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第9話 馬車の中の会話
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城を出た後、私とレイファスくんは再び馬車で向かい合って座り、揺られていた。
夜の街は人通りもなく、ゴトゴトと馬車の音だけが聞こえる。
街の中心部では、ときおり居酒屋のようなお店に明かりが灯っていたりもしたけれど、やがてそれらもなくなり、月夜の光の中、静かな街を抜けていく。
彼は相変わらず無口で、馬車の窓枠に肘をついて外の景色を眺めている。
ちょっと、気まずい……。
「……あの、レイファスくん」
「レイ」
「はい?」
「レイだ。俺も、あんたのことをミツキと呼ぶ。だから、あんたもレイでいい」
あ、そこ?
……こだわってたんですね。
「……わ、わかりました」
ようやく彼が、紺青の瞳をこちらに向けた。
森の中の深い湖の底のような、冴え冴えとしたブルーサファイアの色が、冷たい水を連想させるのか、クールにも見えてしまう。
「あの、レイ。ごめんなさい」
「は?なんで謝る?」
「あ、あの……色々迷惑かけちゃって。勝手に私がこの世界に来ちゃったし、聖女様の邪魔もしちゃったし、二週間もお世話になることになっちゃって……」
なんか言ってて、自分が情けなくて、胸のあたりがぎゅっとなってしまった。
膝に乗せた両手を握りしめる。
ダメだ、声が震えそう……。
スカートに寄った皺をぼんやり眺めた。
鼻の奥がツンと痛くなるのを飲み込んで、私は顔をあげて笑顔を作った。
「あの、ほんとに私のことはお構いなく。町の宿屋さんで大丈夫ですので!」
「………………」
「あ、お金は持ってないので、少しお貸しいただければ有り難いのですけど…アハ、ハハ……」
「無理して、笑わなくてもいいんじゃないか?」
「……え?」
彼は頬杖をついたまま、綺麗な紺青色の瞳で私をまっすぐに見ていた。
「一番辛いのは、あんただろう」
「あ……」
「いや、いい。……あんたはうちに来るのが嫌なのか?」
「いえ!決してそんなことないです!」
慌てて手を振って、否定した。
「だって、今のところ一番のお知り合いはレイだけだし。……でも、あまりノリ気ではなさそうだったから」
はあ~、レイは深くため息をついた。
「そうではない。あんたが迷惑だから、とかじゃない。その、俺はあんまり愛想よくとかできないから」
「あぁ、それで」
思わず肯定してしまって、慌てて両手で口を塞ぐ。
けれど、彼はしっかり聞いていて、嫌そうな顔をされてしまった。
「ほんとは、ルーセルみたいなヤツがいいのだろうけど、ルーセルはあの顔とあの性格だから、女のトラブルが多い」
わあ~、多いってすごい強調して言った!
でも、納得できる。
「だから、まだ俺の屋敷へ来てもらったほうがマシだと思ったんだ」
「あはは……、私も女性トラブルは嫌かも」
まぁ、私はそんな対照にはならないと思うけど。
「俺は普段、騎士の仕事が多いし、男ばかり相手にしてる。正直、世辞を言ったり姫君たちの相手は苦手だ。だから俺と居たってつまらないと思うが、貴族の女同士のトラブルよりはマシだろうから、我慢してくれ」
貴族の?
なんか言い方に引っかかるけど……。
確かにネット小説でも、転生ものや悪役令嬢とか読んでても、貴族の女子コミュニティっていろいろと大変そうだもんね。
「えっと、わかりました」
「それから、その敬語もなしだ」
「はい」
急に喋るようになったな……、彼。
「俺は、あんたより年下だしな」
「あ!そういえば、そうで……そうだね」
聞けばルーセルは私より5つ上で、あのやんちゃそうなアレクシス様は同い年。
同い年で次期王様って、私には到底無理だなって感心する。
きっとアレクシス様ってすごい出来る人なのだろうな。
性格は……、残念そうだけど。
そして、レイは私より1つ下の19歳で近衛騎士団長として、たくさんの男の人達を上に立って纏めてるんだって思うと、ホントすごいなあ~って尊敬しちゃう。
そのうえ、レイはランドルフ家の当主っていうのだから、私より大人に感じてしまうな。
ていうか、3人とも若いのに、国の中心で国を動かしてるって凄すぎる。
そんな話をしてるうちに、私達を乗せた馬車は街の外れにある、ひときわ広い敷地に立つ、ランドルフ家の屋敷の門を入っていった。
夜の街は人通りもなく、ゴトゴトと馬車の音だけが聞こえる。
街の中心部では、ときおり居酒屋のようなお店に明かりが灯っていたりもしたけれど、やがてそれらもなくなり、月夜の光の中、静かな街を抜けていく。
彼は相変わらず無口で、馬車の窓枠に肘をついて外の景色を眺めている。
ちょっと、気まずい……。
「……あの、レイファスくん」
「レイ」
「はい?」
「レイだ。俺も、あんたのことをミツキと呼ぶ。だから、あんたもレイでいい」
あ、そこ?
