21 / 57
第三章 未知なるもの
第三章 未知なるもの5
しおりを挟む
「待て!」
フードをかぶったの人物を追い、カメリアも駆け出した。
頭からローブを被っているせいで顔は確認出来ないが、体格からして恐らく男だ。
フードをかぶった人物はカメリアを撒こうと近くにあった路地へと入るが、ロベルトを探すために街中を駆け回っているカメリアにとって、これぐらいどうということはない。
影に続いたカメリアは風に揺れるローブへと手を伸ばすが、ローブをつかむ寸前のところで、ローブは手の中をすり抜けていった。
「くそ、どこに行った!?」
薄暗い路地から明るい大通りに出たことで白む視界をこらしながら、カメリアは追いかけていた影の姿を探すが、影はどこにも見当たらない。
(人混みに紛れたにしても、まだそう遠くには行っていないはずだ)
ようやく元の視界を取り戻し、フードをかぶった人物を探すカメリアだが、その視界が捉えたのは意外な人物だった。
大通りを挟んで向こう側に続く路地。
その壁に背中を預けているのはカメリアの兄・ルベールだった。
大通りを挟んでいるせいか。ルベールがカメリアに気付いている様子はないが、どこか周囲の目を避けているかのようにも見える。
(兄上が、どうしてあんなところに? 仕事中のはずでは……)
そんなことを考えていたカメリアは信じられない光景を目にすることになる。
ルベールが路地の奥からやって来た誰かをその腕に抱き締めたのだ。
(あんなことを言ってはいたが、兄上には恋人がいたのか)
カメリアのことを溺愛していた手前、なかなかカメリアには恋人がいることを言い出せなかったのかもしれない。
しかし身内のこうした光景はどうにも気恥ずかしくい。
父親から母親とのノロケ話を聞かされていた時の恥ずかしさの方がどう考えてもマシだ。
カメリアに見られているとは知らず、ルベールの恋人は背伸びをして、まるで口づけをねだるかのようにルベールへと顔を近づけた。
その拍子に被っていたローブが地面へ落ち、その姿が露になった。
「え……」
カメリアは言葉を失った。
(あれが、兄上の恋人……)
長身のルベールよりも少し低い背丈に、しなかやかな身体。
透けるような白い肌に、鼻筋の通った涼やかな容姿。
腕の中にいたのは、ルベールと同じ年頃の青年だった。
(男性だったのか……)
セロイスと並んでルベールの名前も女性達の話にはよく上がってはいるものの、ルベールの浮いた話や噂は今まで一度も聞いたことがない。
(しかし、まさか兄上に同性の恋人がいるとは)
カメリアは呆然と、その場に立ち尽くすことしか出来なかった。
どこか慣れた様子で青年はルベールの背中へ腕を回したかと思うと、茶色い髪からのぞく紫の瞳をカメリアの方へと向けた。
(……笑った?)
それはルベールの手をとり、その場から去っていくまでのほんの一瞬のことだった。
ただの偶然かもしれないが、カメリアには何故かそれが偶然とは思えなかった。
「こんなところで何をしているんだ?」
「ロベルト様……」
太陽の光を受けて輝く金色の髪を揺らしながら悠然とした様子でカメリアのそばへとやって来たのはロベルトだった。服も街に馴染むようにと軽装のものに着替えたロベルトは街の中に溶け込み、一国の王子には見えなかった。
普段ならば城を抜け出したロベルトへの説教が始まるところだが、今のカメリアにそんな気力は残されていなかった。
いつもと違うカメリアにロベルトはどこかつまらなさそうだったが、何かを思い付いたらしく紫色の瞳を輝かせながら意味ありげな笑みを浮かべた。
「そうだ、セロイスとは仲良く過ごせたか?」
「仲良くって……そもそも、いきなり婚約なんて、一体どういうことで……」
ロベルトに言い返していたカメリアは、そこでロベルト以外の人間がいることに気付いた。
(まさか……)
その姿を見たカメリアは言葉を失い、そして固まった。
そんなふたりを互いに見たロベルトは、何かに納得したようにひとりうなずいた。
「お前達ならうまくいくだろうと思っていたが、一晩でここまで意思疎通を果たせる中になるとは。俺の見立てはまちがっていなかったようだな」
そんなロベルトの言葉など、カメリアの耳には全く入ってはこなかった。
そこに立ち尽くしていたのはセロイスだった。
フードをかぶったの人物を追い、カメリアも駆け出した。
頭からローブを被っているせいで顔は確認出来ないが、体格からして恐らく男だ。
フードをかぶった人物はカメリアを撒こうと近くにあった路地へと入るが、ロベルトを探すために街中を駆け回っているカメリアにとって、これぐらいどうということはない。
影に続いたカメリアは風に揺れるローブへと手を伸ばすが、ローブをつかむ寸前のところで、ローブは手の中をすり抜けていった。
「くそ、どこに行った!?」
