勇者の野郎と元婚約者、あいつら全員ぶっ潰す

さとう

文字の大きさ
195 / 214

第197話・まだ話は終わらない

しおりを挟む
 パティオンとブリザラは、ワイファ王国の町中をのんびり歩いていた。
 ブリザラは氷菓子をかじりながら言う。

「なーんで【傲慢】のこと教えたの?」
「決まってる。【暴食】の仲間になれば面白いからよ。それに、ツクヨミも私たちのことより【暴食】の方が気になるみたいだしね……戦力強化は必要でしょ?」
「戦力って、ツクヨミだけで世界滅ぼせちゃうじゃん」
「ま、そうね。あの女神もどきがキルシュより強くても、ツクヨミには触れることすらできないでしょう……ツクヨミが【暴食】サイドに付いた時点で、もうフリアエに勝ちの目はなくなった」
「で、【暴食】がフリアエを始末したら」
「私たちの出番。神界でフリアエをぶちのめすわよ」
「へいへい……でもさ、【傲慢】ってば、あんな」
「ま、私たちには関係ない。ツクヨミが【暴食】に付いた時点で、もう勝ったようなモンでしょ」

 確かに、その通りだ。
 ブリザラはそう考え、大きな欠伸をした。

「ねぇ、せっかくだしさ。ビーチで泳がない? 女神のナイスボディを人間たちに見せつけてやるぜ」
「バカ。そんなことしても意味ないでしょ。それより、神界に帰るわよ」
「えぇ~……もうちょい遊ぼうぜぃ。人間界に来ることなんてめったにないしぃ……あんたも知ってるでしょ? 人間界は『食』に関してだけなら、女神より上だって」
「…………」
「食べる必要がないうちらと違って、食べなきゃ死んじゃう人間の作り出した食事は最高よ? ほらほら、ワイファ王国は海の幸が豊富だし、美味しい海産物いっぱい食べておこう」
「…………ま、まぁ、少しだけなら」
「堕ちるの早っ……」
「あ、あんたが食べたいって言ったんでしょうが!!」

 希望の女神パティオンと、白銀の女神ブリザラ。
 二人の人間界旅行は、もう少し続きそうだ。

 ◇◇◇◇◇◇

「すぅ─────」
「…………」

 ライトにしがみつくように眠る『闇夜の女神』ツクヨミ。
 さっき知ったことだが、最強の魔獣『八相』の一体らしい。どう見ても普通の少女にしか見えず、一行は困惑した。

「で、どうするの?」

 リンがライトに聞く。

「……どうするったって」
「引き剥がして置いて行けばいいのでは?」

 マリアが、ライトをジト目で睨みながら言う。
 シンクはソファに座って興味津々とばかりにツクヨミのほっぺを突き、メリーは床に丸まって寝ていた。

「とにかく。【傲慢】がここにいるってのはわかった」
「あら? 女神の言葉を信じるのですか?」
「……ああ。あいつら、なんとなくだけど噓は付いてないと思う。もう少し探してみる価値はあるだろ」
「でも、どこを探すの? 冒険者ギルドの情報屋でも限界だよ」
「……んー、やっぱり女神に聞くか。あいつら、まだ近くにいるか?」

 なんとなくマリアに聞くと、答えが返ってきた。

「いる─────パティオンとブリザラ、近い」

 答えは、ツクヨミからだ。
 ライトの首筋をクンクンと嗅ぎ、甘えるようにピッタリ身体をくっつける。
 うっとおしいが、ライトはそのまま聞いた。

「なぁ、お前も女神なんだろ? あいつらをもう一度呼べないか?」
「呼べる─────なでなでしてくれたら」
「……は?」
「なでて─────」

 ポッと頬を紅潮させ、ツクヨミが言った。
 本当にわからない。なぜツクヨミはライトをこんなに気に入っているのか。
 仕方なく、ライトはツクヨミの頭を撫でた。

「いいなー、ボクも後で撫でてね」
「リンにでも撫でてもらえって」
「あのね、シンクはライトに撫でてもらいたがってるの」
「全く……甘やかしすぎですわ」
「ぐぅ……」

 満足したのか、ツクヨミはにっこり笑う。
 そして、おもむろに手をリビングの一角に伸ばすと、床からじわじわと黒い靄が広がり……。

「え?」
「おぉ?」

 水着姿のブリザラと、素っ裸のパティオンが現れた。
 ブリザラは上下しっかりと水着を着ていたが、服を脱いだばかりのパティオンは、パンツを握ったまま硬直していた。
 女神というだけあって、スタイルも抜群だ。

「あー……」
「なな、な、なんででで……つつ、ツクヨミぃぃっ!!」
「─────ごめん」

 どうやら、泳ぐつもりだったようだ。
 ライトはそっと目を背けた。
しおりを挟む
感想 56

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

処理中です...