……こだわってたんですね。
「……わ、わかりました」
ようやく彼が、紺青の瞳をこちらに向けた。
森の中の深い湖の底のような、冴え冴えとしたブルーサファイアの色が、冷たい水を連想させるのか、クールにも見えてしまう。
「あの、レイ。ごめんなさい」
「は?なんで謝る?」
「あ、あの……色々迷惑かけちゃって。勝手に私がこの世界に来ちゃったし、聖女様の邪魔もしちゃったし、二週間もお世話になることになっちゃって……」
なんか言ってて、自分が情けなくて、胸のあたりがぎゅっとなってしまった。
膝に乗せた両手を握りしめる。
ダメだ、声が震えそう……。
スカートに寄った皺をぼんやり眺めた。
鼻の奥がツンと痛くなるのを飲み込んで、私は顔をあげて笑顔を作った。
「あの、ほんとに私のことはお構いなく。町の宿屋さんで大丈夫ですので!」
「………………」
「あ、お金は持ってないので、少しお貸しいただければ有り難いのですけど…アハ、ハハ……」
「無理して、笑わなくてもいいんじゃないか?」
「……え?」
彼は頬杖をついたまま、綺麗な紺青色の瞳で私をまっすぐに見ていた。
「一番辛いのは、あんただろう」
「あ……」
「いや、いい。……あんたはうちに来るのが嫌なのか?」
「いえ!決してそんなことないです!」
慌てて手を振って、否定した。
「だって、今のところ一番のお知り合いはレイだけだし。……でも、あまりノリ気ではなさそうだったから」
はあ~、レイは深くため息をついた。
「そうではない。あんたが迷惑だから、とかじゃない。その、俺はあんまり愛想よくとかできないから」
「あぁ、それで」
思わず肯定してしまって、慌てて両手で口を塞ぐ。
けれど、彼はしっかり聞いていて、嫌そうな顔をされてしまった。
「ほんとは、ルーセルみたいなヤツがいいのだろうけど、ルーセルはあの顔とあの性格だから、女のトラブルが多い」
わあ~、多いってすごい強調して言った!
でも、納得できる。
「だから、まだ俺の屋敷へ来てもらったほうがマシだと思ったんだ」
「あはは……、私も女性トラブルは嫌かも」
まぁ、私はそんな対照にはならないと思うけど。
「俺は普段、騎士の仕事が多いし、男ばかり相手にしてる。正直、世辞を言ったり姫君たちの相手は苦手だ。だから俺と居たってつまらないと思うが、貴族の女同士のトラブルよりはマシだろうから、我慢してくれ」
貴族の?
なんか言い方に引っかかるけど……。
確かにネット小説でも、転生ものや悪役令嬢とか読んでても、貴族の女子コミュニティっていろいろと大変そうだもんね。
「えっと、わかりました」
「それから、その敬語もなしだ」
「はい」
急に喋るようになったな……、彼。
「俺は、あんたより年下だしな」
「あ!そういえば、そうで……そうだね」
聞けばルーセルは私より5つ上で、あのやんちゃそうなアレクシス様は同い年。
同い年で次期王様って、私には到底無理だなって感心する。
きっとアレクシス様ってすごい出来る人なのだろうな。
性格は……、残念そうだけど。
そして、レイは私より1つ下の19歳で近衛騎士団長として、たくさんの男の人達を上に立って纏めてるんだって思うと、ホントすごいなあ~って尊敬しちゃう。
そのうえ、レイはランドルフ家の当主っていうのだから、私より大人に感じてしまうな。
ていうか、3人とも若いのに、国の中心で国を動かしてるって凄すぎる。
そんな話をしてるうちに、私達を乗せた馬車は街の外れにある、ひときわ広い敷地に立つ、ランドルフ家の屋敷の門を入っていった。
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