薄暗い路地から明るい大通りに出たことで白む視界をこらしながら、カメリアは追いかけていた影の姿を探すが、影はどこにも見当たらない。
(人混みに紛れたにしても、まだそう遠くには行っていないはずだ)
ようやく元の視界を取り戻し、フードをかぶった人物を探すカメリアだが、その視界が捉えたのは意外な人物だった。
大通りを挟んで向こう側に続く路地。
その壁に背中を預けているのはカメリアの兄・ルベールだった。
大通りを挟んでいるせいか。ルベールがカメリアに気付いている様子はないが、どこか周囲の目を避けているかのようにも見える。
(兄上が、どうしてあんなところに? 仕事中のはずでは……)
そんなことを考えていたカメリアは信じられない光景を目にすることになる。
ルベールが路地の奥からやって来た誰かをその腕に抱き締めたのだ。
(あんなことを言ってはいたが、兄上には恋人がいたのか)
カメリアのことを溺愛していた手前、なかなかカメリアには恋人がいることを言い出せなかったのかもしれない。
しかし身内のこうした光景はどうにも気恥ずかしくい。
父親から母親とのノロケ話を聞かされていた時の恥ずかしさの方がどう考えてもマシだ。
カメリアに見られているとは知らず、ルベールの恋人は背伸びをして、まるで口づけをねだるかのようにルベールへと顔を近づけた。
その拍子に被っていたローブが地面へ落ち、その姿が露になった。
「え……」
カメリアは言葉を失った。
(あれが、兄上の恋人……)
長身のルベールよりも少し低い背丈に、しなかやかな身体。
透けるような白い肌に、鼻筋の通った涼やかな容姿。
腕の中にいたのは、ルベールと同じ年頃の青年だった。
(男性だったのか……)
セロイスと並んでルベールの名前も女性達の話にはよく上がってはいるものの、ルベールの浮いた話や噂は今まで一度も聞いたことがない。
(しかし、まさか兄上に同性の恋人がいるとは)
カメリアは呆然と、その場に立ち尽くすことしか出来なかった。
どこか慣れた様子で青年はルベールの背中へ腕を回したかと思うと、茶色い髪からのぞく紫の瞳をカメリアの方へと向けた。
(……笑った?)
それはルベールの手をとり、その場から去っていくまでのほんの一瞬のことだった。
ただの偶然かもしれないが、カメリアには何故かそれが偶然とは思えなかった。
「こんなところで何をしているんだ?」
「ロベルト様……」
太陽の光を受けて輝く金色の髪を揺らしながら悠然とした様子でカメリアのそばへとやって来たのはロベルトだった。服も街に馴染むようにと軽装のものに着替えたロベルトは街の中に溶け込み、一国の王子には見えなかった。
普段ならば城を抜け出したロベルトへの説教が始まるところだが、今のカメリアにそんな気力は残されていなかった。
いつもと違うカメリアにロベルトはどこかつまらなさそうだったが、何かを思い付いたらしく紫色の瞳を輝かせながら意味ありげな笑みを浮かべた。
「そうだ、セロイスとは仲良く過ごせたか?」
「仲良くって……そもそも、いきなり婚約なんて、一体どういうことで……」
ロベルトに言い返していたカメリアは、そこでロベルト以外の人間がいることに気付いた。
(まさか……)
その姿を見たカメリアは言葉を失い、そして固まった。
そんなふたりを互いに見たロベルトは、何かに納得したようにひとりうなずいた。
「お前達ならうまくいくだろうと思っていたが、一晩でここまで意思疎通を果たせる中になるとは。俺の見立てはまちがっていなかったようだな」
そんなロベルトの言葉など、カメリアの耳には全く入ってはこなかった。
そこに立ち尽くしていたのはセロイスだった。
0
あなたにおすすめの小説
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
私が行方不明の皇女です~生死を彷徨って帰国したら信じていた初恋の従者は婚約していました~
marumi
恋愛
「あら アルヴェイン公爵がドゥーカス令嬢をエスコートされていますわ」
「ご婚約されたと噂を聞きましたが、まさか本当だとは!」
私は五年前までこの国の皇女エリシアだった。
暗殺事件に巻き込まれ、幼なじみで初恋の相手だった従者――アルヴェイン公子と共に命からがら隣国、エルダールへ亡命した。
彼の「必ず迎えに来る」その言葉を信じて、隣国の地で彼を待ち続けた……。
それなのに……。
やっとの思いで帰国した帝国の華やかなパーティー会場で、一際目立っているのは、彼と、社交界の華と言われる令嬢だった――。
※校正にAIを使用していますが、自身で考案したオリジナル小説です。
※イメージが伝わればと思い、表紙画像をAI生成してみました。
元婚約者からの嫌がらせでわたくしと結婚させられた彼が、ざまぁしたら優しくなりました。ですが新婚時代に受けた扱いを忘れてはおりませんよ?
