞きたいの」
「…………」
「その、ツクヨミから聞いてない? 私たちの目的は、あなたたちとお話することだって」
「…………」

 ライトがカドゥケウスを下ろすと、マリアとシンクも武器を収めた。
 ぶっきらぼうにライトは言う。

「ツクヨミ……お前たちの差し金か?」
「差し金っつーか、いつの間にかいなくなってたんよ。うちらも探してた」
「……まぁいい。話だったか」
「そ、そう!! お願い、話をしたいの」
「……わかった。入れよ」

 こうして、パティオンとブリザラを別荘に入れた。
 ここに、前代未聞……女神と大罪神器の所有者の話が始まった。
しおりを挟む
感想 56

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

処理中です...