弟が兄離れしようとしないのですがどうすればいいですか?~本編~

荷居人(にいと)

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俺は立川優人たちかわゆうと。両親健在で、弟がひとりいる。家族仲は悪くない……寧ろ良好と言っていいだろう。

そんな立川家は至って普通で平凡な家族で、貧乏すぎて食事にも困るというわけでもなく金持ちで毎日豪遊しているわけでもない普通の家庭。今時両親共働きなのもよくあるだろうし。

とはいえ、母は基本残業ない限りは早く帰宅して買い出しと一緒に夕食を作ってくれてるし、朝遅くに出勤で夜も遅く帰宅する父が朝食や弁当を用意してくれている。弁当に関しては母が晩に用意してくれて冷蔵庫の中にいれたものを詰め込むだけの作業なので俺たちが自分でとは言うが父は何故か譲らないのでお願いしている。ちなみに親二人の休日は俺と弟が料理を作る当番だ。親とはいえいつも忙しいんだからゆっくりしてほしいし?

洗濯は弟が率先してやってくれる。これは本人が好きでやっているらしいので任せているがたまに下着が新品同然に綺麗になっているからどんな洗濯をしているのか気になったことがある………が、絶対覗かないでと言われた。

鶴の恩返しみたいだなと思いつつそんなわけで家族誰ひとり弟の洗濯する姿は覗かない。掃除に関しては部屋は各自で、風呂は当番制、リビングは休日か気が向いたときにといった感じだ。

ゴミ捨ては父が受け持っている。時間があれば俺たちも手伝うが。とまぁこんなどうでもいい話はともかく、家事もそれぞれ協力しながら仲良く暮らしてるってことをわかってもらえたらいい。

しかし!それはそれで悩みがあるわけで、そのきっかけは前々からあったものの俺は最近幼馴染みのひとりに言われたことにより悩みを加速させることとなった。

「お前の家族仲いいよなー」

最初はそんな気楽な言葉から始まる。

「まあな~」

「恥ずかしげもなく肯定とか」

「恥ずかしくないし?」

……とまぁここまでで気にする点はない。

「はいはい、でもお前弟とは異常に仲いいよな」

気にする点はまさにここ。この言葉を吐かれた瞬間に俺は固まったわけである。最近……いや、前から薄々感じ始めていたことがあっただけに。

「やっぱりおかしいか?」

「いや、まあ、俺は一人っ子だからわかんねぇけどお前の弟すごいお前好きじゃん?」

「だよな……」

「あ、それも肯定しちゃうのか」

そう、肯定せざる終えないほど弟が俺を好きすぎるのが目に見えていた。

決してそれが嫌なわけではない。弟は今でも可愛いし、小さい頃から可愛がってきただけにお願いされたら基本断れないのもやはり弟は自分にとって特別なものだと思っているから。

まさにブラコンと幼馴染みには言われてきたわけで俺も受け入れている。……が、それが世間的にどう思われるかと言えばあまりよくないと俺は考えているわけで。

つまりは!弟が俺と同じブラコンになっているのでは!と気が気じゃない。俺はいいが弟はだめだ。道を外したら可哀想だからな。

実際俺はブラコンが故に彼女となった人に何度振られたか。弟には言ってないが、ブラコンになって弟が将来幸せな家庭を築けないと思うと心が痛む。

だからこそ弟をブラコンにしたくはない。既に手遅れだろうといつかはと考えていた兄離れをさせる時が来たのだろうと幼馴染みの言葉に強くそう思った俺だが………。

これが中々決心つかなくてそれから何ヵ月もの時間が経ち弟がついに俺と同じ高校に入ってきた。自慢じゃないが弟は頭がいいから俺より上に行けたはずなのにこれだ。

正にブラコンが故に弟は将来を塞ぎ始めていると俺は絶望し、ついに決意した。

りゅう、そろそろ兄離れの時だ」

「……は?」

この日可愛い弟が始めて怖いと感じました、はい。
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