婚約(無理矢理)を解消するために恋を応援するとは言ったけれど、私の兄を好きとは聞いてないが!?

結来月ひろは(ゆくづきひろは)書籍化希望

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第三章 未知なるもの

第三章 未知なるもの5

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「待て!」
 フードをかぶったの人物を追い、カメリアも駆け出した。
 頭からローブを被っているせいで顔は確認出来ないが、体格からして恐らく男だ。

 フードをかぶった人物はカメリアを撒こうと近くにあった路地へと入るが、ロベルトを探すために街中を駆け回っているカメリアにとって、これぐらいどうということはない。

 影に続いたカメリアは風に揺れるローブへと手を伸ばすが、ローブをつかむ寸前のところで、ローブは手の中をすり抜けていった。

「くそ、どこに行った!?」

 薄暗い路地から明るい大通りに出たことで白む視界をこらしながら、カメリアは追いかけていた影の姿を探すが、影はどこにも見当たらない。

(人混みに紛れたにしても、まだそう遠くには行っていないはずだ)

 ようやく元の視界を取り戻し、フードをかぶった人物を探すカメリアだが、その視界が捉えたのは意外な人物だった。

 大通りを挟んで向こう側に続く路地。
 その壁に背中を預けているのはカメリアの兄・ルベールだった。
 大通りを挟んでいるせいか。ルベールがカメリアに気付いている様子はないが、どこか周囲の目を避けているかのようにも見える。

(兄上が、どうしてあんなところに? 仕事中のはずでは……)

 そんなことを考えていたカメリアは信じられない光景を目にすることになる。
 ルベールが路地の奥からやって来た誰かをその腕に抱き締めたのだ。

(あんなことを言ってはいたが、兄上には恋人がいたのか)

 カメリアのことを溺愛していた手前、なかなかカメリアには恋人がいることを言い出せなかったのかもしれない。
 
 しかし身内のこうした光景はどうにも気恥ずかしくい。
 父親から母親とのノロケ話を聞かされていた時の恥ずかしさの方がどう考えてもマシだ。

 カメリアに見られているとは知らず、ルベールの恋人は背伸びをして、まるで口づけをねだるかのようにルベールへと顔を近づけた。
 その拍子に被っていたローブが地面へ落ち、その姿が露になった。

「え……」
 カメリアは言葉を失った。

(あれが、兄上の恋人……)

 長身のルベールよりも少し低い背丈に、しなかやかな身体。
 透けるような白い肌に、鼻筋の通った涼やかな容姿。
 腕の中にいたのは、ルベールと同じ年頃の青年だった。

(男性だったのか……)

 セロイスと並んでルベールの名前も女性達の話にはよく上がってはいるものの、ルベールの浮いた話や噂は今まで一度も聞いたことがない。

(しかし、まさか兄上に同性の恋人がいるとは)

 カメリアは呆然と、その場に立ち尽くすことしか出来なかった。
 どこか慣れた様子で青年はルベールの背中へ腕を回したかと思うと、茶色い髪からのぞく紫の瞳をカメリアの方へと向けた。

(……笑った?)

 それはルベールの手をとり、その場から去っていくまでのほんの一瞬のことだった。
 ただの偶然かもしれないが、カメリアには何故かそれが偶然とは思えなかった。

「こんなところで何をしているんだ?」
「ロベルト様……」

 太陽の光を受けて輝く金色の髪を揺らしながら悠然とした様子でカメリアのそばへとやって来たのはロベルトだった。服も街に馴染むようにと軽装のものに着替えたロベルトは街の中に溶け込み、一国の王子には見えなかった。

 普段ならば城を抜け出したロベルトへの説教が始まるところだが、今のカメリアにそんな気力は残されていなかった。

 いつもと違うカメリアにロベルトはどこかつまらなさそうだったが、何かを思い付いたらしく紫色の瞳を輝かせながら意味ありげな笑みを浮かべた。

「そうだ、セロイスとは仲良く過ごせたか?」
「仲良くって……そもそも、いきなり婚約なんて、一体どういうことで……」
 ロベルトに言い返していたカメリアは、そこでロベルト以外の人間がいることに気付いた。

(まさか……)

 その姿を見たカメリアは言葉を失い、そして固まった。
 そんなふたりを互いに見たロベルトは、何かに納得したようにひとりうなずいた。

「お前達ならうまくいくだろうと思っていたが、一晩でここまで意思疎通を果たせる中になるとは。俺の見立てはまちがっていなかったようだな」

 そんなロベルトの言葉など、カメリアの耳には全く入ってはこなかった。
 そこに立ち尽くしていたのはセロイスだった。
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