せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月

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第1章

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と、硬く決意を固めていたのに……。
お茶会当日、私は母とグリンデル伯爵家のお庭でティーカップを持っていた。

「相変わらず素敵なお庭ですねぇ」

「貴女にそう言ってもらえると嬉しいわ。だって本当の賛辞だって分かりますもの」

うっとりと嬉しげに話す母とそれに機嫌よく答えるグリンデル夫人。二人の楽しそうな様子を見ていると、参加したのは正解だと思う。思うけれど……私はカップで隠しながらそっとため息を吐いた。



ことの起こりは、先週のこと。グリンデル夫人から届いた手紙。
従者の勢いに呑まれて母が急いで手紙を開封して目を通していたら、みるみるうちにその表情が曇っていく。それを目の前で見ていた私が心配になって手紙を読んで(勿論、母の許可を取って)からだ。

友人に誘われて伯爵に内緒で投資に注ぎ込んだ資産が予定の期日になっても戻ってこない。これがバレては離縁になりかねない。ついては数字に強い友人の娘リディアに相談に乗ってもらいたい。明日にも屋敷に来てもらって相談して、旦那様にバレずに解決する手助けをしてもらえないだろうか。

要約するとそういった内容だったか。とりあえず母は突然の友人のピンチに顔色をなくしているし、玄関ポーチには返事をもらうまでは戻ってくるなと厳命された従者が待っている。だから優しい夫人のため、私は必ずお伺いしますと急いで返事をしたためた。

そうしてその翌日、取るものもとりあえずお屋敷を訪ねたのだ。
美しく着飾った姿に不安そうな瞳浮かべた夫人は私達を私室に通し、人払いをした。そして私は詳しい契約書やら、業者とやりとりした手紙を見せてもらって状況を把握していく。

「私の実家が親しくしている子爵家からのご紹介だったの。絶対儲かるからって、本当はもっと大金を預けて欲しいって言われたのよ?でも主人に内緒でグリンデル家の財産から出資するのは違う気がして……。だから、私が持参金とは別に実家から持ってきたお金だけを出資したの」

うっすらと涙を浮かべながら説明する夫人の言葉に、書類に目を通しながら感心する。さすが、名門伯爵家の夫人だ。本当は実家と婚家の板挟みになって、考えた末にした出資なのだろう。何があってもグリンデル家に迷惑をかけないようにとの判断は流石だ。
きっと一人でその決断をして、その後も誰にも相談できずに抱え込んでいたんだと思う。今回も期日さえ守られていたら、我が家に相談することもなかったはずだ。
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