一日の隣人恋愛~たかが四日間、気がつけば婚約してるし、公認されてる~

荷居人(にいと)

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俺「俺なんか覚醒した」友人B「病院探しとくね」

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「姫、一緒にご飯食べようか」

「あ、俺こいつらと・・・」

「実は俺たち付き合ってるから二人で食べてぇなー!」

「そ、そうなの!名前も覚えてないけどそんな恋愛も素敵だなって」

「マジか。知らなかった。ってか名前知らないで付き合ってんのか」

まあ俺たち友人としても名前知らずに話せてるし一緒か。

「あほか!今告白したからな!」

「え、今?」

「バカ!付き合ってることを今告白したの!」

「なるほど」

「名前はまあ同じ名前も飽きるから?あえて知らないって言うか?お前今日の名前アホダな」

「あんたはバカタね!」

なるほど、ケンカップルか。

「じゃあ、邪魔しないように行こうか?姫」

「は、はい」

「タメでいいのに」

「あ、えっと、先生だし・・・」

「あー可愛すぎて閉じ込めたくなる」

「え?」

「なんでもないよ」

なんか友人たちが青ざめてる気がするのは気のせいだろうか。ともかく、先生に連れられ、お弁当を食べることに。まあ俺はコンビニ弁当だけど。さすがに両親共にお弁当までは手が回らないようだ。まあ夏過ぎたら給食始まるみたいだし、コンビニ弁当よりよくなるかな。

「姫、それは・・・」

 「え、昼食だけど」

「毎日これを?」

「うーん、昼食はそうかな?父さんも母さんもほとんど家にいませんし。あ、でも朝食と夕飯は毎日用意されてるんですよ」

「昼食だけとはいえ、姫の体に悪い!お弁当交換しよう!元々姫に分けるつもりで多く作ってきたけど、コンビニ弁当を食べさせるくらいなら!」

「いや、悪いです・・・」

「僕のためにもお願いします。大丈夫。姫の好物ばかりしか入ってないから」

「なら・・・」

交換して気づく。そういや、好物なんて教えたっけ?と。もしかして、交換させるためについた嘘かもしれない。そうして開けたいくつか小分けされた弁当箱は確かに俺の好物ばかり。

唐揚げ、ウインナーから野菜は俺の好きな肉じゃがに、麻婆茄子。まさかと思いおにぎりを食べれば中身はしゃけ。まさに完璧。

「しかもうめぇ」

「それはよかった。明日も作ってくるから一緒に食べよう」

「え、いいの!?」

「もちろん」

「マジかー・・・」

あまりの旨さに毎日食べられるとなれば嬉しい。思わず敬語がとれたなと気づくが、タメでいいと言ってきたくらいだし、いいかなと思うことにした。

イケメンで料理うまくて、先生になれるほど頭もいいとかやばすぎる。二次元から出てきた人なんじゃないだろうか。

「男でもやはり姫は可愛い」

「あ、あの、昨日から疑問なんですけど、俺生まれた時から男です」

なんか可愛い可愛い言われて、姫とか呼ばれてると自分が女になった気分にさせられる。これがまさにイケメンパワー?

「ああ、知ってるよ。すまない。姫には記憶がないんだったね。」

「え?」

何のことだ。俺は記憶喪失になった覚えもなければ、なるような怪我もした覚えがない。寧ろなっていたとして、女から男に変わるはずもない。

「言い方が悪かったね。僕たちは前世恋人同士だったんだよ」

「ぜ、前世?」

騎士さんと恋人同士!?なんて羨ましい・・・いや、俺ノーマル!ってか前世って、え?

「混乱するよね。無理もない。俺が勝手に未練に思ったまま転生した結果なのだから。ずっと転生してから前世の記憶と一緒に見れるようになった人それぞれの魂を見て、椎名の魂を探していた。それが姫なんだ。ちなみに椎名だった時の好物が今日の弁当」

なるほど、魂が一緒だと好物まで一緒なのか。前世っていうのは今一つ信じられるものかわからないけど、やっぱり好物を言った覚えはないし、本当な気がする。ピンポイントに俺が好きな食べ物だったし。

ってかそんなことより聞くこと色々あるだろ!俺!

「え、あの、騎士さんというか、先生は俺と恋人になりたいの?」

何聞いてんだ、俺・・・。

「それもいいね。だけど、今は姫の隣にいれるだけで幸せだよ。僕は姫が相手なら男でも気にしないけど、姫は男同士なんて受け入れ辛いだろうから」

「うっでも気持ち悪いとかはない、ですよ?」

もしそれが騎士さんのかっこよさ故なら俺は最低かもしれない。

「優しいね、姫は。気を遣わなくても大丈夫だよ。逃がしはしないから」

別に逃げる気はないけど・・・騎士さん目の保養になるし。

「あの、ちなみに俺が椎名、さん?の魂だから構うんですか?」

「どうだろう、わからないな。椎名の魂への未練は守れなかったことだから」

「未練って」

「僕が勘違いして、椎名を信じず、嘘までつかせて、その嘘にも気付かず別れて、助かる命を捨てさせ、ひとりで死なせてしまったこと」

「勘違い?嘘?」

「椎名が浮気したと思って怒鳴り、あげくには思ってもないことで椎名を傷つける言葉を選んで言った。椎名は、ならば僕を解放しようと浮気を認め、別れを告げた。僕は怒りのまま勝手にしろと言い、荒れた。けど、一ヶ月ほど経ってから椎名の浮気相手だと思っていた人物がわざわざ向こうから会いに来た。椎名が病で死んだと伝えにね」

