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「少し……考える」
「そう……」
情けなくもその日は逃げるように答えを出さずに終わった。龍の顔もそれこそそれ以上見ることを怖く感じ最低な選択をしてしまったように思える。
それが運命の分かれ目だったなんてこの時俺は思いもしなかった。
そうしてその日から龍を見れば決心が次こそ揺るぎそうで起こすことすらやめ、部屋には鍵を取り付け徹底的に龍を避け始めた。龍のファンからは毎日逃げに逃げ、時には眠れない日もありながらなんとか日々を過ごす毎日。
それが一ヶ月経った辺りに事件は起こった。
立川龍による自殺未遂事件。
俺は龍にできるだけ会わないよう帰宅を遅めていて、龍は家にひとりのときに自らの胸を包丁で突き刺して倒れていたのだそうだ。たまたま早引きした母により見つけられ、傷は見た目ほど深くなく急所も外れていたので助かったのだと。
それを母の電話で聞いた日俺は病院に走った。面会時間残り数分で龍の病室へ駆け込めば母は席を開けていて龍がひとり目を見開いて俺を見る。
「兄さんだぁ……」
そしてすぐ俺に会えたことが嬉しくて仕方ないとばかりの蕩けた表情をするその姿は自殺をしようとしたとは思えないほどに幸せそうだ。でもどこか目に濁りを感じるのは俺の勘違いだろうか。
「龍、生きていてよかった……っ」
でもそんなことより龍が死ななくてよかったと心からそう思う。涙がぽろぽろと溢れて龍に近寄り手を握れば龍は嬉しそうに笑うだけ。
「ふふ、久々に兄さんに触れられたなぁ」
それはどこか異常にも思えたが、生きているだけよかったとその気持ちが上回りその時は気にしなかった。そして面会時間終了も近づきそろそろ母も来るかと涙を開いた手で拭いた頃に開く扉。
「あら、優人来ていたのね」
「母さん……」
「ちょっと会社に連絡だけ入れてたの」
戻ってきた母は俺の涙の跡には触れず、どこか沈んで見えて会社に連絡したというのは明日からについてだろうと思わずにはいられない。自殺しようとした息子を放置なんてできるはずもないだろうから。
「そろそろ面会時間終わり……だよな。」
「そうね、龍、また明日来るわ」
「じゃあ龍行くから手を離してくれ」
ただでさえギリギリで駆け込んだのだから名残惜しいがと握った手を離そうとしたが怪我している人物とは思えないほど強い力で龍が俺の手を離さない。帰らなくてはならないのにと困った俺と母も仕方ないわねと少し笑って見せた時だった。
「兄さんまた離れるの?いやだ、僕兄さんから離れたくない!いやだいやだいやだいやだいやだ」
「龍!?落ち着け!また明日来るから!」
「龍!大丈夫よ、お兄ちゃんはちゃんと私が連れてくるからね?」
まるで子供が駄々こねるように怪我したことなどお構い無しに暴れだす龍。これでは傷口が広がるのではと心配したのは俺だけでなく母は慌てた様子でナースコールを押す。
結局その日は医師の計らいで俺は龍の病室で寝泊まりすることとなった。そうでもしないと龍がまた暴れだすと判断されて。
俺への異常な執着に、理解せずにはいられない。龍が自殺未遂したのは俺のせいだと。
『兄さん、もうこれ以上僕から兄さんを奪うなら僕は死んじゃうよ?』
あれは脅しでもなく本気だったのだと俺は自分を悔やまずにはいられなかった。
「そう……」
情けなくもその日は逃げるように答えを出さずに終わった。龍の顔もそれこそそれ以上見ることを怖く感じ最低な選択をしてしまったように思える。
それが運命の分かれ目だったなんてこの時俺は思いもしなかった。
そうしてその日から龍を見れば決心が次こそ揺るぎそうで起こすことすらやめ、部屋には鍵を取り付け徹底的に龍を避け始めた。龍のファンからは毎日逃げに逃げ、時には眠れない日もありながらなんとか日々を過ごす毎日。
それが一ヶ月経った辺りに事件は起こった。
立川龍による自殺未遂事件。
俺は龍にできるだけ会わないよう帰宅を遅めていて、龍は家にひとりのときに自らの胸を包丁で突き刺して倒れていたのだそうだ。たまたま早引きした母により見つけられ、傷は見た目ほど深くなく急所も外れていたので助かったのだと。
それを母の電話で聞いた日俺は病院に走った。面会時間残り数分で龍の病室へ駆け込めば母は席を開けていて龍がひとり目を見開いて俺を見る。
「兄さんだぁ……」
そしてすぐ俺に会えたことが嬉しくて仕方ないとばかりの蕩けた表情をするその姿は自殺をしようとしたとは思えないほどに幸せそうだ。でもどこか目に濁りを感じるのは俺の勘違いだろうか。
「龍、生きていてよかった……っ」
でもそんなことより龍が死ななくてよかったと心からそう思う。涙がぽろぽろと溢れて龍に近寄り手を握れば龍は嬉しそうに笑うだけ。
「ふふ、久々に兄さんに触れられたなぁ」
それはどこか異常にも思えたが、生きているだけよかったとその気持ちが上回りその時は気にしなかった。そして面会時間終了も近づきそろそろ母も来るかと涙を開いた手で拭いた頃に開く扉。
「あら、優人来ていたのね」
「母さん……」
「ちょっと会社に連絡だけ入れてたの」
戻ってきた母は俺の涙の跡には触れず、どこか沈んで見えて会社に連絡したというのは明日からについてだろうと思わずにはいられない。自殺しようとした息子を放置なんてできるはずもないだろうから。
「そろそろ面会時間終わり……だよな。」
「そうね、龍、また明日来るわ」
「じゃあ龍行くから手を離してくれ」
ただでさえギリギリで駆け込んだのだから名残惜しいがと握った手を離そうとしたが怪我している人物とは思えないほど強い力で龍が俺の手を離さない。帰らなくてはならないのにと困った俺と母も仕方ないわねと少し笑って見せた時だった。
「兄さんまた離れるの?いやだ、僕兄さんから離れたくない!いやだいやだいやだいやだいやだ」
「龍!?落ち着け!また明日来るから!」
「龍!大丈夫よ、お兄ちゃんはちゃんと私が連れてくるからね?」
まるで子供が駄々こねるように怪我したことなどお構い無しに暴れだす龍。これでは傷口が広がるのではと心配したのは俺だけでなく母は慌てた様子でナースコールを押す。
結局その日は医師の計らいで俺は龍の病室で寝泊まりすることとなった。そうでもしないと龍がまた暴れだすと判断されて。
俺への異常な執着に、理解せずにはいられない。龍が自殺未遂したのは俺のせいだと。
『兄さん、もうこれ以上僕から兄さんを奪うなら僕は死んじゃうよ?』
あれは脅しでもなく本気だったのだと俺は自分を悔やまずにはいられなかった。
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