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俺「起きたら住むところなくなってた」友人A「もう逃げられないな、お前」
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「家がない・・・?」
「だから言ったのに」
取り壊されたアパートを呆然として見ている俺を、にこにこと笑ってこちらを見るのは、今日引っ越して来たばかりのイケメンの隣人こと騎士さん。
目の前では今まさに俺が住む場所がなくなっていた。
まあ、急にこんな場面、わけがわからないだろう。俺もわからない。だが、振り返ればわかるかもしれない。
まずは意識が途絶えて起きたところから。俺が起きたのは夕方、もう学校では放課後となる時間帯。
保健室?と思うにはベットがふかふかすぎて、離れられそうにない。しかし、まだ眠りたいと軽く目を覚ました瞬間、超絶のイケメンが覗き込んできたので目を閉じるのは惜しくなり、かっと目が見開いた。眠りたい気持ちはどこかへ消えたわけだ。
「姫、目が覚めたんだね」
「ここは保健室・・・じゃない?」
意識が途絶えたことは覚えてる。学校だったし、保健室に運ばれるのが普通だと思うのは当然だろう。だって、親に電話しても迎えとか無理な確率が高いから。
なのに、ここはどこだ。どう見てもキングサイズの天蓋ある高級ベット、しかも少し視線をずらせばシャンデリアが見えた。また視線を戻せばこの世を超越したイケメン姿。近すぎて鼻血出そう。
「うん、わかった。騎士先生の家すごいですね」
「よくわかったね?」
わかるも何も騎士さんに似合いすぎてそれ以外思い浮かばなかった。
ああ、このふかふかベットは名残惜しいけど、居たたまれない。というか俺なんで騎士さんの家に?それに、この広さ、雰囲気にしても絶対アパートじゃない。
「家帰らなきゃ、今何時ですか?」
「もう17時前かな。帰る家は取り壊し工事中だよ。しばらくは新しく建て直すのに住むとこないだろうし、泊まるといいよ。」
「え?俺、実は結構意識不明だったりしたんですか?」
取り壊しとか建て直しとか聞いてない。しかも騎士さんなんて今日隣人になったばっかだよな?もう実は時間経過かなりしてて連絡来てたパターンじゃ?いや、それなら俺今ごろ病院?いやいや、こんなところ住んでる騎士さんなら医者くらい呼び出せそうな気がしてならないし。
どちらにしろ、ここにいる時点で騎士さんに迷惑しかかけてない。
「いや?4時間くらいしか経ってないかな」
「アパートに送ってもらっていいですか?」
「寝る場所どころか入る部屋もないよ?」
「見ないことには信じられなくて・・・」
というか、なんで騎士さんそんなに普通なの?今日隣人になったと挨拶されたばかりなのに!
まあそんなこんなで騎士さんに連れられていざ我が家へ!まあ、マジでアパートは取り壊されていたわけだが。
「で、泊まる?あそこ僕の本家なんだ」
本家とは。あれだけ凄い屋敷持ってて他に家も持っているとでも?く・・・っ騎士さんがイケメンすぎてありえる!
「電話出るかわからないけど、親に相談してみます。親の親戚とか近くにあるかもしれないし・・・」
「大丈夫、許可は得てるよ」
「えっ?」
息子の俺ですら中々連絡とれない親に?というか連絡先はどうやって知って・・・あ、先生だから簡単に知れるか。
「遠慮はいらないよ?」
「い、いや、でも騎士さん、先生だから・・・生徒はまずいんじゃ?」
「先生の前に隣人でもあるんだし、親しい隣人に頼るのは悪いこと?」
え、親しい隣人も何も・・・
「今日、隣人になった挨拶したばっかり・・・」
「前世からの仲もあるよね?」
「え、いや、それは」
確かに椎名さんの言葉を代弁したし、魂は一緒かもしれないけど。そうじゃない。
「いや、かな?アパートが建て直されるまでの期間とはいえ、僕と同じ生活は・・・」
イケメンと同じ生活?
「食事も一緒?」
「え、ああ、もちろん。昼食同様僕が作るよ」
あのうますぎる料理付き・・・。
「登下校も?」
「それはもちろん」
「お、お風呂も?」
「僕の家のお風呂は大きいからね。二人でも余裕だよ」
イケメンと夢のお風呂!
「ね、寝るのは!?」
「寧ろいいの?僕は大歓迎だけど」
なんというイケメンパラダイス!俺は明日には死んでいるかもしれない。隣人万歳!イケメン万歳!