「・・・・」

なんだろう、俺がやはり騎士さんの言う通り、椎名の魂を持つからだろうか?物凄く胸が苦しい。

「病気なんて聞いていなかったから俺がいながらお前と浮気なんてするから天罰だろと言ってやったら、そいつは何のことだと言った。その浮気相手だと思っていた人は椎名の兄で、椎名の主治医でもあった。病気は前からで手術さえすれば後遺症を残しつつ、生きることはできた。けど、1ヶ月前、俺と別れた日に行方不明になり、手術日にも病院へ来ず見つけた時には病の悪化で死んでいたらしい。椎名の兄は別れた事情を知らないのか、俺に椎名の遺書を手渡してきたんだ。恋人なら心配しただろ、伝えるのが遅くなってすまないって。俺のせいかもしれないのに」

「遺書にはなんて・・・」

「遺書には嘘をついたこと、病気を黙っていたこと、浮気に間違われた時のことについて書かれていた。病気の症状で急に立ちくらみしたのを兄が支えていただけで、そのままホテルに入ったのは、外に居続けることで病気が悪化しかねないと医者である兄が判断したから。別れたのは僕のファンみたいなのがいて、そいつらに言われてきたことと、僕が椎名を責めた言葉と合致し、自分は迷惑な存在で、病気のせいで余計に面倒をかけると考えて別れを告げたと。最後には優しい兄や家族がいても椎名にとっては俺だけで。俺がいないと生きる意味もない、ちゃんと死んで消えるから怒らせたことを許してほしい。生きててごめんなさい・・・そんなことを書かせてしまっていた。」

騎士さんの流す涙を見て俺の目からも溢れ出る温かいそれ。遺書なんてなければ知ることはなかった前世の騎士さん。でも椎名さんからすれば、やっぱり好きな人に忘れられたくない想いから忘れたくても忘れられないようにしたのかもしれない。

自分の死を持ってしてでも。

「椎名さんは後悔したんだね。嘘をついて別れを告げたこと。疲れていたんだね。嘘をついて別れを告げられるぐらいに。どうしていいかわからなくなって・・・うん、そうだ」

「姫?」

前世なんて知らないし、わからない。けど、すごく胸が苦しくて涙も止まらない。これを俺は・・・私は・・・知っている。

『好き、好き、大好きだった』

「好き、好き、大好きだった」

『死にたくない、死にたくない』

「死にたくない、死にたくない」

『けど、私は生きるために目を失う』

「けど、私は生きるために目を失う」

『耳も』

「耳も」

『足も』

「足も」

『手も』

「手も」

「『あなたの言う通り何もできない。最初は手がね、動かなくなって、あなたのお皿を割ってしまった。次に脚がうまく動かなくて転けてしまい、あなたのパソコンにお茶をかけダメにしてしまった。目も霞んできて料理どころかでかけることも怖くなった。耳も遠くなれば、あなたが聞いてくる言葉がわからず怒鳴り声で勘違いされていることに気がついた。でも息が苦しくて立つのがやっと。いつも悩んでいた言葉をあなたに言われ、最後に消えろと言われたことで決心した。私は生きるべき存在ではなかったと。あなたの願いを叶えれば迷惑ばかりかけたこと許してもらえる?ああ、死にたくない。あの人が好き、別れたくなんてなかった!せめて別れずに死ねたなら・・・ごめんなさい、ごめんなさい。』」

こんなことを想ってごめんなさい。好きになってごめんなさい。

「椎名・・・なのか」

「言葉が、気持ちが、流れてくる」

俺の意識なのか、椎名の意識なのかわからない。

「顔色が悪い・・・。姫、それ以上はやめるんだ」

「『せめて誤解を。せめてあの時の気持ちを。せめて今死ぬ前の気持ちを。まだ言いたい、書きたい。でも、もうね、立てない、目も耳も何も見えないし、何も聞こえない。胸が苦しい、神様、あの人に私が与えた不幸以上に幸せを』」

「・・・っ椎名、すまない。僕は幸せだったよ。こんな愚かな僕を愛してくれてありがとう。まだ幸せを願ってくれるなら、姫を奪わないでくれ。」

「ない、と・・・せんせー・・・」

「ありがとう、椎名。ありがとう、姫星」

騎士さんが泣いてる。せっかくイケメンなのに涙でかっこよさが消えちゃったりしないだろうか。俺も涙が止まらないせいで、うまく喋れないようだ。

いや、喋れないというか視界がぼやけてきてる?そう思った時にはもう遅く、チャイムの音と共に意識が途絶えた。
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