一日の隣人恋愛~たかが四日間、気がつけば婚約してるし、公認されてる~

荷居人(にいと)

文字の大きさ
3 / 3

俺「起きたら住むところなくなってた」友人A「もう逃げられないな、お前」

しおりを挟む
「家がない・・・?」

「だから言ったのに」

取り壊されたアパートを呆然として見ている俺を、にこにこと笑ってこちらを見るのは、今日引っ越して来たばかりのイケメンの隣人こと騎士さん。

目の前では今まさに俺が住む場所がなくなっていた。

まあ、急にこんな場面、わけがわからないだろう。俺もわからない。だが、振り返ればわかるかもしれない。

まずは意識が途絶えて起きたところから。俺が起きたのは夕方、もう学校では放課後となる時間帯。

保健室?と思うにはベットがふかふかすぎて、離れられそうにない。しかし、まだ眠りたいと軽く目を覚ました瞬間、超絶のイケメンが覗き込んできたので目を閉じるのは惜しくなり、かっと目が見開いた。眠りたい気持ちはどこかへ消えたわけだ。

「姫、目が覚めたんだね」

「ここは保健室・・・じゃない?」

意識が途絶えたことは覚えてる。学校だったし、保健室に運ばれるのが普通だと思うのは当然だろう。だって、親に電話しても迎えとか無理な確率が高いから。

なのに、ここはどこだ。どう見てもキングサイズの天蓋ある高級ベット、しかも少し視線をずらせばシャンデリアが見えた。また視線を戻せばこの世を超越したイケメン姿。近すぎて鼻血出そう。

「うん、わかった。騎士先生の家すごいですね」

「よくわかったね?」

わかるも何も騎士さんに似合いすぎてそれ以外思い浮かばなかった。

ああ、このふかふかベットは名残惜しいけど、居たたまれない。というか俺なんで騎士さんの家に?それに、この広さ、雰囲気にしても絶対アパートじゃない。

「家帰らなきゃ、今何時ですか?」

「もう17時前かな。帰る家は取り壊し工事中だよ。しばらくは新しく建て直すのに住むとこないだろうし、泊まるといいよ。」

「え?俺、実は結構意識不明だったりしたんですか?」

取り壊しとか建て直しとか聞いてない。しかも騎士さんなんて今日隣人になったばっかだよな?もう実は時間経過かなりしてて連絡来てたパターンじゃ?いや、それなら俺今ごろ病院?いやいや、こんなところ住んでる騎士さんなら医者くらい呼び出せそうな気がしてならないし。

どちらにしろ、ここにいる時点で騎士さんに迷惑しかかけてない。

「いや?4時間くらいしか経ってないかな」

「アパートに送ってもらっていいですか?」

「寝る場所どころか入る部屋もないよ?」

「見ないことには信じられなくて・・・」

というか、なんで騎士さんそんなに普通なの?今日隣人になったと挨拶されたばかりなのに!

まあそんなこんなで騎士さんに連れられていざ我が家へ!まあ、マジでアパートは取り壊されていたわけだが。

「で、泊まる?あそこ僕の本家なんだ」

本家とは。あれだけ凄い屋敷持ってて他に家も持っているとでも?く・・・っ騎士さんがイケメンすぎてありえる!

「電話出るかわからないけど、親に相談してみます。親の親戚とか近くにあるかもしれないし・・・」

「大丈夫、許可は得てるよ」

「えっ?」

息子の俺ですら中々連絡とれない親に?というか連絡先はどうやって知って・・・あ、先生だから簡単に知れるか。

「遠慮はいらないよ?」

「い、いや、でも騎士さん、先生だから・・・生徒はまずいんじゃ?」

「先生の前に隣人でもあるんだし、親しい隣人に頼るのは悪いこと?」

え、親しい隣人も何も・・・

「今日、隣人になった挨拶したばっかり・・・」

「前世からの仲もあるよね?」

「え、いや、それは」

確かに椎名さんの言葉を代弁したし、魂は一緒かもしれないけど。そうじゃない。

「いや、かな?アパートが建て直されるまでの期間とはいえ、僕と同じ生活は・・・」

イケメンと同じ生活?

「食事も一緒?」

「え、ああ、もちろん。昼食同様僕が作るよ」

あのうますぎる料理付き・・・。

「登下校も?」

「それはもちろん」

「お、お風呂も?」

「僕の家のお風呂は大きいからね。二人でも余裕だよ」

イケメンと夢のお風呂!

「ね、寝るのは!?」

「寧ろいいの?僕は大歓迎だけど」

なんというイケメンパラダイス!俺は明日には死んでいるかもしれない。隣人万歳!イケメン万歳!

「泊まります!」

イケメンと一緒の生活という魅惑に気づけば、断る勇気こそ俺にはできなかった。

翌日、友人Aにその話をしたら、ありえないと言われた。うん、冷静になったら確かにありえない。

だってあんなことがあったとはいえ、騎士さんとはほぼ初対面。騎士さんとの出会いは濃い記憶ばかりだ。ばかりも何も二日間だけど。

ちなみにその日、朝から騎士さんのイケメンボイスで起こされたのを原因に、鼻血と共に起きたのは俺の人生の中で初体験。

「ううっ俺の初体験、騎士さんに奪われた!」

「えっ?ごめん・・・っ覚えてないなんて僕は最低だね。でも、責任はとるよ。まずは未成年だし、婚約しよう。結婚は日本じゃ無理だから海外だね。婚約指輪は今日中には用意するから」