「泊まります!」
イケメンと一緒の生活という魅惑に気づけば、断る勇気こそ俺にはできなかった。
翌日、友人Aにその話をしたら、ありえないと言われた。うん、冷静になったら確かにありえない。
だってあんなことがあったとはいえ、騎士さんとはほぼ初対面。騎士さんとの出会いは濃い記憶ばかりだ。ばかりも何も二日間だけど。
ちなみにその日、朝から騎士さんのイケメンボイスで起こされたのを原因に、鼻血と共に起きたのは俺の人生の中で初体験。
「ううっ俺の初体験、騎士さんに奪われた!」
「えっ?ごめん・・・っ覚えてないなんて僕は最低だね。でも、責任はとるよ。まずは未成年だし、婚約しよう。結婚は日本じゃ無理だから海外だね。婚約指輪は今日中には用意するから」
「う、うん」
朝から鼻血の居たたまれなさで言った冗談をノリのいい先生は返してくれたが、あまりの真剣さながらの顔に、鼻血は止まりそうにない朝だった。
まさか本気だなんてと気づいたのは、帰る途中に寄った高級ジュエリー店に連れてかれ、好きな色を答えては、一生かかっても稼げそうにない値段の指輪をプレゼントされた時。
「学校の校則は気にしなくていいよ」
さらに翌日『アクセサリーは厳禁。婚約指輪はアクセサリーに含まれない』なんて校則に追加がなされたことで、あっという間に俺と騎士さんこと騎士先生は噂の的になった。
今日も俺は友人Aと会話する。混乱しているんだ、俺は。話して落ち着きたい。
「両親に朝、公認電話来たんだ。俺、話してないのに」
寧ろ、両親に話すなんて考えてもいなかった。色々急すぎて。
「そうか」
「騎士先生、親が働く会社買い取ったみたいなんだ。おかげでいい仕事ができるってはりきってた」
関係ないけど学校ではちゃんと先生と呼ぶ。
「・・・そうか」
「騎士先生と今日将来どこでどう結婚式をあげるか海外のパンフレット見る約束なんだ」
学校卒業しても俺まだ学生なのに。
「意外とノリ気なのか?」
「あまりに幸せそうなイケメン顔見たら、男同士とか些細なことだなって。しかも、生涯あのイケメン顔を拝めるとか断る理由がねぇ」
「顔目当てとか最低だな」
「顔は大事だろ!それにまだ出会って四日目だ!無茶言うなよ!」
「それは・・・そうだな」
こんな会話はともかく、その後、アパートが建て直されても契約は解約されており、自然な形で騎士さんの家に正式に迎えられ、騎士さんのイケメンさに毎日悶えながらも受験に合格でき、友人Aと同じ高校へ行けば、担任の先生が三年間騎士先生で、高校でも校則に追加がなされ、騎士先生と俺の婚約は知れ渡ったのは言うまでもない。
気がつけば婚約、気がつけば周囲に知られ公認され、気がつけば受け入れている自分がいるのだから人生何があるかわからない。
「姫?」
とりあえず、今日も婚約者は誰よりもイケメンです。
「だから言ったのに」
取り壊されたアパートを呆然として見ている俺を、にこにこと笑ってこちらを見るのは、今日引っ越して来たばかりのイケメンの隣人こと騎士さん。
目の前では今まさに俺が住む場所がなくなっていた。
まあ、急にこんな場面、わけがわからないだろう。俺もわからない。だが、振り返ればわかるかもしれない。
まずは意識が途絶えて起きたところから。俺が起きたのは夕方、もう学校では放課後となる時間帯。
保健室?と思うにはベットがふかふかすぎて、離れられそうにない。しかし、まだ眠りたいと軽く目を覚ました瞬間、超絶のイケメンが覗き込んできたので目を閉じるのは惜しくなり、かっと目が見開いた。眠りたい気持ちはどこかへ消えたわけだ。
「姫、目が覚めたんだね」
「ここは保健室・・・じゃない?」
意識が途絶えたことは覚えてる。学校だったし、保健室に運ばれるのが普通だと思うのは当然だろう。だって、親に電話しても迎えとか無理な確率が高いから。
なのに、ここはどこだ。どう見てもキングサイズの天蓋ある高級ベット、しかも少し視線をずらせばシャンデリアが見えた。また視線を戻せばこの世を超越したイケメン姿。近すぎて鼻血出そう。
「うん、わかった。騎士先生の家すごいですね」
「よくわかったね?」
わかるも何も騎士さんに似合いすぎてそれ以外思い浮かばなかった。
ああ、このふかふかベットは名残惜しいけど、居たたまれない。というか俺なんで騎士さんの家に?それに、この広さ、雰囲気にしても絶対アパートじゃない。
「家帰らなきゃ、今何時ですか?」
「もう17時前かな。帰る家は取り壊し工事中だよ。しばらくは新しく建て直すのに住むとこないだろうし、泊まるといいよ。」
「え?俺、実は結構意識不明だったりしたんですか?」
取り壊しとか建て直しとか聞いてない。しかも騎士さんなんて今日隣人になったばっかだよな?もう実は時間経過かなりしてて連絡来てたパターンじゃ?いや、それなら俺今ごろ病院?いやいや、こんなところ住んでる騎士さんなら医者くらい呼び出せそうな気がしてならないし。
どちらにしろ、ここにいる時点で騎士さんに迷惑しかかけてない。
「いや?4時間くらいしか経ってないかな」
「アパートに送ってもらっていいですか?」
「寝る場所どころか入る部屋もないよ?」
「見ないことには信じられなくて・・・」
というか、なんで騎士さんそんなに普通なの?今日隣人になったと挨拶されたばかりなのに!
