婚約(無理矢理)を解消するために恋を応援するとは言ったけれど、私の兄を好きとは聞いてないが!?

結来月ひろは(ゆくづきひろは)書籍化希望

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第三章 未知なるもの

第三章 未知なるもの4

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「いい加減にしなさいよ!!」

 バルドを一喝したドロシアはいつの間にか握りしめた木べらで、バルドを真っ直ぐに指していた。

「カメリア様のことをそれ以上悪く言うなら、私が許さないんだから!」
「あぁ? 許さないもなにも本当のことだろ」
「カメリア様をあなた達なんかと一緒にしないでちょうだい!」
「ドロシア、落ち着いて……」
「私は落ち着いています。落ち着いているからこそ、黙っていられないんです!」

 ドロシアはバルドをにらみつけるが、背の高いバルドからしてみれば、ドロシアから見上げられているだけにすぎない。

「俺とあいつのどこが違うってんだよ? あいつなんかより俺の方がいいに決まってんだろ」
「どこが違うかですって? 何もかも違うわよ! バルドのそういうところ、本当に嫌い!」

(ドロシアは男性が苦手だったんじゃ……)

 少なくともドロシアが接客以外で男性相手に話しているところを、それもこんなふうに自分から男性に向かっていくところをカメリアが見るのは初めてだった。

 バルドに対して引かないどころか。嫌いだと言い切ってみせるドロシアに驚くカメリアの肩を叩いたのはセロイスだった。

「おい、バルドが気を引いているうちにロベルト様を探しにいくぞ」
「探しにいくと言っても、このままドロシアをほうっておくわけには……」

 カメリア達の存在を忘れているかのようにバルドとドロシアの言い争いは続いており、店内にいる客達も固唾をのんでふたりのやりとりを見守っている。

「いいから行くぞ」

 セロイスに半ば強引に背中を押される形で店をあとにしたものの、カメリアはドロシアのことが気になって仕方なかった。

 バルドがドロシアになにかするとは思っておらず、ドロシアになにかあればドロシアの祖父が黙ってはいないとわかっているが、不安はぬぐい切れなかった。

(セロイスに言われるがままに、店から出てきてしまったが、本当に大丈夫なのか……?)

 カメリアの不安を察したようにセロイスが答えた。

「ふたりなら大丈夫だ。バルドいわく、昔からああらしい」
「昔から?」

 ドロシアの店にバルドがやってくるところを見たことはないが、今のセロイスの言い方からすると、バルドは昔からドロシアを知っていたことになる。

「俺も詳しくは知らないが、幼い頃からの知り合いらしい」
「だから、ドロシアもバルドに対しては平気だったのか」

 驚きはしたが、古くからの知り合いというならば、男嫌いのドロシアのバルドに対する態度にも納得がいく。

「しかし、客達には悪いことをしてしまった」
「何がだ?」
「……気付いてなかったのか?」

 カメリアは思わず足を止めると、同じように足を止めたセロイスを見た。

「皆、お前のことをあんな熱心に見ていたじゃないか! お前が店に来ることなんて滅多にないのに、せっかくの機会を私がつぶしてしまったようなものだ」

 隣を歩くカメリアをなぜかセロイスはあきれた目で見ていた。

「お前、それは本気で言っているのか?」
「本気に決まっているだろう」
 
 カメリアの返答を聞いたセロイスはため息をついた。
 
「本気だとしたら、ずいぶんと……」
「なんだ? 言いたいことがあるなら、はっきり言えばどう……!」

 セロイスに詰め寄るカメリアは感じ取った気配に目付きを変えると、剣に手を添えて周囲を見回した。
 セロイスも同じようにあたりに注意を凝らしている。

「今の、気づいたか?」
「あぁ」

 カメリアとセロイス。
 ふたりのうち、どちらに向けられたものかは定かではないが、あの視線にはたしかに殺気が混ざていた。

(この短時間で逃げては逆に目立つ。そうなるとまだ近くにいるはずだ……)

 周囲に視線を凝らしていたカメリアは目深にフードをかぶっている人物を見つけた。
 フードのせいで視線はわからない。
 しかし、たしかにこちらを見ていると。そう感じた。

「いた、あいつだ……」
 カメリアに気付かれたことを察すると、フードをかぶった人物はその場から駆け出した。
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