3333(トリささみ)
恋愛
貴族令嬢だが自他ともに認める醜女のマルフィナは、あるとき王命により結婚することになった。
相手は王女エンジェに婚約破棄をされたことで有名な、若き公爵テオバルト。
あまりにも不釣り合いなその結婚は、エンジェによるテオバルトへの嫌がらせだった。
それを知ったマルフィナはテオバルトに同情し、少しでも彼が報われるよう努力する。
だがテオバルトはそんなマルフィナを、徹底的に冷たくあしらった。
その後あるキッカケで美しくなったマルフィナによりエンジェは自滅。
その日からテオバルトは手のひらを返したように優しくなる。
だがマルフィナが新婚時代に受けた仕打ちを、忘れることはなかった。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
何もしない公爵夫人ですが、なぜか屋敷がうまく回っています
鷹 綾
恋愛
辺境公爵カーネル・クリスの妻となったフィレ・バーナード。
けれど彼女は、屋敷を仕切ることも、改革を行うことも、声高に意見を述べることもしなかった。
指示を出さない。
判断を奪わない。
必要以上に関わらない。
「何もしない夫人」として、ただ静かにそこにいるだけ。
それなのに――
いつの間にか屋敷は落ち着き、
使用人たちは迷わなくなり、
人は出入りし、戻り、また進んでいくようになる。
誰かに依存しない。
誰かを支配しない。
それでも確かに“安心できる場所”は、彼女の周りに残っていた。
必要とされなくてもいい。
役に立たなくてもいい。
それでも、ここにいていい。
これは、
「何もしない」ことで壊れなかった関係と、
「奪わない」ことで続いていった日常を描く、
静かでやさしい結婚生活の物語。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
3回目の人生は、悪役令嬢を辞めて引きこもります~一歩も出ずに国を救ったら、なぜか「聖女」として崇められ最強の男たちが部屋を包囲してくる件~
放浪人
恋愛
公爵令嬢エリザベートは、1度目は悪役令嬢として断罪され処刑、2度目は改心して聖女となり国に尽くしたが過労死……という悲惨な最期を遂げた。 記憶を持ったまま3度目の人生が始まった瞬間、彼女は固く決意する。 「もう絶対に働きません! 今世は部屋から一歩も出ず、睡眠と趣味に命をかけます!」
最強の拒絶結界『絶対領域』で部屋に籠城し、婚約破棄イベントも夜会も全て無視して惰眠を貪ろうとするエリザベート。 しかし、彼女の「働きたくない」一心からの行動――適当な農業アドバイスや、安眠妨害への容赦ない迎撃――が、周囲には「国を憂う深慮遠謀」「慈愛に満ちた奇跡」として超好意的に解釈されてしまう!?
ヤンデレ化した元婚約者の王太子、物理で愛を語る脳筋騎士団長、効率厨の隣国王子、さらには古代の引きこもり少年までをも巻き込み、事態は国家規模の大騒動へ。 部屋ごと空を飛んで戦場を浄化し、パジャマ姿で古代兵器を操り、地下牢をスイートルームに変えながら、エリザベートは究極の安眠を手に入れることができるのか? 塩対応すればするほど愛され、逃げれば逃げるほど伝説になる、最強引きこもり令嬢の勘違いドタバタ溺愛ファンタジー、ここに完結!
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる