聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜

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第7話 金髪碧眼の王子様の、表と裏①

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私はレイファスくんとともに、城の奥まったところにある、重厚な扉の前へとやってきた。 

彼が扉を2回ノックして名前を告げる。
部屋の中から、若いけれど、威厳のある凛とした声で「入れ」と返事が返ってきた。

重々しい扉が開かれる。
先に入ったレイファスくんに促されて部屋の中に入ると、正面に置かれた執務机の向こうに座る人物と、その隣に従うように立つ、薄い紫の髪色をした綺麗な男の人の姿が目に入った。

「ふわぁっ!」
思わず口から声が飛び出しそうになって、あわてて両手で口を覆った。
正面に座る男の人の姿に、私の視線は釘付けになってしまった。

なぜなら、私のやっているスマホゲームの、大好きな騎士様とそっくりだった。
そう!昨日、七夕イベントで浴衣姿をお迎えした、例の彼だ!!

う、うう、嘘でしょぉぉぉ!?


ゆるくちょっとだけ癖っ毛の金髪。やや少し長めの前髪から覗く空色の瞳。
騎士の白い軍服ではなく、白いブラウスを着ているけれど、衣裳以外は彼そのものだった。

なな、なんでっ!
どうして、ここに騎士様がいるのっ!?

驚きすぎて、呼吸が出来ない。
あ、いけない。レイファスくんが不思議そうな顔をしている。
平静へいせい、平静……。

すると、騎士様にそっくりな彼が、ふわりと綺麗な微笑みを浮かべた。

ああーーーっ!

すごい破壊力っ!!

まるで、天使かな……。

彼の微笑みの威力に、膝から力が抜けてしまいそうになる。
イラストじゃなくって、リアルに彼が動いてる。

こんな幸せなことって、いいのでしょうか……

ああ、もう無理……。

さらに、彼はスッと立ち上がり、そのまま机を回りこんで大きなスライドで、こちらへと向かってきた。 

どど、どうしよう!?

どこかに隠れる場所は?……ない。

私はかろうじて立っているというのに。
思わず、後ろへ半歩よろめく。

えええーーーーーっ!やめて!!
これ以上、近づくなんて無理だからっ!!!

そんな内心パニックになる私の代わりに、レイファスくんが制止してくれる。
「待て、アレク。じつは、」
「いや、俺はもう十分に待った」 
あっさりと一言で、レイファスくんの言葉を遮った。

結局、止まらないのねーーーっ!

あまりの驚きと喜びと、混乱して泣きそうになる私の前に、金髪碧眼きんぱつへきがんの彼は、とても優雅にひざまずいた。
彼は綺麗なガラスのような瞳で、私のことをまっすぐに見つめる。
そして、まるで花がほころぶように微笑んだ。
 
完璧な微笑みと洗練されて優雅な所作しょさ。圧倒的な存在感。
幼い頃に憧れた絵本から飛び出してきた王子様そのものだ。

アレクと呼ばれた彼は、その長い指で優しく私の右手を取った。
「っ!!」
まるで騎士が姫に忠誠を誓うかのように。

「聖女様、私はこの国の次期王となるアレクシス・ルークス・アウレリオと申します。貴方様を心よりお待ちしておりました。どうか我らをお救いください」

私ととしは変わらないくらいの若い次期王。
次期王ってことは、今はまだ王子様なんだろうな。

そんなことより、聖女じゃないって早く否定しなきゃ。 そう思うのに緊張して、あと勇気もなくて、のどの奥に言葉がつっかえるように出てこない。

「あ、あの……私……」

私をまっすぐに見つめる彼のが、期待でキラキラと輝いている。 
うまく話せないでいる私の代わりに、レイファスくんが言った。 

「アレク。彼女は聖女様ではない」
その一言で、空気が一変する。ピタリと時間が止まったようだ。 

「……す、すみません」
私は消え入りそうな声で、何とかそれだけ言った。 

「どういう意味だ」
 アレクシス様は目を見開き、レイファスくんを見上げると、低い声で一言問う。 

レイファスくんも冷静に、低い声で答える。
「そのままの意味だ。彼女は花園美月はなぞのみつき。我らの求める聖女様とは違う。誤ってここへ来てしまったんだ。だから何とか元の世界へ帰る方法を……」 
 
レイファスくんの言葉を途中でさえぎって、アレクシス様が声をあげた。 
「はあぁっ!?言っている意味がわからないんだがっ!」 

「どうやらそのようですね」 
それまで執務机の横に、静かに立っていた紫色のさらさらロングヘアの綺麗なイケメンさんが、静かに言った。

少しをおいて、ようやく事実を理解したアレクシス様は、私の手をバッと離す。
すくっと立ち上がった彼の顔からは、天使のような微笑みも掻き消されて、代わりに凍りつきそうな冷ややかな表情かおで私を見ていた。 

え、ええっ!?騎士様は……?
  
「はあ!?何だよ、それ!信じられないんだけどっ」
「アレク、失礼ですよ」
紫頭のイケメンさんが、やんわりといさめる。
 
「は?知るかよ。王子様キャラってのは疲れるんだ。聖女じゃないのに、やってられるか!」 
「はあ~、馬鹿なのですか」 
「おい、アレク」
 二人がため息交じりに言う。 
私は唖然として、王子様の顔を見つめていた。

なるほど…… 
こっちが素なんだ。
推しの騎士様のキャラが崩壊していった。
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