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第43話 王子様からの贈り物!?
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「……で、舞踏会に出るハメになったと?」
「……は、……い」
なぜか明らかに不機嫌そうな表情をして腕組をしているレイの前で、アハハ……と、私は肩をすくめて乾いた笑いをする。
城からランドルフの屋敷へ帰ってきたばかりのレイは、着替えの途中だったのか、白いシャツの上に隊服である純白の軍服を肩に羽織ったまま、執務机の縁に腰掛けて投げ出すように長い脚を組んでいる。
かっこいいぃぃぃ~~~
って、喜んでいる場合じゃないから。
「へえ。それで、どうしてアレクからドレスが届いているのかな」
レイは片方の綺麗な眉を跳ね上げて、私をまっすぐに見て問う。美形の不機嫌って迫力あって怖いんですけど。
「ええと……それは、ちょっと。アハハ…、なんでかな?」
そう。私とレイの横には、アレク様から私宛に届いたという大きな箱が置かれていた。
レイが城から帰って来る少し前—
彼より先に帰ってきていた私が部屋で本を読みながら寛いでいると、メアリが興奮した様子で部屋に飛び込んできた。
「ミ、ミツキ様!た、大変です!!」
「メ、メアリ!?どうしたの!?」
私も彼女に釣られて慌てて問いかける。彼女のいつも大きくて丸い可愛い瞳が、一層まぁるく見開かれてる。
「お城のアレクシス王太子様から、ミツキ様に贈り物が届いてます!」
「ん?アレクシス王太子様?……て、アレク様?」
私はアリシアとキース姉弟に借りた児童書らしき簡単な文章で描かれた物語の本をとじて、テーブルの上に置いた。庭の綺麗な花で作った押し花の栞を挟むのを忘れない。
この世界での言語は、話したり聞いたりは出来るけど、文字はさすがに読めなかったので、文字は少しずつ覚えたりしている。文字が読めれば、その言葉が私達の日本語ではどういう意味になるのかは解るという、自動翻訳が勝手に頭の中でされて、とっても便利だ。
二人からオススメで借りたのは、お姫様と身分違いのある男の恋のお話。子供向けに童話のような物語で描かれている。だから文字を覚えたての私にも、読みやすくて勉強になる。まだお話の途中だから、この先二人の恋はどうなるのか、わからないけれど。
私がメアリに連れられて来たのは、階段を降りたロビーだ。
そこにはいつものように穏やかに立つセバスチャンが居て、知らせを聞いたマリアンヌも来たところのようだった。
その隣には、人の背丈もありそうな大きな箱が置かれている。
「ミツキ様、お休みのところ、わざわざお越しいただき申し訳ございません」
「ううん、セバス。大丈夫だよ。ところで、私宛にアレクシス様から届いてるって……この大きな箱?」
「はい」
なんか、こんな大きな箱、いったい何がはいっているの?
人間も入れそうなくらいに大きい。
不思議に思って眺めていると、セバスチャンが落ち着いた声で言う。
「おそらくドレスではないでしょうか」
「ドレス!?」
「まあ!?」
驚く私の隣で、マリアンヌも手を口にあて、驚きの声を上げた。
マリアンヌと目が合うと、目が「早く開けて」と言っている。
私は大きな箱の上半分を少し開けて見ると、中には綺麗な空色の豪華なドレスが入っていた。
「まあ!どうしましょう!?」
感嘆な声を上げたのは、マリアンヌのほうだった。
「あ、もしかして舞踏会に出るようにって言われたので、それで気を利かせてくれたのかも知れません」
私がそう言うと、マリアンヌは
「舞踏会に……アレクシス様の瞳と同じ空色、ね……」
と言ったきり、困惑顔で黙ってしまった。
え……、そんなこと言われると、着づらいんですけど。
困惑する私達の中で、セバスチャンだけは動じなかった。
「とりあえず贈り主様も王太子様でいらっしゃいますので、レイファス様の執務室へいったんお運びしましょうか」
いつもどおりの穏やかな物腰のままそう言うと、執務室へ運ぶように他の使用人たちへ指示を出していた。
……そして、レイが帰宅して今に至るというわけなんだけど。
「舞踏会にミツキも出るというと、俺が反対するとわかっていてなんだろうな」
「?反対ってどうして?」
「危険だからだ」
「危険?だって、今回舞踏会を開く意味は、王室は変わらず強固たるもので、その存在は揺るがないことを、国の内外及び臣下に示すという目的と、アレク様が病で臥せっているという噂を払拭するためですよね?」
どこに危険が潜んでいるのだろう。私は疑問に思って首を傾げた。
「表向きはそうだ」
「表向き?ほかに何か?」
「北の大魔法使いをおびき出すためでもある」
「っ!?」
「動くかどうかはわからないが、舞踏会を開けば多くの者が出入りし、城に潜り込み易くもなる。すでに潜り込んでいる奴がいれば、何か動きがあるかも知れない。炙り出して、先手を打ちたいという意図がある」
先日、アンジェリカ姫の侍女として潜り混んでいたミレイユを思い出す。
レイは、はあ~と溜息をついた。
「ほんとミツキってさ、色々と面倒事に巻き込まれるよな」
「そ、そんなことは……」
ないと言いたかったけど、そもそもこの世界にいること自体、巻き込まれてるよね。
レイは溜息をつきつつ、ドレスの入った箱に歩み寄る。中身を見て、もう一度深い溜息をついた。
「男がドレスを贈る意味、知ってるの?」
「ん?意味?」
……はて?私は分からなくて、再び首を傾げる。
あ!もしかして、ランドルフ家にも舞踏会に着ていくようなドレスの1着や2着、すぐに用意出来るだけの財力はあるのに、アレク様が気を利かせて贈ってくれたから、拗ねちゃってるのかな!?
レイは眉間に皺を寄せて、ドレスを見ている。
「……空色って……ちっ」
今、小さく舌打ちした!?
私がレイの背中をちょっと驚いて見ていると、ムスっとした表情でレイがこちらを振り向いた。
「で、ミツキは踊れるの?」
「はい?」
「舞踏会のダンス」
「踊れるわけないじゃない」
「………………」
この冷たい間は何でしょうか……?
「男からドレスを贈るということは、パートナーかダンスに誘っているということだ」
レイが溜息混じりに、忌々しそうに言う。
「ええ!?ちょっと待って?私、パートナーじゃないし」
「当たり前だ」
「ちゃんと私、踊れないって言ったし、明日の舞踏会はルーセルが一緒にいてくれて、私は美味しいご馳走を食べていればいいって聞いてるのだけど?」
「王太子が誘っているのに、断れるわけないだろ」
「うそぉ!?無理、無理、無理!業務命令って言ったんだもん。なので、そのドレスは制服です!そうっ!制服っ!!」
「……業務命令ねぇ……アイツ」
今、小さな声だったけど、アレク様のこと、アイツって言いました?次期国王でレイの上司にあたると思うけど。
いや、この際アイツでいいよね、ほんと嵌められた。
あの、クソ王子様っ!!
「レイ、私、踊らなくていいよね?だって、ダンスなんて高校の体育祭でちょこっとしたくらいで、あとは子供の頃に踊った夏祭りの盆踊りくらいしか踊れないよ。あの眩しいシャンデリアの下で踊るなんて、無理よ~。どうしよう~~~」
思わずレイに泣きつく私を、彼は憐れそうに見ていたけれど「わかったよ」と溜息混じりに言って、明日の午前中、セバスチャンに先生としてダンスを教えてくれるよう頼んでくれると約束してくれた。
「……は、……い」
なぜか明らかに不機嫌そうな表情をして腕組をしているレイの前で、アハハ……と、私は肩をすくめて乾いた笑いをする。
城からランドルフの屋敷へ帰ってきたばかりのレイは、着替えの途中だったのか、白いシャツの上に隊服である純白の軍服を肩に羽織ったまま、執務机の縁に腰掛けて投げ出すように長い脚を組んでいる。
かっこいいぃぃぃ~~~
って、喜んでいる場合じゃないから。
「へえ。それで、どうしてアレクからドレスが届いているのかな」
レイは片方の綺麗な眉を跳ね上げて、私をまっすぐに見て問う。美形の不機嫌って迫力あって怖いんですけど。
「ええと……それは、ちょっと。アハハ…、なんでかな?」
そう。私とレイの横には、アレク様から私宛に届いたという大きな箱が置かれていた。
レイが城から帰って来る少し前—
彼より先に帰ってきていた私が部屋で本を読みながら寛いでいると、メアリが興奮した様子で部屋に飛び込んできた。
「ミ、ミツキ様!た、大変です!!」
「メ、メアリ!?どうしたの!?」
私も彼女に釣られて慌てて問いかける。彼女のいつも大きくて丸い可愛い瞳が、一層まぁるく見開かれてる。
「お城のアレクシス王太子様から、ミツキ様に贈り物が届いてます!」
「ん?アレクシス王太子様?……て、アレク様?」
私はアリシアとキース姉弟に借りた児童書らしき簡単な文章で描かれた物語の本をとじて、テーブルの上に置いた。庭の綺麗な花で作った押し花の栞を挟むのを忘れない。
この世界での言語は、話したり聞いたりは出来るけど、文字はさすがに読めなかったので、文字は少しずつ覚えたりしている。文字が読めれば、その言葉が私達の日本語ではどういう意味になるのかは解るという、自動翻訳が勝手に頭の中でされて、とっても便利だ。
二人からオススメで借りたのは、お姫様と身分違いのある男の恋のお話。子供向けに童話のような物語で描かれている。だから文字を覚えたての私にも、読みやすくて勉強になる。まだお話の途中だから、この先二人の恋はどうなるのか、わからないけれど。
私がメアリに連れられて来たのは、階段を降りたロビーだ。
そこにはいつものように穏やかに立つセバスチャンが居て、知らせを聞いたマリアンヌも来たところのようだった。
その隣には、人の背丈もありそうな大きな箱が置かれている。
「ミツキ様、お休みのところ、わざわざお越しいただき申し訳ございません」
「ううん、セバス。大丈夫だよ。ところで、私宛にアレクシス様から届いてるって……この大きな箱?」
「はい」
なんか、こんな大きな箱、いったい何がはいっているの?
人間も入れそうなくらいに大きい。
不思議に思って眺めていると、セバスチャンが落ち着いた声で言う。
「おそらくドレスではないでしょうか」
「ドレス!?」
「まあ!?」
驚く私の隣で、マリアンヌも手を口にあて、驚きの声を上げた。
マリアンヌと目が合うと、目が「早く開けて」と言っている。
私は大きな箱の上半分を少し開けて見ると、中には綺麗な空色の豪華なドレスが入っていた。
「まあ!どうしましょう!?」
感嘆な声を上げたのは、マリアンヌのほうだった。
「あ、もしかして舞踏会に出るようにって言われたので、それで気を利かせてくれたのかも知れません」
私がそう言うと、マリアンヌは
「舞踏会に……アレクシス様の瞳と同じ空色、ね……」
と言ったきり、困惑顔で黙ってしまった。
え……、そんなこと言われると、着づらいんですけど。
困惑する私達の中で、セバスチャンだけは動じなかった。
「とりあえず贈り主様も王太子様でいらっしゃいますので、レイファス様の執務室へいったんお運びしましょうか」
いつもどおりの穏やかな物腰のままそう言うと、執務室へ運ぶように他の使用人たちへ指示を出していた。
……そして、レイが帰宅して今に至るというわけなんだけど。
「舞踏会にミツキも出るというと、俺が反対するとわかっていてなんだろうな」
「?反対ってどうして?」
「危険だからだ」
「危険?だって、今回舞踏会を開く意味は、王室は変わらず強固たるもので、その存在は揺るがないことを、国の内外及び臣下に示すという目的と、アレク様が病で臥せっているという噂を払拭するためですよね?」
どこに危険が潜んでいるのだろう。私は疑問に思って首を傾げた。
「表向きはそうだ」
「表向き?ほかに何か?」
「北の大魔法使いをおびき出すためでもある」
「っ!?」
「動くかどうかはわからないが、舞踏会を開けば多くの者が出入りし、城に潜り込み易くもなる。すでに潜り込んでいる奴がいれば、何か動きがあるかも知れない。炙り出して、先手を打ちたいという意図がある」
先日、アンジェリカ姫の侍女として潜り混んでいたミレイユを思い出す。
レイは、はあ~と溜息をついた。
「ほんとミツキってさ、色々と面倒事に巻き込まれるよな」
「そ、そんなことは……」
ないと言いたかったけど、そもそもこの世界にいること自体、巻き込まれてるよね。
レイは溜息をつきつつ、ドレスの入った箱に歩み寄る。中身を見て、もう一度深い溜息をついた。
「男がドレスを贈る意味、知ってるの?」
「ん?意味?」
……はて?私は分からなくて、再び首を傾げる。
あ!もしかして、ランドルフ家にも舞踏会に着ていくようなドレスの1着や2着、すぐに用意出来るだけの財力はあるのに、アレク様が気を利かせて贈ってくれたから、拗ねちゃってるのかな!?
レイは眉間に皺を寄せて、ドレスを見ている。
「……空色って……ちっ」
今、小さく舌打ちした!?
私がレイの背中をちょっと驚いて見ていると、ムスっとした表情でレイがこちらを振り向いた。
「で、ミツキは踊れるの?」
「はい?」
「舞踏会のダンス」
「踊れるわけないじゃない」
「………………」
この冷たい間は何でしょうか……?
「男からドレスを贈るということは、パートナーかダンスに誘っているということだ」
レイが溜息混じりに、忌々しそうに言う。
「ええ!?ちょっと待って?私、パートナーじゃないし」
「当たり前だ」
「ちゃんと私、踊れないって言ったし、明日の舞踏会はルーセルが一緒にいてくれて、私は美味しいご馳走を食べていればいいって聞いてるのだけど?」
「王太子が誘っているのに、断れるわけないだろ」
「うそぉ!?無理、無理、無理!業務命令って言ったんだもん。なので、そのドレスは制服です!そうっ!制服っ!!」
「……業務命令ねぇ……アイツ」
今、小さな声だったけど、アレク様のこと、アイツって言いました?次期国王でレイの上司にあたると思うけど。
いや、この際アイツでいいよね、ほんと嵌められた。
あの、クソ王子様っ!!
「レイ、私、踊らなくていいよね?だって、ダンスなんて高校の体育祭でちょこっとしたくらいで、あとは子供の頃に踊った夏祭りの盆踊りくらいしか踊れないよ。あの眩しいシャンデリアの下で踊るなんて、無理よ~。どうしよう~~~」
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