「う、うん」

朝から鼻血の居たたまれなさで言った冗談をノリのいい先生は返してくれたが、あまりの真剣さながらの顔に、鼻血は止まりそうにない朝だった。

まさか本気だなんてと気づいたのは、帰る途中に寄った高級ジュエリー店に連れてかれ、好きな色を答えては、一生かかっても稼げそうにない値段の指輪をプレゼントされた時。

「学校の校則は気にしなくていいよ」

さらに翌日『アクセサリーは厳禁。婚約指輪はアクセサリーに含まれない』なんて校則に追加がなされたことで、あっという間に俺と騎士さんこと騎士先生は噂の的になった。

今日も俺は友人Aと会話する。混乱しているんだ、俺は。話して落ち着きたい。

「両親に朝、公認電話来たんだ。俺、話してないのに」

寧ろ、両親に話すなんて考えてもいなかった。色々急すぎて。

「そうか」

「騎士先生、親が働く会社買い取ったみたいなんだ。おかげでいい仕事ができるってはりきってた」

関係ないけど学校ではちゃんと先生と呼ぶ。

「・・・そうか」

「騎士先生と今日将来どこでどう結婚式をあげるか海外のパンフレット見る約束なんだ」

学校卒業しても俺まだ学生なのに。

「意外とノリ気なのか?」

「あまりに幸せそうなイケメン顔見たら、男同士とか些細なことだなって。しかも、生涯あのイケメン顔を拝めるとか断る理由がねぇ」

「顔目当てとか最低だな」

「顔は大事だろ!それにまだ出会って四日目だ!無茶言うなよ!」

「それは・・・そうだな」

こんな会話はともかく、その後、アパートが建て直されても契約は解約されており、自然な形で騎士さんの家に正式に迎えられ、騎士さんのイケメンさに毎日悶えながらも受験に合格でき、友人Aと同じ高校へ行けば、担任の先生が三年間騎士先生で、高校でも校則に追加がなされ、騎士先生と俺の婚約は知れ渡ったのは言うまでもない。

気がつけば婚約、気がつけば周囲に知られ公認され、気がつけば受け入れている自分がいるのだから人生何があるかわからない。

「姫?」

とりあえず、今日も婚約者は誰よりもイケメンです。

しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

ゆきおんな
2020.06.25 ゆきおんな

凄いサクサク進んで面白かったです!(笑)イケメンパワーが凄いのか、主人公がおかしいのか…いや、どっちもおかしいですね🙄

2020.06.25 荷居人(にいと)

私もどっちもおかしいと思います(^ω^)

解除
田沢みん
2020.06.23 田沢みん

なんかすっごい謎だらけだけど、すっごいサクサク進んで面白い!
騎士先生が星姫に出会えるまでの番外編とか読みたいくらい!

2020.06.23 荷居人(にいと)

謎だらけに終わっちゃいました(* ̄∇ ̄*)

番外編は考えてないですね(^o^;)そもそもろくに設定も思い付かず書いた時期のものですから……

解除

あなたにおすすめの小説

いい加減観念して結婚してください

彩根梨愛
BL
平凡なオメガが成り行きで決まった婚約解消予定のアルファに結婚を迫られる話 元々ショートショートでしたが、続編を書きましたので短編になりました。 2025/05/05時点でBL18位ありがとうございます。 作者自身驚いていますが、お楽しみ頂き光栄です。

当て馬系ヤンデレキャラになったら、思ったよりもツラかった件。

マツヲ。
BL
ふと気がつけば自分が知るBLゲームのなかの、当て馬系ヤンデレキャラになっていた。 いつでもポーカーフェイスのそのキャラクターを俺は嫌っていたはずなのに、その無表情の下にはこんなにも苦しい思いが隠されていたなんて……。 こういうはじまりの、ゲームのその後の世界で、手探り状態のまま徐々に受けとしての才能を開花させていく主人公のお話が読みたいな、という気持ちで書いたものです。 続編、ゆっくりとですが連載開始します。 「当て馬系ヤンデレキャラからの脱却を図ったら、スピンオフに突入していた件。」(https://www.alphapolis.co.jp/novel/239008972/578503599)

婚約破棄をしようとしたら、パパになりました

ミクリ21
BL
婚約破棄をしようとしたら、パパになった話です。

転生場所は嫌われ所

あぎ
BL
会社員の千鶴(ちずる)は、今日も今日とて残業で、疲れていた そんな時、男子高校生が、きらりと光る穴へ吸い込まれたのを見た。 ※ ※ 最近かなり頻繁に起こる、これを皆『ホワイトルーム現象』と読んでいた。 とある解析者が、『ホワイトルーム現象が起きた時、その場にいると私たちの住む現実世界から望む仮想世界へ行くことが出来ます。』と、発表したが、それ以降、ホワイトルーム現象は起きなくなった ※ ※ そんな中、千鶴が見たのは何年も前に消息したはずのホワイトルーム現象。可愛らしい男の子が吸い込まれていて。 彼を助けたら、解析者の言う通りの異世界で。 16:00更新

あなたが好きでした

オゾン層
BL
 私はあなたが好きでした。  ずっとずっと前から、あなたのことをお慕いしておりました。  これからもずっと、このままだと、その時の私は信じて止まなかったのです。

成長を見守っていた王子様が結婚するので大人になったなとしみじみしていたら結婚相手が自分だった

みたこ
BL
年の離れた友人として接していた王子様となぜか結婚することになったおじさんの話です。

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

もう殺されるのはゴメンなので婚約破棄します!

めがねあざらし
BL
婚約者に見向きもされないまま誘拐され、殺されたΩ・イライアス。 目覚めた彼は、侯爵家と婚約する“あの”直前に戻っていた。 二度と同じ運命はたどりたくない。 家族のために婚約は受け入れるが、なんとか相手に嫌われて破談を狙うことに決める。 だが目の前に現れた侯爵・アルバートは、前世とはまるで別人のように優しく、異様に距離が近くて――。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。