まあそんなこんなで騎士さんに連れられていざ我が家へ!まあ、マジでアパートは取り壊されていたわけだが。
「で、泊まる?あそこ僕の本家なんだ」
本家とは。あれだけ凄い屋敷持ってて他に家も持っているとでも?く・・・っ騎士さんがイケメンすぎてありえる!
「電話出るかわからないけど、親に相談してみます。親の親戚とか近くにあるかもしれないし・・・」
「大丈夫、許可は得てるよ」
「えっ?」
息子の俺ですら中々連絡とれない親に?というか連絡先はどうやって知って・・・あ、先生だから簡単に知れるか。
「遠慮はいらないよ?」
「い、いや、でも騎士さん、先生だから・・・生徒はまずいんじゃ?」
「先生の前に隣人でもあるんだし、親しい隣人に頼るのは悪いこと?」
え、親しい隣人も何も・・・
「今日、隣人になった挨拶したばっかり・・・」
「前世からの仲もあるよね?」
「え、いや、それは」
確かに椎名さんの言葉を代弁したし、魂は一緒かもしれないけど。そうじゃない。
「いや、かな?アパートが建て直されるまでの期間とはいえ、僕と同じ生活は・・・」
イケメンと同じ生活?
「食事も一緒?」
「え、ああ、もちろん。昼食同様僕が作るよ」
あのうますぎる料理付き・・・。
「登下校も?」
「それはもちろん」
「お、お風呂も?」
「僕の家のお風呂は大きいからね。二人でも余裕だよ」
イケメンと夢のお風呂!
「ね、寝るのは!?」
「寧ろいいの?僕は大歓迎だけど」
なんというイケメンパラダイス!俺は明日には死んでいるかもしれない。隣人万歳!イケメン万歳!
「泊まります!」
イケメンと一緒の生活という魅惑に気づけば、断る勇気こそ俺にはできなかった。
翌日、友人Aにその話をしたら、ありえないと言われた。うん、冷静になったら確かにありえない。
だってあんなことがあったとはいえ、騎士さんとはほぼ初対面。騎士さんとの出会いは濃い記憶ばかりだ。ばかりも何も二日間だけど。
ちなみにその日、朝から騎士さんのイケメンボイスで起こされたのを原因に、鼻血と共に起きたのは俺の人生の中で初体験。
「ううっ俺の初体験、騎士さんに奪われた!」
「えっ?ごめん・・・っ覚えてないなんて僕は最低だね。でも、責任はとるよ。まずは未成年だし、婚約しよう。結婚は日本じゃ無理だから海外だね。婚約指輪は今日中には用意するから」
「う、うん」
朝から鼻血の居たたまれなさで言った冗談をノリのいい先生は返してくれたが、あまりの真剣さながらの顔に、鼻血は止まりそうにない朝だった。
まさか本気だなんてと気づいたのは、帰る途中に寄った高級ジュエリー店に連れてかれ、好きな色を答えては、一生かかっても稼げそうにない値段の指輪をプレゼントされた時。
「学校の校則は気にしなくていいよ」
さらに翌日『アクセサリーは厳禁。婚約指輪はアクセサリーに含まれない』なんて校則に追加がなされたことで、あっという間に俺と騎士さんこと騎士先生は噂の的になった。
今日も俺は友人Aと会話する。混乱しているんだ、俺は。話して落ち着きたい。
「両親に朝、公認電話来たんだ。俺、話してないのに」
寧ろ、両親に話すなんて考えてもいなかった。色々急すぎて。
「そうか」
「騎士先生、親が働く会社買い取ったみたいなんだ。おかげでいい仕事ができるってはりきってた」
関係ないけど学校ではちゃんと先生と呼ぶ。
「・・・そうか」
「騎士先生と今日将来どこでどう結婚式をあげるか海外のパンフレット見る約束なんだ」
学校卒業しても俺まだ学生なのに。
「意外とノリ気なのか?」
「あまりに幸せそうなイケメン顔見たら、男同士とか些細なことだなって。しかも、生涯あのイケメン顔を拝めるとか断る理由がねぇ」
「顔目当てとか最低だな」
「顔は大事だろ!それにまだ出会って四日目だ!無茶言うなよ!」
「それは・・・そうだな」
こんな会話はともかく、その後、アパートが建て直されても契約は解約されており、自然な形で騎士さんの家に正式に迎えられ、騎士さんのイケメンさに毎日悶えながらも受験に合格でき、友人Aと同じ高校へ行けば、担任の先生が三年間騎士先生で、高校でも校則に追加がなされ、騎士先生と俺の婚約は知れ渡ったのは言うまでもない。
気がつけば婚約、気がつけば周囲に知られ公認され、気がつけば受け入れている自分がいるのだから人生何があるかわからない。
「姫?」
とりあえず、今日も婚約者は誰よりもイケメンです。
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みんなの感想(2件)
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